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2007年9月30日 (日)

PANASONIC’s Mr.K.NAKAMURA, KYORITURIKA’s Mr.K.OKAUCHI, Co-Work of Industry & Uni.’s Mr.K.SEO State IP Strategies: 平成20年度内閣知財計画策定の内閣専門調査会における委員発言

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  (関連記事SANARI PATENT2007-9-26

1.        松下電器産業・中村恭世知的財産権センタ-所長(略称)の発言

1-1        要旨(SANARI PATENT要約)

知財制度との関係について、3つの態様がある。すなわち、「知財権を正当に活用する企業等」、「知財権制度を、その本来の目的に即しない態様で利用し利得する企業等」、および、「知財権を無視ないしフリ-ライドして利得する企業等」である。

1-1-1      第1の態様の「知財権の正当な活用」においては、標準化の取組と知財の活用は車の両輪である。そして、標準化によってパテントプールを行い、特許権を使い合えるようにするという環境は、企業にとっては、その事業にプレヤ-として参画するための必要条件に過ぎない。企業が競争に勝つためには、標準化にプラスアルファして差別化のための独自技術を知財として開発しなければ必要十分条件を備えるに至らない。

1-1-2      第2の態様の「知財権による本来目的外利得」の典型はパテントトロ-ルである。ものづくりを伴わない企業・個人が、特にデバイスに関する知財を中心として、組込機器を含めて、損害賠償請求、訴訟、対組込セット供給者請求などあらゆる方法で利得を取得しようとする。一般権利者の地位を不安定にし、適正な競争を妨げる行動として、商標ブロ-カ-のそれも含め、検討を要する。

1-2  SANARI PATENT考察

1-2-1 特許権を基盤としてデファクト標準化によるデジュ-ル標準化を実現し、これに独自特許権・ノウハウを加えて差別化することが競争の要諦である。

1-2-2 米国では、安易に特許権等が付与されることがパテントトロ-ル等の活動源としての特許権等を著増させて彼らの利得を増大・確保させるという認識があると解する。先般の米国下院可決の米国特許法の内容を考究して、その方向性を探る必要がある。

2.        共立理化学研究所・岡内完治代表取締役の発言

2-1        要旨(SANARI PATENT要約)

2-1-1      共立理化学研究所は、1952年に創業以来、水質の簡易分析等を業務としてきた。その基本原理は公知で、試薬調合についても特許を取得せず、全てノウハウとしている。

2-1-2      中小企業が特許権を取得することは、費用面でも困難で、訴訟にも弱い。

2-1-3      日本製の環境分析機器が途上国に援助等されているが、操作技術員の派遣が不備で、稼動していない場合がある。

2-2  SANARI PATENT考察

2-2-1 「全てノウハウとすること」は、中小企業の知財戦略の一つの選択肢である。大企業でも、最核心部分はノウハウとする(プリンタインクカ-トリッジのカラ-インクの調合など)

2-2-2 中小企業の本人出願に一層優しい特許行政が望ましい(インタ-ネット出願の簡易化など)。

3.        産学連携推進機構・瀬尾堅一郎理事長の発言

3-1        要旨(SANARI PATENT要約)

3-1-1        技術経営の観点から、四つの指摘をする。

3-1-1-1           ものづくりだけでは経営が成立せず、サ-ビスとの連携を要する時代となった(例えば、iPodiTunesとのカップリングによる成功)。そして両者の関係は多様化し、代替・補完・相乗の諸関係に向かっている。

3-1-1-2           オ-プンとクロ-ズ、標準化と独自技術が2項対立を経て、スパイラルに絡み合うようになった。

3-1-1-3           ニ―ズとシ-ズのマッチングについて、シ-ズを使ってニ―ズを喚起する方向に向かう。

3-1-1-4           経済はグロ-バルであるが、知財はインタ-ナショナル、すなわち、ナショナルを前提にしており、この問題をどのように超えるか、課題である。

3-1-2人材育成について、「分野別」、「コア人材と周辺人材、例えば、電子顕微鏡オペレ-タのような特殊技術者や先端技術に伴うリスクの専門家の双方」、「シ-ズ起動・用途起動・論点起動の各人材」などの視点から考えるべきである。

3-2      SANARI PATENT考察

3-2-1-1           情報通信分野のSaaSなどと共通するサ-ビス・カップリングの発想である。

3-2-1-2           これらの現象は、既に伸長食品している。インタ-ネットのOS、ケ―タイの多重接続方式の国際標準化と独自技術による差別化など。

3-2-1-3           ニ―ズに即応するシ-ズの開発が必要である。

3-2-1-4           知財弁護士充足計画や、地方弁理士充足計画などの基本計画が、未だ欠落している。

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

2007年9月29日 (土)

TDK Gets Patents and Know-how of ALPS:アルプス電気のHDD用磁気ヘッド特許権ノウハウ等をTDKが取得公表(9-26)の考察

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  知財専門家にとって、TDKの製品は馴染み深い電子頭脳パ-トナ-であるが、特にTDKのHDD用磁気ヘッドは、海外需要者にとっても馴染み深い高シェアを維持している。

1.        TDKの標記公表内容(SANARI PATENT要約)

1-1  TDKは、アルプス電気のHDD(ハ-ドディスクドライブ)用磁気ヘッド関係資産(知的財産および設備)を譲受する契約を、9月26日に締結した。その目的は、TDKのHDD用磁気ヘッド事業の技術力および効率性向上による国際競争力の強化である。

1-2  譲受する資産は、アルプス電気の長岡および無錫・寧波(中国)所在の工場設備の一部と、特許権・ノウハウ等の知的財産権で、総取得価額は、361億5千万円である。対象物件の引渡しは、来年2月完了を予定。

1-3  なお同日TDKは、デンセイ・ラムダ(東証・大証各1部)に対する公開買付けの開始を公表した。デンセイ・ラムダは、スィッチング電源、無停電電源装置の製造等を事業としているが、TDKの完全子会社であるTDK米国Co.を等っを通じて、既にTDKの連結子会社となっている。

1-4  TDKは、デンセイ・ラムダとのシナジ-効果を最大限発揮する。

2.アルプス電気のHDD用磁気ヘッド関係特許公開状況

   平成19年に入ってからの公開件数(2007-9-27現在)のみでも40件を超える。その事例を掲げる(SANARI PATENT要約)。

2-1        薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法(特許公開日2007-9-20

再生素子を局所的に記録媒体側へ突出させることができる薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法を得るため、再生素子と、この再生素子の上に積層された一対の磁気コア層およびこの磁気コア層に記録磁界を与えるコイル層を有する記録素子と、通電により発熱して再生素子を熱膨張により記録媒体側へ突出させる発熱体とを備えた薄膜磁気ヘッドにおいて、発熱体を、コイル層の下層に設けた。

2-2        磁気ヘッド装置(特許公開日2007-9-20

記録媒体の移動時に、その表面に形成される空気流によって浮上姿勢となる磁気ヘッド装置において、記録動作を行う磁気機能部の発熱で、スライダが局部的に熱膨張して突出したときの、浮上量の減少を抑制できる磁気ヘッド装置を提供する。

2-3 薄膜磁気ヘッド(特許公開日2007-8-30

リタ-ンヨ-ク層(SANARI PATENT 注:増幅された磁場を、外部に発散させないようにする機能を営む)、上部シ-ルド層および下部シ-ルド層から流出する漏洩磁界の大きさを、それぞれバランスよく小さくでき、記録媒体に記録されたデ―タが消去等されるのを防ぐことができる薄膜磁気ヘッドを提供する。

2-4 磁気ヘッドおよびその製造方法(特許公開日2007-7-26

抵抗体の比抵抗を従来よりも高めて、この抵抗体を厚い膜厚で形成することが可能な磁気ヘッドおよびその製造方法を提供する。

2-5        薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法(特許公開日2007-7-26

耐食性の向上と、素子部の静電破壊防止を実現でき、かつリタ-ンヨ-ク形状の設計自由度を高める薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法を提供する。

2-6        薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法、ならびに前記薄膜磁気ヘッドの評価方法(特許公開日2007-7-5

高い出力値を安定して得ることができると共に、Write Induced Instability Coefficient Of Varianceを小さくできる薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法、ならびにこの薄膜磁気ヘッドの評価方法を提供する。

3.        総合電機メ―カ、例えば、東芝の「HDD用磁気ヘッド」関係特許公開:

情報通信分野の先端テ-マであるから、例えば、東芝の場合、2007年に入ってからの特許公開件数のみでも80件に達する(2007-9-27現在)。事例として。

3-1   磁気抵抗効果素子、磁気ヘッド、磁気再生装置、および磁気抵抗素子の製造方法(特許公開日2007-8-30

スピン注入磁化反転現象(SANARI PATENT 注:磁性材料に、電子スピンの方向が偏った電流を流すことにより、その磁性材料の磁化方向が変化する現象)の低減を図った磁気抵抗効果素子、磁気ヘッド、磁気再生装置、および磁気抵抗素子の製造方法を提供する。

3-2  磁気ディスク装置および磁気ディスクの制御方法(特許公開日2007-8-9

衝撃時にヘッド素子と媒体の接触の危険性を低減できる磁気ディスク装置を提供する。

4.        SANARI PATENT所見

開発競争がグロ-バルに激烈な分野においては、技術の自社開発と共に、包括ライセンス契約などの企業間連携や、経営統合などの組織戦略が必要である。その態様は一層多様化し、知財専門家としては競争企業の動向のみならず、企業法の多岐にわたる実務の理解が必要性を増す。

2007年9月28日 (金)

Attention to BSA : Business Software Alliance: Promoting legal digital world: ソフトウェア・ライセンス不備企業への対処:メディアメ―カ対ソフトウェア業界

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  SANARI PATENTのセキュリティは現在、Symantecによっているが、そのSymantecも、ソフトウェア知財海賊版に対するセキュリティを要する。Business Software Allianceは米国に本部を置くが、活動は必然的にグロ-バルである。

  ソフトウェア知財権は、プログラム著作権とプログラム特許権の総合により構成される。ライセンス未許諾のソフトウェア使用等に対する保護と損失回復を、業界団体の行動により具体的に個別案件について達成していることは、業界団体の事業として広く注目すべきである。

  なおBSAのメンバ-は現在、AdobeAppleAutodeskAvidBentley SystemsBorlandCNC Software/MastercamMcAfeeMicrosoftPTCSolidWorksSybaseSymantecThe Nathworks およびUGSである。

1.        最近のBSA活動(Washington DC Press 2007-9-18)SANARI PATENT要約)

1-1  某多国籍メディア企業のソフトウェアライセンス取得不備に対して、BSAはこのほど、346万7千ドルの請求をセットした。AdobeAutodeskAvid、および、Microsoftが受けた被害に関する。

1-2  BSAの告発により、警察当局が上記某多国籍メディア企業(an international media firm)を捜索し、資産を一旦凍結した。対象企業の名称は、法的理由により示すことができない。

1-3  対象企業は、その製品から未ライセンスソフトウェアをデリ-トし、将来要するソフトウェアを購入するが、違法使用の期間に対する罰金を支払う。

1-4  今次事件には、ソフトウェアの管理機構の欠陥も一つの原因となっている。

2.        大学生による違法ソフトウェア・デジタルファイルのダウンロ-ドについてBSAが調査(2007-9-19 BSA)(SANARI PATENT要約)

2-1 違法ソフトウェア・デジタルファイルをダウンロ-ドした大学生の半数が、

 ウィルスなどの事故に遭っている。このような調査結果を周知させることも、ソフトウェア侵害の防止に役立つ。

2-2        BSAはこのためのホ―ムペ-ジを立ち上げた。

3.        米国下院の特許法改正にBSAは賛成(2007-9-7)(SANARI PATENT要約)

3-1  上記改正は、米国特許法が21世紀の急速な技術革新・イノベ-ションに挑戦し、国際競争力強化に役立つようデザインされた。特許の質の向上、特許侵害に対する衡平かつ公正な救済が確保され、特許先進国間の制度との調和に資するものである。また、消費者の便益を促進するイノベ-ションを実現するために、願望されてきた改正でもある。

3-2  BSAがかねてより実現を運動してきた特許法改正が、下院で可決されたことを欣快とする。

4.        カリフォルニア3企業に対する措置(2007-8-16 press) SANARI PATENT要約)

4-1        BSAは、無許諾ソフトウェア使用について、AccentCare 240,400ドル、Investers Management Trust Real Estate Group 235,000ドル、Global Microwave Systems 231,500ドルの支払いをセットした。

4-2        上記支払いのほか3社は、無許諾ソフトウェアのデリ-ト、代替ソフトウェアの購入、ソフトウェア管理の強化を約定した。

5.        BSAのホ―ムペ-ジに掲載されたソフトウェア・デジタル等海賊版率(SANARI PATENT 注:違法コピ-率と解する。違法コピ-率は、「当該年ソフトウェア違法コピ-数」/「当該年にインスト-ルされたソフトウェア総数」。「違法コピ-数」は、「当該年に稼動しているPCにインスト-ルされたソフトウェアの総数」と「当該年に正規に出荷されたソフトウェアの総数」との差)

  Piracy Rate by Region 2006と標題して掲載(2007-9-26)されている数値は、北米22%、西欧34%、アジア太平洋55%、中東・アフリカ60%、中東欧68%、ラテンアメリカ66%EU36%、全世界35%.

6.        SANARI PATENT所見

BSAホ―ムペ-ジ日本語版によれば、2006年の日本における違法コピ-率は対前年3%減の25%、同損害額は2140億円。日本は低違法コピ-率上位3位だが、損害額では世界ワ-スト5位。高違法コピ-損害額トップは米国で、8747億円。

 ソフトウェア使用企業が、その使用するソフトウェアについてのライセンスの有無を確認したい場合は、Audit Toolとしてwww.bsaaudit.comの使用をBSAは勧めている。またBSAは、海賊行為の通報に対して20万ドル以内の報奨金を用意している。

 業界の自主活動が、侵害に対する防衛と解決や、立法促進の主たる起動力となっているBSA米国本部の業績を、グロ-バルに範例とすることが望まれる。

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

2007年9月27日 (木)

FUJITU’s Mr,M.KATO and SANTORY’s Mr.H.TUZIMURA State IP Strategies : ソフトウェア・アズ・ア・サ-ビス、トランスレ-ショナル・リサ-チなどについても

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  平成20年度の内閣知財計画策定のため、分野別国際競争力強化等の専門調査会が内閣に設置され、昨月末、発足した。その席上発言について考察する。

1.        富士通・加藤幹之経営執行役の発言

1-1        要旨(SANARI PATENT要約)

1-1-1      わが国の特許制度・知財制度は、司法制度を含めて、諸外国に比べて最も進んでいると考える。

1-1-2      これからは、このように進んだ制度の枠を、更に分野別に細かく検討すると共に、経済活動と同様、知財のグロ-バル性に即して、国際的な視野で検討し、諸外国を含めてボトムアップすべきである。

1-1-3      情報通信分野について3つの注目点を指摘

1-1-3-1           ソフトウェアがサ-ビスとして、ソフトウェア・アズ・ア・サ-ビス(Software as a Service: SaaS)として使われてゆく。すなわち、ソフトウェアが一つの製品としてではなく、サ-ビスとして、ウエブサ-ビス等の新たなイノベ-ション技術として機能してゆく。知財の対応が課題である。

1-1-3-2           ものづくりの世界で、アジア諸国の台頭など大きなグロ-バル・パラダイムシフトが進行していることに対処すべきである。

1-1-3-3           知財開発の担い手が知財専門家に限定されず、人類全てが創造的活動に参入しイノベ-ションを促進する時流を誘導すべきである。

1-1-4      米国で、公知例をコミュニティ全体で見出す方向にある。この例のように、知財制度とその運用を、審査官等の知財専門家にのみ任せず、コミュニティ全体で構築する方向性を検討したい。

1-2      SANARI PATENT考察

1-2-1        知財制度の現状に対する評価は、分野によって異なる。

1-2-2        日米欧の知財法制の比較検討がなされていない。また、途上国の属地主義に対する考え方も検討されていない。

1-2-3-1           ASP(Active Service Pages)と比較して、SaaSの利点が先ず周知されなければならない。B2B・Web受注システム等に対するメリットの付加についても、具体的な認識具体的先ず共有されなければならない。

1-2-3-2           理工系大学の卒業生すら、特許出願文書を本人作成できないような非実務的教育課程を先ず改めるべきである。

1-2-4      特許庁の従来技術資源を広くインタ-ネット開放すべきである。

2.        サントリ-・辻村英雄取締役の発言

2-1        要旨(SANARI PATENT要約)

2-1-1      サントリ-は、酒から飲料全般に向けて展開し、食品工業に位置しているが、ライフサイエンス分野の一員としては、研究開発費の比重が製薬分野に比べて非常に少なく、特に酒については、戦略的にもノウハウに比重を置いてきた。しかし、食品産業としては、製法特許等の知的財産権化を重要とする潮流が拡大しつつある。

2-1-2      従来のリニアモデル、すなわち、基礎研究→開発→生産→商品売出という線型モデルから、トランスレ-ショナル・リサ-チ(SANARI PATENT 注:イノベ-ションの具体的需要に応ずる開発・基礎研究の意と解する)のモデルで、出口を意識したR&D戦略が必要である。

2-1-3      しかし、これが行過ぎて、基礎的研究に枯れる部分が発生することも、防止しなければならない。

2-1-4      食品の分野については、機能性食品、特定健保食品など、医薬品ではないが効能をもつものに対する特許、すなわち、用途特許・効能特許をどのように考えるべきか、メカニズム(SANARI PATENT 注:作用機序の意と解する)が同じであれば用途が複数あっても認められ難い現状の適否を検討すべきである。

2-1-5      遺伝子組換え植物について要求される環境への影響試験は非常に長期を要し、医薬分野の存続期間延長制度と同様の制度を検討する必要がある。

2-2 SANARI PATENT考察

2-2-1 サントリ-を例として、今年に入ってからの同社特許公開件数は42件に達し(2007-9-21現在)、「機能性素材の光安定性の向上方法」、「血糖値低下作用を有する組成物」、「食物繊維を含有する発酵飲料の製造方法」などが見られる。

