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2007年9月 1日 (土)

IP High Court Decision on High Air Tight Packing Material: 東洋製罐の特許権「ガス遮断性に優れた包装材」関係(知財高裁8月28日判決)

Comparison to MITUI Petrochemical’s Description of Olefin Co-Polymer Patents : 明細書補正において許容されない「新規事項」該当性の判断

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  

   包装材料の基体として環状オレフィン共重合体は、透明性・水蒸気遮断性が優れているが、抗生物質等の医薬品の包装に適する水蒸気透過量の要件を満たすためには、ガスバリア性の水準を一定値に高める必要がある。東洋製罐の「ガス遮断性に優れた包装材」特許権は、この課題を解決するものとして設定登録された。

1.        今次知財高裁判決の特徴

1-1  知財高裁判決文の「親切度」が益々向上して、今次東洋製罐「「ガス遮断性に優れた包装材」特許権(2003-11-7設定登録)を特許庁審判を無効と審決した事件についての判決文(2007-8-28)には、争点の関係条文の1部をも記載し、知財権問題への国民の関心の浸透に資している。

1-2  先ず今次事件の経緯を概観する。

1-2-1      東洋製罐は、「ガス遮断性に優れた包装材」特許の特許者であるが、大協精工がその無効審判を特許庁に請求し、特許庁は特許無効と審決した(2007-10-11)

1-2-2      東洋製罐はこの審決の取消を知財高裁に求めた。その後、東洋製罐が本件「ガス遮断性に優れた包装材」特許について訂正審判請求をしたことから、知財高裁は、審決取消を決定し(2006-3-8)、特許庁は再び本件無効審決請求の当否について審理した結果、東洋製罐の「ガス遮断性に優れた包装材」を無効とする第2次審決をしたので、東洋製罐は、この審決の取消を知財高裁に求めた。

1-2-3      知財高裁は、上記1-1判決で、東洋製罐の請求を棄却した。

2.        特許庁の無効審決の要点

2-1  東洋製罐による訂正事項の1部は、訂正前発明の明細書に記載されておらず、従って、訂正を認められない。

2-2  東洋製罐の「発明の詳細説明」には、「その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、容易にその実施をできる程度に、その発明の目的・構成および効果の記載」を欠く。

3.        東洋製罐が主張する審決取消事由

3-1        審決は、本件訂正の適否の判断を誤っている。(SANARI PATENT 注:ポリマ-化学構造式の一般的な記述法についても争われている)

3-2        本件発明と従来技術(引用発明)との一致点の認定を誤っている。

3-3 本件発明と従来技術(引用発明)との相違点の認定を誤っている。

3-4 同上

3-5 詳細な記載要件の充足性の判断を誤っている。

4.        本件訂正(3-1)における「新規事項の追加」該当性に関する知財高裁の判断

4-1  今次知財高裁判決で、知財高裁が新旧条文を明示しつつ詳述した「新規事項の追加」該当性判断を以下に要約する。

4-1-1 本件発明の「環状オレフィンを30モル%以上含有するオレフィン共重合体」を、「テトラシクロドデセンである環状オレフィンを30モル%以上含有する該環状オレフィンとエチレンとの環状オレフィン共重合体」とする訂正は、「願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内」のものといえるかどうかについて検討する。

4-1-2 東洋製罐の当初明細書の「発明の詳細な説明」には、三井石油化学のアペルから成るプラスチック材などの特定の物質が開示されている(SANARI PATENT 注:「アペル」は、エチレンとテトラシクロデセンの共重合比率を変更することにより得られる共重合物の総称)

4-1-3 アペルとして、物性が異なる様々な銘柄が実際に販売されているから、本件訂正により、別個のエチレンテトラシクロデセンの共重物を新たに取り込むこととなる。すなわち、当初明細書においては「環状ポリオレフィン含有量を30、32、33モル%に調整した三井石油化学製のアペル」というある特定の種類のアペルが開示されているに過ぎない。従って、当業者にとって新たに取り込まれる物性が異なるエチレンテトラシクロデセンの共重合物も自明であると認めることはできない。

4-2 東洋製罐は、「当初明細書における『アペル』の記載を『テトラシクロドデセンエチレンから成る環状オレフィンの共重合体』と記述することは、ギリシャ語に由来する学名を日本語の通常標記にする、あるいは、化学式を一般名表示するようなもので、単なる表示方法の変更に過ぎないと主張したが、知財高裁は、「開示されていない別の『アペル』を取り込んだものとして、新規事項の追加に該当する」と判断した。

5.        SANARI PATENT所見

  上記の判断に基づき、従来技術との相違点、一致点、想到容易性について、知財高裁の判断が示されているが、東洋製罐の主張も緻密に述べられ、「新規事項」の該当性について参考とすべき特許性訴訟である。

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