最近のトラックバック

2016年8月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

« 2007年7月 | トップページ | 2007年9月 »

2007年8月31日 (金)

Patent Infringement Problem on Chipsets 組合せ集積回路(チップセット)の特許侵害

Intensively Developing Field for CDMA and WCDMA/GSM Systems:ノキア、クアルコム等の国際競争

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい) 

1.        組合せ集積回路(チップセット)開発の国際競争

1-1  SANARI PATENTではチップセットを組合せ集積回路と暫定的に呼んでいるが、IT分野ではチップセットの呼称が定着しつつあるから、その一般化を待ってチップセットに統一すべきである。

1-2  現状では、チップセットの語義は多様に解説されている。例えば(SANARI PATENT要約)

1-2-1      アスキ-: チップセットは、PC互換機のマザ-ボ-ドに必要な機能を、数個のLSIにまとめたもの。これには、タイマや割り込み、DMA、メモリ-をコントロ-るする回路右が含まれる。

1-2-2      はてなダイアリ-: チップセットとは、パ-ソナルコンピュ-タ内部の、CPUの周辺回路を搭載したチップの集まりのことである。メモリ-インタフェ-スやAGPなどの制御回路に搭載されているため、コンピュ-タのパ-フォマンスに重大な影響を与える。

1-2-3      ウィキペディア: チップセットとは、ある機能を実現するのに、複数の集積回路を組合わせて機能を実現する構成の場合、それら一連の関連のある複数の集積回路のことである。とりわけ、コンピュ-タにおいて、CPUの外部バスと、メモリや周辺機器を接続する標準バスとのバスブリッジや、パ-ソナルコンピュ-タを構成するのに必要な周辺回路を集積したチップといったような、複数のチップのことをチップセットと呼ぶこともある。

2.        ノキア(Nokia)のプレス発表

2-1  組合せ集積回路(チップセット)開発の国際競争が激化している現況下で、「ノキアがクアルコム(Qualcomm)製チップの輸入禁止を米国国際取引委員会(ITC:United States International Trade Commission)に求める」という、ノキアのプレス発表(2007-8-17)に基づくマスコミ内容の推移が注目されている。

2-2  今次ノキアの公表内容(SANARI PATENT要約)は次のように述べている。

2-2-1        ノキアは、クアルコムの不公正取引と特許権侵害について、米国国際取引委員会(USITC)の調査を要求する。これはCDMA(SANARI PATENT 注:Code Division Multiple Access:符号多重接続。第3世代ケ―タイの通信方式として国際電気通信連合ITUによる国際標準化が企図されたが、いわゆるファミリ-コンセプトによる複数デデファクト標準化の実態となっている)WCDMA/GSM(SANARI PATENT 注:広帯域符号多重接続とGSM Global System for Mobile Communications の両用可能なケ―タイ方式)に関する5件のチップセット特許権侵害についての調査要求を含むものである。

2-2-2        ノキアは、「クアルコムの『ノキア特許権侵害チップセット』やその積載製品の米国内への輸入」に対する禁止命令を求める。

2-2-3        ノキアの本件チップセット特許権は、無線通信の性能と効率を改善する(improve the performance and efficiency of wireless communication devices)と共に、製造コストの低減、製品サイズの小型化、バッテリ-寿命の延長(enabling lower manufacturing costs, smaller product size, and increased battery life)を実現する技術に関するものである。

2-2-4        ノキアは、15年間にわたり巨額の研究開発費を投入して、無線通信における世界有数の最強・最広汎なパテントポ-トフォリオを構築してきた。これを需要者のニ―ズに応じて活用・提供すべく、ノキアはその侵害・無許諾使用に対し強力な防衛措置を講ずる。

2-2-5        ここでノキアについて述べれば、ノキアは、移動通信の世界的リ-ダ-として、その革新および「インタ-ネットと通信の融合」を推進してきた。ノキアは、移動情報機器の広汎な開発により、新たなビジネス・ゲ-ム・ナビ・ビデオ・テレビなどを提供し、また、通信ネットワ-クの機器・サ-ビス・ソリュ-ションを提供し続ける。

    SANARI PATENT所見

3-1 CDMA等の世界市場制覇をめぐって、クアルコム、ノキア、エリクソンなどの国際標準化におけるパテントポリシ-の調整や、特許権侵害の相互提訴が活発である。クアルコムがノキアに対して提起した訴訟に、ノキアが逆提訴する対抗方式も見られてきた。

3-2  組合せ集積回路(チップセット)に関する事件としては、米国国際取引委員会は既に、クアルコムとブロ-ドコム間の事件において、クアルコムによる特許侵害を判断し、この件に関するクアルコム製の組合せ集積回路およびこれを搭載しているケ―タイの輸入禁止措置を決定した由である。

3-3 CDMAの国際標準化をめぐる歴史的経緯については、クアルコムとエリクソンのデファクトベ-スの拮抗を述べたSANARI PATENT「グロ-バル情報通信システムの構築における国際標準化とプロパテント政策との協調」(日本弁理士会「パテント」誌1999-9を参照されたい。

2007年8月30日 (木)

Organic Photo Conductor (OPC): キャノンファインテック、保土谷化学、リコ-、富士ゼロックス、三菱化学等の開発進む

Canon-Finetech Presents Business Report:  キャノン製レ-ザ-ビ-ムプリンタ向け有機光導電体材料

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  12月決算会社のうち、キャノンファインテック(東証1部)の中間報告 書(2007-1-16-30)を受領した。増収増益基調を続け、野村證券・東洋経済の会社四季報には、多機能プリンタ等の堅調に加えて、「無借金」と特記されている。確かに、今次中間報告書連結貸借対照表に借入金の記載はなく、支払手形・買掛金を含む流動負債合計額は対前中間期比5%以上減少、流動資産は約3%増加して、流動比率(流動資産/流動負債)は、212.6%から、

 230.4%と、優良度を更に増している。

  

  特にキャノンファインテックの化成品部門で、有機光導電体原材料は、「レ-ザ-ビ-ムプリンタの感光ドラムに塗布される材料で、キャノン製レ-ザ-ビ-ムプリンタのほとんどにキャノンファインテックの有機光導電体が 用いられている」旨、今次キャノンファインテック中間報告書にも強調されている。

  有機光導電体は、同業各社が挙って開発しており、知財専門家の業務にも馴染み深いから、ここで全般的な動向を考察する。

1.        有機光導電体の市場規模の拡大

1-1        標記について、保土谷化学工業が三菱製紙から、有機光導電体材料事業を譲り受けた際の公表(2006-4-26)の1部を引用すると、次の趣旨を述べている。

「保土谷化学工業では、有機光導電体材料事業をコア事業の一つと位置付けて、経営資源を重点配分し、同事業の拡大・成長を図ってきたが、近年、有機光導電体材料分野の市場規模は画像技術高度化の進展に伴い、逐年拡大している。保土谷化学工業は、有機光導電体材料事業の成長基盤を確立し、競争力・技術力の一段の強化、顧客満足度の更なる向上を図るため、三菱製紙から同事業を譲り受け、トナ-用電荷制御材料を含む電子材料事業全般を拡充する。」

1-2        現在、「有機光導電体」という用語は、「光照射による電子遷移の結果、物質内部で移動可能な自由キャリア(電子・正孔)が生成し、輸送されて、光導電現象を示す有機化合物」の総称として用いられる。

2.        特許公開事例(SANARI PATENT要約)

2-1        リコ-プリンティングシステムの「静電印刷装置」

2-1-1      目的: メモリ現象が発生しない印刷品質の高い静電記録装置を提供する。

2-1-2      構成: 有機光導電体を母材とし、単層構造である感光体を帯電させ、画像情報により静電潜像を形成し、これをドナ-により顕像化する静電印刷装置において、印刷速度が300mm/sec以上であり、転写機構上流に1次電光源を有し、下流にAC除電器と清掃機構を配し、その活用流に再帯電器と2次除電光源を有すること、もしくは、上流に1次除電光源を有し、下流に主帯電極性と同極のDCバイアスを印加したAC除電器を配し、清掃機構の下流に2次除電光源を有することを特徴とする。

2-2 三菱化学の「画像形成方法」

2-2-1 課題: 高速の画像形成方法において、良好な耐磨耗性、ライフ、画像特性を提供する。

2-2-2 解決手段: 感光体の回転速度が60rpm以上の条件で使用される電子写真方式の画像形成方法において、感光体として所定の式で表される繰り返し構造からなるバインダ-樹脂を含有し、かつ別の所定式で表される押し込み試験における残留変形量が50%以下である有機光導電体を有する円筒状電子写真感光体を用いることを特徴とする。

2-3 富士ゼロックスの「画像表示媒体および画像書き込み装置」

2-3-1 課題: 記録された機密情報の漏洩や改ざんを防止できる画像表示媒体および画像書き込み装置を提供する。

2-3-2 解決手段: 画像表示部は、書き込み側の第1の画像表示層に第2の画像表示層が積層されて成る。第1の画像表示層は、透明基板、透明電極層、光導電層、遮光層、表示層が積層されて成り、第2の画像表示層は、透明基板、透明電極層、光導電層、表示層が積層されて成る。第1の画像表示層の光導電層は、電荷輸送層の両側に電荷発生層を設けた有機光導電体から成り、表示層は(共に)、メモリ性の液晶から成る。第1の画像表示層から画像に応じた光を照射し、かつ所定電圧を透明電極間に印加することにより第1の画像表示層または第2の画像表示層(SANARI PATENT 注:特許電子図書館の表示に「2」が脱落している)に画像を書き込む。第1の画像表示層を表示する場合、表示を許可された場合にのみ第2の画像表示層を透過状態にする。

2-4 ヒュ-レット・パッカ-ドの「正帯電用有機光導電体」

2-4-1 課題: 優れた表面離型特性、従って効率の高いトナ-粒子転写性(SANARI PATENT 注:特許電子図書館の表示に「性」が脱落している)を有する永久的に繰り返し使用可能な正帯電用有機光導電体を提供する。

2-4-2 解決手段: 導電性基材成分と、その上に約1μm以上の厚みの層を形成する水酸基含有結合剤成分と、この結合剤成分全体に均一に分布され、所定の式を有するフタロシアニン顔料成分と、ポリシロキサン、オルガノシラン化合物およびケイ素原子を有する多孔性充填剤よりまる群から選ばれ、結合剤成分全体に均一に分散される反応性安定剤成分とを含む。

2007年8月29日 (水)

Google’s Consolidated Statement of Income, Six Months Ended June 30, 2007: サイイバ-スペ-ス・Cyber-Spaceにおける多機能の展開

Technology Overview of Google:重要性反映技術、コンテンツ分析技術

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

1.        本年上半期のグ-グル・Googleビジネスの活況:

1-1  最近公表されたグ-グル・Googleの本年上半期財務諸表(2007-1-126-30)は、単に「検索サ-ビス企業」と呼ぶことが相応しくない業容の質的・量的拡充を示している。サイイバ-スペ-ス・Cyber-Spaceが有線・無線、固定・ケ―タイ、通信・放送、在来インタ-ネット・セカンドライフを融合するグロ-バルな高度情報流通の場の名称であるとすれば、グ-グル・Googleの業務には、「サイイバ-スペ-ス・Cyber-Spaceサ-ビス・プロバイダ」(CSP)という名称を用意することが適切と考える。

   わが国でグ-グル・Googleの創業(1998)に先立ってインタ-ネットサ-ビスプロバイダとして発足したニフティを例示しても、その検索システムはグ-グル・Googleと連携しており、グ-グル・Googleの影響力は、先発ISPを通じても、グロ-バルに普遍している。HTMLからWAPi-modeJ-SKYEZWebへの変換、AT&T WirelessSprintPCSNextelPalmHandspringVodafoneなどへの無線技術提供が、これを更に決定的にする。

1-2  すなわち、本年上半期のグ-グル・Googleの営業収入(Revenues)は、755360万ドル(年間換算として2倍すれば、1兆7373億円)に達し、前期(2006-7-112-31)を16%上回る。上半期の営業経費は9億4049万ドル、研究開発費は6億5816万ドルで、前期を各77.9%、69.9%上回り、両項目を含む総経費(Total costs and expenses)は上半期521013万ドル(対前期65.3%増)、従って、営業利益(Income from operation)は上半期232582万ドル(上記同様の年間換算で2686億円)、営業利益率は、

15.5%(前期33.1%)に達して、好調の維持と業容拡大経費の支出増を示している。

2.        グ-グル・Googleの志向と技術

2-1  グ-グル・Googleの使命意識(Google’ Mission)は、同社の「グ-グル・Googleのミッシヨンは、全世界の情報を機構化・機能化(organize)して、グロ-バルにアクセス可能かつ有用とする(make it universally accessible and useful)ことである」という自己紹介に示されている。

2-2  現時点でのその内容を、グ-グル・Googleは次のように述べている。

2-2-1      グ-グル・Googleの使命を果たしてゆく第1歩は、スアンフォ-ド大学のオンライン情報検索であったが、その機構は高速度に全世界に普及し、世界最大の検索機構として簡便かつ瞬時に適切な応答を無料で提供している。

2-2-2      グ-グル・Googleは諸企業に広告のスペ-スと機会を提供しており、利用企業数は急増しているが、グ-グル・Googleは取引に介入はせず、企業にとって低コストかつ機敏な広告媒体をサイイバ-スペ-ス・Cyber-Space上に提供しているのである。(この項SANARI PATENT 意訳)

2-2-3      グ-グル・Googleのコア技術として、PageRank TechnologyHypertext-Matching Analysisがある。

2-2-3-1 PageRankは、5億を超える変数(variables)と20億を超える術語(terms)によってウェブペ-ジの重要性を反映(reflect)させ、検索結果において位置を序列する技術である。この技術は、主観的な操作を排除し、人為的介入がない(There is no human involvement or manipulation of results)から、客観的情報として企業の信頼を得ている。

2-2-3-2  Hypertext-Matching Analysisは、コンテンツを分析する技術である。

2-3 グ-グル・Googleは、本年9月6日開催のシティグル-プ技術コンフェレンス等にも参画している。

3.        SANARI PATENT所見

特許発明も文化的創作も、高度な検索と、これに基づく高度な着想によって成立する。例えば、検索結果による従来技術の精確な把握によって高度な技術的着想が発明として生成する。

グ-グル・Googleの名称は、100億を意味する数学の術語に由来すると同社は解説しているが(Google is the mathematical term for a 1 followed by 100 zeros)、サイイバ-スペ-ス・Cyber-Spaceの情報はバイト計算すれば、100億を遥かに超えて指数関数的に増大し、高度に機能化される。

知財開発について、内閣知財戦略本部がこの側面にも政策を志向されることを要望する。

2007年8月28日 (火)

Republic of Korea Occupies World No.2 Status in WIPO Report on Resident Patent Filings per Million Population

Various WIPO Statistics : 人口当たり国内特許出願件数は、日本、韓国、米国、ドイツの順

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  韓国の著名特許事務所P.K.KIMASSOCIATESからのNews Letterを受信した(2007-8-20)。先ず韓国知財活動の情勢をWIPO 報告に見る。

  WIPO(世界知的所有権機関)の世界特許出願状況報告(WIPO PATENT REPORT: Statistics on Worldwide Patent Activities)(2007-8-10公表)について、マスコミがその最初の部分だけを強調して、「2005年の特許出願総数、中国が世界3位、前年比3割増で、韓国を抜く」という報道振りであったため、国内出願件数や登録件数の順位が周知されていないが、国内出願(Resident Filings)件数では、日本、米国、韓国、中国、欧州(欧州特許庁)、ドイツ、ロシア、英国、フランスの順であった。

  標記の人口百万人当たり国内特許出願数は、日本2900(対2004年-0.3%)、韓国2600(+15.6%)、米国850(+6%)、ドイツ750(-0.1%)と概観され、韓国国内出願の急増が目立つ。

なお、世界出願総数(各国の出願受付数『国内企業の出願と外国企業からの出願の和』の総和)は、2004年比7%増の166万件、日本43万件(+0.9%)、中国17万件(+33%)、韓国16万件(+14.8%)。

このような韓国知財活動の活況を先導するP.K.&ASSOCIATESのニュ-スレタ-は、次のように送信している。(SANARI PATENT要約)

1.韓国特許庁は、本年7月1日から改正制度を施行

1-1 特許請求範囲提出猶予制度を導入し、特許出願時には特許請求範囲の提出を省略できることとし、特許出願後から1年6月以内に特許請求範囲を提出すれば、特許出願時に提出されたものと見做される。

1-2 これにより発明者は、特許請求範囲が未提出の状態でも出願が可能となり、充実した特許請求範囲を作成する時間的余裕を持つ。

1-3 請求項別の審査制度を導入し、特許庁審査官が拒絶理由を通知する際には、拒絶理由がある全ての請求項に対して具体的な拒絶理由を記載することが義務づけられる。

1-4 これにより出願人は、特許を完璧に受けるために、どのように対応すべきか、十分に予測できる。

1-5 出願人から申出があれば、中間書類提出期限前でも審査官が許否を決定できることとし、迅速な行政処理に資する。

1-6 出願人が出願後1ケ月以内に取下または放棄する場合、特許出願料および審査料が払い戻されるようにする。

1-7 出願書類の書式を統廃合し、203書式を63書式に減少すると共に、記載方法を簡素化する。

1-8 特許手数料を、ケ―タイ、クレジットカ-ド、電子貨幣等により納付できることとし、従来、韓国特許庁のホ-ムペ-ジ「特許路」に限定されていた電子納入の方法を拡大する。

2.商標権の対象を拡大

韓国特許庁は、ホログラム、動作、色彩など視覚的に認識可能な標章であれば、商標として登録できるようにする。

3.特に活発な特許分野

   韓国特許庁によれば、第3世代記録装置であるブル-レイディスクより更に容量が20倍(120分映画714本の記録が可能)に達する第4世代記録装置「近接場光記録技術」を先占するための競争が激化している。この技術に関する特許出願数が4年前の5倍近い。

2007年8月27日 (月)

Government Policy for Implementing Japan Brand Strategy to be supported by NIFTY MegaBuzz 第1弾は「味の素」のトクホ健康食品

In order to make healthy Japanese Food known worldwide:  Utilizing the Regionally-Based Collective Mark System:  ブランド戦略内外展開の新戦力

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  

企業戦略においても国家戦略においても、ブランド戦略がその主力となることは、わが国では内閣知財戦略本部の知財推進計画07に明示されているし、新興諸国も挙って自国ブランド政策を国際経済政策の核心としていることから明白である。

  ブランドの確立は企業の知財と経済外交の協働によらなければならないが、さらに第3の起動力として、全世界のサイバスペ-スを制御する有力インタ-ネットサ-ビスプロバイダやサ-チサ-ビスプロバイダの支援を活用する局面に先駆することが、ブランド戦略の優劣を決定する情勢となった。