2-2-2 プロパテントからプロイノベ-ションに軸足を移すべきである。

2-2-3 大学の機能について、明確な見識を、国策として確立する必要がある。大学内部に、「基礎研究本分」と「産業直結」の画定について、迷いがある。

2-2-4 薬事法とトクホ法との調整領域であるが、知財戦略においても立ち入るべきである。従来、薬事法に基づく毒性検査等については、特許審査は「無関係」的立場を採ってきたが、「産業上利用可能性」の判断領域を検討すべきである。

2-2-5 辻村委員が例示したカ-ネ-ションを含めて、人類の食料資源やエネルギ充足の将来を決定する極めて重要な課題であり、遺伝子組換え植物の安全性を先ず確立することが、関係知財開発の前提である。

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2007年9月26日 (水)

Prof. N.NAKAYAMA (TOKYO University) States Basic Principles of IP Strategies: 項目羅列の内閣知財戦略本部計画から知財立国本旨の基本計画へ

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  昨月末に発足した「知的財産による競争力強化専門調査会」における中山東大大学院教授の発言は、極めて注目される。

1.        中山信弘東大大学院教授の発言

1-1        要旨(SANARI PATENT要約)

1-1-1      各論は今後の議論に俟ち、内閣知財戦略本部発足当初からの唯一人の継続本部員として、先ず総論を述べる。

1-1-2      この5年間の経過を見ると、官民各界の要望を選別して戦略計画を策定する経過において、声が強力な要望は選外とならず、従って、要求を羅列する傾向になりがちである。

1-1-3      その結果、計画が多数項目の羅列になると、重点が不明確になる。今後は、中心となる戦略を重点的に練るべきである。

1-1-4      内閣知財戦略本部には実施能力がないから、実施計画は各省庁が立案するが、文化審議会・産業構造審議会・工業所有権審議会・関税外為等審議会など、十分に検討を尽くす時間的・人的余裕がないままで計画に登載されるものも見られる。内閣知財戦略本部としては、細部に深入りするよりも中核となる大方針を策定すべきである。

1-1-5      知財戦略計画の根源は「知財立国」であるが、知財の開発自体が目的ではなく、知財による産業・文化の発展が目的である。

1-1-6      「プロパテント」という言葉のみ先行して、「最近、裁判所で特許無効の判決が多い」とか「原告特許権者の勝訴率が低く、裁判所はアンティパテントに偏している」など、軽薄な議論もあり、内閣知財戦略本部は、「知財戦略のどのような在り方が、産業・文化の発展に真に寄与し得るのか」という根本を検討すべきである。

1-2  SANARI PATENT考察

1-2-1 「知財とその他の価値との調和」は、一応、知財推進計画07の冒頭に明示されているが、その上位概念である「知財の目的である産業・文化発展への適合」が、更に冒頭に掲揚されなければならない。この理念を一貫して機能させるために、価値秩序の学である政治学の大御所・中山信弘教授の一貫関与が貴重である。

1-2-2 各界の要望が相克する場合(デジタルコンテンツの流通促進と著作権保護など)、各界内部の統一的要望が形成されていない場合(医療行為への特許付与など)、有識者の意見が一致しない場合(知的財産権侵害に対する懲役刑強化など)等に、結論先送り、立案行政庁の意向優先が疑われる。

1-2-3 分野別戦略策定に伴い、項目が益々細分化する傾向に向かうと予想されるので、中山信弘教授の指摘が特に重要である。

1-2-4 内閣知財戦略本部の計画が産構審等に下付されるのではなくて、産構審等の結論が、内閣知財戦略本部の十分な審議を経ずに、政府総体の意見という形を取る可能性があることが問題である。

1-2-5 プロパテントというような標語の行き過ぎを、言葉の発祥国の米国では適宜修正して、例えば、「均等論の弾力的運用」、「今次米国下院特許法改正によるパテント業者の行動調整」を実施しているのに、わが国では、内閣知財戦略本部自体が「プロパテント」に固執していると見られないよう、配慮を要する。

1-2-6 知財高裁の判決で「特許無効」がそれほど多いのではないが、特許の審査と審決、知財高裁判決を通じて、特許権の有効・無効が変遷することに、特許制度の基盤が存在することを再確認し、「特許権の安定性」と混同すべきでない。

2.        SANARI PATENT所見

2-1  中山信弘教授の内閣知財戦略本部における慎重な発言自体が、これまで十分に計画に反映されてきたか、疑問な点もある(例えば、知財と他の価値とのバランスの強調、知財侵害罪罰則における懲役刑の強化について日弁連意見との調整)。

2-2  中山信弘教授は、内閣知財戦略本部のみならず、その発足以前から、産構審知財政策部会を主導してこられたが、「発明のカテゴリ-の新設」、「創作権と識別権、財産権と文化権の各画定・競合・総合」、「世界特許志向の理念」、「強制実施権の在り方」など、先送りされている諸課題の打開に、一層のご指導が望まれる。

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

2007年9月25日 (火)

Product by Process Claim on Holographic Grating: 島津製作所の「ホログラフィック・グレ-ティング」発明について知財高裁判決(2007-9-20)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  「ホログラフィック・グレ-ティング」をSANARI PATENTは、「立体映像化回折格子」と訳しているが、その開発は多岐にわたる。例えば、島津製作所は、「凹面ブレ-ズド・ホログラフィック・グレ-ティング」(Concave Brazed Holographic Grating)を次のように解説している(SANARI PATENT要約)。

  「凹面回折格子は平面回折格子と異なり、凹面鏡などの結像素子を用いずに、分光光学系を構成できる。このため、各種分析機器、光通信、バイオ・メディカル機器など広い分野で用いられる。」

  今次知財高裁判決に係る島津製作所の「ホログラフィック・グレ-ティング」特許請求は、請求項1~3で構成していたが、請求項1を補正すると共に、請求項2および3を削除した。

  補正後の請求項1は、光学ガラス基板に設けたホトレジスト層に、刻線・エッチング等を加え、所定の特徴を有する「ホログラフィック・グレ-ティング製作方法」である。

  島津製作所は、本件特許出願に対して拒絶査定を受け(2004-2-12)、不服審判請求したが(2005-3-12)、請求不成立の審決(2006-9-21)を受けたので、知財高裁に、審決取消請求した。知財高裁はこの請求を棄却したが(2007-8-30)が、

 ここにはその争点のうち、Product by Process Claimに関する事項を考察する(以下の引用は、SANARI PATENT要約)。

1.        審決の理由

本件補正前は発明のカテゴリ-が物であったのに、本件補正後は発明のカテゴリ-が方法になっている。

,2. 島津製作所の主張

2-1 東京高裁平成14年判決の判示事項を反対解釈すれば、Product by Process Claimにおいて、請求項に記載された物が、出願に係る明細書において当該請求項に記載された方法によって製造されたものに限られることが明示されていれば、当該物は請求項に記載された製法によって限定される、すなわち、当該請求項の実質的なカテゴリ-が「方法」であると解釈さるべきである。

2-2 この解釈に基づけば、補正前請求項1はProduct by Process Claimであり、補正前請求項1に記載された物が、出願に係る明細書において当該請求項に記載された製法によって製造された物に限られるから、補正前請求項1の実質的なカテゴリ-は「方法」である。

2-3 従って、本件補正は、特許請求の範囲の縮減を目的とする補正に該当する(特許法17-2-4)。

2-4 特許法17-2-4は、発明の十全な保護と、迅速・的確な権利付与とのため、最後の拒絶理由通知に対する補正は、既に行った審査結果を有効に活用できる範囲内で行うこととする趣旨である。

2-5 補正前請求項1について特許庁は、先行技術として回折格子の製作方法に関する発明のみ列挙し、審査官は、発明特定事項が「「ホログラフィック・グレ-ティングの製造方法」に関するものであることを認識していたから、本件補正は、審査結果を有効に活用できる範囲内で行われたものである。従って、審決が請求項の末尾の文言のみによって発明のカテゴリ-を「物」であると認定し、本件補正を不適法とした判断は誤りである。

3.        特許庁の反論(SANARI PATENT要約)

3-1  上記2-1の引用判決は、「本件訂正発明が製造方法の発明ではなく、物の発明であることは、特許請求の範囲の記載から明らかであるから、請求の範囲は、物に係るものでありながら、その中に当該物に関する製法を包含し、Product by Process Claimに該当する」と判示している。

3-2  上記3-1の判示によれば、請求項がProduct by Process Claimに該当する場合には、請求項に「製法」を記載していても、請求項に係る発明は「物の製造法に関する発明」ではなく、「物に関する発明」である。

3-3  特許法17-2-4は、限定列記である。

3-4  発明のカテゴリ-の変更は、実質上、特許請求の範囲を変更する態様の一つである。

4.        知財高裁の判断(SANARI PATENT要約)

4-1  特許法は「物の発明」と「方法の発明」を区別して規定し、各法律効果が異なるとしている。

4-2  特許出願に係る発明がいずれの発明であるかの区別は、「特許請求の範囲の記載」に基づいて判断すべきである。

4-3  Product by Process Claimとは、「物に係るものでありながら、その中に当該物に関する製法を包含する形式で記載された特許請求の範囲であり、発明の対象となる物の構成を、製造方法と無関係に直接的に特定することが不可能・困難・不適切であるときなどに認められる特許請求範囲の記載方法である。

4-4  従って、Product by Process Claimにあっては、特許請求の範囲に物の製造方法が記載されていても、その記載は発明の対象となる物を特定するためであり、物の製造方法についての特許を請求するものではない。「物の発明かつ方法の発明」ということもできない。

5.        SANARI PATENT所見

  Product by Process Claimについて、司法の見解が明確に表現された。

2007年9月24日 (月)

Fusion of Telecom and Broadcasting: IPマルチキャスト放送へのコンテンツ流通を促進:リク-プ手法(投下資金回収)の開発が必要

Balancing Net Utility and Copyrights:  情報通信審議会答申(2007-8-2)に至る道程の今後

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  

1.        内閣知財戦略本部・知財推進計画06から07へ:

  デジタルコンテンツ振興の見地から、歩を進めている。すなわち、

1-1        知財推進計画06におけるIPマルチキャスト放送

「IPマルチキャスト放送の積極的活用を図る:

 2011年の地上デジタル放送への全面移行を円滑に実現することを目指して、IPマルチキャスト方式により地上放送を同時再送信することについて、著作権法上、有線放送と同様の取扱いにするため、2006年度中のできるだけ早い国会に著作権法の改正案を提出すると共に、放送法制についてもこれに伴い必要な措置を速やかに講ずる。また、IPマルチキャスト方式による自主放送の取扱いを含め、今後の通信・放送の融合や技術革新の状況に柔軟に対応するための放送法制や著作権法などの関連法制の在り方については、引続き検討し必要な措置を講ずる。その際、クリエ-タに十分な報酬が支払われるよう配慮する。

 2006年度から、IPマルチキャスト放送事業者自らが魅力的な放送コンテンツを創り、クリエ-タに新たな創作チャンスを与えるよう促す。」

1-2        知財推進計画07におけるIPマルチキャスト放送

「IPマルチキャスト放送(SANARI PATENT 注:インタ-ネットなどで、テレビ放送等と同様に、コンテンツを多数に同時配信すること)へのコンテンツ流通を促進する。

 IPマルチキャスト放送に関する著作権法改正も踏まえ、地上デジタル放送の同時再送信を、計画されているスケジュ-ルに沿って実施するために必要な措置を2007年度中速やかに講ずる。その際、放送番組に関する権利管理情報を放送事業者やIPマルチキャスト放送事業者など関係者が協力して整備するよう促す。

 IPマルチキャスト方式による自主放送について、諸外国の動向を踏まえつつ、著作権法上の取扱いの明確化、プロテクションを含む端末技術の標準化の促進、放送番組等のコンテンツ流通市場の整備を2007年度中に進める。

 また、クリエ-タの新たな創作チャンスが増えるという視点も踏まえ、IPマルチキャスト放送事業者自らが魅力的な放送コンテンツを創るよう促すと共に、クリエ-タとのビジネスマッチングの機会を2007年度中に充実する。」

2.        情報通信審議会による上記1-2への対応:

2-1        今次答申(2007-8-2)では次のように要約している。

2-1-1      デジタル時代におけるコンテンツ流通に係るル―ルの在り方は、技術や、これに係る市場のビジネスの状況に応じて適宜見直されていくことが不可欠である。その意味で、国会や内閣知財戦略本部で指摘されている通り、IPマルチキャスト放送という視聴者の利便性を大きく向上させる潜在的な可能性が期待される新たなメディアについても、ル―ルの見直しを検討していくことが必要である。

2-1-2      しかしながら、新たなメディアの普及には、そのビジネスの受益者による一定の投資と、その収益がビジネスを支える者に適切に還元されていくことも重要である。情報通信審議会としては、このようなル―ル改正の議論の前提として、役務放送事業者、通信事業者、実演家等の権利者が協力して、IPマルチキャスト自主放送という新たなビジネスの対価が、それぞれに適切に還元されてゆくような、放送コンテンツの新たな製作・調達方法の具体化に早急に取組むことが必要と考える。例えば、IPマルチキャスト放送において、実演家に新たな出演機会を創出するような、新たな製作・調達を前提とした放送時間枠を設け、そうした製作方法に適した資金調達や、リク-プ手法(SANARI PATENT 注:投資回収手法)を確立するための試行を実施するなど、新たなビジネスモデルの確立に向けた努力が必要である。

2-2 上記情報通信審議会の方向性は、デジタル化・ブロ-ドバンド化に伴う伝送可能コンテンツ容量と質の飛躍的向上による便益が、利用者に対し、可能な限り早期に還元されることが望ましいという視点に立脚している。

3.        文化庁の対応の経過

3-1  前記1-1に対応する文化庁の見解は、同庁著作権課により次のように表明されていた(2006-3-30)。

3-1-1      IPマルチキャスト放送は、著作権法上、自動公衆送信と考えられることから、様々な課題が提起されるに至っている。

3-1-2      平成13年6月に電気通信役務利用放送法が成立し、通信回線を用いた放送が事業として認められたが、その後、放送番組のネットでの利用を求める声が高まると共に、放送を受信できる機能を持つ通信端末が登場するなど、様々な点で通信・放送の融合が進んでいる。

3-1-3      IPマルチキャスト放送は、通信回線を用いた放送サ-ビスであり、通信・放送の融合の観点からもその普及が望まれている。ところが、著作権法上、自動公衆通信と位置付けられ、番組の放送に当たって権利者の許諾を求めるべき範囲が有線放送より広くなっている。そのため関係業界では、通信・放送の融合を進める観点からも、有線放送と同様の扱いを要望している。

3-2   著作権法を200612月に改正し、IPマルチキャスト放送による放送      の同時再送信を円滑に進めるため、実演家およびレコ-ド製作者の送信可能化権を制限し、放送対象地域内における同時再送信に関しては、許諾を要しないこととし、ただし、実演家等への補償金支払いを義務づけた(SANARI PATENT 注:いわゆる報酬請求権化・補償金請求権化)

3-3   本年6月1日に、文化審議会著作権分科会はIPマルチキャスト放送での著作権処理簡便化について、審議を開始した。

4.        SANARI PATENT所見

  内閣知財戦略本部の知財推進計画07は、本件の所管省として総務・文部科学・経済産業の3省名を掲げているが、電気通信・放送、著作権、電子機器、デジタルコンテンツ流通、消費者行政を分掌する3省を総括・牽引する機能の発揮を、内閣知財戦略本部に求めたい。

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2007年9月23日 (日)

U.S. Copyright Act §107 Limitation on Exclusive Rights: Fair Use: わが国著作権法の「公正な利用」との比較(権利制限規定は、例示か限定か)

Classic Opinion of U.S. Supreme Court on Fair Use: フェアユ-ス(公正な利用)該当性の判断基準に関する判例集積

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  わが国で「著作権制限」の見直しが論ぜられる場合に、必ず対比されるのが(そしてまた、必ず対比さるべき規定が)米国著作権法第107条の「フェアユ- スについての著作権制限」規定である。そしてその内容を理解するため必ず引用されるのが、古典的な米国最高裁の「Campbell v. Acuff-Rose Music」事件判決における担当判事意見(1994-3-7)である。

1.        上記意見のSANARI PATENT要約

1-1  Roy Orbison William Deesは、「美しい婦人よ」(Oh, Pretty Woman)というロック民謡を著作して、その著作権をAcuff Rose Musicに譲渡し、Acuff Rose Musicはこの権利を登録した(1964)

1-2  請願人Luther Rらは、ポピュラ・ラップ・ミュ-ジックグル-プと呼ばれ、「美しい婦人」(Pretty Woman)という曲を「美しい婦人よ」(Oh, Pretty Woman)のパロディで作ったので、原作に対する使用料金を支払う意思がる旨をAcuff Rose Musicに申し出た。

1-3  しかし、Acuff Rose Musicはパロディでの使用を許諾できないと答えた.

