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2007年6月30日 (土)

Feeling Value as Driver of Innovation イノベ-ション起動力としての感性価値(ユニクロとH&M)

Cycle of Co-Feeling-Creation  作り手と使い手の感性価値共鳴による感性価値の「共創」という新概念

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

   日米ともに、イノベ-ションが経済政策の基本とされているから、甘利経済産業大臣による感性価値の提案も、イノベ-ション起動力として感性価値を次のように強調する。(SANARI PATENT関連記事JUN.29

1.        感性価値による需要喚起と、「共創」の好循環

1-1 技術力のみでは不十分

日本企業の中には、優れた技術力を有しながらその価値を需要者に伝え得ず、本来の価値に見合う対価を得ないものも多い。流通においても、生活者が求める感性価値の高い商品を見出し、新しい需要を喚起すべきである。メディアや生活者自身も、感性を持ちながら、自らの目利き能力に自信を持てず、海外ブランドや、海外の日本製品評価を崇拝する傾向がある。

1-2        成熟社会における感性価値

成熟社会においては、感性価値中心の発想による商品・サ-ビスに、需要喚起能力がある。

1-3 「共創」の好循環

感性価値の実現には、作り手と買い手が互いに響き合い作り上げる「共創」の概念が重要である。使い手の共感を得た作り手に、新たな感性価値創造のエンジンが作動し、感性価値創造の好循環が形成され、イノベ-ションを牽引する。

1-3        感性価値による地域経済の活性化

地域には、潜在的な可能性を秘めた地域資源が多々あり、感性価値を際立たせることにより、地域経済を活性化できる。

1-4        グロ-バル時代に、日本の感性価値を伝播

企業がグロ-バル展開する場合、他国の製品と差別化するため、日本を感ずることができるような要素を、感性価値によって商品・サ-ビスに内在させ、また可視化することが重要である。

2.        感性価値創造における日本の強みと弱み

2-1        強み

 「外国文明の改変・融合による価値創造」と「日本固有の美意識による価値創造」の両面を併有してきた。これにより生まれた感性価値は、日本独自の感性と世界の多様な文化を共に背景としてので、日本のテイストと同時に、世界通用性を具備する。

2-2        弱み

国民の傾向として、利便性・効率性を重視する傾向への傾斜が、都市生活の研究者等によって指摘されている。都市化の進展によって自然への接触が減少したこと、ネット販売等によって実物を五感で確かめる機会・必要が減少したことなどが指摘されている。

3.        感性価値を活用した将来系のビジネスモデル

3-1        川上川下の共創が感性価値を深化させる。

3-2        共創が愛着を生み感性価値を高める。

3-3        共創の場の創出

3-4        改善とイノベ-ションの二つのサイクル

なお、トヨタ自動車・渡辺捷昭社長の「形式知」「暗黙知」のスパイラルアップについての談が引用されている。

4.        経済産業省が意図している事業

4-1        感性価値創造フォ―ラムの設立

4-2        感性価値創造イヤ―の宣言

4-3        感性価値創造フェアの開催

4-4        デザインインテリアファッション見本市への出展支援

4-5        国内外での感性価値関連イベントの発進力と連携強化

5 SANARI PATENT所見

5-1 H&Mのわが国市場展開を迎えて、ファ―ストリテイリング(ユニクロ)の規模を上回る活況が論評されている。要するに、ユニクロのベ―シックアイテムに対して、H&Mはファッション性に磨きをかけたという見方で、感性の戦略価値を認識させる事例である。

5-2 一方、経済産業省の構想には、知的財産権の保護強化について、「意匠制度の活用促進」と「模倣品・海賊版防止条約の早期実現」を掲げている。

  先般の意匠法改正の国会審議においても、意匠権の要素である「美感の進歩性」の判断に主観性があることが問題とされ、その審査基準の極力統一を図る旨が特許庁により答弁されたが、国際市場においては、美感の民族差の相違を否めず、感性価値が国際市場競争の場での法的紛争を惹起しないよう、十分な対応を要望する。

2007年6月29日 (金)