  この見地から、ニフティとサイバ-バズのブランドサ-ビス新展開(2007-8-22両社公表)に注目する。

1.        ニフティとサイバ-バズのブランドサ-ビス新展開

1-1  両社の上記公表は、「企業のブランドごとにブログ・インフルエンサ-を抽出、クチコミプロミ-ションの実施(SANARI PATENT 注:ここで「クチコミ」とは、ブログクチコミと、これから派生するいわゆるクチコミを総称すると解するが、わが国内だけでもブログ人口が1000万人に近づきつつあり、先進諸国の従来インタ-ネットブログ人口および中国等のケ―タイ巨大人口を考えると、その影響力は規模的コスト的に圧倒的に強大化すると考える)、効果検証までワンストップで提供する大規模クチコミマ-ケッティング支援サ-ビス「MegaBuzz」(メガバズ)を2007年8月22日から開始」するという標記のもとで、次のように述べている。(SANARI PATENT要約)

1-1-1 第1弾として、味の素ゼネラルフ-ズが8月21日から全国発売する「体脂肪低減効果によるトクホ(特定保健用食品の認可を得ている『ベレンディ 香るブラック』を予定している。嗜好品にも健康にも関心と意識が高いブログ・インフルエンサ-を共同発掘してアプロ-チし、大規模な体験型クチコミサンプリング・イベント等を実施して、大規模な市場を創出する。

1-1-2 「MegaBuzz」(メガバズ)の特徴は、

1-1-2-1 プロモ-ション実施前に、企業のブランドごとの商品特性に合致したブログ・インフルエンサ-を、サイババズ会員の中から抽出する。これに加えて、ニフティの多角度的なブログ評判分析サ-ビス「BuzzPlus」を用いてブランド関与度・ネットワ-ク規模など十数項目の独自指標に基づき、ブログ全体からもブログインフルエンサ-多数を抽出し、体験型クチコミサンプリングイベントへの参加を促進する。

1-1-2-2 企業はブランドごとに、ブランド体験の機会をブログインフルエンサ-に提供し、ブログインフルエンサ-ののブログによって、その意見・感想としてブログクチコミされることを主眼とする(SANARI PATENT 注:コスト効率が極めて良好と考える)。これにより企業は、自社ブランドにロイヤリティが高い消費者と、とり深い関係を構築しつつ、クチコミの機会と効果を最大化することができる。

1-2 プロモ-ション実施後、あらかじめ設定した効果指標に基づいて、ブログクチコミの波及を定性的・定量的に分析・検証できる。

2.        消費者発信情報(CGM: Consumer Generated Message)の開発・活用の先端システムとして評価

2-1  従来、消費者はアンケ-ト調査等の受動的機会が付与された場合にのみ商品に対する意見を表明できたから自発性を欠き、企業側のコストも大であった。ブログの急速な発展は、従来の個別ホ-ムペ-ジよりも遥かに簡便でクチコミ範囲と速度が優秀な「消費者発信の商品情報」機能を現出した。

2-2  この新たな消費者主体の情報デ―タ構築は、企業側の意向に影響されない自主的意見表明の豊富な機会を保証し、客観性・透明性・多数参加性において、ブランド形成に重要な役割を果たすと考える。

3.        SANARI PATENT所見

  ブランドは、若い女性同様に強いが、純白の雪やホワイトのように傷付き易い側面がある。ニフティ・メガバズが、「味の素」というグロ-バルに確立されたブランドの、トクホ(国が認定)新製品でグロ-バルに関心深い「体脂肪適正効果」の新しい商品から、着手することは、そのこと自体が優秀なブランド戦略である。

2007年8月26日 (日)

IP High Court Illustrates Technological Common Knowledge on Isomerism:知財高裁8月21日判決:気道疾患処置用医薬組成物(用途発明)の特許性

Recognizing the Contents of Common knowledge:「発明の進歩性を評価する際に参酌すべき技術常識」と「発明を実用化する際に考慮すべき事項」の混同

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  セピラコ-ルInc.のヒト炎症性閉塞性気道疾患医薬組成物特許出願拒絶査定の維持審決に対するセピラコ-ルInc.提起の審決取消請求事件について、知財高裁はセピラコ-ルInc.の請求を棄却(2007-8-21判決)したが、ここにはその主な論点を考察する。

1.「発明の進歩性を評価する際に参酌すべき技術常識」と「発明を実用化する際に考慮すべき事項」の混同について:

   特許庁は次のように述べた。

1-1  審決が、本件出願当時の技術常識として認定したのは、「異性体間で薬効に著しい差がある場合、他方が全く作用を示さない物質であっても、生体に対する負担を考慮すると、有効な異性体のみを投与することが好ましい」ということである。

1-2  この技術常識に照らせば、ラセミ体を有効成分として用いた医薬について、それぞれの異性体を分離し、各異性体の作用を調べ、有効とされ類生体のみを有効成分とすることについての動機付けが、当業界には既に存在した。

1-3  セピラコ-ルInc.は、「本件出願当時の技術常識は、『開発・研究しようとする化合物がセラミ体の場合には、各異性体の薬理作用・毒性・体内動態を正確に把握して、光学分割して活性異性体のみを医薬品として開発するメリットと、光学分割の技術的困難性および光学分割することにより高い費用が発生するというデメリットを比較考量することにより開発方針を決定するというもの』であると主張する。

1-4  しかしながら、従来技術に係る「開発」は、「実用化すること」という意味で使用されている。

1-5  上記から、セピラコ-ルInc.の主張は、「発明の進歩性を評価する際に参酌すべき技術常識」と「発明を実用化する際に考慮すべき事項」を混同したものというほかない。

2.副作用抑制の予測可能性について:

   セピラコ-ルInc.は、次のように述べた。

2-1  本願出願当時、当業者は、S-テルブタリンが気道平滑筋弛緩作用を有すると予測していたが、本願明細書に記載したように、S-テルブタリンは、予想外に、逆に気道抵抗(過反応)性を増加させるものである。

2-2  従って、このような効果を有するS-テルブタリンを排除して得られる本願発明の「気道抵抗(過反応)性の増加という副作用が抑制される」という作用効果は、本件出願当時、当業者に予測不可能であった。

3.知財高裁の判断

3-1 技術常識について:

3-1-1 一般に、製造工程の簡素化・生産性の向上・費用の低減などは、発明を製品化して事業化する際に当然考慮さるべき技術的・経済的要請であるが、従来技術によれば、合成医薬品の分野においても、かかる技術的・経済的要請のもとにおいて、薬物の光学異性体の一方にのみ高い薬理効果があることが分かっていても、その分割が難しく費用が嵩むことや、体内動態研究のレベルで、生体組織中の異性体を分離定量することが難しかったなどの理由で、他方の異性体は不活性な添加物として扱うとの認識が、当業者において一般的であった時期の存在が窺われる。

3-1-2 しかしながら従来技術においても、「異性体間で薬効に明らかな差がある場合、他方が全く作用のない物質であったとしても、生体への負担を考えると、有効な異性体のみを投与することが当然好ましく、現時点では技術的・経済的に容易でないにしても、合成医薬品の研究開発段階において各異性体の薬理作用・毒性・体内動態を正確に把握することは必要であると認識されている。

3-1-3 また従来技術においても、医薬品の多くは生体にとって異物であり、副作用が認められない場合でも、疾病という異常状態から正常状態への復帰に必要な最小限度の用量を必要期間だけ投与されるべきで、医薬品の構造中に不斉中心が存在している薬物は、たとえ一方の光学異性体が生体に対し何らの生理活性を示さないセラミ体であっても、光学分割して目的に適合した対掌体のみを提供すべきであると主張されるようになった。

3-1-4 そして本件出願当時には、「合成キラル医薬品の生体内動態、特に代謝については、異性体間で著しい差があることが明らかとなり、有効な異性体のみを投与する医薬品開発の重要性が等業者において認識されていた。

3-2 副作用抑制の予測可能性について:

3-2-1 従来技術には、S-テルブタリンの気道平滑筋弛緩作用が、R-テルブタリンの気道平滑筋弛緩作用に比べて3000分の1以下であることが認識されているから、S-テルブタリンを排除してR-テルブタリンのみを有効成分とする医薬組成物を得ようとする動機付けに従って想到し得る医薬組成物が、「気道抵抗性の増加という副作用」を抑制する作用効果を奏することは、当業者において当然に予測できる。

3-2-2 さらに、本願発明のような医薬についての用途発明においては、一般に物質名や化学構造から有用性を予測することは困難で、発明の詳細な説明に、その用途の有用性を裏付けるデ―タが必要であるが、フォルモテロ-ルについての記載がない。

4.SANARI PATENT所見

   「出願当時の技術常識の内容をどのように認識すべきか」、および、「有効性を欠く成分を除去する動機付けの存在が副作用除去の効果をもたらす場合に、副作用除去についても動機付けの存在を認識すべきか」について、知財高裁は、前者について「知見の発達」を、後者について「動機付けの存在」を認識し、説示したものと解する。

2007年8月25日 (土)

Loci of Patent Trends  「 PATENT TREND記事」の軌跡: 知財戦略と経営戦略の整合と乖離: 商標登録できない標章が貴重: 孫に優性遺伝しない種子が貴重

Inspection of Strategies by their Results: 知財戦略の妥当性の検証: 常識的と非常識的の逆転

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  「イノベ-ションに直結する基本特許の取得戦略」は通説化しているが、経営戦略上、「改良特許の累積」を「革新のホ-ムラン」に優先させた成功例など、一見、通説に即しない知財戦略選択の適否と、その普遍性を検証すべき場合も多い。

  SANARI PATENTの従来の記事について、随時、検証を試みる。

1.「革新より改良」の経営戦略

   花王の「革新より改良」(SANARI PATENT070801記事)に対する、他業界の「ハイテクよりロ-テク」情報を要約する。

  「ゲ-ム機で、ソニ-のPS3は、高性能プロセッサや次世代DVDなどの最先端技術を搭載した超ハイテクゲ-ム機であるが、製造コストは従来機より遥かに高く、2006度のゲ-ム部門の営業赤字は2323億円に達する。2007年度も、少なくとも数百億規模の赤字が確実である。

  ソニ-と対照的に、任天堂のWiiのハ-ドは、枯れた技術を集めたロ-テクマシンであるが、日本国内で既にPS3の約3倍、276万台を販売し、北米でも間もなく普及台数のトップに立つ。2007年度の任天堂の業績は、過去最高益を大幅に更新する見通しである。」(週刊東洋経済070728による)。

2.「ICチップ活用」の普遍化

くらコ-ポレ-ション(東証1部)の「ビジネス特許権の累積取得による回転寿司店経営の成功」(SANARI PATENT070725記事)で、「ICチップの活用」が要素のひとつであるが、寿司業界全体の「高価寿司と100円寿司」の知財対照情報を要約する。

「寿司市場は1兆円規模で、回転寿司がそのうち4000億円程度を占める。一皿100円の「かっぱ」「スシロ-」「くら」のトップグル-プによる寡占化が進んでいる。「スシロ-」は、皿の裏にICチップを付けて、ネタ毎の売上数を把握することにより、仕入れを効率化している。「くら」は、「スシロ-」よりも更に原価率が低く、「びっくりゲ-ム機」に食後の皿5枚入れる仕組みで「もう一皿」を喚起している。」(週刊東洋経済070707による)。

3.「会計基準高度化下のディスクロ-ジャ-業務へのビジネス方法特許による対応」

  宝印刷(東証1部)の「ビジネス方法特許を基盤とする会計基準高度化への即応」(SANARI PATENT070707記事)で、有価証券取引法等に基づくディスクロ-ジャ-高度化へのノウハウと知財の蓄積による業務拡大を述べたが、ディスクロ-ジャ-関係業務の変革と拡に関する情報を要約する。

 

「金融庁は、2008年4月から、同庁が運営する有価証券報告書開示システム(EDINET: Electronic Disclosure for Investor’s Network)に、ビジネスレポ-ティング言語として世界的に普及しつつあるXBRL言語を導入することを明らかにした。

  XBRL(Extensible Business Reporting Language)は、XML(SANARI PATENT 注:Extensive Markup Language:拡張可能なマ-ク付け言語)から派生したコンピュ-タ言語で、財務諸表などを作成について言語として、証券市場や銀行監督の世界で事実上の世界標準になりつつある。

  金融庁は、2006年8月からEDINETの最適化計画を進めてきたが、その基本案の中で、開示された財務諸表がより高度に使用されることを目的として、XBRLの導入を明示した。」(journal.mycom:070622による)

  「会計基準は、2000年来、連結会計導入、税効果会計導入、退職給付会計導入、公認会計士監査審査会設立、品質管理基準導入と高度化・複雑化し、2008年度には四半期決算・内部統制ル―ル義務付け、リ-ス会計導入も予定されて、中小監査法人の監査体制整備が課題になっている。」(週刊ダイヤモンド:070602による)。

4.知財産学連携における国立大学の特異性の有無

   国立大学協会の意見(SANARI PATENT070718記事)で、産学連携における「国立大学の立場を明確にすること」が要望されており、SANARI PATENTは、独立行政法人の本質から、国立大学協会みずから明確に意思決定すべき課題であると述べた。

  さらに抜本的に、慶大・竹中平蔵教授の「東京大学の民営化論」を要約する。

  「公務員制度改革により、民間から優秀な人材を入れるべきである。大学については、東大を民営化し、知的な付加価値を高め、留学生が多数来るようにしなければならない。東大でも世界ランキングでは20位で、せめて5位以内に入るためには、民営化し、私立大学に対する刺激ともすべきである。(週刊東洋経済:070728による)

5.SANARI PATENT所見

5-1 KDDIがケ―タイのブランドを決定する際に、「アルファベット2文字」という、商標登録できない標章「au」を選んだ知財戦略の優秀さを、朝日新聞・安井孝之編集委員が同紙の「会社再考」コラムに「時間がない、苦肉のau」と題して紹介された(2007-8-22)。NTTの独占体制に競争するブランドの選定は、他社の商標権登録の可能性や類似性が争われる惧れある標章を絶対に避けねばならず、そのためには、商標登録が拒絶される標章でなければならない、という明断である。

5-2  優良な新植物品種を開発できた場合、その種(しゅ:Species)が遺伝的に安定して、孫世代以降にも遺伝されれば経済的なようであるが、育成者権を侵害する国内外の農産業者に対処することが実際上、困難である。美味著名で特別顕著性ある「夕張メロン」(登録商標)の場合、1代目雑種には優性遺伝子が発現するが、2代目には発現せず、この生物学的機構が「侵害」を不可能にしていると、パテント誌(2007-7)が紹介している。「攻めの農政」において注目される。

2007年8月24日 (金)

Association for Promotion of Digital Broadcasting announces only 1430 days left

Radio Wave Industry Association acts on Digital Broadcasting:  放送運用規定の策定と運用における電波産業会の関与

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

1.        放送運用規定を理解する必要性

1-1  デジタルコンテンツの流通をグロ-バルに活発化することが国策であるとしても、デジタルコンテンツの創作者に対する対価が適切に支払われることが前提で、これを欠けば流通の対象自体が減衰することとなる。その調和は、わが国においては放送運用規定によってなされている。

1-2  放送運用規定の策定手続

   情報通信審議会は次のように開設している。(要旨)

1-2-1      放送された番組が、各家庭の受信機で正しく映り(SANARI PATENT 注:「正しく」の意味は記載されていない)、視聴されるためには、一定のル―ル基づき放送設備・受信機が開発され、適切に運用されることが必要である。放送運用規定とは、こうした実際の運用を想定して、送信設備や標準的な受信機の仕様などを規定したもので、送信設備や受信機は、放送運用規定を参照して設計・開発されており、デジタル放送におけるコンテンツ保護方式についても、ここで規定されている。

1-2-2      放送運用規定の策定手順としては、

1-2-2-1           社団法人デジタル放送推進協議会(Dpa)(放送事業者・受信機メ―カ等の民間事業者で構成)の技術委員会が、技術資料として放送運用規定案を作成する。

1-2-2-2           社団法人電波産業会(ARIB)(放送事業者・通信事業者・受信機メ―カ等の民間事業者により構成)の規格会議に1-2-2-1の案が提案され、承認後、ARIBの技術資料として公表される。

2.()B-CASの機能

2-1 上記で、デジタル放送協議会と電波産業会と、2つの機構が登場したが、コピ-制御の実際については、更に()B-CASの機能を理解する必要がある。

2-2 すなわち、現在、放送運用規定を受信機に確実に遵守させる仕組みとしてB-CAC方式が採用されている。B-CAS方式は、()B-CASと受信機メ―カとの間で締結される「B-CASカ-ド支給契約」に基づき、放送運用規定を遵守している受信機を対象としてB-CASカ-ドが発行される仕組みである。

2-3 視聴者は、受信機購入時に同梱されているB-CASカ-ドを受信機に挿入することによってスクランブルが解除される。

3.現行「放送運用規定」における「コピ-ワンス」ル―ルの適用

3-1 コピ-ワンスによれば、例えば、放送番組をハ-ドディスクに録画して、これをDVDディスクにコピ-すると、ハ-ドディスクの録画は消去される。そして、このDVDから他のDVDへのコピ-はできない。要するに「1回しかコピ-できない」のである。(SANARI PATENT 注:情報通信審議会の解説は、「ダビング」とか「ム-ブ」という用語を加えているので、却って理解しづらい。念のために情報通信審議会の定義では、「コピ-ワンスとは、録画した放送番組をダビング(オリギナルを残したままコピ-すること)はできず、移動(ム-ブ)のみを可能とすることを実現するル―ルである。」)

3-2 情報通信審議会は、このような現行著作権保護方式を、次のように評価している。

3-2-1 コピ-ワンスは、デジタル入出力方式により接続されるデジタル機器間のコンテンツ転送等に係る保護技術であるDTCP(Digital Transmission Content Protection)等のル―ルを参考にして、技術を開発したメ―カ各社と、方式を選択した放送事業者との合意により策定・適用されているものであり、その内容・策定手続のいずれの面においても、基本的に民間ベ-スの取組に委ねられており、法制度によって規定されrているものではない。

3-2-2 地上放送(SANARI PATENT 注:アンログ・デジタル双方を含む。アナログについては、わが国でもコピ-制限していない)はどの国でも基幹放送であり、諸外国はコピ-制限していない(米国のデジタルミレニアム著作権法は、公共放送・無料放送に対するコピ-制限を禁止している)。わが国のコピ-制御は行き過ぎではないか。

3-2-3 コンテンツの制作費は、米国と同様、マルチユ-スで回収する構造すればよいのではないか。

4.SANARI PATENT所見

   デジタルコンテンツの流通促進のため、事前の許諾に代替できる簡便な手続、すなわち、著作権使用料の事後請求権化報酬の事後請求権化を2年以内に整備すべきであるという経済財政諮問会議での民間議員発言(2007-2-27)も記録されているが、「知的財産権が絡む商取引では、許諾権を挟んで交渉するのが基本であり、デジタルコンテンツについて報酬の事後請求権化(SANARI PATENT 注:200612月著作権法改正102条3~5項は、その1部実現であることを周知すべきである)で代替する流れは、特定の産業を利する形で行政が行う商取引への不当介入である」という反発もあり、法改正が早急・円滑に進むか、疑問である。

   当面、民間ベ-スの放送運用規定に、コピ-ワンスに代る「コピ-テンス」(SANARI PATENT 命名)を定めることをもって対処すべきである。

2007年8月23日 (木)