1-4  約1年後、Acuff Rose Musicはラップ・ミュ-ジックグル-プ側を著作権侵害をもって訴追した。

1-5  地裁は、ラップ・ミュ-ジックグル-プ側の営利目的はフェアユ-ス(公正な利用)の成立を妨げず、これによってAcuff Rose Musicが原作の販売に何らかの悪影響を及ぼしたとは考えられないと判示した。

1-6  控訴裁は、地裁の判示を覆した。その理由は、「地裁は『営利目的の存在はアンフェアを想定させる』という事実をすこぶる軽視している。またこのパロディは質的に、原作の中核的要素を採っている」ということにあった。結論として控訴裁は、「このパロディの露骨な、ずうずうしいく甚だしい商業目的(blatantly commercial purpose)は、このパロディが『フェアユ-ス(公正な利用)』に該当することを阻止する」と述べた。

1-7  最高裁は、次のように考察する。

1-7-1      フェアユ-ス(公正な利用)該当を適切に認めることは、著作権制度の目的達成そのもののために必要である。すなわち、科学や有用な技能、文化作品の進歩を促進する場合に、極めて厳格な意味で全く新たな創作というものはなく、従来技術や従来作品から借用しなければならない要素が存在する。これらを創作の基礎にすることができないとすることは、手錠をかけて創作せよというに等しい。

1-7-2       英国でも、1710年という昔から、文学作品の「公正な要約」(fair abridgments)は、著作権を侵害するものではないと判示されてきた。米国でも同様に判決され、1790年著作権法にフェアユ-ス(公正な利用)条項が明示されるまで、判例法としてフェアユ-ス(公正な利用)の場合の著作権非侵害が認められてきた。

2.        米国のフェアユ-ス(公正な利用)に対するわが国知財専門家の理解:

    多様に理解されている。例えば、

2-1 「著作権者の許諾なくコピ-しても、常識的に考えて誰も(著作権者を含めて)損害を受けていなければ、『侵害』を問題とするいわれはない、という考え方である。」

2-2 「著作権侵害の主張に対する抗弁事由の一つである。米国著作権法第107条の条文通り、『著作権者に無断で著作物を利用しても、その利用がフェアユ-ス(公正な利用)に該当すれば、侵害を構成しない』という法理で、この該当性判断基準については、判例が集積されている。」

2-3 「フェアユ-ス(公正な利用)該当の判断基準について、次のような要素が挙げられてきた。(SANARI PATENT 注:基準表現も多様で、従って、1部重複している)

2-3-1 原作から抜粋した行為の性質・目的(the nature and objects of the selection made)

2-3-2 原作を利用した部分の量とその価値(the quality and value of the materials used)

2-3-3 原作の利益取得機会の減少または原作の著作目的の毀損の程度(the degree in which the use may prejudice the sale, or diminish the profits, or supersede the objects of the original work)

2-3-4  原作を利用した目的と利用行為の性格(the purpose and character of the use, including whether such use is of a commercial nature or is for nonprofit educational purpose)

3.        SANARI PATENT所見

  わが国では、わが国著作権法の権利制限諸条文(引用、私的使用など)に関する判例研究の集積はあるが、フェアユ-ス(公正な利用)の基本原則について、例えば、第1条がこれを定め、権利制限諸条文がそれを例示列挙しているという理念の確立がない。内閣知財戦略本部の本来の機能が、ここに発揮されるべきである。

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2007年9月22日 (土)

Consistent Arguments of Competitive Power Committee (Cabinet IP Headquarters) 内閣・知財依拠競争力強化調査会における事務局説明:GPL、SaaS問題も

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

   平成20年度の知的財産計画策定に向けて、8月末に内閣知財本部の「知的財産による競争力強化専門調査会」が発足したので、先ず、事務局の席上説明を考察する。

  重点推進4分野の知的財産課題の特徴に関する説明(1-6)が注目される。

1.        事務局の説明

1-1  経済財政改革の基本方針2007において「分野別知財戦略を平成19度中に策定する」と明記された。

1-2  そこでこの調査会の所掌は、次の2項目となる。

1-2-1        分野別知財戦略策定

1-2-2        競争力強化の多様な方策

1-3               第3期科学技術基本計画の基本姿勢は、次の2項目である。

1-3-1        社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術

1-3-2        人材育成と競争的環境の重視

1-4 第3期科学技術基本計画の基本理念は、次の3項目である。

1-4-1 飛躍知の発見・発明、限界突破

1-4-2 環境と経済の両立、イノベ-ションの実現

1-4-3 生涯溌剌・安全生活

1-5 重点推進4分野の戦略理念

1-5-1 ライフサイエンス分野の戦略理念は、生命プログラムの再現、研究成果を創薬・新規医療技術に実用化する橋渡しである。

1-5-2 情報通信分野の戦略理念は、継続的イノベ-ションの具現化、革新的ITによる持続的産業発展、国民のIT恩恵実感である。

1-5-3 環境分野の戦略理念は、地球温暖化防止、国際協力でのリ-ダ-シップである。

1-5-4 ナノテク・材料分野の戦略理念は、TrueNano(SANARI PATENT 注:ナノ技術のうち、非連続的産業革新に直結する技術)や革新的材料でなければ解決困難な課題、ナノ領域特有の現象・特性を活かしたイノベ-ションの創出と国際競争力確保への取組である。

1-6 重点推進4分野の知的財産課題の特徴

1-6-1 ライフサイエンス分野

1-6-1-1「1製品1特許」といわれるように、特許1件の価値が高い。

1-6-1-2 わが国における特許出願数を欧米と比較すると、全体としては少ないが、糖鎖工学というような特定分野においては30%程度のシェアを保持するなど、選択と集中を進めてゆけば強さを発揮できる。

1-6-1-3 研究開発費、特に基礎研究費の対売上高比率が、医薬品工業は突出して高い。

1-6-1-4 基礎研究の担い手、出願件数(応用研究)などから見て、わが国は一般企業の比率が高く、米国では大学・ベンチャ-の比率が高い。

1-6-1-5 米国において、最近の新薬承認件数は、ベンチャ-の方が多い。

1-6-1-6 製薬企業の出願件数を国際比較すると、わが国企業は真ん中から下の方に社名が出ており、見劣りする(SANARI PATENT 注:わが国大手製薬会社の合併等の後のデ―タを示すべきである)

1-6-2 情報通信分野

1-6-2-1 「1製品多特許」の分野である。従って、事業展開においてクロスライセンス、パテントプールが大きなウエイトを占め、特に精密機械・電気機械においての比率が高い(SANARI PATENT 注:包括ライセンス契約、包括ライセンス契約の比率が高い)

1-6-2-2 国際標準化において、わが国の貢献度が低い。

1-6-2-3 わが国はハ-ド面で国際競争力を発揮し、デジタル製品のシェアはそれぞれ高いが(SANARI PATENT 注:製品の種別によって高低差が著しい)、これら製品に組み込まれているソフトウェアの比重も年々高くなっている。

1-6-2-4 米国のソフトウェア企業は、デスクトップの分野では独占的OS(SANARI PATENT 注:Operating System)を供給している現象もsるが、サ-バ-部門ではオ-プンソ-スのシェアが高まっている。

16-2-5 GPLバ-ジョン3(SANARI PATENT 注:General Public LicenseVirsion3Free Software Foundation決定したことに伴って、Linuxをデジタル家電に使用する家電メ―カに権利関係の懸念が発生している)SaaS(SANARI PATENT 注:Software as a Service: インタ-ネットによるサ-ビスとしてソフトウェアを提供する形態)などの新たな課題が出現している。

1-6-3 環境分野

1-6-3-1 各国を比較すると、わが国は環境関係の特許出願数が多いが、対米国出願の比率が、他の3分野に比べて低い。

1-6-3-2 わが国の環境技術の優位性発揮の方策が課題である。

1-6-4 ナノテクノロジ-・材料分野

1-6-4-1 トップクラスの基礎研究の成果を実用するため、技術移転の促進が必要である。

1-6-4-2 用途開発し、用途に関する知財権を確保することが必要である。(SANARI PATENT 注:用途発明特許の審査基準の問題と解する。)

1-6-4-3 共同研究による知財権の在り方を整理すべきである。

2.SANARI PATENT所見

  特許審査基準の分野別規定が、生物関係、ソフトウェア関係について設けられているが、その深耕と、他分野についての規定設定が望まれる。

2007年9月21日 (金)

Functional Product-Designs: Promoting the Creation of Attractive Designs:インダストリアルデザインとプロダクトデザイン:SANARI PATENTは「視覚」限定撤廃を提案

Comparison to USA Patents for Designs: わが国の定義規定は詳細、ケ―タイへの対応

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  「デザイン」は、内閣知財戦略本部・知財推進計画の「コンテンツを活かした文化創造国家づくり」の章に、ファッションやブランドのパ-トナ-として頻繁に登場するが、「意匠」の語は、コンテンツの章にも他の章にも現れていない。法律用語としては同義であるが、「物品」とか「工業上利用」とかいう「意匠の定義」が、デジタル動画面や嗜好趣味文化のファッションの視覚的美感のアイデンティティを保護する権利の名称として、先端的印象が希薄だからと推測される。

  意匠法の「工業上利用可能性」の限定から、インダストリアルデザインという語が慣用されてきたが、ニフティ検索の「瞬!コレ」(2007-9-19-11)には、「プロダクトデザインは製品のデザインのことで、しばしばインダストリアルデザイン(工業デザイン)と混同されるが、プロダクトという言葉自体が工業生産物や製品のみならず、広義においては、ある計画によって生み出された成果(製作物)全体を意味する概念語であるから、「プロダクトデザイン」が本質的により包括的な言葉である」と解説しており、内閣知財戦略本部の「デザイン」の包括性にはこの定義が適合する。すなわち、意匠法の「意匠」より広い概念が「プロダクトデザイン」ということになる。

  情報通信業界でその業歴から、グロ-バルな文化考究の蓄積に富むKDDIは、「プロダクトデザイン」についてもグロ-バルな論考を公表しているので、先ずこれを要約する。

1.        KDDIの「機能美の先を志向するプロダクトデザイン」要旨

1-1  消費者の関心が、「必要」から「欲しい」に移り、新たな価値や意味をデザインに求める動きが広がっている。それは外観美に加えて、それを所有し使いこなすことで心を満たすことを求める。

1-2  その例として、KDDIとケンウッドが共同開発した音楽プレイヤ-「ミュ-ロ」は、自律移動ができる高性能ロボットであるが、人に寄り添うためにル-トを選択して音楽を再生するもので、先端技術と共に、機能としても、見た目でも、人懐かしこさがデザインされている。

1-3  東芝メディカルシステムズのMRI(SANARI PATENT 注:磁気共鳴画像:Magnetic Resonance Imaging)も、形状・彩色が患者の心理に優しいデザインである。

1-4  KDDIのケ―タイ3機種が昨年、ニュ-ヨ-ク近代美術館の「MoMA永久収蔵コレクション」に採択されたが、メディア機能美がプロダクトデザインとして評価された証左である。(SANARI PATENT 注:MoMAコレクションは、モダンア-トを評価して収納・展示するもので、現在約3000点。MoMAは、The Museum of Modern Art)

2.        米国特許法第16章「デザイン」とわが国意匠法との対比

2-1        米国特許法で「デザインに対する特許」(Patents for Designs)は、「製造品について新規に独創して装飾デザインを発明した者(Whoever invents any new, original, and ornamental design for an article of manufacture)に対して付与される。

2-2        わが国の意匠法および審査基準は、意匠の定義等を次のように定めている。

2-2-1 物品(物品の部分を含む)の形状・模様・色彩またはこれらの結合で、視覚による美感((SANARI PATENT 注:微細でなく、肉眼で認識し感受できる美感で、聴覚等の美感を除く)を起させるもの

2-2-2 上記には、その物品が機能を発揮できる状態にするために行われる物品の操作の用に供される画像であって、その物品またはそれと一体として用いられる物品に表示されるものを含む。

2-2-3 上記の美感は、美術品のように高尚な美を要求するものではなく、何らかの美感を起こせば足りる。 

2-2-3 機能・作用効果を主目的とし、美感をほとんど起こさせないものは、「視覚を通じて美感を起こすものと認められない。

3.        SANARI PATENT所見と提案

3-1  デザインは、グロ-バルに美的価値が認められることで国際競争力の担い手となり得るが、デザイン特許が諸国で付与されるためには、デザインの新規性・創作性が美感を起こさせるという判断が必要であり、国民性・民族性による美感の相異の平準化が一つの課題である。例えば、画面の白地が多く残されていることは、余韻の美と感ずる民族もあり、また、砂漠の空白の恐怖から、好まない民族もある。

3-2  美感は、視覚のみならず、聴覚・触覚・嗅覚等の諸感覚とそれらの総合感覚でもあるし、現に、デザイン(意匠ではなく)はこの「総合」美感を追求している(それが国際競争力の決め手である)。意匠法をデザイン法と改め、デザインの全領域の保護を図るべきである。(なお「視覚」についても、現在の審査基準は肉眼美感と限定して微粒子等を排除し、ケ―タイ等の画面拡大が随意な方向性に即応していない。実は、この「肉眼」という用語自体を曖昧に使用している。)

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2007年9月20日 (木)

List of Industrially Inapplicable Inventions:「人間を手術、治療または診断する方法」該当性の審査基準:米国特許審査基準(MPEP)にない規定

Methods for Treatment of the Human Body by Surgery or Therapy and Diagnostic Methods Practiced on the Human Body: 来年度内閣知財戦略本部計画の注目点

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        米国特許法の「PATENTABILITY」(特許性)とわが国特許法の対比:

1-1  米国特許法(USA Patent Law)の第10章「発明の特許性」(Patentability of Inventions)は、発明の定義、特許性ある発明、特許要件、外国でなされた発明、宇宙空間における発明の5条で構成され、わが国特許法と体系を異にしているが、実質的には極めて近似していると解される。そのように解することが、日米特許侵害結果の相互承認という、現に着々と進行しつつある両国合意の特許権政策の基盤をなしている。

1-2  しかし、上記1-1の「近似」は「同一」ではないから、「近似していない要素」に重要な政策事項が存在する。これを検討するためには先ず、わが国特許法の特許要件規定の構成を、米国のそれと、改めて対比する必要がある。

2.「発明の定義」の対比

2-1 米国: 「発明」とは、「発明または発見」をいう。(The Term “Invention” means Invention or Discovery.)

2-2 わが国:「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、高度のもの」をいう。

3.「特許の要件」条文の対比(SANARI PATENT要約)

3-1 米国: 特許性ある発明(Inventions Patentable)とは、「新規で有用なプロセス、機械、製品、組成物、またはそれらの新規で有用な改良の発明または発見」である。(Inventions or Discoveries of any New and Useful Process, Machine, Manufacture, or Composition of Matter, or any New and Useful Improvement thereof)

3-2 わが国: 産業上利用することができる発明をした者は、その発明に新規性・進歩性がある場合には、その発明について特許を受けることができる。

3-3 対比の重要性: わが国には「産業上」という限定があり、米国の「有用性」の分野無限定と異なる。これが「医療関係」について決定的役割を果たしている(後述)。

4.わが国特許審査基準における「産業上利用可能性」

4-1 「産業上利用することができる発明」に該当しないもの」の類型

  「産業上利用することができる」を「産業上利用可能性」と簡略できるが、わが国の特許審査基準は、「産業上利用することができる発明に該当しないもの」を定めて、これに該当しなければ産業上利用可能性を認めるという構成を採っている。

   この「産業上利用することができる発明に該当しないもの」を、「非産業上利用可能性」と略称すれば、すこぶる誤解され易いし、「産業上利用不可能性」と略称しても誤解を生む。「産業上非利用可能性」と略称するほかないと考える。特許分野の特殊用語となるが、多用される「当事者」も、特許分野の特殊用語である。

4-2  わが国特許審査基準における「産業上非利用可能発明」の類型の第1に、現在挙げられているのが、「人間を手術、治療または診断する方法」である。「現在」と限定したのは、この項の改正によって、医療関係のものの特許性の範囲が拡大されてきたからである。

4-3  上記4-2の「人間を手術、治療または診断する方法」(Methods for Treatment of the Human Body by Surgery or Therapy and Diagnostic Methods Practiced on the Human Body)は、審査基準で次のように規定されている(SANARI PATENT要約・補筆)。

4-3-1 人間を手術、治療または診断する方法は、通常、医師が人間に対して手術、治療または診断を実施する方法であって、いわゆる「医療行為」と言われているものである。

4-3-2 医療機器、医薬自体は、物であり、人間を手術、治療または診断する方法に含まれない。

4-3-3 医療機器の作動方法は、医療機器自体に備わる機能を方法として表現したものであり、人間を手術、治療または診断する方法に該当しない。ここでいう医療機器の作動方法には、医療機器内部の制御方法に限らず、医療機器自体に備わる機能的・システム的な作動、例えば、操作信号に従った切開手段の移動や開閉作動、あるいは、放射線、電磁波、音波等の発信や受信が含まれる。医師が機器を操作する行為や、機器による切開など人体に対する作用を含む方法は、医療行為に該当し、特許性を欠く(産業上非利用可能性該当)。

4-3-4 人間から採取した血液、細胞、組織などを処理する方法、またはこれを分析してデ―タ収集する行為は、人間を手術、治療または診断する方法に該当しない。ただし、採取したものを、採取した者と同一人に治療のために戻すことを前提にして、採取したものを処理する方法、例えば、血液透析)は、人間を手術、治療または診断する方法に該当する。(SANARI PATENT 注:「採取した者と同一人」という表現は、「その者」で済むと考えるが、一応ここでは原文のままとした。)

4-3-5 人間から採取したものを原材料として、医薬品・医療材料を製造するための方法は、採取した人間に、治療のため戻す場合でも、人間を手術、治療または診断する方法に該当しない(特許性がある)。(SANARI PATENT 注:4-3-4の腎臓病透析と、この項の培養皮膚シ-トを比べると、中間介在産業の有無が決定要素になっている。)

4-3-6 手術、治療または診断する方法の対象が動物一般であっても、人間が対象に含まれないことが明らかでなければ、特許性を認めない。(SANARI PATENT 注:子供の数よりペット数が多くなったわが国の現状で、必要な定めであるが、欧州特許法における動物の取扱いについては、別途考察を要する)

5.SANARI PATENT所見

   上記のわが国審査基準に、どのような変更を加えるのか加えないのか、来年度知財計画の問題点である。

2007年9月19日 (水)

Inventions Relating To Recombinant DNA:: 米国特許商標庁の特許審査基準における政策配慮

USPTO Manual of Patent Examining Procedure Refers to NIH: 遺伝子工学の成果に対する安全性認識浸透の必要性

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  平成20年度の知的財産政策は、ライフサイエンスを筆頭に掲げて重点4分野の分野別競争力強化を計画することとしているが、例えば、「DNAとゲノムと遺伝子」の明確な定義から出発するのか、内閣知財戦略本部の従来からの流儀では、認識の一致を確認することはなく、検討が進められると予想される。

1.        分野別政策の計画方式(法ではなく、審査基準):

1-1  特許権の機能が分野ごとに異なる態様で作用し、イノベ-ション起動の在り方も多様であることは、共通の認識であるが、特許制度を分野別に定立することは、特許制度全体の統一性を保持する見地から、想定されていない。従来立法されたプログラム著作権、半導体集積回路配置権、種苗育成者権などは、創作権の特殊分野としても理解可能であるが、「新特許権」ともいうべき地位にある。

1-2  そこで分野別計画の策定方式は、特許審査基準の分野別規定の新設ないし拡充によることとなる。

2.        米国特許商標庁の特許審査基準におけるDNA:

  USPTOMPEP( Manual Of Patent Examining Procedure)は、「組換えDNAに関連する発明」(Invention Relating To Recombinant DNA)について次のように述べている。

  「近年、組換えDNAを含む革新的な遺伝子研究が展開され、組換えDNA研究は、人類に巨大な利益をもたらす潜在力を有すると見られている。例えば、この分野の研究は、癌や遺伝子疾患の制御ないし治療の道を拓いてゆく可能性がある。

  遺伝子技術は更に、農工業生産に活用されてゆく可能性がある。従って、そのインパクトは、核分裂・核融合にも比肩するとされている。

  同時に、このタイプの研究にはその安全性についての懸念も表明されてきた。

  米国国立衛生院(US National Institute of HealthNIH)は、 組換えDNAの研究実施についてガイドラインを公表し、障害発生の可能性と、これに対する安全性確保の行動を定めるべく主導している。

  組換えDNA技術の絶大な重要性(Exceptional importance)と、この分野の迅速な開発・展開が示されることへの願望にかんがみ、米国特許商標庁は、組換えDNA分野の研究の安全性に関連する特許出願に対し、特段の配意を行う(USPTO will accord special status to patent application relating to safety of research in the field of Recombinant DNA)。」

3.        第3期科学技術基本計画の認識:

  組換えDNA分野 (SANARI PATENT 注:同計画では「遺伝子組換え分野」と呼称)のイノベ-ション機能を積極的に高く評価z、次のように述べている。

  「新たなライフサイエンス研究の成果を円滑に実用化する上で、国民の理解を得ることは重要である。わが国では、例えば遺伝子組換え作物については、一部の自治体において栽培の規制を設ける動きがあり、遺伝子組換え作物がもたらす、厳しい条件下での良好な生育や施肥量の軽減などの便益が実感されるに至っていない。国民の理解を得るためには、リスク管理や安全性審査などの情報開示、便益や安全性に関する科学的根拠の十分な説明を行うなどの取組を進め、国民の中に安全性やリスク・便益両面に対する正しい認識的、技術に対する安心感をひろげてゆく必要がある。」

4.        わが国の特許審査基準における{生物関連発明}:

4-1 遺伝子工学の節を設け、この分野に特有な判断・取扱が必要な事項を説明している。ここでの「遺伝子工学」とは、遺伝子組換え・細胞融合等により人為的に遺伝子を操作する技術である。(SANARI PATENT 注:遺伝子組換えと共に、細胞融合を併記したことは、米国特許審査基準よりも進んでいる。)

4-2 特許請求の範囲について、「遺伝子は、塩基配列により特定して記載することができること」、「構造遺伝子は、その遺伝子によってコ-ドされたタンパク質のアミノ酸配列により特定して記載することができること」などを明示している。

4-3 実施可能要件について、物の発明については、「実際に取得された遺伝子、および、これに対し著しく相同性が低い遺伝子を含み、かつ機能により特定されている請求項において、著しく相同性が低い遺伝子の中に、実際に取得された遺伝子と同一の機能を有しない遺伝子が多数含まれることとなる場合には、それらの遺伝子の中から、取得された遺伝子と同一の機能を有するものを選択するためには、通常、当業者に期待うる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要があるので、当業者がその物を作ることができるように、発明の詳細な説明が記載されていなければならない」などと例示している。

5.        SANARI PATENT所見

   米国特許商標庁の特許審査基準のように、イノベ-ション目的、他政府機関との関連、特段の特許行政措置に至るまで、わが国の特許審査基準において言及することには、体系の純粋保持のため、SANARI PATENTとしては反対する。しかし、出願者の便益のために、審査基準のうちに注記する程度の配慮は、分野別政策指向の路線に即すると考える。

2007年9月18日 (火)

IP Strategies for Fusion Fields such as Micro Electro Mechanical Systems should also be discussed: 一橋大学・長岡貞男教授の意見の考察

Encouraging High-Tech Start-Up Venture: 内閣知財戦略本部「知的財産による競争力強化専門調査会」委員としての長岡貞男教授の意見

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1、        一橋大学イノベ-ション研究センタ-長・長岡貞男教授の意見(2007-8-30)SANARI PATENT要約)

1-1  高レベル発明に広い権利付与が必要:

先端分野での国際競争力を確保するには、知的財産権制度により、フロンティア型の研究開発を促すことが必要であるが、このためには、高レベルあるいはパイオニア的発明に対して、より広い権利を与えることが重要である。

このような権利付与の対象となり得る知財創出の研究戦略と、特許戦略との、総合的検討が重要である。

1-2  分野別領域と分野融合領域の両面の検討が必要:

   技術分野ごとに、技術革新の特性、知的財産権の取得目的、知的財産権が研究開発投資回収に果たす役割等が異なるから、各分野固有の課題を検討する必要がある。(SANARI PATENT 注:USPTO/Manual of Patent Examining Procedureにも、例えば、Inventions Relating To Recombinant DNAの節を設けている。)

   一方、これら課題を解決するアプロ-チは、知的財産権制度全般の基本原則と整合的であることが重要である。(SANARI PATENT 注:ここで長岡貞男教授が具体的にどのような整合を問題としているのかは示されていないが、現に例えば、特許権制度対象の各分野と、著作権対象の各分野との間に基本原則の不整合が見られ、知的財産権制度と他の制度との整合と共に、内閣知財戦略本部の課題とすべきである)

1-3  先端分野では、産学連携が重要であり、また、イノベ-ションの担い手としてベンチャ-企業(ハイテク・スタ-トアップ企業)あるいは異分野からの新規参入企業が重要になることも多い。

 従って、産学間・異業種企業間のライセンス、受託研究・共同研究、スタ-トアップ企業・新規参入企業の資金調達・事業展開などを効果的に支援する観点からの知的財産権の在り方の検討も重要である。

1-4 早期解決が困難な問題も想定されるが、長期的観点からの検討により解決の糸口を作ることも重要である。(SANARI PATENT 注:この専門調査会の課題は、「分野別の知財戦略の策定」と「国際的展開を中心とした競争力強化に向けた方策」であり、長岡貞男教授が指摘する1-4は、この後者の 課題に対応すると考える)

2.SANARI PATENT所見

2-1 内閣知財戦略本部の方向性の問題点

   内閣知財戦略本部が4重要点分野の個別的観点のみを強調していることは、次のような科学技術基本計画の記述から考えても、欠落のおそれがあり、長岡貞男教授の1-2意見が分野別と同列に検討されるべきである。具体的には、知財推進計画08においては、分野別計画の章と、融合・境界領域計画の章とが併置されるべきである。

  「急速な新知識の蓄積や新知識の獲得によって、異分野技術の融合や、新たな技術領域が現れることを踏まえ、ライフサイエンス、情報通信、ナノテクノロジ-・材料、エネルギ-等にまたがる分野、境界分野、標準化・知的基盤整備等について、機動性・柔軟性をもって研究開発を推進するものとする。例えば、半導体プロセスやマイクロマシン・センサ技術の融合領域であるMEMS技術(SANARI PATENT 注:半導体基板上に電子回路と機械要素を集積化した融合デバイス)や、微細加工技術、材料構造制御技術、計測・分析技術等の融合領域」であるバイオインフォマティクス、エネルギ-変換技術と材料技術の融合領域である燃料電池技術等の各種融合分野や、今後出現が予想される新たな技術領域・境界分野における研究開発や、産業技術・エネルギ-技術全般に係る標準化・知的基盤整備等に資するような所要の活動を行う。」

2-2  長岡貞男教授の意見1-3および1-4については、この委員会は「国際競争力強化」を目的とするから、「国際競争力」の要素について、「知的財産開発およびその活用のイノベ-ション直結性」と「コスト競争力」が明確に意識されるべきであると考える。

2007年9月17日 (月)

Aggregation vs. Combination: 「単なる寄せ集め」か「結合」かの知財高裁判決: 「相乗的で予想外の効果を奏する発明」と認め得るか否か

Patentability of NUT Invention: 知財高裁は、「従来技術1と従来技術2の『寄せ集め』で進歩性要件を満たさない」として、特許性を否定

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  先般の中華航空機の事故で、機体のナット、ボルト、ワッシャ不備の恐怖がグロ-バルに流布したが、その緩み防止に関連する技術向上の必要を想起させる判決である。

  ノイマイア- テクオフ ホ-ルディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング(以下「ノイマイア-」)は、発明「ナット」について特許出願したが、拒絶査定(2003-3-31)されたので、不服審判を請求した。特許庁は「この請求は成り立たない」と審決(2006-6-6)したので、ノイマイア-は知財高裁に審決取消請求し、知財高裁はこの請求を棄却した(2007-8-10)

  審決および判決の理由は要するに、従来技術からの容易想到性によって特許性を否定したものであるが、ここには、「単なる寄せ集め」か「結合」かについての、知財高裁判断を具体的に考察する。

1.「単なる寄せ集め」か「結合」か:

1-1 機械・電気の分野に限定して考えると、この分野の進歩は、複数の従来技術の新たな組合せによることが極めて多いから、全ての組合せに新規性・進歩性を否定すれば、特許制度は成立たない。

1-2 当業者の判断を基準として、「単なる」寄せ集め(aggregation)、すなわち、想到容易な組合せで、寄せ集めにより格別の作用・効果が認められない場合には、「単なる寄せ集め」として、新規性・進歩性が否定される。

  これに対し、「単なる寄せ集め」ではなく、複数の従来技術の結び合せが当業者にとって想到非容易であり、結び合せによる相乗効果等の特別な効果が認められる場合(combination)には、新規性・進歩性が肯定される。

2.今次知財高裁判決の要旨:

2-1 刊行物1記載の従来技術Aと刊行物2記載の従来技術Bとの寄せ集めについて:

2-1-1 ノイマイア-は、本願発明のナットは、「加圧ワッシャと締め付け区域とによって、ボルトの伸長を後調節してナットの緩みを防止すること」も、「ナットの回転防止作用によりナットの脱落を防止すること」も可能であり、さらに、「軸受が、緩んだナットによって損傷を受けることがないので、軸受けの保護も得られこと」を挙げて、このような効果は、「従来技術から予測困難」であり、かつ、「顕著な効果がある」と主張する。

2-1-2 しかし、刊行物Bに記載されたナットは、接触面が凹面状の加圧ワッシャ-を備えているから、2-1-1と同じ効果を奏する。(SANARI PATENT 注:ボルトの伸長の後調節によるナット緩みの防止は、「加圧ワッシャの具備」によるもので、その具備の有無が判断要素である)

2-1-3 また刊行物Aのナットは、締め付け部を供えているから、2-1-1と同じ効果を奏する。(SANARI PATENT 注:ナットの回動防止作用によるナットの脱落阻止は、「締め付け部の具備」によるもので、その具備の有無が判断要素である)

2-1-4 「軸受保護の効果」は、2-1-2および2-1-3の「従来技術の効果」により導出されるものである。

2-1-5 上記の判断によれば、ノイマイア-の、「本願発明の構成を備えることにより、従来知られていた効果を併せたものとは異なる、相乗的で予想外の効果を奏する」という主張は失当である。(SANARI PATENT 注:本願発明は、刊行物Aの「締め付け部・具備技術1」と、刊行物Bの「加圧ワッシャ具備・技術2」の寄せ集めであると判断している)

2-2 その他の争点について;

2-2-1 「金属の加工方法として、塑性変形加工の方法があること」、「溝付きナットの製造法として、切削加工、圧造成形が存在し、その選択が生産性の観点からなされること」は技術常識であったことを併せ考えると、刊行物Cの塑性変形加工方法を刊行物Bのナット締め付け部の製造方法として適用することは、想到容易であった。

2-2-2 刊行物に記載された実施例のみに当該技術の適用対象が限定されていない場合、その実施例は、容易想到性に対する阻害要因とはならない。(SANARI PATENT 注:刊行物Cに記載された溝付ナットの製造方法を、刊行物Bのナット製造に適用することを阻害しない)

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2007年9月16日 (日)

Efforts to Create Culture with the Use of Content;: 米国著作権法107条フェアユ-ス(公正な利用)とわが国著作権法第5款・著作権の制限の対比

Encouraging and Supporting Efforts to Use Content without Anxiety:: わが国著作権法第1条をフェアユ-ス(公正な利用)原則規定と解する意見

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  昨週末までに、情報通信のイノベ-ションについて総務省に着信したパブリックコメントが、今週から集約・検討されるが、その核心は、デジタルコンテンツの流通をめぐる著作物のフェアユ-スの問題の一局面であると換言できる。この視点から内閣知財戦略本部の知財推進計画08の行方を展望する。

1.        内閣知財戦略本部・知財推進計画における著作権関係計画の分散:

  著作権は特許権と共に、知的財産権のうち創作権(識別権に対する)の中核であるが、取引財・文化財の両性格の併有、コンテンツのデジタル化による表現・変形の多様化という、他の知的財産権に見ない特徴を刻々と現出かつ変容しつつある。

  従って、内閣知財戦略本部・知財推進計画07の著作権関係計画が、諸項目中に分散していることもやむを得ないと理解されるが、実は、その統合にこそ、内閣に設置された本部の機能が発揮されるべきであろう。

  先ず、知財推進計画07の記載順に、計画項目を列挙する。

1-1 「イノベ-ション実現のための知的財産の戦略的取得・活用を促進する」(SANARI PATENT 注:研究開発関係著作権の権利処理について明示していない)

1-2 「大学等の知的財産活動に係る情報交換を促進する」(SANARI PATENT 注:産学連携による著作権留保情報の権利処理について明示していない)

1-3 「特許・論文情報統合検索システムを整備する」(SANARI PATENT 注:検索システムにおける著作権処理全般の問題および検索結果引用における著作権処理について明示していない) 

1-4 「知的財産の円滑・公正な活用を促進する」(SANARI PATENT 注:「公正な活用」が、著作権法第1条の「公正な利用」と同義か、について明示していない)

1-5 「不当な権利行使を取り締まる。」(SANARI PATENT 注:「知的財産権の濫用」現象に著作権関係が含まれるか、について明示していない)

1-6 「ソフトウェア分野における知的財産活用の円滑化を図る」(SANARI PATENT 注:プログラム著作権について明示していない)

1-7 「知的財産活用の事業化を支援する」(SANARI PATENT 注:「著作権活用」について著作権処理を明示していない)

1-8 「デジタルコンテンツの流通を促進する法制度を整備する。」(SANARI PATENT 注:「コンテンツビジネスのスキ-ムを支える著作権制度を作る」という項目の下位項目)

1-9 IPマルチキャスト方式による自主放送について、著作権法上の取扱を明確化する。」

1-10            「違法複製されたコンテンツの個人による複製について、個人の著作物の利用を過度に萎縮させることがないよう留意しながら検討する。」

1-11            「権利者不明の場合におけるコンテンツの流通を促進する。」

1-12            「著作権利者と公共の利益に留意した権利制限規定を整備する。」(SANARI PATENT 注:聴覚障害者、医薬文献、e-ラ-ニング等関係)

1-13            「権利の集中管理を進める。」(SANARI PATENT 注:ただし、内閣知財戦略本部あてパブリックコメントでは、音楽著作権の現行集中管理について、官僚の天下り高額報酬を含めて、非難意見が非常に多い)

1-14            「利用とのバランスに留意しつつ適正な保護を行う国内制度を整備する。」(SANARI PATENT 注:上記と重複の観がある)

1-15            「国際的な著作権制度の調和を推進する。」(SANARI PATENT 注:米国著作権法107条のフェアユ-ス(公正な利用)について明示していない)

1-16            「一般ユ-ザ-がコンテンツを利用する環境を整備する。」(SANARI PATENT 注:上記1-13のパブコメで、一般の不満が非常に多い)

1-17            「インタ-ネット上のコンテンツの新たな創作・発信を促すため、著作権に関するル―ルを整備する。」

1-18            「安心してコンテンツを利用するための取組を奨励・支援する。」

2.        SANARI PATENT所見

2-1  著作権法の第1条(目的)に明示されているように、「著作物等の文化的所産の『公正な利用に留意』しつつ、著作権者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与すること」を全ての政策の理念として具体化すべきである。 

2-2  米国著作権107条具体的フェアユ-ス(公正な利用)を規定しているにに、わが国著作権法がこれを規定していないと解するのではなく、わが国著作権法の第30条から第49条に至る権利制限規定は「例示規定」であり、第1条のフェアユ-ス(公正な利用)規定が明示されていると解すべきである。

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2007年9月15日 (土)

Various Impacts of Patent on Various Industry Fields: 知財制度のイノベ-ション起動機能は分野別に相異

Competitive Power Committee of Cabinet:分野別政策の必要理由について理解の共有と、検証資料の整備

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        内閣知財戦略本部「知的財産による競争力強化専門委員会」始動(2007-8-30)に際しての渡部俊也教授の意見の考察

1-1  上記委員会委員として、渡部俊也・東大先端科学研究センタ-教授は、同委員会始動に際しての意見を、次のように述べている。(SANARI PATENT要約)

1-1-1        委員会の最初のテ-マとして「分野別の知財戦略策定」が採択された。知財制度を分野別に制定することは困難であるのに、分野別に知財戦略を検討する必要性を先ず確認する。

1-1-1-1  第1に、科学技術政策を検証することである。

科学基本計画に基づき、1995年来、重点4分野に投下された巨額投資を、知的財産として国の競争力に結びつけるべき段階にあるが、分野別にその検証が十分にできているのか、現状を検証して戦略を構築する必要がある。

1-1-1-2            第2に、同一の知財制度の影響、特にイノベ-ション誘発に対する影響が、分野別に異なることである。

1-1-1-3            第3に、産業界の実務者にとっては、技術分野により知財戦略の態様が異なることが常識であり、その相異現象がライフサイエンス分野で先ず顕著に現れている。

1-1-1-4            第4に、従来策定だれた知的財産政策も、特定分野についてより重要な施策であるものが見受けられ、提案時には特定分野の事例を標的として政策が形成された場合がある。これを逆に考察すれば、特定分野に対する知財政策効果は、他分野に対しては同一効果を及ぼさない。