METI Minister Stresses Feeling Value 甘利経済産業大臣が第4の価値として「感性価値」を強調 

Forth Economic Value, with Utility, Reliability, Price  ブランド・意匠の感性や著作物の感性など、知財の感性要件との関連

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  経済産業省が「感性価値創造イニシアティブ」を発表(2007-5-22)して以来、テレビ東京の人気知財番組「WBS」にも甘利 明・経済産業大臣のスピ―チが登場し(2007-6-21)、性能価値・信頼価値・価格価値と並ぶ価値軸として、「感性価値」が強調されている。知財法では、著作権法の「感情の表現」、意匠法の「美的感覚」など、感性に直結し(SANARI PATENT 注:ただし、感性は感情と同義ではないこと後記1-2-2)、ブランドも、感性価値によって市場価値の確立を志向する。「新機能(靴の足圧分布均等化など)とファッション性(雨靴のカラフル化など」「機能とデザインと希少性(大量生産でない満足感)」なども同趣旨と解する。

   上記甘利経済産業大臣のスピ―チの導入部には、「スイ―ツビ―ル」をカフェで独り楽しむOL像が、「女性の感性を捉えて、独りでは注文しなかったビ―ルのリラックスを提供した」と解説していた。美空ひばりの「独り酒場で呑む酒は」を愛した団塊前よりも若い世代の人気を予想していると解する。

1.        感性価値創造イニシアティブ(要旨)

1-1        甘利経済産業大臣の冒頭発言

1-1-1      これまで日本経済には、成長のためのひとつの方程式があった。それは、性能が良くて安全で信頼性が高いものを低価格で提供してゆくというものであった。高性能・高信頼性・低価格であれば必ず消費者に支持され競争に勝てると信じ、技術開発・商品開発を続けて今日の日本産業を築いた。

1-1-2      しかし、このような従来の価値軸は、新しい局面を迎えている。「良いものであるのに売れない」という現象の発生である。その克服は、新しい価値創造、感性を通じて実現される満足、経済価値としての「感性価値」の創造によって可能である(SANARI PATENT 注:甘利経済産業大臣は、実例として志野茶碗の強い存在感の感性を挙げた)

1-2  感性の働き

1-2-1      人は、理性や知性と別に、感覚的にものやサ-ビスの好悪を判断し、価値を見出し、内面的な充足感を得ようとする。従って、人は商品・サ-ビスを選択する際に、理性で機能・耐久性・コストを測定するのみでなく、直感的かつダイナミックに選択している。その所以が感性である。

1-2-2       他方、感性は感情と異なり、条件反射的で受動的なものとは限らない。人々は、媒体を通じて自らの感性を外部に表現することにより他者とコミュニケ―ションし、共鳴させて価値観を共有したり、逆に自らの感性の独自性を信じて他者との差異化を図る。

1-2-3       すなわち、感性は能動的、創造的な力を持っている。

1-3  感性価値の例

1-3-1      資生堂・稲葉民生執行役員の談

  「化粧品は、感覚的な要素での差別化が必要である。会社が持つ美意識・感性価値が重要なポイントである。」

1-3-2      日産自動車・高野修治グロ-バルデザインマネジメント部長の談

  「5年後にどんな使われ方をするかイメ―ジし、タ―ゲットユ-ザ-を決める。具体的な人格をイメ―ジし、その人が実際に使うシ―ンを思い浮かべながら、コンセプトとものを作り込む。意外性・ワクワク感を与え得る新しい価値観が重要である。」

1-4  感動・共感・共鳴が価値を生む

「いい商品、いいサ-ビス」が成立する際に特徴的なことは、作り手側にメッセ―ジ性の強い「もの語り」があり、使い手側に何らかかの感動や共感が持たれる点にある。すなわち、「もの語り」として生活者の感性に訴え、感動・共感・共鳴を得たときに、それは特別の経済価値を生み出してゆく。

2.        SANARI PATENT所見

供給者の感性と需要者の感性が共鳴する場合と、しない場合があり、結果として、商品・サ-ビスの感性価値が発生する場合と発生しない場合がある。この分岐の機序を考究することが必要である。(以下次回)