Value of Sleeping Patents 浴用タオル特許発明の商品化が「門前払い」の報道:類似例を朝日新聞が日曜日ごと紹介

What Means Quality of Patent ?  個人発明における「高度な技術的思想の創作」「新規性・進歩性・非容易想到性」

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  朝日新聞が毎週日曜日に、「休眠特許」と題するコラムを設けてきた。今週は、「泡で洗う、浴用タオル」という発明で、特許を取得したが、商品化のための企業への持込は「門前払い」と紹介している。

1.        休眠特許の価値

1-1  特許要件の一つは「産業上の利用可能性」で、従って、特許が付与された以上、自己使用・譲渡・ライセンスのいずれかで産業上利用され、特許法の目的「産業の発達に寄与する」と自他共に期待するが、上記朝日新聞の連載はこの期待に沿わない事例を次々に紹介している。紹介する趣旨を述べていなとので、特許批評的に意味深なのか、周知のために好意的なのか分からないけれども(今週の記事においては、和気真也記者は発明者と発明内容に非常に優しく好感を示している)、少なくとも知財専門家としては関心を持つ記事である。

1-2  事例として先ず、今週の記事を考察する。

1-2-1      紹介されたのは、特許3806134(2006-5-19登録)、発明の名称「浴用タオル」。発明者・岡本涼子氏(特許文献には記載していないが、朝日新聞の記事では、主婦・55歳)。

1-2-2      発明の内容は、朝日新聞は流石に分かりやすく、「岡本さんは7年前から、肌に優しく、きれいに洗えるタオル作りに取組んできた。石鹸の泡に注目し、昨年辿りついたのが、泡がよく出るタオル「あわみん」だ。柔らかめのナイロンタオルの中央に、約30cm四方のメッシュと硬めのナイロンを重ねる。それぞれに少し皺が寄るように縫うのがミソで、きめ細かい泡を作りだす。」

1-2-3      これが公開文献の要約では、

1-2-3-1           課題: 洗浄効果、皮膚への優しさ、洗い易さ、清潔性等の特性を併せ持つ浴用タオルの提供

1-2-3-2           解決手段: 平面長方形状の基布と、その略中央部の上部に中布・上布がそれぞれこの順に設けてあり、全体が3重構造になっている。これらの基布・中布・上布がの端面がいずれも縫合されている。そして、上布は基布および中布に対して弛ませて構成されている。このように構成することにより、中央の多層部で泡立てて、その他の部分で余分な水を絞って廃棄するという含水分量調節ができる。その結果、微細で粘度を持ち洗浄効果の優れた泡質の泡を得ることができる。従来の浴用タオルに比べて、泡の皮膚への吸着度、泡保持性、洗浄力に優れるので、皮膚を摩擦することなく洗浄効果を得ることができて皮膚を痛めない。

1-3                      朝日新聞によれば、企業が「門前払い」した理由は、「縫い合わせに工程を要し、高コストとなる」ことで、タオルの単価から考えて、また起泡性良好な洗浄液やタオル生地の加工・材質選択等の代替方法との比較を考えると、商品化に消極的な企業の立場も理解できる。

2.        SANARI PATENT所見

2-1 朝日新聞の読者は先ず、特許の「高度技術創作性」の水準について認識し、発明者が投じた出願費用に想いを馳せたかも知れない。

2-1  特許庁による公開文献としての、この特許の要約(1-2-3)を見ても、内閣知財戦略本部の知財推進計画07が、「特許出願明細書の平易化・明瞭化を促進する」として、「出願書類を作成するに当たり、技術的に簡単・明瞭な文言を用いて明確かつ簡潔に記載するよう、日本弁理士会に対し協力を要請する」と計画している趣旨が頷かれる。

2-2  しかし、出願書類記載の平易化によって本人出願を活発化し、特許取得コストの低減によって知財人材の裾野を拡大するためには、特許庁が主導的・起動的に発明の着想等を理解し、朝日新聞記事のような記述に「技術的な簡単・明瞭性を認めること」が必要である。現に訴訟手続では、簡裁訴訟では約8割が本人訴訟であり(地裁では4割)、口頭提訴も認められている。

2-3  知財専門家も、従来方式の出願構文を脱却して、国民が親しみ易くし、かつ、コストの観点からの商品化可能性予測も含めて、発明者にアドバイスする知見を涵養すべきである。

2007年8月22日 (水)

Micromachining, Micro photonics, Vision Sensing, Knowledge Information Control Technology: オムロン「センシング&コントロ-ル」の4技術

OMRON Presents Micro Machined Sensor, Micro Machined Relay, Stacked Polymer Optical IC/Advanced Technology, DR-LED, Pattern Vision etc.

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

 メタボリク(metabolic)症候群対策など健康管理意識が急速に高まり、健康計測機器においても著名なオムロン(東証・大証・名証1部)が、来る24日に東京赤坂プリンスで投資家説明会を開催する(当日は、招待者に限定。しかしオムロンは常時、各地工場見学をインタ-ネット上で案内するなど、極めてオ-プンである)。

 野村證券・東洋経済の会社四季報によれば、オムロンは、増益基調を持続し、制御機器からシステム機器へ展開。車載部品や中華圏での事業拡大(上海工場など)と共に、健康機器でも益々著名。

1.        血糖値等測定関係のオムロン特許公開事例

適正血糖値等についての情報が連日マスコミ報道されているので、冒頭に先ず標記事例を瞥見する。なお、オムロンの特許公開総件数は、12,571件に達する(2007-8-20現在)

1-1        発明の名称「健康管理装置」

1-1-1        課題: 測定が簡便で低濃度域の尿糖値を測定し、糖尿病へのリスク管理を家庭・個人で簡便に行う。

1-1-2        解決手段: 酵素電極法による尿糖測定器で、0~100mg/dlの低濃度尿糖を月数回測定し、例えば3ケ月毎にデ―タ処理し、3ケ月毎の平均値が30以下の場合は「リスク少」としてデ―タ処理結果を報知し、3ケ月毎の平均値が30~50の場合は「リスク増」であり、何らかの生活習慣の改善要として、デ―タ処理結果を報知し、3ケ月毎の平均値が50を超える場合は「リスク大」であり、至急生活習慣の改善要である旨を報知する。

1-2               発明の名称「生体情報測定器、生体情報測定システムおよび生体情報測定管理方法」

1-2-1        課題: 生体情報の管理を確実に行うことのできる生体情報測定システムを提供する。

1-2-2        解決手段: 血圧を測定するセンサには、血圧測定部と指紋センサ部が備えられる。ユ-ザ-が所定の場所に指を載せ、測定ボタンを押下すると血圧が測定され、同時に指紋が採取される。指紋の特徴は符号化され、ユ-ザ-の識別子として用いられる。血圧デ―タに指紋情報が付加され、メモリ-カ-ドに書き込まれる。または、外部接続端子に接続することによりパ-ソナルコンピュ-タや携帯端末などからネットワ-クを介して、医療機関等に送信され管理される。

2.        テルモとの対比

2-1  テルモ(東証1部)は、健康機器を主体とし、糖尿病関連中心に国内需要順調、海外中心のカテ-テル等と共に、増益基調を維持し(野村證券・東洋経済の会社四季報による)、特許公開事例も、「血糖測定装置」、「穿刺針および穿刺具」、「日付表示機能を備えた生体情報測定装置」など、健康機器に特化したものが多い。

2-2  オムロンやテルモなどの生体情報測定機器が家庭にも普及し、健康の自己管理が医学的に行われることが、「健康立国」の基礎である。

3.        オムロンの企業理念

  京都に本拠を置く企業らしく、オムロンの企業理念は深い思索のもとで表明されている。作田久男社長の挨拶には、「オムロンは創業(1948-5)以来、人や社会を便利に快適にするためには何が必要かを考え、われわれの働きでわれわれの生活を向上し、よりよい社会をつくろうという社憲のもと、様々な事業を展開してきた」と述べている。

4.        オムロンの技術開発

4-1        オムロンの技術本部では、「センシング&コントロ-ル」をフラッグシップとして、ここに軸足を置いてコアテクノロジ-を確立し、オムロン独自の先端技術に挑戦する」としている。

4-2        「センシング&コントロ-ル」とは、従来のセンシングようなデ―タの入力機能の範囲にとどまらず、センシングとコントロ-ルを組合わせることによって、入力されたデ―タが人やシステムなどの後工程に、価値ある情報として賢く(小さく、軽く、簡単に、効率的に、早く、最適に)出力する技術を意味するとしている。

4-3        「センシング&コントロ-ル」を支えるテクノロジ-プラットフォ-ムとして次の4技術を設定し、成長オプションを創出するとしている。

4-3-1        マイクロマシニング: 電子機器のダウンサイジングに伴い、圧力センサ等にも大幅な小型化が要求されている。圧力によって変形した可動電極と固定電極間の静電容量の微細な変化を読み取り検出する静電容量型の場合、構造的に感度を落とすことなく小型化するには限界があったが、オムロンは独自に開発したド-ナツダイアグラム構造によって、この限界を超克した。また、信号の高周波化に対応する低損失構造のリレ-を開発している。

4-3-2        マイクロフォトニクス: 液晶ディスプレイにおける光波制御デバイス(ケ―タイのバックライトなど)、LEDチップからの放射光を全反射部制御し、有効利用光量を倍増する。

4-3-3        画像センシング: 膨大な視覚情報から、形・文字などの意味ある情報を高速・高精度検出する。

4-3-4        知識情報処理技術: ブロ-ドバンドによる双方向コミュニケ-ションの共有空間を多様かつ高度に活用し、ブロ-ドバンドの新たな使い方を創造して、その潜在能力をフルに引き出す。

5.        SANARI PATENT所見

  オムロンのセンシング&コントロ-ル技術が、意識的・無意識的に国民生活中に浸透してゆくことが望まれる。

2007年8月21日 (火)

Global Digital Transmissions of Global Analogue Cultures: 世界美術館サイバ-スペ-ス展示の活況:美術品の検索・拡大鑑賞・解説・動画表現の高度化

Pilgrimage for Peace by Ikuo Hirayama(TOKYO),  Crafting Beauty in Modern Japan including MANGA and ANIME(LONDON):美術インタ-ネット流通のボ-ダレス化

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  内閣知財戦略本部の知財推進計画07は、イノベ-ションとコンテンツの2つを柱としている。すなわち、成長と活力の源泉が変化した、として、第1に「経済成長におけるイノベ-ションの役割が増大していること」、第2に、「コンテンツの文化的・経済的価値が高まると共に、その担い手の裾野が広がっていること」を挙げている。

  内閣知財戦略本部が言及していないのは、この2つの変化の密接な相関である。第2の「コンテンツ」の側から見れば、コンテンツの文化的・経済的価値の高揚は、グロ-バルなインタ-ネット活用の普及と高度化により、コンテンツ流通の質的量的発展が遂げられてゆくことによって達成されるのであるから、この相関に着目する政策が明確に示されることを、知財推進計画08には求めたい。

  特に、「世界に向けて日本文化を発信」という言葉は随所に見られるが、「発信」とは具体的に何をどうすることか。SANARI PATENTは、発信とは、グロ-バルに発達しつつあるサイバ-スペ-ス(高度化したインタ-ネット環境)に、日本文化をデジタル送信することである。わが国と海外との人的往復は世界60億人の0.33%程度に過ぎず、サイバ-スペ-スでの交流可能人口には遥かに及ばない。輸出による日本文化積載の活発な物流も、インタ-ネットを介する電子取引のグロ-バルな拡大によって始めて可能である。

  コンテンツに限定すれば、アナログコンテンツのデジタル発信によるグロ-バルな浸透が、直接対価の収入に結びつかなくても、わが国のソフトパワ-を高め、わが国の経済的国際地位をも間接的に向上させる。

  この意味で最近、わが国美術館のデジタルコンテンツ発信が活発化していることが注目されるが、英語版等を欠くか、あっても国語版に比べて内容が希薄である。例えば、平山郁夫画伯展(本年9月4日から10月21日まで東京国立近代美術館)は、同美術館のホ-ムペ-ジ上に、「祈りの旅路」と題して、「藤原京の大殿」「仏教伝来」などの数々の「禁複製」画面と共に、美術館内では閲読できない詳細な解説を付して紹介されているが、インタ-ネット画面の精緻化・三次元化によって「平山郁夫文化」のグロ-バルな発信は着手されていると考える。ただし、その英文版が内容簡素であって、グロ-バルに日本文化を「発信」しているというには遠い。内閣知財戦略本部が「発信」を強調する以上、英文版の充実に国費を投入すべきである。

  Google等の検索技術が発達しているので、例えば、「浮世絵」で検索すると、世界諸国の美術館に所在する浮世絵を網羅的に見ることができる。

  更に、例えば大英博物館のホ-ムペ-ジは、現在開催中の「日本工芸展」(Crafting Beauty in Modern Japan)(2007-7-1910-21)を画像・解説と共に紹介しているが、数ヶ国語で閲読可能であり、グロ-バルな日本文化の発信がロンドンで実行されている観がある。日本人から見れば「逆発信」されているのである。

  更にこの「日本工芸展」開催中に、多様な日本アニメの上映が予告され、ジブリ作品(SANARI PATENT 注:強いて訳すれば「熱風作品」)と呼ばれる「風の中のナウシカ」、先端作品と呼ばれる「イノセンス」、マジック的な「雪姫忍法帖」等々が、日本工芸の側面としてロンドンから発信される。

  リ-ドするつもりがリ-ドされることにならないよう、わが国文化庁は、サイバ-スペ-スを活用する日本文化のグロ-バルな発信を、即刻、大拡充されるよう、要望する。

2007年8月20日 (月)

Patent Nullified: 「地下水中のハロゲン化汚染物質の除去方法」特許の無効審決を知財高裁が維持(8月8日判決)

Inventive Steps Discussed:  原告・ユニバシティオブウォ-タ-ル-の無効審決取消請求(被告・大成建設等)を知財高裁が棄却

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  ユニバシティオブウォ-タ-ル-(訴訟代理人・浅村 皓弁理士ほか)の「地下水中のハロゲン化汚染物質の除去方法」特許を無効とする大成建設(訴訟代理人・磯野道造弁理士)等の主張が、知財高裁において認容された事件である。

  46ペ-ジにわたる判決であるが、要するに「容易想到性」の判断が核心をなしているので、この点にのみ集中して要約する。

1.        本件特許請求の範囲

1-1 「帯水層中の地下水からハロゲン化有機汚染物質を化学的分解により除去する方法」であって、次の特徴を有する方法。

1-1-1 地下水流の通過に充分な形(粒状・切断片・繊維状等)の金属体を流路に与える。(SANARI PATENT 注:水流を妨げない形態という意味)

1-1-2 金属体の酸素欠如部分に大気中の酸素が到達するのを、実質的に完全に防ぐよう金属体を覆う。

1-1-3 汚染された地下水流路の帯水層中にトレンチを掘り、その中に金属体を設置する工程を含む。

1-1-4 トレンチと「金属体の酸素欠如部分」の大きさ・配置は、汚染地下水が酸素欠如部分を通過するように設定される。

1-2 地下水の酸化還元電位が-100mV以下になるのに充分長い一定時間を要する1-1の方法。

1-3 汚染地下水流路の帯水層中にテレンチを掘り、その中に金属体を設置するが、トレンチと「金属体の酸素欠如部分」の大きさ・配置は、汚染地下水が酸素欠如部分を通過するように設定される、1-1の方法。

1-4 水汲み上げ井戸に入り込む実質的に全ての水が、金属体の酸素欠如部分を通過し、一定の滞留期間の間、酸素欠如部分内部に滞留するようにトレンチを設け、トレンチと「金属体の酸素欠如部分」の大きさを決定する工程を有する1-1の方法。

1-5 汚染地下水流路の帯水層中に一連の複数のボアホ-ルを設け、その中に金属を注入するが、ボアホ-ルの間隔・注入金属量は、その金属が充分に帯水層を貫通し、金属体本体および酸素欠如部分を形成するよう決定する、1-1の方法。

2.        特許庁の無効審決理由

1-1ないし1-5の発明は、いずれも、従来技術からを容易に想到できるから、特許性を欠く。

3.        知財高裁の判断

3-1  ユニバシティオブウォ-タ-ル-は、「帯水層中の地下水は一般的な地下水とは区別された技術的意義を有し、従来技術における汚染地下水が存在する層は、帯水層に当たらない」と主張するが、失当である。一般に帯水層とは、多量に地下水を含む地層を意味し、同一地点で複数の帯水層が存在することがあると共に、被圧帯水層と不圧帯水層を含む。

3-2  ユニバシティオブウォ-タ-ル-は、本件発明の「帯水層中の地下水」が化学的分解反応に関与するものであるのに対し、従来技術の汚染地下水は化学的分解反応に関与しないと主張するが、審決は、その相違点を認定した上で容易想到性の有無を検討しているのであるから、ユニバシティオブウォ-タ-ル-の主張は審決を正解しないものである。

3-3  ユニバシティオブウォ-タ-ル-は、従来技術には事前の汚染水浄化方法が開示されているにとどまるのに対し、本件発明は事後の汚染水浄化方法をも対象としている点で相異すると主張するが、本件発明は事後・事前双方の汚染水浄化方法を対象とするから、事前の汚染水浄化方法を対象とする態様に関する限り、相違するといえない。

3-4  ユニバシティオブウォ-タ-ル-は、本件発明と従来技術との処理媒体が異なることに鑑みれば、従来技術は、処理媒体層を汚染地下水に設置し、汚染地下水をその処理媒体中に通すものとはいえないと主張するが、審決が一致点として認定したのは、「帯水層中の地下水から汚染物質を除去する方法である点である。

3-5  ユニバシティオブウォ-タ-ル-は、従来技術の遮蔽トレンチは地下水の流路に設置されたものとはいえないと主張するが、審決が一致点として認定したのは、「帯水層中の地下水から汚染物質を除去する方法である点である。

3-6  従来技術には、広汎な汚染物質を対象とし得ることが少なくとも示唆されている。

3-7  ユニバシティオブウォ-タ-ル-は、従来技術には粒状活性炭を金属系還元剤、特に金属が鉄である金属体に置換する技術的示唆はないと主張するが、実験レベルとはいえ実用化研究が行われていた。

3-8  従来技術述べている。接した当業者が、地下水に含まれる有害な有機塩素化合物を帯水層において無害化処理すべく、金属鉄による酸化還元反応を利用する動機付けは存在した。

3-9  その他、ユニバシティオブウォ-タ-ル-が仔細に主張する点は、いずれも理由がない。

4.        SANARI PATENT所見

4-1ユニバシティオブウォ-タ-ル-が相違点として詳細に主張する諸点について、知財高裁は、相違点に当たらない項目を逐一説示すると共に、相違点については、従来技術に示唆・動機付けがあり、阻害理由はないとして、容易想到性を説示した。

大成建設等が従来技術を明細・広汎に究めたことにも敬意を表したい。

4-2 環境技術は全人類の必須技術であるから、特許制度による開発促進と共に、先端技術の共用体制・オ-プン化の政策的配慮が必要である。

2007年8月19日 (日)