1-1-1-5            第5に、ナノテク・材料分野についても、創造・保護・活用の各領域について、分野の知的財産戦略特性を検討すべき内容がある。

1-1-1-6            第6に、知財専門家が、分野別知財戦略検討の目的、知的財産制度の作用の分野別メカニズムの理解を共有して検討することが望まれる。

1-1-2       分野別知財戦略を策定するための基礎的情報の不足を補完取得する必要がある。例えば、ナノテク・材料分野では、機能クレ-ム、パラメ-タ・クレ-ム、用途発明などで保護を試みるケ-スが他分野より多いと考えるが、その頻度等、定量的デ―タが見当たらない。

1-1-3       知財事件裁判における専門委員制度の、効果的な維持・充実の施策を考えるべきである。

1-2  上記1-1-1-2に関しては、渡部俊也教授は、文献例について次のようにその内容を紹介している。

1-2-1      特許クレ-ムの広さが産業の発達に与える影響が技術分野により異なる理由として、技術革新のパタ-ンが分野ごとに異なることが挙げられる。

1-2-2      例えば、機械産業や半導体など重畳的に発達する技術分野と、化学の物質発明のように非連続な発達が見られる分野では、広すぎる特許クレ-ムが、後続発明促進の競争を阻害する可能性が高い。

1-2-3      発明からのリタ-ンの大きさ、発明の価値、後続研究開発投資について、分野別の相異が見られる。

1-2-4      知財制度が産業の発達に及ぼす影響は、分野別に程度が異なることが実証され、その結果、特許権のイノベ-ションへのインパクトが大きい分野では独占的排他権を最大限活用するビジネスモデルが多く利用され、逆にインパクトが小さい分野では、パテントプ-ルやクロスライセンスなどの知財の集合的利用が頻繁に利用される。

2.        渡部俊也教授の委員会冒頭意見についてのSANARI PATENT考察:

2-1  わが国経済の高度成長時期に、中小企業業種別振興法が制定されて、業種一律規定の既存中小企業諸制度に分野別深耕を加えた歴史があるが、特許法の体系では、特許審査基準による分野別対応が、ある程度、なされてきた。その効果や限界が検討されることが望まれる。例えば、ビジネスモデル発明やプログラム発明については、「自然の法則利用」の特異性に関して審査基準により措置され、進歩性判断の寛厳の在り方がイノベ-ション政策上の当面の課題になっている.また、医療分野については、「産業上利用可能性」の特許要件適用を審査基準で変更してきた。これらの措置の効果についても、検証・検討されることが望まれる。

2-2  分野別と共に、分野間の境界および融合領域に知財開発の契機があるので、境界の開発、融合の触媒に資する知財戦略について、検証・検討されることが望まれる。

2-3  上記1-2-4の「インパクトが小さい分野」という評価については、包括クロスライセンス契約が一般的な情報機器分野を考えると、当該業界(例えば、キャノン)のイノベ-ション機能から見て、不適切と考える。

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2007年9月14日 (金)

Public Comments on 21st Century’s Internet Digital Contents: 本日が、総務省へのパブリックコメント提出期限:SANARI PATENTの提出意見

Information Communication Technology Policy Faces Multilateral Problems

インタ-ネット政策の在り方、地上デジタル放送の活用等

 弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        総務省の提示案

1-1  総務省は、「デジタル・コンテンツの流通の促進に向けて: 21世紀におけるインタ-ネット政策の在り方」について、本日(2007-9-14)期限で意見を公募したが、政策案については次の各資料に述べている。

1-1-1      情報通信審議会の「21世紀におけるインタ-ネット政策の在り方」第4次答申(2007-8-2)

1-1-2      上記の第3次に至る中間答申、および、「地上デジタル放送のの今後の利活用の在り方等について」中間答申

1-2 上記1-1-1は、171ペ-ジに及ぶ答申であるが、「中間」の域を出ず、さればといって、事態の進展に即応して当面解決すべき課題については措置を決定することを要し、「思案と決断」の混成した内容であると、SANARI PATENTは考える。すなわち、

1-2-1 第1章「デジタル放送におけるコピ-制御の在り方」は、コピ-回数を10回とする方向性を決断していると解する。(SANARI PATENT 注:現在普及しつつあるデジタル・アナログ両用TV受信機、例えば、日立製作所のWOOシリ-ズでは、内蔵HDDの記憶容量の著増が、消費者不満を緩和していると考える。しかし、「アナログ放送で実現できていたことは、地上デジタル放送においても実現されるべきではないか」という論点は残存する)

1-2-2 第2章「コンテンツ取引市場の形成と、取引の活性化に向けた具体策の在り方」は、「わが国できるコンテンツ市場の現状と課題」、「検討の経緯」に分節されているが、第3節の「提言」は、基本的な考え方の整理と共に、具体策として4つの選択肢を示すにとどまり、1-2の「思案」段階にあると考える。(SANARI PATENT 注:文部科学省所管の著作権法改正と表裏の関係にあるから、総務省ないし情報通信審議会単独では方向性の「決断」はできない)

2.        SANARI PATENT意見の対総務省提出

  上記の事業からSANARI PATENTは、コピ-回数問題に限定して、下記意見を総務省に送信した。

総務省情報通信政策局情報通信政策課コンテンツ流通促進室

情報通信審議会「デジタル・コンテンツの流通の検討委員会」事務局あて

「デジタル・コンテンツの流通の促進に向けて」に対する意見

意見対象:  「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」第4次中間答申45ペ-ジ

意見: 「議論の経緯」として、「現行の、いわゆる『コピ-ワンス』については、その導入プロセスに権利者、消費者いずれの参加も得ておらず、その必要性・合理性について、権利者、消費者の十分な理解が得られていないという指摘がある」と述べておられますが、「具体的なコピ-回数制限の在り方」について、47ペ-ジ記載の「コピ-許容回数10回」とする案を「当面の改善策」として適切と考えますので、この案の早期確定に関する権利者、消費者の十分な理解を得る措置を、緊急に講じていただきたいと考えます。

理由: 1.コピ-制御を含めてデジタル放送におけるコンテンツ保護方式は、「放送運用規定」で規定されていますが、その策定は、放送事業者と受信機メ―カで構成している社団法人デジタル放送推進協議会と、放送事業者・通信事業者・受信機メ―カで構成している社団法人電波産業会が行っています。このような、権利者・消費者不参加の仕組みそのものが、周知されていないと考えますが、現行の仕組みに権利者・消費者の参加を加えることが、コピ-制御を含めて、デジタルコンテンツの流通円滑化に関する国民全体の合意を形成するため、必須と考えます。

2.地上デジタル放送への全面移行を2011年に実現するためには、諸般の「基本的考え方」の相違を調整する時間的余裕が乏しいことを率直に認め合い、「当面の改善策」として「コピ-許容回数10回」とする案を、権利者・消費者参加のもとで理解し合意したと納得できる措置が望まれます。

2007年9月13日 (木)

Age of Mega Brand:USDA ORGANIC & ORGANIC GUILD Japan: 日本における民間発の有機グル-プ・ブランド

Multi BrandCo-BrandGuild BrandAuthorized Mark Brand: ブランド構築の新たな展開と多様性: 企業発多目的の重要性

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  ブランド戦略の大規模化・多様化・高度化・複合化を、テレビ東京のWBS(2007-9-7)が放映した。内閣知財戦略本部の知財推進計画07は、外国市場でのブランド防衛、インタ-ネットオ-クションでのブランド保護、食文化・食材の日本ブランド発信、地域ブランド育成、日本ファッションの世界ブランド化、インテリア等ライフスタイル新日本様式の日本ブランド構築などを掲げているが、企業が具体的戦略としてどのように行動すべきかについては、当然、企業に委ねている。

  上記WBSが紹介した「有機ブランド」は、企業グル-プとしてのオ-ガニックギルドが「有機認証」した食品・食材の統一ブランドであり、国や地方公共団体の行政が及び得ない遵守確保機能を、ギルド機構によって達成できると考える。信頼性を内外に確立する意義が大きい。

  著名ブランドのホテル、レストラン、食品メ―カ、インテリアメ―カが合同して新たな統合ブランドのもとに、各ブランドの相乗効果を発揮している現場も上記WBSに放映され、資生堂が単一企業として、紅椿と白椿を統合した「椿」(TSUBAKI)ブランドを構築している事例の紹介と共に、多様な着想が発進している。

  伊藤ハムが上記WBSに登場したが、伊藤ハムは後述する「オ-ガニック・ギルドのメンバ-である。伊藤ハムは同時に、新ブランド「穀物牛」(成長ホルモン不適用。オ-ストラリア・ニュ-ジ-ランドの牧場で穀物飼育)を拡販しており、これは「有機ブランド」適格と考えられるが、複数ブランド政策とも推定される。

  SANARI PATENT 2007-9-3~4 記事の「複合ブランド」(Co-Brand)も、大企業間提携(ヤフ-とAT&T、富士フィルムと三菱製紙など)の相乗効果を、著名複数企業のブランド総合によって高めるものと考える。

  しかしわが国では、上記WBSで論評されていたように、「有機食品振興」の行政的確立がEU等に比べて遅延し(補助金など)、業界ブランドに対する行政措置が後発している。そこでここには、「有機ブランド」に限定して、その状況を考察する。

1.        米国では「有機食品認証マ-ク」が実質的「有機ブランド」:

1-1  USDA・ORGANIC(SANARI PATENT 注:USDAは米国農務省経済研究所)のマ-クを、有機食品についてのみ付することができる。

1-2  米国オ-ガニック食品協会によれば、2005年の有機食品販売額は約140億ドルで、米国の食品販売額の約2.5%である。

2.        わが国のオ-ガニック・ギルド: オ-ガニック・ブランド:

2-1 「ORGANIC/GUILD」のマ-クで統合されたオ-ガニック・ギルドの現会員(2006-11現在)は、イトウ製菓、伊藤ハム、岩塚製菓、紀文、小西酒造、正田醤油、新進(有機きゅうり漬など)、ハナマルキ、備後漬物、福岡農産、三島食品(赤紫蘇のふりかけなど)、三井農林(一番煎茶など)、日本製粉である(SANARI PATENT 注:ほかにケンコ-マヨネ-ズ等が加わっていると考える)

2-2 オ-ガニック・ギルドは、「美味しさと安全を企業理念とする食のエキスパ-ト達が集いました。私たちは、自然の恵みの中で農薬や化学肥料を使わずに育てあげた素材を、有機JAS規格により、丁寧述べている。仕上げたオ-ガニック食品を通じて、健やかで上質な生活を楽しみ、地球を大切にするライフスタイルを食のシ-ンから支えます」と宣言している。

2-3 オ-ガニック・ギルドは、「徹底したプレミアム・オ-ガニック・ブランド」を標榜し、「有機JAS認証に加えて、長年培ってきた美味しさへのこだわりと厳しい安全・品質管理のもとで丁寧に仕上げたプレミアム・ブランドがオ-ガニック・ギルドです」と説明している。

2-4 現にプレミアム・ブランドを付して拡販されている商品として、ハナマルキの有機味噌、福岡農産の有機白米、正田醤油の有機醤油、新進の有機梅干、小西酒造の有機米純米酒、ケンコ-マヨネ-ズの有機フレンチドレッシングなど。

 

3.        食品以外の有機製品ブランド:「有機国際認証」のブランド価値

  グロ-バルなエコ時代に即応して、原材料のみならず製造工程にも有害物質を一切使用しないことの国際認証機構も活躍し、その認証は強いブランド価値を持つ。四国高知のハ-トの寝具などがマスコミ報道されている(2006-5-7)

4.        SANARI PATENT所見

  先般の北海道産混合食肉の虚偽表示について、JAS法の規定による刑事訴追はできないと報道(2007-9-7)され、JAS法の限界が認識されたが、上記のような企業間自主統合ブランドこそ、信頼に値すると認識されことが確実である。

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2007年9月12日 (水)

The New York Times Reports The Most Sweeping Changes to US Patent Law: 米国下院通過の特許法改正: コンピュ-タ・金融・製薬各界の賛否

Would Make Patents Harder to Obtain: マイクロソフトやゴ-ルドマンサックスの賛同、ファイザやプロクタ-ギャンブルの批判

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        The New York Timesの報道(2007-9-8)SANARI PATENT要約)とその考察:

1-1  記事の見出しは、「米国下院は、パテント所有業者の提訴を抑制」(Curb Suits by Patent Owners)であるが、いわゆる「パテント・トロ-ル」を意識した表現であり、従って、パテント所有「業者」と翻訳した。

1-2  記事要約

1-2-1      米国特許法について、半世紀以上の長期間にわったて行われなかった画期的改正を、米国下院は可決(2007-9-7)したが、この改正は、マイクロソフトのようなコンピュ-タ企業や、ゴ-ルドマンサックスのような金融企業の勝利である。

1-2-2      下院の票決は、賛成220反対175であったが、この改正は、特許権の取得を厳しくすると共に、特許付与に対する異議申立てを容易にし、パテント取得業者が訴訟提起して利得を図る機会を削減することを目的としている。(SANARI PATENT 注:若干、意訳した。原文の一部:The legislation would make patents harder to obtain and easier to challenge and is intended to curtail litigation by limiting where patent owners can file suit and how much they can collect in damages. )

1-2-3      労働者団体、大学、ブッシュ政権、製薬会社ファイザ-を含む改正慎重派の批判を緩和する最終修正を加えて、今次下院可決に至ったが、この批判の要旨は、「改正原案は特許権取得の権利を弱め過ぎ、新技術への投資を阻害すると共に、雇用の増大を縮小する可能性がある」ということである。(SANARI PATENT 注:一部意訳した。原文の1部は、「Approval came after last minute changes to appease critics, including the drug maker Pfizer, which said the original proposal went too far in weakning patent rights and might hurt investment in new technologies and cost American jobs.)

1-2-4      上記の修正にもかかわらず、今次下院改正法には、キャタピラ、プロクタ・ガンブル等が反対を唱え、「今次下院改正法は特定の業界のみを利得させる不均衡な内容である」と主張している。

2.        SANARI PATENT所見

  特許性の要件を厳格に定め、かつ運用して、「創造性(新規性・進歩性)が低位な特許権の設定を抑制すること」は、「可能性な極限まで特許権取得数を乱獲」して、これを売却またはライセンス収入化する「パテント・プロモ-タ」の一部や、パテント・トロ-ル業者の利得機会を削減することとなり、これに賛同する意見も有力と考える。米国特許庁が指向している「特許の質の向上」は、今次下院改正の路線に沿っていると解する。

  わが国の内閣知財戦略本部の「特許出願および特許」の質の向上は、「付与可能性が高い出願の選別」および「審査、審決、知財高裁判決の過程で特許権が法的に安定していること」を意味するように解され(すなわち、審査基準の明細化と行政・司法連絡)、特許付与の厳格化というような明示要素は、現時点では見受けられない。

  上記1-2-4の批判も残存するから、年内の米国上院審議に注目を要する。

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2007年9月11日 (火)

YAMADA DENKI, Striving for Sales of 2 trillion Yen and 20% Market Share:

Driving for More Innovative and Strategic Corporate Management ヤマダ電機2年後年間売上高2兆円、20%以上シェア、サ-ビスコンテンツ充実の高速軌道上

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  現在の情報家電、生活家電は全て、特許権・意匠権・半導体集積回路配置利用権・プログラム著作権など数万知財の結晶であり、高度情報社会の消費者は、その知財集積に依存しなければ生活できない。  

  家電を消費者に普及させ、必ずしも平易でないその活用を支援するのは、家電小売業であって、そのサ-ビス活動の質と量が、国民の知的水準・生活水準に実際上、影響してゆく。このように、メ―カの知財を需要者の知財に変換(convert)し、知財集積を拡散する家電小売業の事例を考察する。

1.        ヤマダ電機の売上規模:家電小売業の地位:

1-1  群馬県出身の山田 昇現社長が電気店を個人創業したのが1973年、10年後の1983年に株式会社ヤマダ電機設立、その17年後の2000年に東証1部上場、2005年3月期に1.1兆円の売上実績、2006年3月期1.3兆円を経て本年3月期は1.4兆円を超えた。

1-2  ニフティ検索を経てUllet会社ランキングを見ると、2007年3月期の売上は、1位トヨタの23.9兆円から、3位NTT10.7.兆円、5位日立製作所10.2兆円、13位東電5.2兆円と続き、88位の東レ1.5兆円の次に、1.4兆円台の富士重工、JR東海(1兆4913億円)、ANA,スズケン、三菱マテリアル、アサヒビ-ルと名を連ねて、ヤマダ電機(1兆4437億円)が95位に位置付けられている。なお、96位は川崎重工業(1兆4386億円)である。

1-3  先日(2007-9-9)開催された対投資家説明会(新橋・第一ホテルにて)において、山田社長は、中期計画・売上高2兆円・市場シェア2割(SANARI PATENT 注:現在、東京圏を除く全国では既に2割近いが、東京圏では6%程度と推定する)、長期計画を売上高3兆円、市場シェア3割と説明した。

1-4  ヤマダ電機売上高の対前年度増加率は12.4%であったから、同率で2年後には2.2兆円に達し得るが、上記1-2ランキングで現在2兆円は60位リコ-、62位野村HDなどである。

1-5  上記1-4の12.4%は、2007年3月期決算の対前年度比増加率で、今年4~6月期の対前年同期比は20.6%増であるから、2兆円達成の早期達成は高確率であると共に、上記四半期の純利益も16.1%の増加率を示したことが注目される。

2.        マスコミの注目:

2-1  日刊各紙(2007-7-13)は、「ヤマダ電機、新橋も出店、新宿進出も正式表明」(日経)、「ヤマダ電機、都心対決、池袋きょう開店、新宿も計画」(産経)、「ヤマダ電機、ヨドバシ・ビックと対決」(朝日)、「家電量販の競争激化、都心・郊外の住み分け崩れ」(毎日)、「ヤマダ電機、都進出、家電量販・戦国時代、業界再編の機運も」(読売)、「ヤマダ電機・池袋に進出、郊外から都市、住み分け崩壊」(東京)など、消費者全体の生活高度化・知財活用普遍化に直結する動向として、大規模報道した。