2007年6月28日 (木)

KEITAI Music 音楽出版社協会の調査結果(SANARI PATENT関連記事JUN.27)

Rights of Music Creator must be Protected  知財推進計画07のコンテンツ流通促進政策におけるバランス論

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  ケ―タイ人口は億人単位でグロ-バルに急増し、音楽受信はその主要な機能である。音楽出版社協会は内閣知財戦略本部に知財推進計画07についての意見を示したが、その第3の項目は「携帯電話向け違法音楽配信の根絶」である。

1.        携帯電話向け違法音楽配信について

1-1        音楽出版社協会の意見(要旨:以下同)

1-1-1       一昨年ごろから、市販の音楽CD等から作成したケ―タイ用の音源を、権利者の許諾なく無料でケ―タイユ-ザ-に公開するケ―スが目立つ。

1-1-2      日本レコ―ド協会の昨年末調査では、ケ―タイユ-ザ-の35.5%が違法音源を掲載した違法サイトを利用し、特に12~15歳の層では、33%がアップロ―ドの経験が有ると回答した。この結果、年間約2億8700

   万ファイル以上のダウンロ―ドが行われていると推定されるが、これは2006年の有料音楽配信モバイルダウンロ―ド数の80%以上に相当する。

1-1-3      市販音楽CD等の音源を権利者の許可なく複製・アップロ―ドする行為は、明らかに著作権法違法であり、刑事罰の対象になるものである。その根絶に挙国対策を要する。

1-2  知財推進計画07における対応の考察

1-2-1      コンテンツの章の冒頭には先ず、「本格的なデジタルコンテンツ時代が到来するが、そこでは、インタ-ネット上において、誰でも気軽に参加してコンテンツが循環していくであろう。今われわれがなすべきことは、多くの国民にとって、コンテンツの活用が身近になる時代を展望して、ITモラルやマナ―の啓発など、IT化の進展に伴う影の部分にも対応しつつ、新しい保護ル―ルや流通環境を時代に先んじて整えることである」と述べている。(SANARI PATENT 注:現に影の部分が濃厚に発生しているという意見に対し、かなりタイムラグを感ずる)

1-2-2      知財推進計画07の「デジタルコンテンツの流通を促進する法制度や契約ル―ルを整備する」と題する節は、次の3分節から成っている。

1-2-2-1           ビジネススキ―ムを支える著作権制度の構築

1-2-2-1-1        デジタルコンテンツの流通を促進する法制度等の整備

1-2-2-1-2        IPマルチキャスト放送へのコンテンツ流通の促進

1-2-2-1-3        違法複製されたコンテンツの個人による複製の問題の解決

1-2-2-1-4        権利者不明の場合におけるコンテンツ流通の促進

1-2-2-1-5        ネット上のビジネスマ―ケットの構築

1-2-2-1-6        私的録音録画補償金制度の見直しの結着

1-2-2-1-7        権利者・公共双方の利益に留意した権利制限規定の整備

1-2-2-1-8        契約・利用の観点からライセンシ―保護などについて結論

1-2-2-2               クリエ―タの適正報酬のもとでコンテンツ利用の円滑化

1-2-2-2-1        マルチユ―スを前提とする契約ル―ルの設定

1-2-2-2-2        放送コンテンツの国際競争力強化の法整備

1-2-2-2-3        権利の集中管理の促進

1-2-2-2-4        コンテンツ業界における契約締結の促進

1-2-2-2-5        公正透明なコンテンツ産業の実現

1-2-2-2-6        利用とバランスする適正保護の国内制度整備

1-2-2-2-7        国際的著作権制度の調和

1-2-2-3               一般ユ-ザ-のコンテンツ利用環境充実

1-2-2-3-1        ネット検索サ-ビス等の課題解決

1-2-2-3-2        ア―カイブ化促進

1-2-2-3-3        インタ-ネット上での創作・発信の促進

1-2-2-3-4        弾力的価格設定による柔軟なビジネス展開

1-2-2-3-5        音楽用CDの再販売価格維持制度の検証

1-2-2-3-6        安心してコンテンツを利用できるための取組

2.        SANARI PATENT所見

  音楽出版社協会の意見が、上記のような多角的な見地と直接・間接に関連することから、担当および関連省庁として文部科学省・経済産業省と共に、総務省、外務省、厚生労働省、公正取引委員会、警察庁が知財推進計画07の上記項目について明示され、迅速な叡智の結集が期待される。