Innovation of Hair Color: 日本女性サロン美容の、ヘアカラ-イノベ-ション

Patens for Hair Treatment: ミルボンの知財開発状況と日本女性コンテンツの魅力増進

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

1.        美容サロン向けトップ企業の知財開発

1-1  ミルボン(東証1部)の今次中間期事業報告(2006-12-212007-6-20)を受領した。野村證券・東洋経済の会社四季報によれば、ミルボンは美容サロン向けヘア化粧品のトップ企業で、新製品を大量投入して拡販中である。

1-2  今次報告によれば、ヘアカラ-が引続き二桁の成長を続け、ヘアカラ-剤の既成概念を変えて、サロンカラ-の価値を高める新開発製品を普及させつつある。特に「オルディ-ブ」は、208色を揃え、毛髪を2色以上に塗り分けることによって毛髪の色や質感に変化を与える「ホイルワ-ク」多層塗り技術を適用し、客それぞれの「ヘアカラ-」に立体感・個性を表現して、「サロン」の魅力を発揮する。

2.        ミルボンの特許公開事例(SANARI PATENTが要約)

上記のような活況は、最新の同社知財開発によって科学技術的に支持されている。2007年初来の特許公開事例を見ると、

2-1 「整髪剤組成物」

2-1-1 課題: 毛髪のセット保持性に優れ、使用後の毛髪の艶、仕上がりの柔軟性が良好で、操作性も良好な整髪剤組成物を提供する。

2-1-2 解決手段: 少なくとも各所定の含有率(SANARI PATENT 注:巾を設けた質量%)をもって、マイクロクリスタリンワックス(A)、キャンテリラロウ(B)、融点が30~45の植物油脂(C)を含有し、かつ(A+B/C=3~7であることを特徴とする。

2-2 エアゾ-ルスプレ-整髪剤

2-2-1 課題: 再整髪性に優れたエアゾ-ルスプレ-整髪剤を提供する。

2-2-2 解決手段: 整髪剤原液と噴射剤を有し、整髪剤原液が霧状に噴射されるアゾ-ルスプレ-整髪剤であって、少なくとも炭素数が2~4のアルコ-ル(A)、炭素数が12~22のアルコ-ル、脂肪酸とコレステロ-ル類とのエステル、および、脂肪酸とポリオ-ルとのエステルよりなる群から選択される1種以上の、25で固体またはペ-スト状の油性成分(B)、ショ糖脂肪酸エステル(C)を含有することを特徴とする。

2-3 染毛剤施術練習用組成物

2-3-1 課題:毛髪への塗布箇所が容易に判別でき、また、水と混ぜる場合の操作性に優れた染毛剤施術練習用組成物を提供する。

2-3-2 解決手段: 少なくとも、酸化チタン等の白色顔料、カチオン性界面活性剤、高級アルコ-ルおよび水をが含有することを特徴とする。

2-4 毛髪処理剤

2-4-1 課題: ケラチン(SANARI PATENT 注:細胞骨格を構成する蛋白質のひとつで、上皮細胞の中間径フィラメントを構成する)を構成成分とし、このケラチンの作用を高めて毛髪の柔軟性・質感・保持性を良好にできる毛髪処理剤を提供する。

2-4-2 解決手段: 分子量所定範囲の高分子量ケラチン、水素添加大豆などのリン脂質、1鎖型および2鎖型カチオン性界面活性剤等のカチオン性界面活性剤、植物油等の油性成分を含有することを特徴とする。

2-5 毛髪処理剤

2-5-1 課題: 内部に損傷を受けた毛髪に適用して、その硬さ・ごわつき感を解消し、柔軟性・質感・保持性を良好にできる毛髪処理剤を提供する。

2-5-2 解決手段: 少なくとも2種以上のジカルボン酸エステル(アジピン酸ジエステルとセバシン酸ジエステルの組合せなど)と、コレステロ-ル誘導体などの脂質成分を含有することを特徴とする。

3.        SANARI PATENT所見

3-1  ヘアカラ-とヘア型のイノベ-ションは、ライブ・アニメ・映画・キャラクタ-・人形等のコンテンツ全てにわたって、その要素となり、新しい日本文化のグロ-バルな発信を起動する。内閣知財戦略本部の知財推進計画08にも、コンテンツの章に、このような必須構成要素のイノベ-ション促進が強調されるべきである。

3-2  毛髪の質・量・彩度等はヒト種差が著しい人体部分のひとつであるが、ヘアカラ-の技術開発が、グロ-バルな市場開拓に至ることも望まれる。

3-3  安倍総理大臣の「美しい国」実現に先立って、知財による「美しい女性」に満ちた国が実現しつつある。

2007年8月18日 (土)

Brisk Distribution of Digital Contents: MIC(Ministry of Internal Affairs and Communications)の政策展開

Internet Policy for 21 Century  情報通信審議会(会長は庄山悦彦・日立製作所会長)の審議状況

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

1.        デジタルコンテンツ流通促進等検討委員会答申(2007-8-2)への対応:

1-1  総務省・情報通信審議会は、「デジタルコンテンツ流通の促進等に関する検討委員会(主査は村井 純・慶大教授)から、2つの内容、すなわち、「21世紀におけるインタ-ネット政策の在り方」および「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」について、中間答申を得た(2007-8-2)

1-2  標題は包括的・総合的に表現されているが、「中間答申」ということは、全面的に政策の方向性を示すには至らず、緊急のテ-マに限定した報告であることを意味すると、SANARI PATENTは解する( 注:ここに「緊急」とは、地上デジタル放送への全面的移行期限が切迫しているのに、アナログ放送とデジタル放送とでコピ-制御の在り方が全く異なることを速やかに調整しておかなければ、消費者の著しい対著作権行政不信を一層惹起することなどである)

1-3  従って、今次中間答申は、「デジタル放送におけるコピ-制御の在り方」および「コンテンツ取引市場の形成と、取引の活性化に向けた具体策の在り方」の2章で構成している。この2項目が「当面の課題」として認識されていると解する。

2.        消費者がほとんど知らない問題

2-1  内閣知財戦略本部が知財推進計画07を策定するに際してパブリックコメントを求め、政府系パブコメとしては異例の約百件に達する「著作権強化反対」「著作権侵害に対する刑事罰制度強化に反対」「著作権管理機構の行動に対する不信・不満」が圧倒的に多かったのであるが、これらの消費者達が気付いていない、あるいは全く知らない問題が「アナログ放送とデジタル放送の両者におけるコンテンツ保護の基本的な相違」である。さらに、米国等と比較して、わが国著作権保護の在り方の著しい相違である。

   全面的デジタル放送化を国策として理解している消費者も、受信機器の買換えや付加機器購入の負担を問題にしているものの、コピ-制限に関するアナログ放送とデジタル放送間の制度的相違をほとんど認識していないと、SANARI PATENTは推測する。

2-2  すなわち現在、アナログ放送についてはコピ-制限がないのに、デジタル放送についてはいわゆる「コピ-ワンス」の制御がなされている。アナログ放送の内容の「子コピ-」も「孫コピ-」も何枚でも可能であり、ネットへの流出も技術的には可能であるのに対して、デジタル放送の内容については、コピ-が一回のみ可能で他のコピ-は一切不可である。このことは、最初のコピ-が途中で失敗すると、元内容もDVDも使用不可となり、複数のコピ-は一切作成不可であることを意味し、放送の全面的デジタル化は消費者に極めて大きい便益の喪失となる。

2-3  ここに特に注意すべきは、アナログ放送においても「デジタル録画」は可能であったこと、すなわち、品質が劣化しないコピ-についてコピ-制限がなく、地上デジタル放送への切替が「著作権関係者」の被害の「増加」には結びつかないことである。

3.        放送コンテンツのマルチユ-ス拡大は、閣議の既決事項

3-1 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」(2006-7-7閣議決定)は既に、「今後10年間でコンテンツ市場を約5兆円拡大させることを目指す」として、そのためには「放送コンテンツのマルチユ-ス拡大が不可欠」としている。

3-2 情報通信審議会は、次の3つの選択肢について共通の認識を得たとしている。

3-2-1 権利者から許諾を得る手続の簡素化

3-2-2 権利や窓口に関する情報の集約・公開

3-2-3 放送コンテンツとその製作主体の多様化

3-3 SANARI PATENTは、当面、3-2-1の選択肢に重点を集中すべきであると考える。3-2-2は、新たな機構の設置を前提とするし、3-2-3は、現存製作主体の作品のマルチユ-ス拡大を先ず実現してから考慮すべき選択肢であると考える。

3-4 フジテレビが、中期経営計画において「非広告収入の割合を、現状の22.2%から30%に引上げる」と目標設定し、TBSが「2010年には総売上の3分の1を放送外収入による」と計画し、日本テレビが放送外収入の伸び率No.1を志向するなど、情報通信審議会が例示するところは、テレビ広告への産業界の傾斜への対策が動機とSANARI PATENTは考えるが、そのような広告競争はむしろ好ましく、そらが動機のひとつとなってマルチユ-スが円滑に拡大するよう、著作権制度の革新を政府が緊急に断行すべきであるとSANARI PATENTは考える。

2007年8月17日 (金)

Patent for Fuel Cell: 旭硝子の「固体高分子電解質型燃料電池」発明

IP High Court Concludes Patentability Dispute: 旭硝子審決取消請求事件・知財高裁判決(88日):容易想到性に関する見解の相異

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

   燃料電池の開発は、リン酸型、溶融炭酸塩型を経て固定酸化物型が主体となり、現在は、固体高分子電解質型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell)が定着している。なお、今次判決においても「型」の字が用いられているが、「形」が今後通用しそうである。

  旭硝子は多くの固体高分子電解質型燃料電池関係の発明を有するので、今次判決対象となったのは、その一つに過ぎないことを先ず指摘しておく。

1.        旭硝子の「固体高分子電解質型燃料電池」発明

1-1  旭硝子の標記発明についての、今次判決対象特許出願(1993-3-3)は、特許庁により拒絶査定され(2004-8-5)、旭硝子は不服審査請求(2004-9-9)したが、特許庁は、「本件審判の請求は成立たない」と審決した(2006-11-21)

1-2  旭硝子は、この審決の取消請求を知財高裁に提訴したが、知財高裁は、旭硝子の請求を棄却した(2007-8-8)

1-3  旭硝子の本願発明

「スルホン酸基を有するパ-フルオロカ-ボン重合体からなる陽イオン交換膜を固体高分子電解質とする燃料電池において、陽イオン交換膜の表面に密着されるガス拡散電極中に、イオン交換容量が1.1~1.6ミリ当量/g乾燥樹脂であり、スルホン酸基を有するパ-フルオロカ-ボン重合体が分散して含有されることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池」

2.        特許庁の審決の構成と知財高裁の判断との対応

2-1        審決は、

2-1-1        容易想到性1

2-1-2        容易想到性2

2-1-3        容易想到性3

2-1-4        明細書記載の不備

以上、4項目で構成し、特許性を否定した。

2-2               知財高裁は、容易想到性1を認め、従って、容易想到性2以下を論ずるまでもなく、特許性を否定した。

3.        容易想到性1についての旭硝子の主張

審決は、「引用発明において、電極内の『プロトン伝導』に伴う抵抗成分を更に低減するため、『所定値乾燥樹脂』を用いることは従来技術から想到容易」と判断したが、次のとおり誤りがある。

3-1  電極中のイオン交換樹脂の材料を工夫して抵抗成分を低減させることは、周知でないのに、周知と認定した。

3-2  従来技術は、高分子電解膜質の材料に関する公知例で、「電極中のイオン交換樹脂」の種類や物性に関する公知例ではない。

3-3  「電極中のイオン交換樹脂」の種類や物性を検討することにより抵抗成分を低減させることは公知でなく、イオン交換容量が大きいイオン交換樹脂を採用する動機付けは存在しない。

3-4  むしろ、性能低下の報告という阻害要因が存在した。

4.        特許庁の反論

4-1  燃料電池を含む電池分野の従来技術によれば、構成部材毎に材料・構造を工夫して抵抗成分を提言させることは、周知であった。

4-2  燃料電池の電極中の高分子電解質は、触媒・導電材料・高分子電解質の3相界面の面積を増加させるものであるから、その材料の検討は当然である。そして、プロトン伝導に伴う抵抗による電圧損失低減のため、イオン交換容量を大きくすることは想到容易である。

4-3  従来技術には、「電極中のイオン交換樹脂は、イオン交換容量を高くすると電圧損失を低減することが示されており、阻害要因は存在しない。

5.        知財高裁の判断

5-1        本願出願前に、燃料電池においてイオン移動の抵抗力損失(旭硝子がいう「抵抗損」と同じ概念)を減少させるという課題があった。

5-2        高分子電解質膜のイオン交換容量を高くすることにより、イオン移動の抵抗力損失を低減できることは周知であった。

5-3        旭硝子の主張3-4については、従来技術である実験結果から、ただちに、「電極に用いられるイオン交換樹脂においては、イオン交換容量を大きくすることは好ましくない」と断定することはできず、阻害原因になるとはいえない。

6.        SANARI PATENT所見

6-1  旭硝子の固体高分子電解質型燃料電池に関する発明は極めて活発で、2007年に入ってからの同社特許公開事例は10件に達する(2007-8-13現在)。

「固体高分子電解質型燃料電池用膜電極接合体およびその製造方法」、「固体高分子電解質型燃料電池用ガス拡散層の製造方法および膜電極接合体」、「固体高分子電解質型燃料電池用電解質膜および固体高分子電解質型燃料電池用電極説必要剛体」など。

6-2 野村證券・東洋経済の会社四季報によれば、旭硝子は建設用・自動車用で世界首位級のガラスメ―カであり、液晶・PDP(プラズマディスプレイパネル)等のFPD(フタットパネルディスプレイ)用ガラスが収益柱となって、最高益。ロシアに世界最大の建築用ガラス生産施設を建設した。

2007年8月16日 (木)

Fluorescent Microscope by KEYENCE キ-エンスのセンサ-・蛍光顕微鏡など知財開発の独自性と、生産の全外注など経営戦略の相乗による高利益持続

Business Model for High Profit Ratio  キャノン・東芝より高率なキ-エンス営業利益率維持のビジネスモデル:  高付加価値創造と全生産外注・全直販

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

1.特異な技術経営モデルによる高利益率持続の成果に注目

テレビ東京の人気番組カンブリア宮殿(2007-9-13)が、経営戦略・知財戦略の特色ある総合例として、キ-エンス(東証・大証1部)の、センサ-、蛍光顕微鏡等の先端開発状況を守秘部分を交えて放映すると共に、恒常的な営業利益率50%、生産外注主義、対顧客商品直送、毎月業績配分支給による高給与水準など、経営戦略・知財戦略の特色ある総合が、持続的に成果を収めていることを報道した。

野村證券・東洋経済の会社四季報も、「生産外注、直販と開発力に富み、業績更新続く」と特色づけ、「FAセンサ-など検出・計測・制御機器の好調持続」、「海外拠点80超、海外売上比率25%へ」と、経営・知財双方の戦略成果の持続を示しいる。

2.キャノンとの営業利益率比較(SANARI PATENT 注:営業利益は、売上から製造または購入原価と管理費を差引いた利益で、本業による利益を示し、経常利益は、営業利益に営業外損益を加減した利益を示す)

上記テレビ東京の番組では、営業利益率(営業利益/売上)良好な企業の代表としてキャノンとの比較を示していた。SANARI PATENTが別途計算すると、キ-エンスの2007年3月期は、930億円/1827億円で、50.9%、キャノンの2006年12月期は、7900億円/4兆5400億円で17.4%であるから、率の差は大きいが、業容の差も大きい。ちなみに、いわゆる総合電機メ―カのうち最近の収支良好と評価されている東芝の2007年3月期は、2584億円/7兆1164億円で、1.8%である。

3.蛍光顕微鏡におけるキ-エンスの高付加価値性

3-1 上記テレビ東京の番組では、「場所を選ばず、どこでも蛍光観察ができる新構造」の蛍光顕微鏡が例示されたが、蛍光顕微鏡自体は既にキ-エンスを含めて各社で開発が進んでおり、これらに「暗室不要」の機能を付加したところにキ-エンスの高付加価値知財・高営業利益率経営のビジネスモデルが存在すると、SANARI PATENTは考える。

3-2 蛍光顕微鏡は、例えば水銀ランプを光源(励起光)として、試料から発する微弱な蛍光を観察する顕微鏡であるから、暗室内操作においてCCD(Charge Coupled Device: 半導体を用いた揮発性の記憶媒体)カメラを併用するなどの観察方法が用いられてきた。

3-3 キ-エンスが創生した新蛍光顕微鏡は、観察に暗室を不要化したことで、蛍光顕微鏡の画期的イノベ-ションであるとSANARI PATENTは考える。

 蛍光顕微鏡のメ―カは複数存在し、その中からキ-エンスの考案を付加できるメ―カに外注生産して、高速度な直販を行うことにより、ニ―ズに即応する営業をもって高営業利益率を得ると共に、毎月の業績を直ちに毎月の付加給与に加算して業界随一の給与水準(例えば35歳で月額1250万円超)を給与し、イノベ-ションに直結する開発意欲を培養しているものと考えられる。

4.蛍光顕微鏡に関する特許公開事例(SANARI PATENTが要約)

   2007年に入ってから18件の事例がみられるが(2007-8-15)、次のように、おおむね観察方法に関する課題を解決するものである。

4-1  大阪府立大学の「蛍光顕微鏡」(電子的検出器を励起光フィルタ装置と連動させる)

4-2  ペンタックスの「組織の蛍光染色方法」(フルオレセインまたはその塩を含有する溶液で組織を処理し、所定pH値未満の酸性条件下で観察する)

4-3  オリンパスの「全反射蛍光顕微鏡」

4-4  リ-ゼンツオブザユニバ-シティオブカリフォルニアの「ßアミロイド斑および神経原繊維変化の標識方法」

4-5  エスア-ルエルの「浮遊細胞の検査方法」

4-6  パロアルトリサ-チセンタ-インコ-ポレ-テッドの「試料検出システム」

4-7  オプトレックスの「汚染物質の除去方法」

4-8  島津製作所の「イメ-ジ質量分析装置」

4-9  横河電機の「蛍光顕微鏡用標準プレパラ-ト」

4-10            オリンパスの「ウエルの配列方向を検出する方法および光分析装置」

4-11            岡山大学の「生理活性判定方法および生理活性判定キット」

4-12            NTTの「光源、波長変換装置および蛍光顕微鏡装置」

4-13            浜松科学技術研究振興会の「光毒性の高感度検出方法および光毒性検出用キット」

4-14            オリンパスの「走査型蛍光顕微鏡」

4-15            カ-ルツザイスマイクロイメ-ジングゲ-エムベ-ハ-の「顕微鏡対物レンズシステムおよび顕微鏡観察方法」

4-16            カ-ルツザイスマイクロイメ-ジングゲ-エムベ-ハ-の「顕微鏡対物レンズおよび顕微鏡観察方法」

4-17            科学技術振興機構等の「3次元位置観測方法および装置」

4-18            キャノンの「核酸ハイブリッドの融点測定方法およびそのための装置」

5.SANARI PATENT所見

   蛍光顕微鏡の機能をイノベ-ションに結びつける創案においても、知財戦略・経営戦略の選択と集中の態様によって、多様な結果を生んでいることがうかがわれる。

2007年8月15日 (水)