2-2  朝日の記事には、「ヤマダ電機の家電量販シェアは20%強あるが、都内は現在6%くらい」という山田社長の説明を引用しているが、都内人口1200万人超、都心昼間人口の1500万人超(SANARI PATENT推定)とその増加趨勢を考えれば、ヤマダ電機の都心進出は当然である。

2-3  家電のインタ-ネット販売、テレビ販売、ケ―タイやネットオ-クも著増し、拡販区域は無境界のサイバ-スペ-スに及ぶが、店頭の意義と魅力は、感性的な実感や操作学習・アフタケアの便益(convenience, fun, friendlinass)から、減衰しないと考える。

2-4  価格破壊的な予想は殆どなくて、機能比較・アフタケアサ-ビス比較などによる「価格創生」的な競争(at agreeable prices)が展開されると考える。テレビ東京は先日、ヤマダ電機の「タイムセ-ルス」が価格の臨場提示を特徴とする「人気場面」を放映したが、ビジネスモデルの開発も期待される。

3.        業容の革新

3-1  ヤマダ電機グル-プ の都内店舗は、全国480のうち32で、世田谷、江戸川、練馬、足立等に散在していたが、新宿・渋谷計画により、IT昼夜間人口千数百万人の国内外消費者と、全国および外国企業の中枢管理機構と密着する(B2B Marketing)起点を構築することとなる。

3-2 サ-ビスコンテンツ、リユ-スコンテンツ、SOHOコンテンツ、WEBコンテンツ、物流システムコンテンツ(SANARI PATENT 注:いわゆるロジスティックス)、情報システムコンテンツの展開が、各分野の顕在ないし潜在需要に即応する(Life Ability Supply)

3-3  医療システム(Dr. Pen Lite)や健康食品等、多様な分野の代理店的機能をヤマダ電機の本店および全国支店網が連携サポ-トすることにより、サイバ-取引(電子商取引)の拡大と相俟って、業容を質的量的に拡大する(主要メ―カ製品を総合・編集、家電検定を付した情報マガジンの発行)(ポイントの汎用)

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2007年9月10日 (月)

Public Utility and Profit Rich Environmental Industry: 貴金属回収精錬等の環境対策事業の業暦56年余、松田産業の4~6月期業績の進展

Mixed Metals Recycle, Contributing ThailandChina ‘s Environmental and Resources Policy: 上海にて貴金属回収事業計画等

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.環境分野の事業主体の採算性:

1-1 来年の内閣知財戦略本部・知財推進計画08は、重要4分野別の知財戦略を基軸とすることが予定されているが、この4分野のうち「環境分野」は、対象の広汎性と公益性から、事業主体の採算との両立が駆動力として重要である。 環境に負荷を加える製造業にとって、環境対策は経費増大要素であるが、環境負荷の軽減を業務とする企業の収益性が確保されれば、環境政策は円滑に駆動されてゆく。

1-2 この見地から具体的事例として、昨日(2007-9-9)公表された松田産業(東証1部)の4~6月期業績の好調が注目される。先ずニフティの株価検索を見ると、先週末の日経平均株価水準の下落と反対に、松田産業株の上昇継続が見られるが、同社の特色は次のように紹介されている。「設立は1951年。貴金属の回収精錬で創業。電子材料販売・産廃物処理・食品輸入と業績多彩。(SANARI PATENT 注:食品関係の比重は3割未満のようであるから、環境事業が創業来の基幹事業である)。タイは夏に精錬スタ-ト。中国では上海に貴金属回収の現法。」

2.第3期科学技術基本計画の資源再生プログラム(SANARI PATENT 要約)

2-1 資源循環の国際化が進み、材料・製品の廃棄、循環利用に伴う有害リスク(SANARI PATENT 注:循環利用に、「有用性」と「新たな有害性の発生」の両面を見ている)を低減するための管理手法の構築、有害物質含有物代替技術の開発を行う。

2-2 リサイクル技術の進展により多様な再生材料が生産されているが、その品質への懸念から、一次資源を代替するような需要は必ずしも拡大していない。(SANARI PATENT 注:松田産業もように高度の再生技術を有する企業のみが需要を拡大できることを示している)。従って、再生品の品質評価手法の開発・標準化を進める必要がある。

2-3 近隣諸国の経済発展による資源需要の増大に伴い、廃棄資源の貿易が盛んになっている。有用物質の選別・回収技術を開発する必要がある。(SANARI PATENT 注:松田産業等のアジア現地立地の意義が多角的に発揮されることが望まれる)

3.松田産業の現況:

3-1 松田芳明社長の挨拶(2007-6)要約。「松田産業は、地球資源の有効活用事業による社会貢献を企業理念とし、貴金属リサイクル事業、環境保全、食資源の安定供給の3事業を柱とする」。「貴金属事業の主要対象である半導体・電子部品業界におけるデジタル製品の旺盛な需要により、松田産業の業績は前期を上回り過去最高を記録した。」

3-2 松田産業は、中長期的な経営戦略として、貴金属関連事業を拡大・成長の牽引部門とし、「東アジアNo.1のリフザイナ-」を目指す。その一環として、タイ現地法人で設備を増強し、2007年中に始動する。中国では現地法人を設立し、2007年中に活動を開始する。

4.松田産業の特許公開事例(SANARI PATENT要約):

4-1 カラ-金合金(特許公開日20075-10-27):

   黒みがかった色調を有し、色落ちがなく、機械的特性に優れたカラ-金合金を提供する。

4-2        有害物質含有物の運搬方法および運搬車両(特許公開日2005-9-15):

ポリ塩化ビフェニ-ル等の有害物質が審決用されている変圧器やコンデンサ等の有害物質が含有物を運搬する場合に、その揮発を確実に防止しつつ処理施設に運搬できる運搬方法および運搬車両を提供する。

4-3 有機ハロゲン化合物の処理方法(特許公開日2005-9-2):

アルカリ金属と有機ハロゲン化合物との接触効率を高めた、高反応効率の有機ハロゲン化合物処理方法を提供する。

4-4 白金族金属の回収方法(特許公開日2005-4-28):

処理速度・処理効率に優れた、複合材料からの白金族金属の回収方法を提供する。

4-5 硬化型金合金(特許公開日2003-11-19):

純金に近い純度・色調を有し、かつ、純金に比して高高度の金合金を提供する。

4-6   パラジウム電気鍍金液およびそれを用いた鍍金方法(特許公開日2001-12-25):

水素共析をホトンド起こすことなく鍍金できる酸化パラジウム電気鍍金液を提供する。

4-7   白金族金属含有液中からの白金族金属の回収方法(特許公開日2001-3-6):

無電解鍍金処理の触媒化工程で排出される使用済み触媒液など、従来ほとんど回が行われなかった触媒液液中に含まれる白金族金属、特にパラジウムを、簡便な手段で分離・回収する方法を提供する。(SANARI PATENT 注:パラジウムは耐食性に優れ、毒性微弱、金銀パラジウム合金として歯科用途のほか、アレルギ-発生希少のため装身具に使用され、また水素吸蔵性により、水素精錬に使用される。価格は金の10)

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2007年9月 9日 (日)

Creating Innovative Drugs in a Unique Way: 中外製薬の本年上半期連結営業報告(2007-1-1~6-30): 遺伝子組換えヒトG-CSF製剤「イノトロジン」活況

Roche Farm-Holdings. B.V.(F. Hoffmann-La Roche)の日本提携会社として、英・仏・独で共同販売促進: 「がん対策基本法」(2006-6)への即応:

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  暦年決算会社のうち、中外製薬の本年上半期連結営業報告を受領した。中外製薬の株主構成で、ロシュ(Roche Farm-Holdings. B.V.)が50.09%の持株比率を占める。

  抗インフルエンザウィルス剤「タミフル」(SANARI PATENT 注:2005年に蔓延した鳥インフルエンザウィルス拮抗薬の種類は多いが、「経口」投与剤として、グロ-バルに実際投与上の便益から、必須薬品として求められた。途上国のうちには特許権の強制実施措置を指向する国も見受けられた)の名称と共に、日本におけるロシュ提携先としての中外製薬の名もマスコミを通じて全国に浸透した観がある。2005年に比べて2006年のインフルエンザ流行が小規模にとどまったことから、本年上期は前年同期に比べればタミフルの売上も増加しているようである。

  しかし中外製薬の本質的なプロフィルは、「今までにない医薬品を、今までにない力で創り出す創薬基盤にあり、独自に培った研究開発基盤をロシュとの戦略的アライアンスにより一層強化し、癌、腎、骨・関節の3領域を中心に、抗体医薬品を始めとする新薬創出を加速していること」である。

1.        遺伝子組換えヒトG-CSF製剤「イノトロジン」の活況等について:

1-1  中外製薬の今次報告では、海外売上高が前年同期比43.1%の大幅増を示し、連結売上高の全円同期比12.0%を遥かに上回って、海外売上比率10.9%を達成したことが目立っている。

1-2  今次報告では、このほか、抗悪性腫瘍剤・抗HER2ヒト化モノクロ-ナル抗体「ハ-セプチン」、骨粗鬆症治療剤「エスピタ」の好調を述べている。

2.        中外製薬昨年来の経営戦略・知的戦略の考察

2-1        昨年の薬価引下げ(業界平均6.7%)の影響を、中外製薬は、癌領域の営業機能強化等により早期に克服した。

2-2        生産における自社技術の維持・強化とコスト効率追求のため生産部門を分社化し、中外製薬工業株を新設した。

2-3        「ハ-セプチン」の乳癌術後補助療法への適応拡大について、ロシュ主導の大規模グロ-バル臨床実験の中間解析結果の活用など、ロシュとの効果的な連携の成果を収めた。

2-4        製品のラインアップが飛躍的に拡充する癌領域でのプレゼンスを強化するため、癌製品に関する営業機能を集約した「オンォロジユニット」を新設した。

2-5        新たな作用機序を持つ製品の上市について、患者の安心のため、強力な「医薬品安全性ユニット」と「市販後調査推進室」を設置した。

2-6        中外製薬からロシュに、癌および糖尿病関係の研究テ-マ3品目を導出し、中外製薬とロシュのWIN-WIN関係(シナジ-)構築を強化した。

2-7        癌領域の中外製薬の国内シェアを12.1%(第3位)に維持している。

2-8        「がん対策基本法」の成立(2006-6)により、日本の患者が世界の標準または最先端治療薬にアクセスできない、いわゆる「ドラッグラグ」問題について未承認薬使用問題検討会議がカ委細されるなど、日本の癌治療環境の変容に即応にあしこれを先導すべく、集学的・専門的双方の研究開発を具体化している。すなわち、「分子標的治療薬の作用機序など、高度医療情報の提供」、「拠点病院を中心とする医療連携」などを進めている。

2-9        製品別戦略を深耕する(SANARI PATENT 注:内閣知財戦略本部の戦略が分野別化することに相応する)。例えば、世界90余国で承認されている「ハ-セプチン」については、癌再発抑制の顕著な効果が得られたことにより、術後補助療法の拡大適用を推進する。

2-10    腎不全の透析患者が毎年4%増大して25人を超える趨勢に対応し、貧血対策を含め、エリスロポエチン製剤「エポジン」の適正使用を推進する。

2-11    骨粗鬆症剤「エビスタ」の婦人科系副作用を抑えた特性により、日本イ-ラリ-との共同販売額が2005年比45.7%増の規模に達し、世界90国承認骨粗鬆症剤としてNo.1ブランドに成長した。

2-12    遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤「エポジン」が、未熟児貧血への適応および用法用量の追加承認を受けた。

2-13    上記を総括して、中外製薬は、ロシュグル-プが有する開発候補品の日本における開発・販売に第1選択権を持ち、戦略領域におけるロシュ研究テ-マの積極的な導入や、中外製薬独自の研究活動の進展に伴う開発ラインを引続き充実する。

2-14     日本では今後、欧米で得られた臨床試験研究の活用(SANARI PATENT 注:特許審査結果の日米間等相互承認案と軌を一にする考え方である)や、日本を含むグロ-バルで実施した臨床試験の結果を用いた申請が活発化すると予想されるので、中外製薬は、ロシュと提携してこの趨勢に即応する。

2-15    知財戦略については、研究テ-マの初期段階から知財部が共同している。

2-16    特許取得戦略の実行においては、ロシュグル-プとの共同開発を要素とする出願国選定を行う。

2-17    職務発明対価の上限を撤廃した。

2-18    中外製薬の「エポジン」、「ノイロジン」に対する味の素提起の特許侵害訴訟については、東京地裁に続き、知財高裁において中外製薬が勝訴した(2007-2判決)(SANARI PATENT 注:中外製薬報告による)

3.        SANARI PATENT所見

  製薬業界の内外にわたる企業連携、M&A,経営統合などが進捗してきたが、知財戦略を含めて、それらのシナジ-効果が発揮されることが、わが国製薬工業ならびに人類福祉のために希求され、これに即応する中外製薬の成果が注目される。

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2007年9月 8日 (土)

Series Hybrid System: 鉄道車両の速度制御に関する知財開発が諸国鉄道車両市場へのわが国進出を加速

HITACHI Exports Vehicle Technologies to Britain: 日立製作所ほかわが国鉄道車両企業の鉄道車両速度制御関係特許公開相次ぐ

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  今世紀に入ってから、わが国鉄道車両の輸出契約が逐年成立し、米国・香港・台湾・中国と大規模受注の相手国も増加したが、特に一昨年来、鉄道の発祥国・英国からの受注も大量に実現し、開通後のメンテナンス受注も成立して、わが国企業の技術水準に対する諸国の高い評価が示されている。

  そのコア技術である「鉄道車両の速度制御」に関する特許公開も相次いでいるが、ここには、本年7月に特許公開された発明について、その事例の若干を概観する。

1.小田急電鉄の「鉄道車両用ブレ-キ制御システム」(特許公開日2007-8-23

1-1  課題: 滑走の発生を低減することにより、制動距離を短縮し、車両踏面の損傷を低減する。

1-2 解決手段: 

1-2-1 次の制御手段を備えるブレ-キ制御システム

  機械ブレ-キ力に応じて制御対象となる車軸のそれぞれにブレ-キ力を生じさせる複数のブレ-キ制御手段

  各車軸に関する滑走度合をそれぞれ推論し、滑走防止弁の開閉制御を行う複数の滑走防止制御手段

  車両編成全体で必要なブレ-キ力のうち、上記複数のブレ-キ制御手段が生じさせるべき不足ブレ-キ力を算出し、各分担すべき機械ブレ-キ力を決めて指示する編成ブレ-キ制御手段

1-2-2      上記1-2-1のシステムは、編成ブレ-キ制御手段が、各ブレ-キ制御手段の分担する機械ブレ-キ力を、滑走防止制御手段により推論された滑走度合に基づいて、不足ブレ-キ力を満たすよう、動的に変更する変更手段を備える。

2.日立製作所らの「鉄道車両の駆動装置」(特許公開日2007-8-2

2-1 課題: シリ-ズハイブリッド方式(SANARI PATENT 注:エンジンで発電機を駆動し、その発生電力を蓄電してモ-タを回転させる直列方式のシステム)の鉄道車両の駆動装置において、エンジンが最大運転効率となる出力点および回転速度における発電状態の維持

2-2 解決手段: 

2-2-1 エンジン、発電機、コンバ-タ装置、システム制御部、エンジン統括制御部、エンジン制御部、定電力制御器、RMW制御部を備える。

2-2-2 エンジン制御器は、エンジン統括制御部からのエンジンの出力指令から燃料噴射量指令を出力してエンジンを制御する。

2-2-3 RMW制御器は、エンジン統括制御部からの発電機の負荷量の指令にに基づいた発電機負荷量を発生するスイッチング素子のゲ-ト信号を与える。

2-2-4 エンジンの回転速度に対する出力特性は、特定の回転速度よりも増加すると出力を減少させ、減少すると出力が増加する特性とする。

2-2-5 コンバ-タ装置に対する出力指令は、発電機の負荷量を回転速度によらずに一定の負荷量とする低電圧発電制御を行う。

3.住友金属工業の「鉄道車両における操舵用アクチュエ-タ(SANARI PATENT 注:入力されたエネルギ-を物理運動量に変換する機械要素)の制御方法」(特許公開日2007-7-26

3-1  課題: 操舵制御時の動作力の発生遅れおよび呈上偏差を小さくする。

3-2 解決手段: 

3-2-1 曲線区間の車両通過時に、曲線の曲がり方向に、車体と台車間で回転が可能なように、回転方向に対し作用すべく、車体と、その前後に取り付けられた2つの台車のそれぞれの台車枠間に設置した電機指令で動作する操舵用アクチュエ-タを制御する。

3-2-2 アクチュエ-タへの指令電圧として、あらかじめ測定したアクチュエ-タ自体の摩擦力に、曲率速度、台車のボギ-角速度、アクチュエ-タの速度のいずれかの方向(符号)を乗じた摩擦抵抗補償量を加えたものを使用する。

4.日立製作所の「鉄道車両の上下振動制御装置」(特許公開日2007-7-12

4-1 課題: 鉄道車両の高速化に対応して、車体の傾斜動作と上下振動制御を良好に作用させ、また、車体の傾斜をアシストする。

4-2 解決手段: 

4-2-1 鉄道車両は、「台車上に空気バネを介して支持された車体」「空気バネの伸縮量により車体を傾斜動作させる車体傾斜装置」を備える。

4-2-2 制御器は、車体の上下振動加速度を検知する加速度検知手段の検知結果を制御入力として、車体の振動を抑制するよう制御入力を補償した信号により、上下液圧式アクチュエ-タを制御する。

4-2-3 上下液圧式アクチュエ-タの各液圧室を通過または遮断する切換弁が設けられている。

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2007年9月 7日 (金)

Copy Problem at Digital Broadcasting 通信・放送のフルデジタル化・ブロ-ドバンド化を2011年に達成するために解決すべき緊急課題

Soft Landing to 10Times Copy Rights  視聴者の理解を得るための現実的対策 

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

 

  SANARI PATENTの論旨: 「デジタルコンテンツの流通促進」と「複製権の保護強化」とは、制度上相克する側面と、実質的に両立すべき側面を併有する政策目標であり、その調整点の選択と、選択に伴う影響緩和措置が課題となる。この選択は、地上デジタル放送完全実施時期の切迫に即応する緊急課題であり、簡明なものであることを要する。