2007年6月27日 (水)

Music Publishers Association of Japan States IP Policy 音楽出版社協会が内閣知財戦略本部に緊急課題を提言

Happy Relationship of Digital Audio Player with Music Copy-Rights  音楽流通の技術革新急展開と音楽著作権

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  音楽出版社協会は、日本の音楽出版業界を代表する団体として、1973年に設立された。会員である音楽出版270社の多くは、著作権者であると共に、原盤製作者であるから、同協会は原盤製作者を代表する団体でもある。東宝ミュ―ジック、東映音楽出版、徳間書店、小学館ミュ―ジック&デジタルエンタテイメント、ヤマハ音楽振興会等が名を連ねている。毎年カンヌで開催される国際音楽産業見本市(Marche International du L’Edition Musical et de la Video Musque)への参加(アジアの唯一理事国)のほか、国際音楽ビジネスセミナ、音楽著作権養成講座等の企画、著作権保護期間延長・私的録音補償金見直し等の制度改正事業を、制度予算約19億円の規模で実施している。

1.        内閣知財戦略本部の知財推進計画07策定に対する音楽出版社協会の意見の考察(要旨)

1-1 著作権等保護期間の延長について

1-1-1        音楽出版社協会の意見

著作権保護期間の「著作者の死後70年への延長」を早急に実現すべきである。米国・EUなど多くの国で実現しており、世界第2位の音楽市場を有するわが国において、国際標準から外れた制度は国際的非難を招くおそれもある。

1-1-2 考察

知財推進計画07の対応を見ると、「クリエ―タに適切な報酬がもたらされる仕組みの下で、コンテンツの円滑な利用を進める」と題する節において、「利用とのバランスに留意しつつ適正な保護を行う国内制度を整備する」という分節を設け、その4項目の一つとして、「著作物の保護期間の在り方について、保護と利用のバランスに留意した検討を行い、2007年度中に結論を得る」としている。その担当は、文部科学省と明示されている。

1-2               私的録音補償金制度の抜本的見直しについて

1-2-1        音楽出版社協会の意見

現在、「著作権の制限」によって認められいる「私的使用のための複製」が、「公正な利用」を遥かに逸脱して「著作者等の権利」を侵害し、「文化の発展」を阻害している。しかも、私的録音補償金制度が制定された1992年当時から情勢は著変し、私的使用のための複製は、パソコンによるCD-R/RWへのコピ―から、デジタル携帯オ―ディオプレ―ヤの急激な普及による大量の私的複製などにより膨大な量に達している。一方、私的録音補償金制度は形骸化し、ほとんど機能していない。従って、次の3点を含む私的録音補償金制度改正のための著作権法改正を2008年度中に行うことを知財推進計画に定めるべきである。

1-2-1-1           記録媒体を別にする分離型機器に加え、一体型機器も対象とする。

1-2-1-2           政令指定方式を廃止する。

1-2-1-3           製造業者を支払い義務者とする。

1-2-2               考察

知財推進計画07は「デジタルコンテンツの流通を促進する法制度や契約ル―ルを整備する」と題する節に、「ビジネススキ―ムを支える著作権制度を作る」という分節を設け、その8項目の一つとして、「私的録音補償金制度の見直しについて結論を得る」と計画している。その内容は次のように要約できる。