Malaysia Presents An Opportunity Not To Be Missed: マレ-シア通産大臣Miz.RAFIDAH AZIZ からSANARI PATENTあてレタ-着信

Malaysian Industrial Development Authority Explains Malaysia’s IP System: マレ-シア知財法制の整備状況(関連記事2007-7-19) 

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

先般、マレ-シア通産大臣および同国工業開発庁長官等が、同国の産業発展計画について説明したが(2007-7-18 帝国ホテルにて)、同国通産大臣からこのほどSANARI PATENTあてに次の内容のレタ-が送られた。

「40国を超える諸国から、5000社を超える企業が既にマレ-シアで操業していることは、マレ-シアの政治的・経済的安定性、有利な(conducive)ビジネス環境、優秀なインフラの存在を立証するものである。」(SANARI PATENT 注:週刊東洋経済2007-7-28によれば、法人税零、外資100%可で建設ラッシュのドバイへの外来企業数は6000超だが、ドバイは最近の石油バブル現象と見る向きもある由)

1.マレ-シアに投資を計画する企業のための資料も詳細に整備されているが、知的財産の保護については、次のように述べている。(SANARI PATENTが要約)

1-1 特許

1983年特許法(Patents Act)1986年特許規則(Patents Regulations)が、マレ-シアの特許保護を規制している。申請者がマレ-シア定住者か居住者(domicile or resident)である場合は、直接特許を申請できるが、外国人による申請の場合(foreign application)は、マレ-シアにある登録された申請代理事務所(patent agent)を通さなければならない。

他国の場合と同様(similar to)に、新規で創意にに富み(if it is new, involves an inventive step)、産業利用が可能(industrially applicable)であれば、その発明は特許対象となる。TRIPS(貿易関連知的所有権協定)に基づき、出願日から20年間の保護期間を設定している。

マレ-シアは、2006年にPCT(特許協力条約)に加盟しており、2006年8月16日から、PCT申請はマレ-シア知的所有権公社(the Intellectual Property Corporation of Malaysia: MyIPO)を通じて行うことができる。

1-2 実用新案権

  特許法に基づき、実用新案(Utility Innovation)に対しては、出願日から最初の10年間の保護期間が与えられ、利用状況により(subject to use)、更に5年間づつ2回まで延長できる。

1-3 著作権

  1987年著作権法’( Copyright Act)は、著作権の対象となる作品(computer softwareを含む)に対する包括的な保護(comprehensive protection for copyrightable works)を提供している。著作権の登録制度はない。

  文学・音楽・芸術的作品(literary, musical or artistic works)の著作権保護の期間は、作者の生存期間と死後50年間である。音響録音・放送・映画など(sound recording, broadcast and films)の保護期間は、最初に発行または製作(first published or made)された時から50年間である。

   演劇における諸権利(performer’s rights in a live performance)に対しても、初演年の翌暦年から50年保護する。

1-4 半導体集積回路のレイアウト・デザイン

2000年半導体集積回路のレイアウト・デザイン法(The Layout Designs of Integrated Circuits Act)は、そのデザインの創造性や、創造者自身による自由な発想に基づく設計であることを条件として、半導体集積回路のレイアウト・デザインに保護を与えている。登録制度はない。保護期間は、商業利用(commercial exploitation)開始日から10年で、商業利用されない場合は考案日から15年である。

1-5 商標

    登録商標の保護期間は10年で、その後は10年毎の更新が可能である。

1-6  地名表示(Geographical Indication

2000年地名表示法は、生産された特定の地名が付された物品を保護している。ワインや蒸留酒、自然食品や農産物、工芸品などの物品や産業に適用(applicable to goods such as wine and sprit, or natural or agricultural products or any product or handicraft or industry)される。

2.SANARI PATENT所見

  Malaysiaのアジアにおける産業立地を考察すると、南シナ海上、Kuala Lumpulから香港まで2500km(ちなみに、札幌・那覇が同距離)、マラッカ海峡・ベンガル湾上、Kuala LumpulからCalcuttaまで同じく2500kmである。

  香港・上海・マカオと杭州経済技術開発区を含む汎珠江デルタ(Pan-PRD)の経済貿易緊密化圏域は、拡大EUと同様の人口約5億人を擁し、年齢構成・資源・成長率・同一言語等、EUに匹敵してゆく潜在力を有する。Malaysiaは人種・言語において、この圏域と極めて親密である。

  またインドの13億人口は、IT人材の世界進出に象徴される産業発展の母体であり、英語圏と共に、非英語圏の市場開発を志向していることから、Malaysiaとの連携は必然的に親密化する。

  グロ-バルな優位は、冒頭記載の同国通産大臣指摘のとおりと考える。

  なお2006年におけるわが国特許庁への外国人特許出願件数は、アジア(トルコ等を含む)計10792のうち、Malaysiaが25件で、韓国7220、中国505、台湾1890、インド167、香港89、シンガポ-ル376より、件数としては、これまでは少ないが、質を見るべきであると共に、今後の著増が予想される。また、タイ11、フィリッピン2、ベトナム・パキスタン各零と対照的である。

2007年8月14日 (火)

True Inventor without Application loose his Right 出願しなかった発明者・考案者は、冒認出願して特許権・実用新案権を得た権利者に対抗できない

Tokyo District Court Decision on Jul.26, 2007   粉粒体移送装置・実用新案権の共有持分に関する訴訟:: 本件の結果は商慣行と知財制度の齟齬か否か

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  産学官連携においても業界内の知財開発においても、得られた特許権・実用新案権の権利帰属に関する悶着が発生する可能性がある。

  平成19年(ワ)1623号 実用新案権確認反訴請求事件の東京地裁判決が、平成19年7月26日に言渡されたが、上記問題考察のために、事実の要約を試みる。

1.粉粒体移送装置考案の経緯

1-1 日静機装は、住岡食品から、粉粒体移送の便利な装置はないかとの相談を受けた。

1-2 日静機装は、テクニカルサポ-ト代表者Aに相談し、粉粒体移送装置の開発に着手することとした。

1-3 テクニカルサポ-トとティ-エスラボ(代表者は同じくA)は、従来技術調査・開発・構造模型(デモ機)の製造等を行い、実用機が完成した。

1-4 日静機装は、ティ-エスラボから試作費・実用機制作費として565万円の請求を受け、支払った。

1-5 日静機装は、本件粉粒体移送装置実用新案について、日静機装を出願人、Aを考案者、B弁理士を代理人として登録出願し、登録を得た(2005-12-14)

1-6 日静機装は、テクニカルサポ-トとAに対し、日静機装が本件実用新案権を有することの確認を求めて訴えを提起した。

1-7 テクニカルサポ-トとAは、日静機装に対し、テクニカルサポ-トが本件1-8 実用新案権について2分の1の共有持分権を有することの確認を求め、               本件反訴を提起した。

2.争点: テクニカルサポ-トの本件実用新案権の共有持分権移転登録請求は認められるか。

2-1 テクニカルサポ-トの主張

2-1-1 日静機装には、本件装置開発の技術・経験・設備が全くないので、本件実用新案は、もっぱらテクニカルサポ-トとティ-エスラボが共同開発したものである。

2-1-2 テクニカルサポ-トと日静機装は、本件装置開発中に口頭で、各共有持分を2分の1として共同出願することを合意した。(SANARI PATENT 注:この合意の存在についてテクニカルサポ-トは若干の補強補足をしている)

2-1-3 この合意に反して、日静機装は単独名義出願し、登録を得た。

2-2 日静機装の主張

そのような合意(2-1-2)をしていない。

3.東京地裁の判断

3-1 テクニカルサポ-トの主張は要するに、「日静機装は、本件実用新案登録を受ける権利について、2分の1の共有持分を有していたに過ぎなかったにもかかわらず、冒認出願により単独で登録を受けた」というものである。(SANARI PATENT 注:特許権や実用新案権を受ける権利を持たない者がした出願、すなわち、発明者・考案者でもなく、その承継人でもない者がした出願を冒認出願というが、法律用語ではない)

3-2 実用新案法は、次のような定め方をしている。

3-2-1 考案者がその考案について実用新案登録を受ける権利を有する。

3-2-2 冒認出願は先願としては認めない。

3-2-3 冒認出願者に対する登録は無効となる。

3-2-4 考案者が冒認出願者に対して実用新案権の移転登録手続請求権を有する旨の規定は置いていない。

3-2-5 実用新案権は、出願人(登録後は登録名義人となる)を権利者として、実用新案権の設定登録により発生する。

3-2-6 たとえ考案者であったとしても、自己名義で出願し登録を得なければ、実用新案権を取得することはない。

3-2-7 このような実用新案法の構造にかんがみ、登録が冒認出願によるものである場合であっても、出願をしていない考案者に対して実用新案登録することを認める結果となることを、法は認めない。

すなわち、考案者が冒認出願者に対し実用新案権の移転登録手続請求をすることを認めない。

3-2-8 平成13年最高裁判決で、特許を受ける権利の共有者(真の権利者)から特許権者(その特許権の登録名義人)に対する移転登録手続請求を認めた判例は、本件には適用できない。すなわち、この最高裁判決は、真の権利者が他の共有者と共同出願した後の偽造譲渡に係るもので、権利の連続性に基づく。

2007年8月13日 (月)

Business Report of NIPPON KAYAKU: 日本化薬の五月期事業報告における「選択と集中」「創生と融合」

Co-Effects of IP Strategy and Management Strategy:  創薬もジェネリックも: ル-ツの火薬技術が、人工ダイヤ量産や高機能スクイブ開発にも:

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  五月期決算会社のうち、日本化薬の今次営業報告(2006-6-12007-5-31)を受領した。

  「日本火薬」と誤記する人はいないが、日本化薬のル-ツは火薬であり、その関連技術を活かしたセイフティシステム事業(エアバック膨張のためのガスを瞬時に発生させるインフレ-タ、スクイブすなわち点火具、マイクロガスジェネレ-タなどが世界トップレベルの評価を受け、米国・チェコに生産拠点を設置し、グロ-バルシェア30%志向)が、社業の一翼を担っている。

  今次報告には、「選択と集中」および「創生と融合」が併進して、財務面から見ても堅実な業績向上を得たことが、具体的に開示されている。研究開発の活発が業績に結びつく「経営戦略と知財戦略の整合」が、産業界全体では必ずしも実現していない現状から見て、日本化薬の好調が注目される。

1.        日本化薬の研究開発活動(SANARI PATENTが要約)

1-1  企業グル-プが保有する技術を融合し、次世代事業の創生を、「研究開発・事業創生エリア」の構築、「コ-ポレ-トテ-マ推進制度」・「先端技術プロジェクト」に基づく「選択と集中」により推進している。

1-2  機能化学品事業の注目点

1-2-1        半導体封止材用エポキシ樹脂の好調

1-2-2        電子情報材料、特にインクジェットプリンタ用色素、偏向フィルムの好調

1-2-3        アクリル酸・メタクリル酸製造用触媒の好調

1-2-4        セイフティシステム、特にエアバッグ用インフレ-タ、シ-トベルトプリテンショナ-用マイクロガスジェネレ-タの好調

1-2-5        電子・情報関連機能材、特にケ―タイ・薄型TV・DVD等のデジタル家電用機能材料の開発

1-2-6        高機能触媒の開発

1-2-7        半導体技術を応用した次世代スクイブの開発(SANARI PATENT 注:スクイブすなわち点火具について、日本化薬の千分の1秒単位で爆発を制御する技術が世界的に評価されてきた)

1-3               医薬事業の注目点

1-3-1        抗がん剤の好調

1-3-2        ジェネリック医薬品原料の好調

1-3-3        医薬品全体の営業利益が対前期比35.9%増。

1-3-4        抗がん剤の卵巣癌・悪性胸膜中皮腫への追加適応申請ないし承認取得

1-3-5        高分子担体により、ナノ粒子化DDS(Drug Delivery System)技術を抗がん剤に応用などの臨床実験

1-3-6        欧州におけるOrphan Drug(希少疾患薬)開発

1-3-7        米国における糖尿病診断薬の展開

1-4               化成品事業の注目点

1-4-1        農薬等アグロ事業の好調

1-4-2        色材事業の好調、特に海外市場

1-4-3        総合的病害虫管理により防除に即する生物農薬等の開発

1-4-4        色材等、繊維・紙用機能性薬剤の開発

2.        日本化薬の特許公開事例

  医薬品に限定して2005年以降の公開事例を見ると

2-1 「新規[2,3-d]ピリミジンー4-オ-ル誘導体およびその用途」(既存抗がん剤との交叉耐性(SANARI PATENT 注:同一薬剤の連用によりその薬剤に対して生ずる抵抗性を耐性いうが、化学的に関連性ある複数薬剤により相互に生ずる耐性を交叉耐性という)がない新規な抗がん剤を提供する)

2-2 「新規なピラゾ-ル誘導体とそれを有効成分とするHSP90阻害剤(医薬品として有用なHSP90阻害活性を有する低分子化合物を提供する)

2-3 「SEPT11遺伝子発現抑制物質」(癌、特に積極的な術後補助化学療法を必要とする予後不良乳がんの治療薬を提供する)

2-4 「新規酵素阻害剤」(医薬、特にC17-20リア-ゼ阻害剤として有用な新規ナフタレン誘導体を提供する)

2-5 「カプセル剤の保存容器と保存方法」(カプセル剤の好ましい特徴を損なわず、カプセル剤の経時的な溶出性の悪化を防止する手段であり、医薬品の開発途中または上市後のどの段階でも変更可能な、前記従来技術より簡便・効果的な方法を提供する)

2-6 「RA13遺伝子発現抑制物質」(癌、特に積極的な術後補助化学療法を必要とする予後不良乳がんの治療薬を提供する)

2-7 「光学活性-エリスロ-3-シクロヘキシルセリンの製造方法」(医薬品の中間体、例えば、抗HIV薬として有用なことが知られている薬剤W001/40227の中間体である光学活性-エリスロ-3-シクロヘキシルセリンもしくはそのBoc体を簡単かつ効率良く取得する方法を提供する)

2-8 「ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤」(ヒストンデアセチラ-ゼ阻害剤を提供する)

(以下略)

3.        SANARI PATENT所見

 「選択と集中」が経営戦略として唱導されているが、日本化薬が、これと併せて、「創生と融合」に知財戦略を結集し、かつ、例えば医薬分野では、創薬とジェネリック原薬の双方に注力しているところに、医療経済ニ―ズ即応の戦略を見る。

  なお。冒頭記載の火薬技術については、その活用により産業用ダイヤの量産技術開発に成功した(野村證券・東洋経済会社四季報2007-6による)。

2007年8月12日 (日)

Platinum Culture and Platinum IP 東海道五拾三次プラチナ象嵌ガラス器芸術と、日本発プラチナ合金知財

Soft Power by ANIME and UKIYOE  歌川広重文化のプラチナ象牙によるグロ-バル発信、アニメのソフトパワ-、プラチナ合金発明の特許力

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

1.        華麗なプラチナ象嵌のガラスア-ト展「琳派と広重の展開」

1-1  本月13日まで、日本橋(東海道起点)の高島屋で上記ア-ト展が開催されている。欧米の美術館で浮世絵の原作を観る機会は、欧米の街中で日本発アニメマンガ本を見る機会と同様に多く、内閣知財戦略本部が唱導する日本コンテンツのグロ-バルな浸透を認識させられるが、グロ-バルに珍重される豪華なプラチナ象嵌(SANARI PATENT 注:基材芸術ガラスにプラチナ箔を付し、その上に色彩ガラスを加える複数工程の後、象嵌を細工する)を加えて、琳派と広重の美的感性を繊細・透明融合の立体形式で展開した上記ア-ト展は、日本コンテンツのグロ-バル進出を加速する新たな起動力になると考える。上記ア-ト展出品の製作者は、黒木国昭氏である。

1-2  黒木国昭氏は、1994年フランスパリ芸術祭大賞受賞、1996年ロ-マ国際美術博覧会ロ-マ大賞受賞等のほか、諸国の美術展に招待参加。

「花器全体が宝石の輝きを放つプラチナ象嵌に誰もが感動」等と高評されてきた。今次ア-ト展には、東海道五拾三次全ての原画が、花器、灯篭、立体造形、壁掛けなど、多様な形態でプラチナ象嵌表現されている。

2.        プラチナ合金関係の特許公開(SANARI PATENTが要約)

日本文化と技術のグロ-バルなキャリアとなるプラチナ合金に関する発明も活発である。一方、中国等からの特許出願もあり、装飾品以外においても国際競争が増大する分野である。最近の特許公開事例を見る。

2-1  シチズンホ-ルディングスの「白色被膜を有する装飾品およびその製造方  法」

2-1-1      課題: プラチナまたはプラチナ合金特有の色調が得られ、外観品質の保持性と高級感ある白色被膜装飾品およびその製造方法を提供する。

2-1-2      解決手段: 最外層としてプラチナ等の貴金属または貴金属の合金から成る白色色調を有する被膜が乾式メッキ法により形成された装飾品において、金属またはセラミクスから成る装飾用品基材と、この基材表面に形成された下地層と、この下地層の表面に乾式メッキ法により形成された炭化チタン層、および、この表面に乾式メッキ法により形成されたプラチナまたはプラチナ合金から成る装飾被膜層とから構成される。(SANARI PATENT 注:同一発明名で、層の厚さを限定した特許公開をシチズンホ-ルディングスは有する)

2-2  行政院原子能委員会核能研究所の「ナノネットワ-ク構造を有するプラチナまたはプラチナ合金の高効率触媒の製造方法」

2-2-1      課題: 高効率・大比表面積のナノネットワ-ク構造を有する貴金属触媒の形成

2-2-2      解決手段: 単層または多層のコンパクトな構造が、有機重合体または無機物質のナノ球体の自己凝集により形成され、この配列空間において触媒が真空スパッタリングにより、もしくはイオン化触媒金属水溶液で充填し化学還元により、形成される。このナノ球体を溶液中で高密度に自己凝集して層状堆積構造とし、溶液を揮発後、プラチナ触媒を堆積させ、ナノ球体を熱分解気化またはフッ化水素酸で溶解除去して、プラチナ触媒から成るナノネットワ-ク構造を形成する。

2-3  田崎真珠の「貴金属を加熱硬化処理し、ダイヤモンドに全く損傷を与えないでダイヤモンドを取付ける方法」

2-3-1      課題: プラチナ合金等の貴金属をそのまま使用して、宝飾品製造で最も用いられるロストワックス鋳造法にて宝飾品枠を製造し、軟質で作業容易な状態でダイヤモンドを取付け後、熱硬化処理(SANARI PATENT 注:同社発明による)を行い、実用的な強度を有する宝飾品を得る工程において、ダイヤモンドに一切損傷を与えないことを可能にする技術を提供する。

2-3-2      解決手段: ダイヤモンドを取付けたプラチナ合金等の貴金属を、専用に製作した密閉熱処理容器を用いて、炭化ホウ素とホウ砂と塩類とを所定割合に基づき混合したものと共に、所定時間、大気中で700~1000で加熱する。炭化ホウ素とホウ砂と塩類との割合の調整により密閉熱処理容器内を常時還元雰囲気に維持することによりダイヤモンドに一切損傷を与えないことを可能にする。

2-4  シチズン時計の「白色被膜00有する装飾品およびその製造方法」

2-5  ゼロックスの「材料またはハイブリッドスカベンジレス現像ワイヤの摩擦帯電特性を調整するためのイオン注入を用いる静電潜像を現像する装置および電極構造」(SANARI PATENT 注:電極に用いる裸線を先ず金・プラチナメッキする)

2-6  田崎真珠、「プラチナ接合用ろう材」

2-7  日本電気の「永久磁石膜およびそれを用いた磁気抵抗効果ヘッド」(SANARI PATENT 注:永久磁石膜がプラチナ合金膜から成る)

2-8  セイコ-電子の「強化パタ-ン模様付裏蓋を有する貴金属時計ケ-スの製造方法」(SANARI PATENT 注:薄肉の裏蓋のプラチナ合金等の強度を補う強化パタ-ンを提供)

2007年8月11日 (土)

Convergence of Hard and Soft 第3期科学技術基本計画は「ソフトウェアを包含したハ-ドウェア」を志向: 改めて「ものづくり」とは?