1.        日本独自のコピ-ワンスル―ル撤廃論

1-1  現行のコピ-ワンスル―ルに対する批判は、内閣知財戦略本部の知財推進計画07策定におけるパブリックコメントなど、随所に見られるが、その要旨は、次のようにまとめられる。

1-1-1      コピ-ワンスの導入プロセスに、権利者・消費者のいずれの参加もなく、従って、その必要性・合理性についてこれら関係者の理解がない、という批判がある。(SANARI PATENT 注:このような趣旨に情報通信審議会の答申が表現しているという意味である。それでは、現行のコピ-ワンスル―ルは誰が何のために定めたかといえば、情報通信審議会の表現では、「DTCP等のル―ルを参考に策定された、放送運用規定に基づき実現されている」ということで、ここには主語を欠いているが、DTCP Digital Transmission Content Protection)とは何かといえば、松下電器・米国インテル・日立製作所・ソニ-・東芝の5社が共同開発して1998年に発表したデジタルコンテンツの保護技術である。要するに、メ―カ各社と放送事業者の合意によって策定・適用された民間ベ-スの取組であり、法制度によらない)

1-1-2      米国では、地上デジタル放送にコピ-制限を課していない。特に米国では、デジタルミレニアム著作権法において公共放送・無料放送にコピ-制限を課してはならないと定められている。

1-1-3      コンテンツの制作費をインタ-ネット・DVD・外国販売などマルチユ-スをもって回収し、コピ-制限を消費者の便宜優先で緩和することによって、長期的・大局的にデジタルコンテンツの拡大・振興が達成される。

1-1-4      さらに、ポ-タブルデバイスの多様性によって、DVDの家庭内再生のみならずケ―タイやiPodへの録画再生を個々人が利用するという意味でのデジタルコンテンツのマルチユ-スのニ―ズに即応することがデジタルコンテンツ振興の要であり、コピ-回数制限がこれを妨げるべきでない。

2.        コピ-回数を10とする方向性に、SANARI PATENTは賛同

    デジタルコンテンツとその流通メディアのグロ-バルな発達に即応、というより先駆するためには、対策の速度が重要である。この見地から、コ情報通信審議会が示唆する次の案に、SANARI PATENTは賛同する。

2-1  一人の視聴者が、一つのデバイスに記録できるコンテンツの数は1個と考え、一人の視聴者が持つデバイス数は3個を上限として考える。

2-2  一家庭における視聴者数の平均は3人程度と想定する。

2-3  以上を勘案して、3デバイス*3人=9個に、オリジナルの1個を加えて、コピ-回数を10とする。

2-4  メディアやデバイスに10回目のコピ-が行われた時点で、オリジナルのコンテンツは消去される。

2-5  回数のカウント方法は、記録行為が開始された時点で1回とするなど、シンプルな方法とする。

3.        SANARI PATENT所見

  複製権の制限として、「私的使用の場合」と「公益・公用に供する場合」の2つの場合を認めることは、国際的にも通用する基本的理念であると考える。その具体的適用は技術進歩に応じて変容しなければならないが、現時点においては、上記2の措置を応急に講ずべきである。

  情報通信審議会が、次のように述べていることに対して、関係政府審議会等の意見が早期に集約されることが望まれる。

  「通信。放送のフル・デジタル化、ブロ-ドバンド化に向け、2011年は重要なマイルスト-ンであり、放送のデジタル完全移行についても、この期限までに完了することが不可欠である。このために重要なことは、受信機の普及と、その前提としての視聴者の理解であり、そうした意味で、コピ-ワンスの在り方を改善することは必要不可欠であることを十分考慮して検討を進める必要がある。」

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2007年9月 6日 (木)

Copyright of Charies Chaplin (Sir. Charies Spence Chaplin, Jr): 東京地裁判決8月29日: 本月24日はチャップリン逝去(1977-12-25)から29年9月

World Popular Works: Limelight, The Great Director, Modern Times, Lights etc.: チャップリン9作品について、著作権侵害に対する賠償・差止等請求

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        今次訴訟に至る経緯

1-1  ロイ・エクスポ-トカンパニ-・エスタブリッシュメント(以下「ロイ・エクスポ-ト」は、チャップリンにより、リヒテンシュタイン公国において設立され、チャップリンが監督等を務めた映画作品の著作権を保有・管理している法人である。

1-2  ア-トステ-ションは、映像ソフト、音楽ソフト、ゲ-ムソフト、コンピュ-タソフト等の企画・製作・販売・輸出入等を業とする会社である。

1-3  コスモ・コ-ディネ-トは、映画、テレビ・ラジオ番組、コンパクト・ディスクの企画・製作・販売・賃貸業務(SANARI PATENT 注:判決に「賃借」とあるが「賃貸」と解する)・輸出入、投資管理等を業務とする会社である。

1-4  チャップリンは、英国国民で本件9作品の監督等を務めたが、19771225日に死亡した。

1-5  ロイ・エクスポ-トは、1956年に、本件9作品の著作権を取得した。

1-6  ア-トステ-ションらは、ロイ・エクスポ-トの許諾なく本件9作品の原版をDLT(Digital Linear Tape)に複製し、字幕を挿入するなどしてマスタ-テ-プを作成し、それを複製して、本件DVDを作成し、販売している。

1-7 ロイ・エクスポ-トは、ア-トステ-ションらに対し、著作権侵害についての賠償等として9417万円余を請求した。

2.        争点

2-1        本件9作品の著作権存続期間満了の有無

2-2        ロイ・エクスポ-トの損害の有無とその額

3.        原告・ロイ・エクスポ-トの主張

3-1  本件9作品は全てチャップリンが監督等を務めており、著作者はチャップリンであるが、チャップリンは英国民であったから、文学的および美術的著作物保護ベルヌ条約により、日本でも著作権法の保護を受ける。著作権の存続期間については、内国民待遇の原則により日本著作権法による。

3-2  旧著作権法においても現行法と同様に、映画監督が著作者になると解され、また、「映画の著作者は、映画の製作、監督、演出、撮影、美術等を担当して、その映画の著作物の全体的形成に創作的に関与した者をいう」との判例も示された。

3-3  本件9作品の存続期間は、いずれも満了していない。

4.        被告・ア-トステ-ションらの主張

4-1  ロイ・エクスポ-トの主張3-1について、一般的理論としては認めるが、監督のみが著作者として認められたわけではないし、本件への具体的適用については争う。

4-2  本件9作品の著作権存続期間は、旧法により公表後33年間であり、既に満了している。すなわち、旧法における映画の著作物の著作権者は通常、映画の著作権者において、その映画の著作権が映画製作者に帰属することを容認しているから、映画製作者、すなわち、映画製作について発意と責任を有するもの、通常、映画会社またはピロダクション等に帰属すると解される。

5.        東京地裁の判断

5-1  映画の著作物の著作権存続期間は、旧法において、独創性の有無により別個に定められていたが、本件9作品が独創性を有することは明らかである。そこで本件9件についてみると、いずれにも、チャップリンが著作者であることを示す表示がある。また本件9作品には、著作権者として団体を示している表示はあるものの、著作者の名義として団体を示している表示は認められないので、チャップリンが著作者であることは明らかである。

5-2  旧法では著作権の存続期間を著作者の死後38年と定めていたから、平成27年末以降(作品により異なる)が期限となる。

5-3  平成15年改正法では公表後50年であるから、既に期限切れであるが、著作権法の付則により、長い方の5-2が適用される。

6、SANARI PATENT所見

   ロイ・エクスポ-トの行為による損害の発生の有無とその額について主張の違いがあり、東京地裁は損害の発生を認めたが、本稿は、著作権存続期間に記述をとどめる。

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2007年9月 5日 (水)

IP Strategies by SUMITOMO-Chem. & CANON: 内閣知財戦略本部における「住友化学・河内 哲・副社長」と「キャノン田中信義・専務」の意見の考察

Promoting Strategic Management Focused on Intellectual Property: 知的財産による競争力強化専門委員会とプロジェクトチ-ムの発足

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        知的財産による競争力強化専門委員会の発足:

1-1  内閣知財戦略本部の標記委員会が発足(2007-8-30)し、「知的財産による競争力の強化に係る課題」の調査検討を行うこととなった。当面の課題として、「分野別の知財戦略の策定」と「国際的展開を中心とした競争力強化に向けた方策」を掲げている。

1-2  検討の進め方として、ライフサイエンス分野、情報通信分野、環境分野、ナノテクノロジ-分野の重点4分野について、プロジェクトチ-ムを設置するとしているが、その議事録と資料を非公開とし、非公開の理由としては、「本プロジェクトチ-ムにおける議論の内容については、公開することにより、法人または個人の権利、競争上の地位その他、正当な利益を害するおそれもあるため」としている。(SANARI PATENT 注:非公開の代わりに「議事要旨」を公表するとしているが、各省庁の例を見ても、議事要旨の圧縮が粗末な場合が多く、透明性を欠く)

2.        住友化学・河内 哲・副社長の意見

2-1  知的財産による競争力強化専門委員会の委員として、住友化学・河内 哲・副社長は、同委員会の発足に当たり次の意見を提出している。(SANARI PATENT要約)

2-1-1      知財推進計画07は、個々の課題について詳細に指摘しているが、全体を俯瞰した観点での、戦略的の一貫性が見えない。国策として大きな戦略のもと、組織、予算、体制について府省横断による、一貫性ある知財推進計画を追及すべきである。(SANARI PATENT 考察:「全く同感」とする向きが圧倒的多数と考える。内閣知財戦略本部も、内閣に置かれた以上、府省横断の政策を立案・推進すべきであるが、各省庁に因数分解しているにとどまる。「デジタルコンテンツの流通促進と著作権処理」、「医療発明保護と健康保険」の各調整、自然法則要件削除による米国特許法との整合、デファクト国際標準化への重点集中など)

2-1-2      大学の知財本部の組織構造が脆弱なものが多く、派遣社員等の外人部隊より、内部部隊の強化が必要である。内部部隊により、知財に関するノウハウ・ノリッジの確実な蓄積・継承が重要である。(SANARI PATENT 考察:大学知財本部の設置数自体が全国700余の大学の6%程度に過ぎない。内部部隊を雇用する予算がない。河内氏が次項で指摘した方向も考えられるが、先ず大学の教育課程の内部に、実用的・イノベ-ション直結的過程が完結しているべきである。例えば、特許明細書の作成)

2-1-3      知財本部とTLOの一体運営化により、ライセンス業務主体から、大学内での知財の創出から権利化に至るプロセスを、教育の場とすることに軸足を移すことが重要である。

2-1-4      大学の海外特許出願を促進すべきである。

3.        キャノン・田中信義・専務の意見(SANARI PATENT要約)

3-1  わが国主導で、国際ハ-モナイゼ-ション、国際ル―ル化を図るという国際戦略の視点が必要である。(SANARI PATENT 考察:そのような主導の基盤は、国際標準化を含めて、わが国企業群のデファクト標準化を伴う市場占有である)

3-2  情報通信分野の戦略策定は、トップランナ-方式を基軸とする必要がある。

3-3  パテントトロ-ル対策は、インタ-ネット環境のグロ-バル化に伴い、商標に及ぶべきである。

3-4  インタ-ネットを通ずる商標権侵害は、ネットオ-クションがケ―タイ「モバオク」に進展するに伴い、重大化する。セカンドライフについても、予防政策を早急に検討すべきである。(SANARI PATENT 注:セカンドライフのサイト構築は容易であり、収益の実例も頻繁に紹介されるようになったから、商標権問題はサイバースペ-ス全域に拡散する)

3-5  標準化に関与しながら標準化団体から離れて権利行使する企業、標準化に関与しないが、関係する権利を保有する企業の存在が、企業活動の不安定化をもたらしている。(SANARI PATENT 考察:わが国では、「標準化」の定義も合意せずに、また、国際標準化の実態を十分に調査検討することなく標準化政策が作文されてきた)

3-6  RAND条件の具体的ル―ルができていない。(SANARI PATENT 考察:例えば、ITUCDMA国際標準化におけるデファクト標準の2企業グル-プの調整過程を調査・例示すべきである。キャノンの包括クロスライセンス契約は、デファクト標準化の形成過程における実質的RANDと理解する)

3-7  標準化において、第3者特許対策が必要である。(SANARI PATENT 考察:法的には、強制実施権の論議がなされていない)

3-8  研究開発の初期段階から標準化推進技術に特許を取り込むべきである。(SANARI PATENT 考察:デファクト標準化のためには市場占有力を有する特許権とノウハウを取得することが必須であるから、この意見は当然である)

3-9  標準化技術の周辺特許戦略が必要である。(SANARI PATENT 考察:標準化が競争を阻害することは回避すべきであり、標準化が形成される前提のもとでは、周辺特許権による競争の促進がイノベ-ションのため緊要である)

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2007年9月 4日 (火)

Co-Brand of Photographic Paper by FUJI Film & MITUBISHI Paper: デジタルイメ-ジングの世界における高画質国際競争力強化のため高度連携の構築

Innovative Inventions for Digital Photograph: 本年初来の写真画像関係両社特許公開の事例

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.高品質写真印画紙需要の世界的拡大に対応:

1-1 富士フイルムと三菱製紙の「写真事業に関する連携」計画が公表(2007-8-28)され、デジタルカメラのグロ-バルな普及に、世界的著名企業である両社の「富士・三菱複合ブランド」(この呼称は、SANARI PATENTが付したもの) 高品質写真印画紙等が世界市場の需要増大に応ずることとなった。

1-2 デジタルカメラの撮像は、インタ-ネット送信のほか、自家パソコンプリントと従来方式の双方のプリント処理が増大しつつある。インクジェットプリンタ用写真用紙は、RC印画紙、光沢用紙、マット紙の3種類とも、それぞれのメリット(耐光性、速乾性、光沢性等)と共に、デメリットに微差があり、銀写真プリント(支持体上にハロゲン化銀と発色剤を含む写真感光材料に露光した後、現像処理して得られる写真プリント)への選好も著増している。これらいずれにも、高画質・耐光性等の完璧が希求される。

1-3 上記1-1の両社発表は、次のように連携内容を述べている。(SANARI PATENT要約)

1-3-1 富士フイルムと三菱製紙は、写真事業における互いの事業強化と国際競争力強化のため、写真印画紙等の写真分野において協力関係を構築することを基本合意した。

1-3-2 デジタルカメラの普及に伴い、顧客の写真に関する楽しみ方は、従来の写真印画紙を使った銀写真プリントだけでなく、パソコンで見る、インタ-ネットで送るなど多様化しているが、その一方、デジタルカメラのショット数が著増し、今後、高画質で色あせない銀写真プリントの世界的需要も更に増えると見込まれる。(SANARI PATENT 注:銀写真用印画紙の質感に近いインクジェット記録媒体の提供も当面の課題)

1-3-3 今回の両社の提携は、それぞれの得意分野における高い技術力を駆使し、グロ-バルな視点で写真印画紙の生産に関し協力関係を構築し、生産性を向上し、互いの事業を強化するものである。

1-3-4 提携の内容は、次の通りである。

1-3-4-1 写真印画紙のグロ-バルな生産に関して協力関係を構築する。その一環として富士フイルムは、写真印画紙の生産に要する原紙の一部について三菱製紙から供給を受ける。

1-3-4-2 三菱製紙は、富士フイルムに写真印画紙用原紙を安定的に供給するため、原紙製造関連設備の整備、環境対応(SANARI PATENT 注:排水処理など)等の投資約40億円を行う。そのため、富士フイルムを割当先として約20億円の第3者割当増資を行う。

1-3-4-3 今後は、両社のイメ-ジング部門にとどまらず、広汎な協力関係を構築し、互いの個別従来技術強化と国際競争力強化による両社の企業価値向上を目指す。

2.本年初来の両社写真プリント関係・特許公開事例

2-1 富士フイルムの「画像出力方法、画像出力装置およびプログラム」(特許公開日2007-6-21

コマ画像を1コマづつ記録した写真プリントの裏面にインデックス画像をプリントする両面プリントの処理時間を短縮する画像処理方法、その方法に用いる画像出力装置およびその装置を実行させるプログラムを提供する。

  コマ画像は印画紙の表面にプリントされ、インデックス画面は印画紙の裏面にプリントされる。

2-2        三菱製紙の「インクジェット記録媒体」(特許公開日2007-5-17

特に高い光沢と十分なインク吸収性、顔料インク適合性を有し、かつ塗層の表面強度が良好で、銀塩写真用印画紙の質感に近いインクジェット記録媒体を提供する。

2-3        三菱製紙の「インクジェット記録媒体」(特許公開日2007-5-17

銀塩写真用印画紙並みの写像性を有し、かつ高いインク吸収性と優れた保存性を有するインクジェット記録媒体を提供する。

2-4        三菱製紙の「インクジェット記録媒体」(特許公開日2007-5-10

塗工量が少なくても銀塩写真用印画紙に匹敵する高い光沢と十分まインク吸収性を有し、更に、コックリング(印字部の波打ち)が抑制され、画像品質の再現性に優れたインクジェット記録媒体を得る。

3.SANARI PATENT所見

シャ-プが東芝に、液晶パネルを供給する(2007-9-3 NHKNews)など、複合ブランドが諸分野に拡大する。

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2007年9月 3日 (月)

Yahoo Reports Second Quarter 2007 Financial Results 4~6月期営業収入: 1953億円(115円/$)、営業コスト785億円、グロスプロフィット1167億円

Adding Multimedia All-New Yahoo Mail (Announced on 27 Aug.2007) 超ダイナミック・ウエブ2.0、複合ブランド(AT&T Yahoo!等)活況 

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  Web検索がビジネスと社会生活の必須要素となり、またケ―タイによるモ-バイル検索がグロ-バル化するが、多国籍企業としては、グ-グルGoogleとヤフ-Yahooがサイイバ-スペ-スCyber-Spaceを活性化するサ-チエンジンとして世界クリック数の高順位を寡占している。俗語の「ググる」と「ヤフる」がニュアンスを若干、異にするように、発祥と業態に各特徴が見受けられるが、高度な検索機能が基盤をなしていることは共通している。急速な業績の拡大(関連記事SANARI PATENT2007-8-29)も類似しているが、ここではヤフ-Yahoo(本部・米国California-Sunnyvale)について考察する。同社はその使命(mission)を、「全世界のインタ-ネット交信が最稠密な指導的グロ-バルインタ-ネットブランド(a leading global brand)として、世界の人々をコミュニティと知識と情熱の場に結合することである」と述べている。