1-2-2-1           私的録音・録画について全般的に見直す。

1-2-2-2           補償金制度については、「廃止」「骨組の見直し」「他の措置の導入」を含めて抜本的に検討する。

1-2-2-3           国際条約・国際動向との関連、ユ-ザ-の視点に留意する。

1-2-2-4           技術的保護手段との関係等を踏まえて「私的複製の範囲」を明確化する。

1-2-2-5           使用料と複製対価との関係の整理など、著作権契約の在り方の見直しについて検討する。

 (以下、次回)

2.        SANARI PATENT所見

  知財推進計画07は、文部科学省と経済産業省の両省を担当として、2007年度中に結論を得るとしているが、期限の遵守を期待する。

2007年6月26日 (火)

Patent on Medical Treatment 医療方法特許問題の早急対応要望と、知財推進計画07の応答

Differences between Japan and USA  国民皆健康保険体制等

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

  未解決の重要課題として、内閣知財戦略本部が「検討」を継続しているの が「医療方法特許の是非」である。

  日本製薬工業会とバイオインヅストリ―協会の合同意見(以下「製薬・バイオ意見」)は、「是」とする強烈な意見を、知財推進計画07の策定に際して内閣知財戦略本部に提出した。

1.        製薬・バイオ意見(要約)

1-1  知財推進計画06では、「ライフサイエンス分野が抱える知財の諸問題」の一つとして、再生医療等の先端医療技術の特許制度による保護および運用の在り方が総合科学技術会議で検討されることとなっていたが、検討されなかった。

1-2  先端医療技術の進歩に対応する特許制度の保護が急務である。そのためには、高度な医薬の使用方法を含め、これら先端医療技術を「方法の発明」として特許保護することが最も実態に即した対応と考える。

1-3  この課題は、ここ数年来、知財推進計画に記載されながら進捗していない。先端医療分野における国際競争力を高め、イノベ-ションを加速させるために不可欠の課題であり、早急の対応を切望する。

2.        知財推進計画07の対応

   上記「早急の対応」に至らない観があるが、知財推進計画07は「医療分野における特許保護の運用状況を注視する」と題して、次のように述べている。

2-1 2007年度も引続き「医療機器の作動方法」および「医薬の製造・販売のために医薬の新しい効能・効果を発現させる方法」の技術について、2005年4月に改訂された特許審査基準の運用状況等を注視する。

2-2 ま、2007年以降、先端医療分野における技術動向やその特許保護に関する国際的な議論の動向について、継続的な情報の収集・分析に努める。

3.        SANARI PATENT所見

3-1  内閣知財戦略本部の「医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会」は、 武田薬品工業・秋元 浩常務、名大大学院医学系・上田 実教授、国立循環器センタ-・

北村

惣一郎総長、日本医師会・野中 博常任理事、協和発酵・平田 正会長、森下竜一阪大大学院教授等(いずれも「当時」)により構成され、とりまとめを2004-11-22に行って、終結している。

3-2 内閣知財戦略本部の知財推進計画が始めて策定されたのは2003年度の「知財推進計画03」であるが、先般、第5回目の計画として知財推進計画07の策定に至る間、審査基準改訂による「産業上利用可能性」の拡大適用を医療関連行為の一部に及ぼしたのみで、法改正を含むような基本的改正は行われていない。

3-3 上記知財推進計画03は、医療関連行為の特許保護の在り方について、次のように述べていた。

「患者と医師の信頼関係の下で等しく行われるべき医行為等に悪影響を及ぼさないよう配慮しつつ、患者がより先進的な医療を受けられるなど、国民の保健医療水準の向上に資する有用で安全な医療技術の進歩を促す観点から、医療行為の特許法上の取扱いについて検討する場を設け、2004年度中の早い時期に結論を得る。」

3-4 上記専門調査会は、次のように述べている。 

「特許制度は技術の独占を付与するものであるが、公共の利益に反するような独占の弊害があってはならないということが、その前提になっている。

  そこで、医療方法を特許保護することに対し次のように賛否が分かれてい る。

3-4-1 医療方法を特許保護する必要があるとする意見

3-4-1-1 高度・先端の医療技術を促進し患者に提供する観点

3-4-1-2 わが国発の画期的な医療開発により世界の医学進歩に貢献するためには、最先端の米国と同じ条件で競争できる環境として、米国と同様に医療方法を特許対象とすべきである。