Creation, Protection and Exploitation of MONODUKURI Technology  「ものづくり技術」の創造・保護・活用のための知財戦略

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

1. 「ものづくり」の再登場:

ものづくり基盤技術振興基本法が平成11年に制定されてから8年を経過したが、内閣知財戦略本部の知財推進計画07に至っても、「ものづくり」という用語は見られず、その用語集にも搭載されていない。

  しかし、知財推進計画08は、第3期科学技術基本計画の重点分野について、分野別知財戦略を計画すべきことになっているから、第3期科学技術基本計画の重点分野である「ものづくり」について、計画することは当然である。

2.「ものづくり基本法」は8年前:

実は、ものづくり基盤技術振興基本法にも、「ものづくり」とは何か、定めていない。同法の第2条は「定義」規定であるが、「ものづくり基盤技術」の定義に始まっていて、「ものづくり」の定義は置いていない。「ものづくり基盤技術」の定義は、次のように定めている。

この法律において「ものづくり基盤技術」とは、工業製品の設計、製造または修理に係る技術のうち汎用性を有し、製造業の発展を支えるものとして政令で定めるものをいう。

3. 第3期科学技術基本計画における「ものづくり」:

   同計画では先ず、次のように述べた。

第3期科学技術基本計画においては、従来の製造技術の開発にとどまることなく、「もの」の価値を押し上げるような科学技術の発展を目指す、価値創造型ものづくり力強化という視点を明確にするため、「製造技術分野」から「ものづくり技術分野」に名称を改めて推進することとする。

   次いで次のように述べた。

産業においては、既に、製造業が提供する製品自体や、製品開発のプロセスにおいて、ソフトウェアの占める役割の重要性は増加の一途を辿っており、ユ-ザ-に向けたサ-ビスまで一貫した製品戦略を打ち出すなど、製品におけるソフトとハ-ドの価値は益々一体化しつつある。

  更に次のように述べている。

産業界は、このような製品の付加価値の多様化や(SANARI PATENT 注:ここで多様化とは、ハ-ドに多様なソフトが一体化することによる多様化と解すべきである)、社会の要求に合わせて事業の体質を変換しつつあり、産業を支えてきた製造技術もハ-ドウェアだけでなくソフトウェアも包含した技術にシフトすべき時期を迎えた。

  日本型ものづくり本来の強みは、現場の優秀な技術者・技能者が、協調的な現場環境で、チ-ムワ-クを発揮してパラメ-タの相互調整を行う統合的組織能力とすり合わせにある。

  ものづくり技術は、情報通信、ナノテクノロジ-・材料、エネルギ-等、他の7分野におけるプロダクトイノベ-ションを具現化する、ものづくりのプロセスイノベ-ションに関する技術である。

4.第3期科学技術基本計画における「ものづくり」知財政策:

  同計画は次の2項目を掲げている。

4-1 知的財産の保護と活用 ものづくりの技術に関する知的財産が安易に模倣、乱用されることを抑止するための施策と、成果が徒らに埋没することなく活用されるための施策の推進

4-2 標準化の推進  知的財産の活用、技術や製品の普及、国際標準化の強化の観点から、特許戦略と連動した戦略的国際標準化の推進

5.SANARI PATENT所見その1

   上記の「ものづくり」政策の経緯と動向から考えて、知財専門家としては次のような事項に重点を志向すべきである。

5-1  ものの外部形状から内部物性情報に至る統一的デジタル情報に立脚した「ものづくり基盤技術」の構築

5-2  最高性能のス-パ-コンピュ-タによる画期的な次世代材料の設計や新薬の革新的な設計などを可能とするシミュレ-ションの実現

5-3  人的協調等の日本型すり合わせ「ものづくり」の強みを加味したITシステム基盤技術の構築

5-4  航空機・人工衛星等の巨大製品の要素技術のインテグレ-ション技術構築による製品品質・低コストの確保

5-5  微生物・植物機能を活用する有用物質生産プロセスの開発

5-6  製鉄プロセス等の省エネルギ-

5-7  超電導現象を活用する国際競争力の革新的強化

6.SANARI PATENT所見その2

  「ものづくり」振興政策は、率直に言って、わが国中小・ベンチャ-企業独自の職人的・秀才的な技能・発想に磨きをかけ、また「すり合わせ」を行って、世界市場占有率の高い日本独自製品を展開することから着想された。「ものづくり」と「製造」の相異を議論するよりも、適時、「ものづくり」の内容を形成することが得策である。

2007年8月10日 (金)

Trade Mark of UnionBank of Switzerland and that of Chicago Cubs 知財高裁判決(2007-8-8)は、シカゴ・カブスの請求を認容: スイスユニオン銀行と対比

Similarity of Trade Marks  称呼、周知性、外観、観念、商品・役務の類似性により判断: 今次判決では称呼の非類似が決め手

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

標記事件における原告「メ-ジャ- リ-グ ベ-スボ-ル プロパ-ティズ インコ-ポレ-テッド」(以下「シカゴ・カブス」)(訴訟代理人・松原 伸之弁理士、村木 清司弁理士ほか)の被告・特許庁長官に対する「審決取消請求事件」の知財高裁判決(2007-8-8)は、特許庁の審決に誤りがあるとして、シカゴ・カブスの請求を認容した。以下、判決の理論構成を考察する。(以下の判決文要約はSANARI PATENT)。

1.経緯

1-1 シカゴ・カブスは、文字「USB」を円輪および円弧で囲んだ商標(以下「本願商標」につき登録出願し(2000-10-13)(指定商品・役務、9類・16類・41類)、補正を経て拒絶査定を受けた(2002-4-16)

1-2 シカゴ・カブスは、拒絶査定不服の審判を請求した(2002-8-15)

1-3  特許庁は、「本件審決の請求は成り立たない」と審決した(2006-9-26)

1-4 シカゴ・カブスは、この審決の取消を知財高裁に求め、知財高裁は、シカゴ・カブスの請求を認容した(2007-8-8).

2.審決の内容

2-1 本願商標は、肉太の円輪郭状中に、これと同じ太さで右側1部を切除した円輪郭状の図形を配し、その切り欠いた円輪郭状図形中に、欠損部分にかかるように「UBS」の文字を太字で書いたものであるが、図形と文字部分とが常に不可分一体のものとして認識されるとはいい難く、読み易い「UBS」が注意を惹いて、「ユ-ビ-エス」の呼称を生ずると見ることが自然である。

2-2 シカゴ・カブスは、切り欠いた円輪郭状図形は「C」であり、UBSと  合わせてカブスと呼称されると主張するが、全体の構成から見て、内輪郭を「C」を表したものとしてカブスと読まれるとすることには無理がある。

2-3 シカゴ・カブスはまた、本願商標は米国の人気球団シカゴ・カブスのユニフォ-ムロゴとして知られ、本願商標からカブスの呼称のみが認識されると主張するが、わが国において、それほどまでに広く認識されているということはできない。

2-4 他方引用商標(SANARI PATENT 注:スイスユニオン銀行 Union Bank of Switzerlandのロゴ)も、「UBS」の文字が顕著に表され、「ユ-ビ-エス」の呼称を生ずるから、類似の商標である。

3.審決の判断に誤りありとするシカゴ・カブスの主張

3-1 日本で電通、NHKTBS、フジテレビ等が2004年以降、米国メジャ-リ-グの放映権を獲得し、日本人メジャ-リ-ガ-もイチロ-ほか13名に達し、シカゴ・カブスのロゴは日本国内で周知されている。

3-2 アルファベットの語を図案化する場合、頭文字を大きく描き、残余をその中に表すことは、頻繁に行われる。特許庁においても、同様の判断をした事例が幾つか見られる。

3-3 従って、本願商標はカブスとのみ呼称され、ユ-ビ-エスの呼称を生ずることはない。

3-4 これに対し、引用商標はユ-ビ-エスの称呼のみを生ずる構成であり、従って、本願商標と引用商標とは称呼において類似しない。

3-5 外観についても、引用商標はUBSの文字と図形または他の文字との組合せから成り、スイスユニオン銀行(UBS)の商標として知られている。本願商標から殊更にUBSの文字のみを抽出して判断することは不自然である。

3-6 観念についても、CUBSは小熊等の幼獣を意味し、シカゴ・カブスのマスコットマ-ク・小熊に由来するが、引用商標のUBSは特に観念を生じない造語で、組合わせられた鍵の図形またはUnion Bank of Switzerlandの文字と合わせてスイスユニオン銀行の観念を生ずるものである。(SANARI PATENT 注:東京には、大手町のファ-ストスクェアにUSBグル-プの拠点がある)

3-7 商品・役務についても相紛れることはない。

4.知財高裁の判断

4-1 わが国におけるシカゴ・カブスの周知性は高い。

4-2 本願商標からはカブスの称呼のみが生じ、ユ-ビ-エスの呼称を生じないと解するのが相当である。

4-3 本願商標と引用商標とは、称呼において類似しない以上、その余の判断をするまでもなく、審決には誤りがある。

5.SANARI PATENT所見

  上記のとおり、称呼の類非が決め手になっているが、特許庁の査定と審決が類似と判断し、知財高裁が非類似と判断したことは、類似判断の主観要素を想到させると共に、異なる判断の導出にこそ、法制度的安定性を見出すべきものと考える。

2007年8月 9日 (木)

Encouraging Valuation of Intellectual Property: 知的財産権の「定額的価値評価手法」は何時「確立」できるのか

For Strategically Exploiting IP: 日本政策投資銀行の「知的財産権有効活用事業融資」など

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

1.        内閣知財戦略本部の「知的財産価値評価手法確立計画」は、延引の累積:

1-1  知財推進計画03から、知的財産権評価に関する内閣知財戦略本部の計画は次のように示されてきた。

   「知的財産に関し客観的に評価できる基準(定量的分析、すなわち、金額換算値評価(SANARI PATENT 注:この「定量的分析」という用語自体が、「定性的分析)の対語として用いられた不適切な表現であって、知的財産の「定性的評価」および「定額的評価」というべきである)の在り方について、各種民間団体調査機関が設ける手法を参考に、知的財産権の種類毎の特性に応じて2004年度までに検討・整理する。また、今後、本格化すると予想される合併・買収における特許等の価値評価事例を整理公開することにより、特許等の譲渡に関する相場確立を目指す。なお、最終的に、価値評価は企業の判断や創意工夫に任せるなどフレキシビリティを持たせるべきである。」(SANARI PATENT 注:上記「整理公開」は未だ行われていない)

1-2  知財推進計画04では「本年度内に確立する」と計画されたが、定額的価値評価基準は「確立」に至らず、知財推進計画05では、「知的資産指標を策定する」という計画に包入されたが、知財推進計画06では次のような計画に改められて、経済産業省が「確立」の主体であることから「民間」への期待にシフトされた。

「企業等が知財を活用した活動を行うためには、知財の活用の目的に応じて価値評価を行うことが必要である。2006年度は、知的財産権の価値地評価手法の確立に向けた考え方(中間論点整理)(SANARI PATENT 注:周知されていない)等を参考にし、民間において信頼性の高い価値評価手法が確立され、知財の活用の目的に応じた評価実務が行われるよう奨励する。」

1-3  知財推進計画07では、これが補筆・補正されて、「2007年度も引続き民間において、知的資産経営のガイドライン等を参考にし、(以下、06と同一)」とされた。

1-4  弁理士が裁判所や税務署から受託して、知的財産権の価値評価を行うことは、従来から各委託者の委託趣旨に即して行われてきたところであるが、その他の事例と共に集積して定額的評価基準を策定する緒には着いていない。

2.        地価評価との対比

2-1  企業の担保資産価値として地価が重要であったが、無形資産、特に知的財  産の担保資産価値が一層重要なものと見られるに至ったにかかわらず、地価に取引事例や近隣対比があるにに対して、知的財産にはこれらに対応するものが乏しいことから、地価評価よりも知財評価の困難性が大であることは認識されてきた。

2-2  地価についても、先週、全国の公示地価が国土交通省により公表され、テレビ東京のWBS(2007/8/4)は、土地は「1物6価」であるとして、路線価(国税庁) 公示地価(国土交通省)基準地価 固定資産評価額、鑑定地価、 実勢価格を対比した。鑑定地価は、不動産鑑定士が、国土交通省制定の鑑定基準に基づいて、取引事例、収益元本化、類比などにより個別の案件について算定するが、このような定額評価基準が、知的財産について経済産業省により示されてはいない。(SANARI PATENT 注:特許庁は、特許性・訴訟力に関する記述的定性的評価の基準を示している)

3.        日本政策投資銀行の対応

3-1  同行は、特許権等による予想収益総額を平均利子率等で除して現価を算定し、これに補正係数を乗じて知的財産の定額的評価を一応行ってきたと推察するが、結局は、総合的企業評価に基づく政策的決定をしていると考える。

3-2  すなわち、同行の「知的財産権有効活用融資」の要項として、対象事業は、

3-2-1      工業所有権関連は、知的財産権の所有者から、知的財産権や利用権等を取得して、新たな事業を行う者に対し、その知的財産権を流動化する事業

3-2-2      コンテンツ関連は、著作権やその利用権等を取得して、コンテンツ事業者に対しその利用権等を提供する事業

  であるが、担保については、相談事項としている。

3-3  また同行の「投資による支援」は、新規事業投資株式会社またはインキュベ-ションファンドを通じて行われるが、いずれにせよ、投資を受けるためには、株主のために企業価値を上昇させる経営が前提となるとしているから、知的財産を含む総合的資産価値とその活用成果が評価されるものと考える。

4.        SANARI PATENT所見

  内閣知財戦略本部および経済産業省が当初から計画していきたのは、「個々の知的財産の定額的価値評価の手法」を確立することであったはずである。その他の手法(定性的評価と総合的評価)は既に定立されているから、改めて内閣知財戦略本部が論ずる必要はない。

  未解決の定額評価領域について、知財推進計画08の計画がどのように表明されるか、知財専門家すべての関心が深い。回帰方程式等を用いた算式が日米欧ともに多数提案されてきたが、現段階では、算定結果に安全率を乗ずるとか、複数算式を「総合的に」使用するとか、過去の実績値の存在を前提にするとか、限定的・暫定的な基準にとどまっているからである。これ以上は論議を進め得ないという結論であれば、むしろ、知的財産評価をオ-クションにより定額化する仕組み(既に地方税滞納処分で商標権等を入札化)を発達させるべきである。

2007年8月 8日 (水)

Infringement of Copyrights 著作権侵害の非親告罪化に日本弁護士連合会を始め、内閣知財戦略本部に対する個人意見は全て強烈に反対

An Offence Subject to Prosecution only upon Complaint 侵害処罰論に対しても、著作権管理体制への不信(不信の当不当は別問題)が深刻に影響

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  内閣知財戦略本部が知財推進計画07の策定に際して意見を公募した結果は、個人・団体別に公表されたが、特に、300ペ-ジを超える個人意見の半ばが著作権保護制度の強化に対する強烈な反対意見である。(SANARI PATENT 注:この公表内容が網羅的かどうかは、疑問である。例えば、団体意見の中に日本弁護士連合会の意見が掲載されていない)

 その主要な論点は、「著作権存続期間の延長」「著作権侵害の非親告罪化」「音楽著作権管理協会の在り方」の3項目であるが、ここでは「著作権侵害の非親告罪化」について考察する。

 なお、内閣知財戦略本部による上記公表に先立ち、日本弁護士連合会は、「著作権存続期間の延長」および「著作権侵害の非親告罪化」に対する反対意見を政官関係機構に提出すると共に、公表している。 

1.        日本弁護士連合会の反対意見

1-1        日本弁護士連合会は、「著作権罰則の非親告罪化に関する意見書」(2007-2-9)公表に至った事情を次のように説明している。(要旨)

1-1-1      内閣知財戦略本部の知的創造サイクル専門調査会(2006-11-7)において、著作権法における親告罪の見直しが議題に上程され、現在も継続検討されている。

1-1-2      日本弁護士連合会は、著作権侵害等の犯罪を非親告罪とすることに対し、反対意見を提出した。

1-1-3      著作権侵害等の罰則は、ほとんどが親告罪とされているが、その理由は、

1-1-3-1           著作権侵害等の犯罪は数が多く、それを発見するためには、権利侵害に最も敏感な著作権者等の告訴によることが効率的であること

1-1-3-2           著作権の権利としての性質上、権利者の意思に反してまで刑罰権を行使することは適切でないことなどである。

1-1-4               上記のことは、立法当時から現在まで、特に変化がなく、従って、いま、著作権侵害を非親告罪とする理由はない。

1-1-5               悪質な著作権侵害に対処するため、非親告罪化が必要であるということも、認められない。権利者の告訴と、それに対する適切な対応があれば充分である。

1-1-6               そこで日本弁護士連合会は、上記趣旨の反対意見書を、内閣知財戦略本部等に提出した。

2.        内閣知財戦略本部が公表(2007-5-30)した個人意見(要旨)

2-1  非親告罪化は、作り手と受け手の断絶に繋がる。私はあるテレビゲ―ムのキャラクタ―のイラストをネットで発表し、メ―カに喜ばれた。このような交流すら刑事監視下に置かれることは不当である。

2-2  「営利目的」「商業規模」該当が、当事者間合意に関係なく取締対象となり、同人文化、二次創作の死滅という不当な結果を来たす。

2-3  表現活動の萎縮に繋がるので、絶対反対する。

2-4  二次創作物と呼ばれる日本独特のサブカルチャ―を絶滅させ、日本のイメ―ジを構成するプラス要因(国益)を損なう。

2-5  著作権者がどこまで許容できるかは千差万別で、他者、特に権力をもつ者が恣意的に勘案することは非常に危険である。

2-6  著作権者が親告するなら道理だが、赤の他人がどうこう言う筋合いでなく、さらに、JASRACのような利権団体が増勢する。

2-7  著作者が認めているから同人の世界が活性化しているのに、敢えてそれを潰すなど愚の骨頂だ。

2-8  現在親告罪であることに大きな意味がある。違法の画定が曖昧な法律ほど民衆を苦しめるものはない。大まかに法改正して、あとは担当機関に丸投げで何とかなるという問題ではない。