  なお、ヤフ-Yahooの本格的営業開始は、グ-グルGoogleのそれに1年先立つ1997(SANARI PATENT 注:法人化は1995)であるが、両社の急速かつ堅実な発展は、それ自体が知財イノベ-ションの典型と考える。

1.        本年上半期(2007-1-16-30)のヤフ-Yahoo業績

1-1  冒頭に標記したようにヤフ-Yahooは、毎四半期、財務状況を公表しているが、グ-グル・Googleと同様、本年上半期について考察する。

1-2  営業収入(Total Revenues)は33億6977万ドルで、2倍して年換算すれば7750億円に達し、対前年下半期比では7.2%増。

営業収入の65.9%が米国内取引、34.1%が国際取引による。

1-3  ヤフ-Yahooは前四半期(2007-4-1~6-30)の財務状況について次のように述べている。(要旨)

1-3-1      前四半期の営業収入は16億9800万ドルで、2006年の同期比7%増である。営業収入の87.5%が物品・サ-ビス販売(marketing services)収入に分類されて考察が、インタ-ネットオ-クションを含む電子商取引収入と推定される。

1-3-2      JAPANヤフ-Yahooホ-ムペ-ジの見出しは、「買う」「知る」「楽しむ」「調べる」「暮らす」(不動産・アルバイトを含む)「集まる」に分類されているが、「集まる」には、掲示板、グル-プ、アバタ-、ホ-ムペ-ジ作成、ブログ、フォトグリ-ティング、メルマガ、メッセンジャ-、SNS、物物交換が含まれ、ネティズンのサイイバ-スペ-ス・Cyber-Spaceにおける交流を拡大している。(SANARI PATENT 注:例えば、ヤフ-Yahooの「グル-プ」機能を活用して、日本弁理士会のバイオ研究会や米国特許制度研究会は外部からディスタ-ブされることなく研究や助言の相互交換を活発にしている。東大先端研系のSIMPSも、ヤフ-Yahooグル-プによって極めて活発な知財研究・開発を円滑に遂行している。SANARI PATENTは上記3グル-プの会員である)

    

2.        新しいヤフ-Yahooのサ-ビス

    間断なく新しいサ-ビスを開発しているが、例えば、8月27日には、「マルチメディア最新ヤフ-メ-ルサ-ビス(Multimedia All-New Yahoo Mail)を創設し、世界の人々の交信を一層多様化する(Gives People Worldwide More Ways to Connect)」と発表した。当面、米国・カナダ・インド・フィリピン間(in Four Global Market)のケ―タイメ-ル多様化等におけるオンライン高度技術の発揮をアナウンスしたものと解する。

3.        SANARI PATENT所見

わが国のケ―タイは機能の高度化・多様化の普及速度が世界随一と考えられ、エフル-トを含めて検索機能が多角化するので、その社会経済的イノベ-ション効果は深甚と考える。

なおGoogleの語源が数学術語として明確であるが、Yahooの語源は、「Yet Another Hierarchical Officious Oracle」の頭字語、ガリバ-の登場人物名、創業者が謙遜した「ならず者」など、定説がない。

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2007年9月 2日 (日)

Create Innovative Drugs in a Unique Way: 中外製薬の本年上半期連結営業報告(2007-1-1~6-30): 遺伝子組換えヒトG-CSF製剤「イノトロジン」活況

Roche Farm-Holdings. B.V.(F. Hoffmann-La Roche)の日本提携会社として、英・仏・独で共同販売促進: 「がん対策基本法」(2006-6)への即応:

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  暦年決算会社のうち、中外製薬の本年上半期連結営業報告を受領した。中外製薬の株主構成で、ロシュ(Roche Farm-Holdings. B.V.)が50.09%の持株比率を占める。

  抗インフルエンザウィルス剤「タミフル」(SANARI PATENT 注:2005年に蔓延した鳥インフルエンザウィルス拮抗薬の種類は多いが、「経口」投与剤として、グロ-バルに実際投与上の便益から、必須薬品として求められた。途上国のうちには特許権の強制実施措置を指向する国も見受けられた)の名称と共に、日本におけるロシュ提携先としての中外製薬の名もマスコミを通じて全国に浸透した観がある。2005年に比べて2006年のインフルエンザ流行が小規模にとどまったことから、本年上期は前年同期に比べればタミフルの売上も増加しているようである。

  しかし中外製薬の本質的なプロフィルは、「今までにない医薬品を、今までにない力で創り出す創薬基盤にあり、独自に培った研究開発基盤をロシュとの戦略的アライアンスにより一層強化し、癌、腎、骨・関節の3領域を中心に、抗体医薬品を始めとする新薬創出を加速していること」である。

1.        遺伝子組換えヒトG-CSF製剤「イノトロジン」の活況等について:

1-1  中外製薬の今次報告では、海外売上高が前年同期比43.1%の大幅増を示し、連結売上高の全円同期比12.0%を遥かに上回って、海外売上比率10.9%を達成したことが目立っている。

1-2  今次報告では、このほか、抗悪性腫瘍剤・抗HER2ヒト化モノクロ-ナル抗体「ハ-セプチン」、骨粗鬆症治療剤「エスピタ」の好調を述べている。

2.        中外製薬昨年来の経営戦略・知的戦略の考察

2-1        昨年の薬価引下げ(業界平均6.7%)の影響を、中外製薬は、癌領域の営業機能強化等により早期に克服した。

2-2        生産における自社技術の維持・強化とコスト効率追求のため生産部門を分社化し、中外製薬工業株を新設した。

2-3        「ハ-セプチン」の乳癌術後補助療法への適応拡大について、ロシュ主導の大規模グロ-バル臨床実験の中間解析結果の活用など、ロシュとの効果的な連携の成果を収めた。

2-4        製品のラインアップが飛躍的に拡充する癌領域でのプレゼンスを強化するため、癌製品に関する営業機能を集約した「オンォロジユニット」を新設した。

2-5        新たな作用機序を持つ製品の上市について、患者の安心のため、強力な「医薬品安全性ユニット」と「市販後調査推進室」を設置した。

2-6        中外製薬からロシュに、癌および糖尿病関係の研究テ-マ3品目を導出し、中外製薬とロシュのWIN-WIN関係(シナジ-)構築を強化した。

2-7        癌領域の中外製薬の国内シェアを12.1%(第3位)に維持している。

2-8        「がん対策基本法」の成立(2006-6)により、日本の患者が世界の標準または最先端治療薬にアクセスできない、いわゆる「ドラッグラグ」問題について未承認薬使用問題検討会議がカ委細されるなど、日本の癌治療環境の変容に即応にあしこれを先導すべく、集学的・専門的双方の研究開発を具体化している。すなわち、「分子標的治療薬の作用機序など、高度医療情報の提供」、「拠点病院を中心とする医療連携」などを進めている。

2-9        製品別戦略を深耕する(SANARI PATENT 注:内閣知財戦略本部の戦略が分野別化することに相応する)。例えば、世界90余国で承認されている「ハ-セプチン」については、癌再発抑制の顕著な効果が得られたことにより、術後補助療法の拡大適用を推進する。

2-10    腎不全の透析患者が毎年4%増大して25人を超える趨勢に対応し、貧血対策を含め、エリスロポエチン製剤「エポジン」の適正使用を推進する。

2-11    骨粗鬆症剤「エビスタ」の婦人科系副作用を抑えた特性により、日本イ-ラリ-との共同販売額が2005年比45.7%増の規模に達し、世界90国承認骨粗鬆症剤としてNo.1ブランドに成長した。

2-12    遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤「エポジン」が、未熟児貧血への適応および用法用量の追加承認を受けた。

2-13    上記を総括して、中外製薬は、ロシュグル-プが有する開発候補品の日本における開発・販売に第1選択権を持ち、戦略領域におけるロシュ研究テ-マの積極的な導入や、中外製薬独自の研究活動の進展に伴う開発ラインを引続き充実する。

2-14     日本では今後、欧米で得られた臨床試験研究の活用(SANARI PATENT 注:特許審査結果の日米間等相互承認案と軌を一にする考え方である)や、日本を含むグロ-バルで実施した臨床試験の結果を用いた申請が活発化すると予想されるので、中外製薬は、ロシュと提携してこの趨勢に即応する。

2-15    知財戦略については、研究テ-マの初期段階から知財部が共同している。

2-16    特許取得戦略の実行においては、ロシュグル-プとの共同開発を要素とする出願国選定を行う。

2-17    職務発明対価の上限を撤廃した。

2-18    中外製薬の「エポジン」、「ノイロジン」に対する味の素提起の特許侵害訴訟については、東京地裁に続き、知財高裁において中外製薬が勝訴した(2007-2判決)(SANARI PATENT 注:中外製薬報告による)

3.        SANARI PATENT所見

  製薬業界の内外にわたる企業連携、M&A,経営統合などが進捗してきたが、知財戦略を含めて、それらのシナジ-効果が発揮されることが、わが国製薬工業ならびに人類福祉のために希求され、これに即応する中外製薬の成果が注目される。

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Know-how for Protection of Know-how: 関西ペイント勝訴の知財高裁判決(8月30日)

Elements of Know-how Infringement: 「秘訣だから明文化しない」では、法的保護は受け得ない、という場合

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  ノウハウと特許権の使い分けは、知財戦略の核心であるが、不正競争防止法上のノウハウ侵害成立要件について、知財高裁が判示した(2007-8-30)。ただし本件は、会社の元技術幹部が、その会社を被告として提起したもので、会社がノウハウ防衛する通常の場合と異なる様相を示している。

1.        原審・東京地裁の判決(2007-3-16)(元関ペ技術本部長Aの請求棄却):

1-1        関西ペイントを被告として、原告・元関ペ技術本部長Aが、ノウハウ侵害に対する損害賠償(1366万円余)を請求した。

1-2        事案の概要(SANARI PATENT要約)

1-2-1      元関ペ技術本部長Aは、マグエックスおよびシンコ-技研と共に電磁波吸収材用ゴムシ-トの製造技術を開発したが、マグエックスのゴムシ-ト製造・販売に当たり、元関ペ技術本部長Aのノウハウ部分に関しては、元関ペ技術本部長Aからの承認を得ることを条件とする旨、元関ペ技術本部長A・マグエックス間で覚書を締結した(2000-3-21)

1-2-2      元関ペ技術本部長Aは、関西ペイントの顧問として、日本エネシスとの交渉窓口を担当していた。

1-2-3      関西ペイントのライセンシ-・オリタは、関西ペイントに対し、「元関ペ技術本部長Aが日本エネシスとオリタに対して反利益行為を行った」として、元関ペ技術本部長Aの担当変更を要求した。

1-2-4      関西ペイントの常務らは、このため、日本エネシスと面談した。

1-2-5      元関ペ技術本部長Aは、関西ペイントに対し、「関西ペイントが元関ペ技術本部長Aのノウハウを承認なく使用したことについて166万円」「1-2-4の面談について1200万円」の損害賠償を、不正競争または不法行為該当として請求した。

2.        争点

2-1        関西ペイントは元関ペ技術本部長Aのノウハウを侵害したか。

2-2        面談行為1-2-4は、不法行為か。

2-3        不法行為2-2に消滅時効成立の有無

2-4        損害額

以下、1-2-42-2の「面談」内容は、ノウハウに関係しないから、2-1についてのみ考察する。

3.        東京地裁の判断の経緯

3-1  元関ペ技術本部長Aは、本件ノウハウについて、ゴムシ-トの連続製造技術、量産性とシ-ト性能のための成分組成、ゴムシ-トのホットプレス用ポリエステルの接着性、ゴムシ-トの製造規格と特定したものの、その具体的内容具体的立証されていないので、受命裁判官は、元関ペ技術本部長Aに対し本件ノウハウの具体的な内容を明らかにするよう求めた。

3-2  また元関ペ技術本部長Aは、「本件ノウハウをしようすることは不正競争防止法2条1項4号該当」と主張したので、受命裁判官は、不正競争防止行為を具体的に特定するよう求めた。

3-3  東京地裁は、元関ペ技術本部長Aの主張に係る各証拠を精査しても、本件ノウハウの具体的な内容に明らかでないと判断した。

3-4  マグエックスと元関ペ技術本部長Aとの覚書は、関西ペイントに対してその効力を及ぼさない。

4.        知財高裁の判断

4-1        元関ペ技術本部長Aは、「本件ノウハウの内容は、3-1の記述で十分に具体的である」と主張するが、これだけでは具体性を具備するに至っていないことは極めて明確である。

4-2        また元関ペ技術本部長Aは、「ノウハウは特許技術と異なり、一種の技術秘訣であるから、文書で明確に明文化できるものではない」と主張するが、たとえノウハウが一種の技術秘訣であろうと、それが不正競争防止法の営業秘密に該当し、その侵害が同法2条1項4号に該当するというためには、法的保護に値するか否かを具体的に認定できる程度に「営業秘密」の内容が具体的であることを要する。(SANARI PATENT 注:不正競争防止法2条1項4号は、「不正手段により営業秘密を取得する行為、または不正取得行為により取得した営業秘密を使用もしくは開示、すなわち、秘密を保持しつつ特定の者に示すこと」を不正競争の一つと定めているが、知財高裁判決はこの不正競争該当判断の要件を示した)

5.        SANARI PATENT所見

ノウハウを知財戦略の核心として、侵害を排除するためには、ノウハウの内容の具体的立証が必要であり、その具体的在り方を示した判決である。

2007年9月 1日 (土)

IP High Court Decision on High Air Tight Packing Material: 東洋製罐の特許権「ガス遮断性に優れた包装材」関係(知財高裁8月28日判決)

Comparison to MITUI Petrochemical’s Description of Olefin Co-Polymer Patents : 明細書補正において許容されない「新規事項」該当性の判断

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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   包装材料の基体として環状オレフィン共重合体は、透明性・水蒸気遮断性が優れているが、抗生物質等の医薬品の包装に適する水蒸気透過量の要件を満たすためには、ガスバリア性の水準を一定値に高める必要がある。東洋製罐の「ガス遮断性に優れた包装材」特許権は、この課題を解決するものとして設定登録された。

1.        今次知財高裁判決の特徴

1-1  知財高裁判決文の「親切度」が益々向上して、今次東洋製罐「「ガス遮断性に優れた包装材」特許権(2003-11-7設定登録)を特許庁審判を無効と審決した事件についての判決文(2007-8-28)には、争点の関係条文の1部をも記載し、知財権問題への国民の関心の浸透に資している。

1-2  先ず今次事件の経緯を概観する。

1-2-1      東洋製罐は、「ガス遮断性に優れた包装材」特許の特許者であるが、大協精工がその無効審判を特許庁に請求し、特許庁は特許無効と審決した(2007-10-11)

1-2-2      東洋製罐はこの審決の取消を知財高裁に求めた。その後、東洋製罐が本件「ガス遮断性に優れた包装材」特許について訂正審判請求をしたことから、知財高裁は、審決取消を決定し(2006-3-8)、特許庁は再び本件無効審決請求の当否について審理した結果、東洋製罐の「ガス遮断性に優れた包装材」を無効とする第2次審決をしたので、東洋製罐は、この審決の取消を知財高裁に求めた。

1-2-3      知財高裁は、上記1-1判決で、東洋製罐の請求を棄却した。

2.        特許庁の無効審決の要点

2-1  東洋製罐による訂正事項の1部は、訂正前発明の明細書に記載されておらず、従って、訂正を認められない。

2-2  東洋製罐の「発明の詳細説明」には、「その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、容易にその実施をできる程度に、その発明の目的・構成および効果の記載」を欠く。

3.        東洋製罐が主張する審決取消事由

3-1        審決は、本件訂正の適否の判断を誤っている。(SANARI PATENT 注:ポリマ-化学構造式の一般的な記述法についても争われている)

3-2        本件発明と従来技術(引用発明)との一致点の認定を誤っている。

3-3 本件発明と従来技術(引用発明)との相違点の認定を誤っている。

3-4 同上

3-5 詳細な記載要件の充足性の判断を誤っている。

4.        本件訂正(3-1)における「新規事項の追加」該当性に関する知財高裁の判断

4-1  今次知財高裁判決で、知財高裁が新旧条文を明示しつつ詳述した「新規事項の追加」該当性判断を以下に要約する。

4-1-1 本件発明の「環状オレフィンを30モル%以上含有するオレフィン共重合体」を、「テトラシクロドデセンである環状オレフィンを30モル%以上含有する該環状オレフィンとエチレンとの環状オレフィン共重合体」とする訂正は、「願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内」のものといえるかどうかについて検討する。

4-1-2 東洋製罐の当初明細書の「発明の詳細な説明」には、三井石油化学のアペルから成るプラスチック材などの特定の物質が開示されている(SANARI PATENT 注:「アペル」は、エチレンとテトラシクロデセンの共重合比率を変更することにより得られる共重合物の総称)

4-1-3 アペルとして、物性が異なる様々な銘柄が実際に販売されているから、本件訂正により、別個のエチレンテトラシクロデセンの共重物を新たに取り込むこととなる。すなわち、当初明細書においては「環状ポリオレフィン含有量を30、32、33モル%に調整した三井石油化学製のアペル」というある特定の種類のアペルが開示されているに過ぎない。従って、当業者にとって新たに取り込まれる物性が異なるエチレンテトラシクロデセンの共重合物も自明であると認めることはできない。

4-2 東洋製罐は、「当初明細書における『アペル』の記載を『テトラシクロドデセンエチレンから成る環状オレフィンの共重合体』と記述することは、ギリシャ語に由来する学名を日本語の通常標記にする、あるいは、化学式を一般名表示するようなもので、単なる表示方法の変更に過ぎないと主張したが、知財高裁は、「開示されていない別の『アペル』を取り込んだものとして、新規事項の追加に該当する」と判断した。

5.        SANARI PATENT所見

  上記の判断に基づき、従来技術との相違点、一致点、想到容易性について、知財高裁の判断が示されているが、東洋製罐の主張も緻密に述べられ、「新規事項」の該当性について参考とすべき特許性訴訟である。

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