3-4-1-3 医療技術開発には巨額の投資と企業の協力が必要であり、他社による安易な特許の迂回や模倣の防止のため、特許保護する必要がある。

3-4-2 医療方法を特許対象とすることに対し懸念を指摘する意見

3-4-2-1 国民皆健康保険である日本には、米国型の制度は馴染まず、米国特有の制度である医療方法特許も導入すべきでない。

3-4-2-2 医師は患者救済のため研究開発をしており、医療方法特許は必ずしも医師へのインセンティブにつながらない。

3-4-2-3 医療方法全体を特許対象とした場合、その範囲が広すぎて、医療制度全体に与える影響が予想できない。 

2007年6月25日 (月)

Patent on Filter of Range-Hood レンジフ―ドのフィルタ装置の特許無効審決の取消請求を知財高裁は棄却

Desiring Patent Stability 無効審決が発生しない審査基準の策定は、どうすれば可能か

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  ア―ランドは、「レンジフ―ドのフィルタ装置」の特許権を得たが、カ―スルは、その無効審判を特許庁に請求し、特許庁は、特許無効の審決をした。

  特許法51条(特許査定)に、「審査官は、特許出願について拒絶の理由を発見しないときは、特許をすべき旨の査定をしなければならない」と定めているから、審査官が「拒絶の理由」を発見しなかったことは確定的な事実である。

  これに対し、特許庁の審判官は、「本件レンジフ―ドのフィルタ装置」の発明は、従来技術から当業者が容易に想到できるという拒絶理由を「発見」し、特許の無効を審決した。

  ア―ランドは、この審決の取消を知財高裁に求めたが、知財高裁は、ア―ランドの請求を棄却した(2007-5-15判決)

 

  内閣知財戦略本部の知財推進計画07策定についても、業界始め知財関係者は、「特許の質の向上」計画を求め、審査基準の明確化等の政策が記載されたが、新たな技術の開発とイノベ-ションの進展に即応可能であるか、期待と協力をもって望むこととなる。

1.        本件発明の要旨

1-1        請求項1  次の構造を有するレンジフ―ドのフィルタ装置

1-1-1      レンジフ―ドのフ―ド内の排気口に着脱可能に配設されている金属製フィルタを覆うための装置である。

1-1-2      「金属製フィルタのフロント面をカバ―可能なフィルタ」、「フィルタの周縁部に取付けられ、フィルタをフロント面で緊張させて金属製フィルタに取付けるためのリング状伸縮性紐状体」とで構成されている。

1-1-3      金属製フィルタは剛性で、方形プレ―ト状に形成され、

1-1-3-1           上端部は、排気口の上部に形成された溝またはスロットに挿入可能である。

1-1-3-2           下端部は、排気口の下部に形成された溝またはスロットに挿入可能である。

1-1-4      金属製フィルタの裏面での紐状体の収縮により、フロント面のフィルタに緊張力または牽引力を作用させて、金属製フィルタに対してフィルタを取付け、レンジフ―ドの換気口に装着できる。

1-2      請求項2 (略)

1-3      請求項3 (略)

2.無効審決の理由(要旨)

2-1 手続補正(2007-3-24)が特許法134-2-1126-4の規定に適合しない(実質上特許請求範囲を拡張するなど)から、補正を認めない。

2-2 従って、本件特許権設定登録時の請求範囲に基づき本件発明の要旨を認定して審判すると、本件発明は、「従来技術を適用して当業者が容易に発明できたもの」であり、本件発明の効果も無理なく予想できたものであるから、特許庁29-2に違反してなされたもので、特許法123-1-2により無効とすべきである。

3.審決に対するア―ランドの主張(要旨)

3-1 審決は、本件発明と従来技術との相違点の判断を17項目について誤っている。

3-2 例えば、審決は、「調理用排気ガスを処理するこの分野においては、『不織布フィルタ部とその周縁部に設けたリング状伸縮性紐状体とからなり、(中略)その紐状体の収縮力により、浄化用カバ―を自由自在に取り付けること』は、本件出願前に周知慣用事項になっていたと認定した上で、本件発明におけるこのカバ―体の置換は、当業者が困難なく適宜なし得るものであると判断した。