3.        SANARI PATENT所見

  個人意見294ペ-ジの39ペ-ジまでの記載にとどめても、このように強烈な反対意見が、他の知財問題を圧倒して数多い。内閣知財戦略本部が、日本弁護士連合会の意見と共に、充分勘案され善処されることを切望する。「美しい国」のソフトパワ―の基盤は国民のコンテンツ意識であり、コンテンツのネットワ-ク流通を阻害しないために、刑罰で差し止める工夫ではなく、自由な流通に「使用料」を付帯させるビジネスモデルの開発等を、内閣知財戦略本部が主導されたい。

2007年8月 7日 (火)

Public Comment for IP Strategic Program 2008 本月10日がパブコメ送信期限:内閣知財戦略本部は「知財戦略一般論から分野別知財戦略策定へ」

Priority Measures for Life Science, Info-Communication, Environment, Nano-Technology  4分野について、内閣知財戦略本部にSANARI PATENT意見を送信

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  標記についてSANARI PATENTは、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジ-の4分野に関する下記意見を内閣知財戦略本部あて送信した。

  記

1.        ライフサイエンス分野について

1-1  「医療方法全般を特許の対象とすべきである」とする意見は、米国特許法との整合の見地からも、内閣知財戦略本部の発足当初から、有識者本部員等により主張されてきたと理解しております。その後、「医療の特質にかんがみ、医師の行為に係る技術を特許の対象とすることには、慎重な配慮が必要であること」、「先端医療技術の開発・普及のためには、産業界の協力やインセンティブも重要であるが、特にそれが必要な分野は医療機器・医薬に密接に関連する分野であること」などから、医師の行為に係る技術は、検討の対象から除外することとした、とされて現在に至っております。

   しかしながら、第3期科学技術基本計画が、医療方法全般のイノベ-ションをも対象としていることに即応して、知的財産戦略がどのような機能を分担すべきか、この際、改めて検討し、国民の納得を得ることが適切と考えます。例えば、米国において、医療関係の特許付与に限定を設けないと共に、医師の行為について免責していることに倣うべきか、特許付与によらずに、発明のインセンティブ(診療報酬等)を付与すべきかなど、であります。

1-2  上記以外の医療関係発明については、審査基準改正により特許付与対象を拡大されてきましたが、健保等の国民医療政策上、および、「産業上利用可能性」を認め得る限界まで、「医療機器の作動方法」、「医薬の製造・販売のために医薬の新しい効能・効果を発現させる方法」に準じて、特許対象を拡大すべきであると考えます。

   このことについては、「医療方法に関する審査基準による現行運用には明らかに限界があり、立法的解決を図るべきである」との意見に対し、「特許付与の対象範囲に関し、特許審査の統一性・透明性を高めるべく、さらに検討する」としてこられましたが、その具体的措置を明示されることを要望申しあげます。

   上記に関連して、医薬品に関する用途発明の進歩性基準をさらに明確にすべきであります。特許期限が満了する医薬品数が著増することに伴い、同一物質の別薬効(副作用を含む)を用途発明として特許出願する別企業の行動が、米国等で目立っている由で、進歩性の判断基準を明確にし、混乱を予防すべきであると存じます。

1-3  Neuro-Informaticsを活用した「失われた人体機能を補完する医療」など、萌芽・融合領域や、再生医学・遺伝子治療に係る発明の特許性については、「医療機器の作動方法」、「医薬の製造・販売のために医薬の新しい効能・効果を発現させる方法」に準じて、早急に特許対象を拡大すべきであると考えます。

1-4 遺伝子組換バイオ製品に関する特許審査基準を新たに別立てで制定し、遺伝子組換バイオ製品の創造・保護・活用を促進する政策(グロ-バルな食料・エネルギ-需給対策の見地から)を明示すべきであります。遺伝子組換バイオ製品の有害性を主張する実験例も発表されてきましたが、これら実験そのもの不適切性が指摘されており、遺伝子の水平伝播や雑種形成との実質的同等性の概念に基づく結論が妥当と考えます。

遺伝子組換バイオ製品のうち食品については、例えば、在来農産物の遺伝子を微生物の殺虫毒素分泌遺伝子で組換えることの対ヒト安全性(毒性)を懸念し、また、特定除草物質に反応しない遺伝子組換農作物の制覇が、除草費用削減の半面効果として天然の遺伝子種を消滅させ、種の多様性を減殺するという、ヒト安全性、環境保全を理由とする反対意見を解消するに至っていませんが、これら反対に対する所要の説得を、科学技術政策の基盤としつつ、遺伝子組換バイオ製品に関する発明の創造・保護・活用を促進する計画を明示すべきであると考えます。

2.情報通信分野について  

2-1 特許審査の促進政策において、わが国がリ-ドしている電子タグ、光ネットワ-ク、ロボット、コアデバイス、情報家電、高機能ケ―タイに重点を置くべきであると考えます。すなわち、第3期科学技術基本計画・情報通信分野の記述において、「イノベ-ション」の定義を「連続的な技術革新」としていますが(イノベ-ションの定義を複数見受けますが、その一つです)、これを「経済的社会的革新を結果する技術革新」と改め、このようなイノベ-ションに直結する情報通信分野の知的財産開発を目標として明示すべきであると考えます。

2-2 第3期科学技術基本計画が掲げる「情報通信に関する既存技術の限界を補完する組織・人間系の管理手法、法律等の社会システムの高度化も併せてバランス良く実施する必要性」にかんがみ、これらに関連するビジネスプログラムの知的創造に対し、特許法の「発明」を「自然法則の利用」に限定せず、米国と同様に、特許性を認めるべきであると考えますが、法改正事項として検討を望みます。

2-3 当面、特許付与における進歩性の判断基準を、ネットワ-ク領域(構成要素の相互接続による新機能の創造)、デバイス・ディスプレイ領域、ソフトウェア領域、コンテンツ領域(情報の収集・集約)、研究開発基盤領域(検索技術)、ヒュ-マンインタ-フェイス領域(脳科学の進歩に基づく理解性測定機器の開発等)、セキュリティ領域、ユビキタス領域(電子タグ)、ロボット領域に分けて、容易想到性の有無の判断要素を、判例の例示のみでなく、これらからの帰納を含めて明示されることを要望申しあげます。

2-4 国際市場においてデファクト標準を形成するための必須特許発明を創出できるよう、ITUの合意形成過程等を充分に考察しつつ、研究助成国費の重点的投入をなすべきであります。

2-5 デジタルコンテンツの流通を普遍的かつ高度化するために役立つ特許付与が、著作権保護と相克することがないよう、制度の調整を早急に行うべきである。すなわち、

2-5-1 通信と放送、有線と無線、固定と移動の各融合を電気通信制度面で促進し、融合系による新たな情報通信技術の開発を知的財産制度をもって奨励すべく、電気通信・知的財産両行政の緊密な連携を行うべきであります。

2-5-2 知財推進計画08のコンテンツの章に、「技術知財とコンテンツの相互作用を高める」と題する節を設け、次のように記述することが望まれます。

「知財戦略においてコンテンツ領域では、コンテンツを支える情報通信技術とコンテンツの供給のバランスある発展による相互作用を高めることが必要である。例えば、わが国のハイビジョン映像や高品質音源の技術が世界最先端を維持したために、グロ-バルに流通するコンテンツを創出する環境を形成し得た。」

3.        環境分野について

3-1 第3期科学技術基本計画は、「環境政策学、環境経済学、環境倫理学等の社会科学・人文科学系の研究を強化し、さらに自然科学系研究との連携強化が必要」と述べております。知的財産権の創造においても、この視点が完全に活かされるよう、わが国特許法の「発明」の定義から、「自然法則の利用」という限定を除去し、米国特許法と等しくすることを検討すべきであります。

3-2 水質処理に関する最近の特許公開事例として、「有機性排水の処理方法」(多段式生物処理において、設置ベ-ス等を縮小化すると共に、高水質処理水を得る)、「固体高分子形燃料電池システムおよびその運転方法」(熱ロスを抑制しながら、または、終了時間を短縮させながら冷却水の水質を維持する)、「フッ素含有排水の処理方法」(フッ素含有廃水処理に対する凝集沈殿による処理方法において、フッ素濃度の低い高品質の処理排水を得る方法は未だ開発されていないが、この方法を提供する)など、処理の高度化、低コスト化を解決するものにについては、特許行政上の重点課題とされたい。

3-3 排気・排煙処理に関する最近の特許公開事例として、「吸着部材および排煙処理装置」(金属等の再生処理が簡易となり、連続処理を行う)、「耐食性を有するフィン付き伝熱管および排ガス加熱装置」(酸性ミストの蒸発による管材の腐食を、他の設備を必要とせず、かつ安全・効果的・経済的・簡便に防止する)、「排気処理装置」(燃料電池システムの運転試験に用いることができ、アイドルストップ状態や走行中発電停止になった場合にも燃料電池を劣化させない排気処理)、「エンジン排気処理装置およびエンジン駆動式ヒ-トポンプ装置」(排気ガスの逆流による異音発生がない)など、経済性を備え、異音防止等の悪副作用を伴わない発明の要素と効果を総合判断する特許付与が望まれます。

3-4騒音防止に関する最近の特許公開事例として、「エレベ-タの戸係合装置」(乗場の敷居およびかごの敷居間距離が小さいエレベ-タ装置においても、騒音防止と電力節減を図り、確実に戸駆動装置の駆動力を乗場の戸に伝達する)、「シ-ト処理装置および画像形成装置」(消費電力の削減、騒音防止、耐久性向上、生産性向上、省スペ-ス化を可能にする)、「車両用騒音防止装置」(車室内の音量が大きい場合にも、その音を下げず、周囲に迷惑をかけない)など、電力節減や騒音分布の適切をも効果とする総合性を特許性判断の要素とすることが望まれます。

4.ナノテクノロジ-分野について

4-1 ナノテクノロジ-は、ナノメ-トルの領域にまで、物質の組織制御と合成を及ぼすことにより、物質の新たな機能を開発すると共に、「新物質」の創出を実現する源泉であるから、特許性の審査基準において、機能特許と物質特許の双方にわたる進歩性等の判断基準を精緻化することが必要と考えます。

4-2 ナノ薬物送達技術については、医療関係発明の特許付与要件に該当させるよう、論理構成を明示すべきであると考えます。すなわち、キャリアについて「物発明の特許」を付与し、これを用いる診断・治療技術について、「物の作用」として特許性を構成するよう措置されたい。ナノテクノロジ-を駆使した生体に優しい医用デバイス、人工心臓・人工骨等の失われた生体機能を再建・回復・代替するデバイスの発明が期待されております。

4-3 ナノテクノロジ-に対する「不連続で飛躍的な成果をもたらし得るイノベ-ション促進型科学技術」であるとの期待からは、「非容易想到性」のハ-ドルが高められることも予測されますが、「不連続・飛躍的」と「「非容易想到性」の見合わせ方を、慎重に検討され、従来ナノテクノロジ-技術の延長による開発にも、「非容易想到性」を認めるべき場合を明示されることを望みます。

4-4 21世紀に入って、欧米ではナノテクノロジ-を国家戦略として推進し、情報通信・環境・ライフサイエンス等との融合分野に戦略を及ぼし、中国・韓国も同様でありますから、特許審査ハイウェイの運営において、これら諸国の特許審査基準との調和を整え、出願相手国の選択による損得がないよう配慮されたい。

4-5 第3期科学技術基本計画は、「ナノ領域で初めて発現する特有の現象・特性を活かすテクノロジ-がナノテクノロジ-である」とした上で、さらにナノテクノロジ-を「True Nano」とそれ以外のナノに分けました。「True Nano」の定義は、「従来の延長線上ではない、不連続な進歩(ジャンプアップ)が期待される創造性を有するナノテクノロジ-」、「大きな産業応用が見通せるナノテクノロジ-」と示されているが、択一条件か全部充足条件か、明示されていない。いずれにせよ、例えば、「純粋ナノテクノロジ-」、「純真ナノ」のような訳語をわが国知財業務では用いるように配意されたい。

2007年8月 6日 (月)

IP for Financial Disclosure: 次世代財務報告専用コンピュ-タ言語XBRLの2008年度適用などに対応

International Convergence of Accounting Standards: 財務情報の電子処理による解析の合理化

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  2008年度から、財務ディスクロ-ジャ-分野においては、金融庁行政の国際調和等に対応する大きな変化が予定ないし予想されている。これに即応する財務諸表作成の知財開発は、専門性が高い印刷分野として、関係企業が当面する課題である。

1.        財務諸表ディスクロ-ジャ-事業大手・宝印刷の特許力

1-1  五月決算会社のうち、宝印刷の事業報告を受領した。野村證券・東洋経済の会社四季報(2007-6)によれば、宝印刷(東証1部)は、「公開企業のディスクロ-ジャ-事業大手。公開準備から継続開示までカバ-し、CSR経営を標榜している(SANARI PATENT 注:ここでは、Corporate Social ResponsibilityCertificate Signing RequestのCSRも、同社事業と関係深いと考える)。営業大増強でIPO(SANARI PATENT 注:Initial Public Offering。株式公開)や、有価証券報告書等のシェア拡大を最重点としています」とあるが、注目すべきは、この記述に続いて、「2008年度・財務諸表の標準コ-ド化義務付けで、仕様設計を金融庁から共同受注し、セミナなどテコに顧客増を狙う」という記事である。

1-2  宝印刷の今次事業報告は、次の諸点を強調している(SANARI PATENTが要約)。

1-2-1      宝印刷グル-プでは、次世代財務報告専用コンピュ-タ言語XBRL (SANARI PATENT 注:Extensible Business Reporting Language。世界的に普及途上)の導入が予定されているEDINET (SANARI PATENT 注:Electronic Disclosure for Investors’ Language 。有価証券報告書開示システム)や、義務化が予定されている「証券取引法に基づく毎四半期開示」など、大きな変化が予想されるディスクロ-ジャ-分野において、長年にわたり蓄積してきたサ-ビスの知識・経験とIT技術を駆使して、企業の法定財務開示等関連製品の供給の増加を計画している。

1-2-2      宝印刷は、昭和27年に創業以来、証券取引法・会社法等に基づくディスクロ-ジャ-という社会経済的重要事項に関与し、専門性・信頼性を発揮してきた(SANARI PATENT 注:同社の企業価値を維持することが公共の利益に直結することを示唆している)

1-2-3      最近、他業界で頻発している企業買収提案についても、多数株主が的確なディスクロ-ジャ-を得ている状態で適切に判断することが重要である。

2.        宝印刷のディスクロ-ジャ-事業関連特許公開事例(SANARI PATENTが要約)

2-1 ディスクロ-ジャ-文書作成支援方法およびディスクロ-ジャ-文書作成支援プログラム

2-1-1 課題: ディスクロ-ジャ-文書を効率的に作成すると共に、より的確に内容の確認を行うためのディスクロ-ジャ-文書作成支援方法およびディスクロ-ジャ-文書作成支援プログラムを提供する。

2-1-2 解決手段: 文書作成支援サ-バは、利用者端末からのアクセス要求に基づいて、この利用者のユ-ザ-認証を行い、利用者端末から要求があったディスクロ-ジャ-文書を作成文書識別子により特定する。そして、ディスクロ-ジャ-文書のセクション毎の作成文書デ―タの承認ステ-タスに基づいて決定された作成者識別子、承認権限者識別子、外部監査者識別子と、アクセスデ―タ中の利用者識別子に基づいて、アクセス要求を行った利用者のディスクロ-ジャ-文書の閲覧の可否を判断する。閲覧を許容した場合には、アクセス履歴を記録する。

2-2 株主情報管理方法および株主情報管理プログラム

2-2-1 課題: 効率的かつ的確に株主と株式発行会社や証券代行機関との間で情報交換できる株主情報管理方法および株主情報管理プログラムを提供する。

2-2-2 解決手段: ユ-ザ-端末からのアクセス要求を受信した管理コンピュ-タは、ユ-ザ-IDおよびパスワ-ドに基づいて本人確認する。そして、株主が保有する株式を一覧できる株主ペ-ジをユ-ザ-端末に送信する。この株主ペ-ジを利用してのSR情報(SANARI PATENT 注:検索情報の意味と解する)要求を受信した株主管理システムは、ユ-ザ-端末の識別子に暗号鍵を付加して、株式発行会社システムにSR情報要求を送信する。株式発行会社システムは、暗号鍵の認証ができた場合には、SR情報をそのユ-ザ-端末に提供する。

2-3 議決権管理方法

2-3-1 課題: 株主総会において、簡易に議決権を行使できる議決権管理方法を提供する。

2-3-2 株主総会の期日の所定期間前になった場合、管理コンピュ-タは、議決権を有する株主を抽出する。そして、株主毎に株主権行使番号を作成し、株主総会招集通知と共に、株主の電子メ-ルアドレスに送信する。株主は、パスワ-ド、株主ID,議決権行使番号を用いて、インタ-ネットを介して証券代行システムにアクセスする。そして、議決権を行使するために、が決権行使ウェブペ-ジを用いて議案毎に賛否を選択する。この賛否に関するデ―タは、証券代行システムに送信される。管理コンピュ-タは、議案毎の賛否に関するデ―タを集計し、投票結果を算出する。

2007年8月 5日 (日)

Patent Crisis Discussed: Patents issued on Small Innovations etc: 「特許権の危機」主題のスタンフォ-ド・サミット(2007/07/31~08/02)のパテントパネル

Patent Crisis discussed by Apple, Google, IBM, Fenwick & West: 医薬品業界と電子機器業界とでは、異なる評価

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

1.        標記パネルの概要が、cyberlaw.standard.eduweb site等に掲載された。

抜粋かつ要約しつつ考察すると、

1-1  モデレ-タはSedgwickMichael Brandis氏、パネリストは、アップルのChip Lutton氏、グ-グルのMichaelle Lee氏、IBMのDavid Kappos氏、Fenwick & WestDavid Hayes氏である。

   SANARI PATENTがパネルの諸発言を見ると、米国において「パテントの危機が現存するのか否か」について、2方向の見解が考察される。

1-2  アップルのChip Lutton氏は、米国の特許制度は世界で最優秀なシステムであり、米国経済のイノベ-ションの基礎をなしているが、「僅かなイノベ-ション効果しかもたない群小発明に膨大な数の特許権付与がなされていること」、「特許権の質に問題があること」、「特許権評価の適切なシステムが無いこと」は、現時点における問題点である旨を述べた。(SANARI PATENT 注:特許権評価の手法については、米国で回帰方程式等を用いる算式などが著述されているが、枢要な点について仮説を設けるものであり、定額的価値評価、特に財務会計基準に適合する評価に至らない)

1-3  アップルのChip Lutton氏は更に、「これら3つの問題は、パテントの活発な利用と強調に伴うバブルであって、バブルを巧みに解決できるか、新たな危機局面への展開に陥ってゆくかが、現下の問題である」旨を述べた。

1-4  グ-グルのMichaelle Lee氏は、「米国の特許制度は、米国特許商標庁への大量特許出願と付与特許権の質の低下」、「トロ-ルと呼ばれる特許権取引専業者の存在」、「特許権侵害に対する過大な賠償請求」など、危機的様相の現存を指摘した。

1-5  IBMのDavid Kappos氏は、「薬品などのバイオ分野においては、現行特許権制度は概ね満足すべきものであって、問題点があっても若干の調整で解決できるかも知れない。しかし、投機的パテント取得が横行する情報通信分野では、特許の危機は現実かつ深刻な問題である」旨を述べた。(SANARI PATENT 注:わが国で内閣知財戦略本部が分野別知財戦略を策定する計画を有することが適切であることを、米国の例から裏付けると考える)

2.        SANARI PATENT所見

2-1  パテントトロ-ルやパテントプロモ-タの活動が、米国特許業界の病理現象と考えられる面があるとしても、Patent Crisis、特許の危機と直訳するとややオ-バな感じがする。特許出願数の著増と滞貨は、わが国も同様であったが、危機という把握はされなかった。

2-2  パテントトロ-ルやパテントプロモ-タの存在は、やはり特許権に対する利得チャンスとしての期待に基づいている。わが国の産業構造審議会知財政策部会の参考人知財権も、特許権の取得とその販売・ライセンスのみを目的とする企業者が招致されたことがあるが、特許権の価値保証をしないことから、「美味い商売ですね」と評されたにとどまる。

2-3  特許権の質の問題は、2つに分かたれる。

   ひとつは、進歩性の程度の濃厚の問題であり、ひとつは、法的安定性、すなわち、付与された特許権が異議申立・審判・訴訟により取消されることなどの問題である。

   SANARI PATENTはいずれも、「当業者」による容易想到性判断等を要素とする特許制度の本質に根ざす問題であり、全面的に問題を消去しようとすること自体が適切でない。各産業分野の発達段階に即応して、政策的に、対応策の合意を形成すべきである。

2007年8月 4日 (土)

Protecting the Public from Unscrupulous Invention Promoters, Disciplinary Action Taken by USPTO 控訴法廷でBパテントアト-ニ-の弁明

American Investors Corporation(AIC), as one of Patent Promoters  パテントプロモ-タとBパテントアト-ニ-との関係をECFCが解明

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

 

はじめに: パテントトロ-ルとパテントプロモ-タ:

 特許活動が極めて活発な米国は、イノベ-ションと改正市場制覇のエネルギ-を特許制度という熱源から得ているが、その「活発」に伴う副作用的現象も多発しているようである。例えば、パテントトロ-ルと呼ばれる社会現象は、「特許権の実施やライセンスを目的とせず、特許取得の余地をトロ-ルして多数特許権を取得し、これをハイテク等の大企業に売却し、または高額なライセンス料を請求することを目的とする業者」の活動を指している。

 パテントプロモ-タも、上記副作用的現象のひとつと見られる。

   その実例として、パテントプロモ-タから誘導された米国パテントアト-ニ-S.Michael Bender氏に対し、米国特許商標庁は先般、「米国特許商標庁に対する業務資格の剥奪処分」(exclude B Patent Attorney from practicing before the PTO)を行ったが、コロンビア地裁もこの処分を是認したので、Bパテントアト-ニ-は連邦巡回控訴裁判所(CAFC)に控訴した。

  CAFCは、「米国特許商標庁の処分には実質的かつ充分な証拠があり、恣意的・浮動的・裁量濫用的その他の違法性がないこと」を確認したとして、2007-6-21 決定をもって、Bパテントアト-ニ-の控訴を斥けた。

  この事件の背景と決定の要旨は、既にSANARI PATENT July 17記事に述べたが、ここには、18ペ-ジに及ぶCAFC決定文の「事実関係」および「Bパテントアト-ニ-の抗弁」を考察する。

1.        パテントアト-ニ-に対する米国特許商標庁の「モニタ-等による監視」

1-1  ECFC決定文3ペ-ジ以下「 無節操なパテント促進業者から一般国民を保護するため、米国特許商標庁は、積極的にモニタ-を活用して、「パテント促進業者」と連携しつつ米国特許商標庁への出願を行うパテントアト-ニ-」の規律違反を監視・監督してきた。」

1-2  「今次事件は、1000名を超える「疑うことを知らない発明者達」を巻き込んだパテント促進業者と共謀・連座したパテントアト-ニ-の一例である。」

1-3  「これらの「疑うことを知らない発明者達」は先ず、「パテント促進業者」の一員である米国発明家コ-ポレ-ション(AIC)に助力を求めた。AIC は、発明家にそのアイディアの提示を促し、賞賛して、パテントサ-チを行い、製造業者等へのパテントセ-ルのプレゼンテ-ションの方法を示し、AIC と「その発明家のためのパテントアト-ニ-依頼」などの契約と関係対価一切の授受を行わせる。」

1-4  「上記AICと発明家との契約には、どのような特許権が付与されるのか、また、デザインパテントと機能パテントの保護の相異などは示されず、ACIは、これらを発明家には秘匿することを一般方針としていた。」

1-5  「本件の場合、AICは発明家と契約締結後、先ずGパテントアト-ニ-に発明の内容を示した。多くの場合、発明家達は、その発明の有用性・機能性の特許保護を望んだが、Gパテントアト-ニ-はデザインパテントを起草することを常とした。加えて、Gパテントアト-ニ-は発明家が意図しない装飾・表面特徴を付加し、出願書類をAICに持ち込んで、発明家の署名を得た上で、Gパテントアト-ニ-の米国特許商標庁登録番号により米国特許商標庁に提出された。」

1-6  「Gパテントアト-ニ-は、この間、出願書類およびデザインパテントについて発明家には一切相談しなかったが、AICの元従業員によれば、発明家とパテントアト-ニ-との直接接触を、AICは厳に阻止していた。」

1-7  「上記のスキ-ムの目的は、AICが発明家に約定した不成功時の返金を避けるため、パテントの取得を容易にすることであり、このような潤色が、米国特許商標庁のGパテントアト-ニ-に対する規律措置着手を促進する結果となった。」

1-8  「米国特許商標庁はさらに、各出願人に対し「情報要請」(Request for Information: RFI)を発出し、機能パテントとデザインパテントのいずれ、または双方を求めたのか、両パテントの相異を了知していたか、を質問した。

1-9  結局、Gパテントアト-ニ-は、5月間の業務停止を受容した。

2.        Gパテントアト-ニ-からBパテントアト-ニ-へのシフト

2-1  CAFC決定文5ペ-ジ以下「その後AICは、上記1000余のGパテントアト-ニ-代理によるデザインパテント出願についてS.Michael Benderパテントアト-ニ-と切替契約し、パテントアト-ニ-手数料および出願費用として隔週1万5千ドル(月額約360万円)をBパテントアト-ニ-に支払うこととした。」

2-2  「Bパテントアト-ニ-は元Gパテントアト-ニ-契約相手方の発明家対して、簡単な「デザインパテントと機能パテント」の相異をレタ-したが、各依頼者の個別要件に言及せず、デザインパテント出願の意向の確認も行わなかった。

2007年8月 3日 (金)

Contradictions between Technical Fields 分野間相克の調整、環境とナノテクノロジ-、生物多様性と遺伝子組換など

Fusion of Natural and Social Science  第3期科学技術基本計画における「環境技術政策の自然・社会科学融合」の必要性に対応する「発明の定義」

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  環境技術は、内閣知財戦略本部・知財推進計画08の重点4分野のひとつであるが、その原典・第3期科学技術基本計画の環境技術の章には、次のような記述がある。

  「ナノテクノロジ-などの新技術によって生成される物質や新規に開発される物質などによる新たなリスクが危惧されているため、それらに対応可能な予見的リスク管理技術の開発が求められる。」

  産業の発達と環境の保全の両立は、古くかつ新しい課題で、知財の開発と他の価値との調整も、類似した課題である。知財専門家としては、水処理技術や化石燃料代替エネルギ-の低廉な製造など、知的財産権化による促進を職責とする。

  このような立場から、環境技術に係る知財戦略について意見を述べる。

1.        第3期科学技術基本計画は、「環境政策学、環境経済学、環境倫理学等の社会科学・人文科学系の研究を強化し、さらに自然科学系研究との連携強化が必要」と述べている。知的財産権の創造においても、この視点が完全に活かされるよう、わが国特許法の「発明」の定義から、「自然法則の利用」という限定を除去し、米国特許法と等しくすべきである。

2.        水質処理に関する最近の特許公開事例として、「有機性排水の処理方法」(オルガノ: 多段式生物処理において、設置ベ-ス等を縮小化すると共に、高水質処理水を得る)、「固体高分子形燃料電池システムおよびその運転方法」(松下電器産業: 熱ロスを抑制しながら、または、終了時間を短縮させながら冷却水の水質を維持する)、「フッ素含有排水の処理方法」(東ソ-: フッ素含有廃水処理に対する凝集沈殿による処理方法において、フッ素濃度の低い高品質の処理排水を得る方法は未だ開発されていないが、この方法を提供する)など、処理の高度化、低コスト化を解決するものにについては、特許行政上の重点課題とされたい。

3.        排気・排煙処理に関する最近の特許公開事例として、「吸着部材および排煙処理装置」(三菱重工: 水銀等の再生処理が簡易となり、連続処理を行う)、「耐食性を有するフィン付き伝熱管および排ガス加熱装置」(パブコック日立: 酸性ミストの蒸発による管材の腐食を、他の設備を必要とせず、かつ安全・効果的・経済的・簡便に防止する)、「排気処理装置」(本田技研: 燃料電池システムの運転試験に用いることができ、アイドルストップ状態や走行中発電停止になった場合にも燃料電池を劣化させない排気処理)、「エンジン排気処理装置およびエンジン駆動式ヒ-トポンプ装置」(三洋電機: 排気ガスの逆流による異音発生がない)など、経済性を備え、異音防止等の悪副作用を伴わない発明の要素と効果を総合判断する特許付与が望まれる。

4.        騒音防止に関する最近の特許公開事例として、「エレベ-タの戸係合装置」(三菱電機: 乗場の敷居およびかごの敷居間距離が小さいエレベ-タ装置においても、騒音防止と電力節減を図り、確実に戸駆動装置の駆動力を乗場の戸に伝達する)、「シ-ト処理装置および画像形成装置」(キャノン: 消費電力の削減、騒音防止、耐久性向上、生産性向上、省スペ-ス化を可能にする)、「車両用騒音防止装置」(デンソ-: 車室内の音量が大きい場合にも、その音を下げず、周囲に迷惑をかけない)など、電力節減や騒音分布の適切をも効果とする総合性を特許性判断の要素とすることが望まれる。

2007年8月 2日 (木)

Public Comment for Bio Cluster Strategy in KYUUSYUU: パブコメ、明日3日が送信期限(九州経済産業局あて)

Bio Industry Products Include “Life Originated Products” and “Products for Life”  バイオ製品には「生物に由来する製品」と「生物が摂取する製品」の両分野を含む

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  九州経済産業局が「九州地域バイオクラスタ-戦略ビジョン案」を策定し(内容はJuly 7 記事)、パブリックコメントを求めいる。

  SANARI PATENTは、既に意見様式に従い、下記意見を送信済みであるが、意見の理由を若干補足する。

  九州地域バイオクラスタ-を構想するためには先ず、九州地域のバイオ産業基盤の特性を明確に認識することが必要であるが、さらにそのためには、バイオ産業の内容をどのように理解するか、確認しなければならない。

  九州経済産業局の案には「バイオ産業」の定義はないが、食品・医薬品を中心として、いわゆるバイオインダストリ-全般を含むものと解される。

  SANARI PATENTの分類では、バイオ製品は「生物に由来する製品」(大豆等を原料とするバイオエタノ-ル、遺伝子組換食品など、生物を原料とする製品、および、微生物を用いて採集する希少元素など、生物の機能を利用して生産される製品)と、「生物が摂取する製品」(化学合成による医薬品、タンパク質食品など)に2分する。

  九州地域は、かつてはわが国エネルギ-の太宗であった国産石炭の半ばを産出し、石炭系有機合成化学の発祥地のひとつであり、医薬品合成の基盤を備えてきた。

  また四囲の海域・海流、亜熱帯森林資源、温泉資源などにより、著しく生物多様性に富み、遺伝子資源を含めて、生物由来製品の有利な自然基盤をもつ。

  さらに沖縄と一体的に考えれば、例えば、明星食品が九州(飯塚)で「沖縄そば」の大規模生産をしているように(SANARI PATENT 注:テレビ東京「ガイヤの夜明け」2007-7-31が放映)、沖縄の資源特性をも活用できる。宮崎マンゴ、明太子、あまおう等の九州地域内名産は、全国の産地直送品人気の波に乗って拡販中と伝えられる。

  下記は、このような見地から、パブコメしたものである。

   記 (以下、募集の様式による)

1.        該当箇所 

1-1 「1-4 九州地域の地理的特徴」

1-2 「参考資料149ペ-ジの人材活用」

2.        意見

2-1        標題を「1-4 九州地域の地理的(自然的)・歴史的特徴」と改め、「交通インフラ」に限定した記述を拡充して、「石炭産業から派生した有機合成化学のフザインケミカル化」、「金銀等鉱山開発による多様な希少元素資源の活用」、「温泉源・森林源等による生物遺伝資源・天然型単糖類等の多様性」、「海域の水温、生息・回遊生物の多様性」、「内陸・沿岸を含む微生物分布の多様性」、「明治維新に先立つ西欧医学・東洋医学との交流」、「軍事・地下労働にに伴う医療発達の必然性」などを九州地域バイオクラスタ-戦略の基盤として示すと共に、「東京からの情報の遅れなどは、九州のデメリットである」という記述を、「先端的情報通信インフラの高度の発達・整備により、国内およびグロ-バルな情報の流通は、九州地域のメリットである」と、記述を逆転する。さらに、「沖縄との地理的・歴史的関係に言及し、特にバイオマス、バイオエネルギ-産業の振興を強調する。

2-2        「地元弁理士・弁護士との連携」を、「地元弁理士・弁護士と連携すると共に、例えば、日本弁理士会・バイオ研究部(所属弁理士約150名)のバイオ各先端分野にわたる知見を、インタ-ネット交信を含めて活用する」とし、専門性を強調する。

3.        理由

3-1  従来、局地的なバイオクラスタ-は、他の地域でも構想されてきたが、九州地域バイオクラスタ-戦略ビジョン案の広域性・先駆性にかんがみ、冒頭に、九州地域バイオクラスタ-戦略ビジョン案の地理的・歴史的必然性を内外に宣明することが適切と考えられる。

3-2  バイオ産業の分野の多様性と先端性にかんがみ、バイオ知財専門家グル-プとの連携体制を内外にわたり構築することを先行すべきである。

2007年8月 1日 (水)

Innovation or Improvement, from the Standpoint of Company Management 花王の後藤卓也会長が「革新よりも改良」「ホ-ムランばかり狙っては、ヒット商品は生まれない」

 Variety of IP Strategies for Variety of Fields  分野別特性を分野別知財政策にどのように反映させるべきか

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

1.        花王24期連続増益は「アタック」等の「改良」で:

1-1 テレビ東京の人気番組カンブリア宮殿(2007-7-30)に佐藤卓也・花王会長画像が再登場し、「革新より改良」、「イノベ-ションのホ-ムランのみを狙ってもヒット商品は必ずしも生まれず、着実なインプル-ブメントの累積(例えば、洗剤アタックの改良累計20回)が好業績の継続を生む」という趣旨の発言によって、「トップ金言大賞」の8位に入賞した。(SANARI PATENT 注:62名の会長・社長の発言中。なお第1位は、全日空大橋洋治社長の「楽しくコストカット」)

1-2 第3期科学技術基本計画は、「非連続的・飛躍的技術革新による社会・経済の革新」をイノベ-ションの定義として、知財の開発もこれに重点志向しているが、「改良」の累積を同様に重要とし、前提としているものと解する。基本特許のみならず、改良特許の進歩性が強調されるべきである。

1-3 花王の洗剤に関する特許公開事例を、2007年度以降公開のものについて見ても、本年7月に公開された「粉末洗浄剤組成物の製造方法」(陰イオン界面活性剤の酸前駆体による洗剤粒子の色相への影響を低減して粉末洗浄剤組成物を得ることができる製造方法の提供)、「粉末洗剤の製造方法」(溶解性と保存安定性に優れた粉末洗剤が得られる製造方法を提供)、「粉状洗剤入り容器」(内部に粉状の洗剤を入れた容器から、吐出位置に精度良く洗剤を吐出して、周囲にこぼすことを回避すると共に、洗剤の詰め替えを容易に行い得る「粉状洗剤入り容器」の提供)、「発泡吐出容器」(内容液が吐出された被吐出面の広い範囲に泡を付着させて、吐出器による吐出毎の付着面積を目視によって精度良く確認できるようにする発泡吐出容器を提供)等を含めて434件(特許433、実用新案1)に達し、不断の「改良」がトイレタリ-首位(野村證券・東洋経済会社四季報2007-6による)の市場占有基盤を構築していると考える(SANARI PATENT 注:ただし、「トイレタリ-」という用語の定義は流動的であり、国際的にも異同がある)

2.経営戦略と知財戦略:

   企業評価の指標として、研究開発費の対総経費比率や対前年度増加率が主要な要素とされている場合が多いく、特許出願数やその増加率を要素とするのもその類型に属し、いずれも、経営戦略との整合なくしては、本来、意義がない。経営戦略に適合しない研究開発や特許出願は、経営資源の浪費に帰し、経営指標を悪化させる。

  従って、「イノベ-ションの散発」と「インプル-ブメントの累積」との併進が通常の企業戦略であり、そのバランス保持が経営戦略の要と考える。

3. 基本特許、必須特許、革新特許(イノベ-ション特許)、改良特許(インプル-ブメント特許):

  これらは知財戦略上、重要な概念であるが、厳密に定義されたものとはいえない。最近の用例を見ると(要旨)、

3-1        ロイタ-配信によるヤフ-ニュ-ス(2007-7-11)

   「アジェンスMGは11日、遺伝子治療などで遺伝子の運搬役を果たすHVJ-Eのベクタ-の基本特許を取得したと発表した。HVJ-Eのベクタ-は既に研究用試薬として他社にライセンスされ商品化されているが、今回の特許庁取得で権利関係が確定し、今後の同社の研究開発の基盤を強化する見通し。」(SANARI PATENT 注:リサ-チツ-ルのパテントポリシ-に関連すると考える)

3-2        NTTドコモホ-ムペ-ジ(2007-7所見)

   「弊社は、第3世代移動通信システムW-CDMA方式(SANARI PATENT 注:広帯域符号分割多重接続方式)について、弊社が持つ必須特許をライセンスしております。ライセンス条件は、W-CDMA方式の普及を目的として、妥当な条件にてライセンスいたします。」(SANARI PATENT 注:世界電気通信連合国際標準化関連)

3-3        群馬大学共同研究イノベ-ションセンタ-・ホ-ムペ-ジ、大谷 杉・名誉教授(2007-7)

「私は、ピッチ系炭素繊維についての基本特許だと自他ともに認める特許を二つも三つも持っていました。その後、改良特許に当たるものが数え切れないほど出され、それを頼りに幾つかの企業が工業化を試みておりました。私自身は、それらの改良特許は全部基本特許に抵触していると思っています。」

« 2007年7月 | トップページ | 2007年9月 »