3-3 しかし、従来技術のフィルタはシ―ト状であり、『外観が浅い袋状の形状をなす』カバ―体は、従来技術に記載も示唆もないから、「関連付ける合理的な動機付けがない。

3-4 また例えば、本件発明において、「金属フィルタのフロント面をカバ―する」以下の「置換」も、当業者といえども困難である。

4.知財高裁の判断(要旨)

   従来技術について考察すると、本件出願当時、「レンジフ―ドのフィルタ内の排気口の位置に、剛性で四角形板状の金属フィルタを着脱自在に設け、その金属フィルタの油汚れを防止するため、不織布等からなる使い捨てのフィルタで金属フィルタのフロント面を覆うこと」は、周知慣用技術であったと認めることができる。

  また、本件特許出願前において、フィルタ部材を、通常の換気扇とレンジフ―ドの双方において用いるように検討することが、通常なされていたものであることが推認される。

  このほか、ア―ランドの各主張にについては、「当業者が容易に想到するもの」「想到に阻害事由がないもの」「当業者が自明なこととして把握できるもの」「当業者が困難なく適宜なし得ること」「当業者が当然予測し得る程度のこと」であって、採用できない。

5.SANARI PATENT所見

   特許庁審査官による進歩性肯定判断と、特許庁審判官による進歩性否定判断の相違が、どのようにして発生しているのか、「ア―ランド・審査官」対「審判官・知財高裁」の図式で、精密に検討することにより、特許性の構造の問題点がさらに明晰になると考える。

2007年6月24日 (日)

Food Industry Leads Japan Contents Development インスタントラ―メンの簡便性、保存性、安全性、非常食性、美味、低価格という特徴がグロ-バルに評価

AJINOMOTO Vitalizes Oversea Business  内閣知財戦略本部の日本食文化発信に先駆

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  内閣知財戦略本部の知財推進計画07は、「コンテンツ」の章に「ライフスタイルを活かした日本ブランド戦略を進める」との節を設け、その文節として「豊かな食文化の醸成」(日本食の魅力の世界への発信強化、日本食レストラン推奨計画の取組支援、外国人シェフ実務研修)、「優れた日本産食材の世界普及」(総合的輸出拡大、日本食材のブランド化)等を掲げている。

  しかし、わが国食品産業界は、すでに多くの日本食文化発信を行っており、それらが海外に構築した基盤を活用すること、また、この基盤として、これら企業の特許権が発揮しつつある機能を認識することが、先ず必要である。

  例えば、主要食品企業の海外比率を野村證券・東洋経済四季報(2007-6-16)によって見ると、日清食品は16%、味の素は32%に達している。

1.        日清食品と味の素の今年初来、2007-6-18までの特許公開

1-1  日清食品は、「湯切り孔付き蓋材」「シュリンク包装不良検出装置」「畜肉レトルト品の製造方法」「圧縮即席麺の製造方法」「即席食品」「冷凍食品の自動脱版装置」

1-2  味の素は、グルタミン関係に限定しても、「末梢静脈栄養輸液」「L-グルタミン酸の製造方法」「L-アミノ酸生産菌およびL-アミノ酸の製造法」「発酵法によるプリンヌクレオチドの製造方法」「粉末飲食物用分散剤」「炊飯用添加剤」「L-グルタミン酸生産菌およびL-グルタミン酸の製造方法」「透析用補充液」「周術期患者用薬剤」「便通改善剤および便通改善食品」「血中アンモニア低減剤および血中アンモニア低減性飲食品」

2.        味の素と日清食品の日本食発信の近況

2-1        味の素

豊かな原料や発酵プロセスから発生する副生産物の有効利用により、コストにおいても国際競争力を発揮し、グロ-バルに拡販している。特に、

米国では、カップ入りみそ汁も味の素冷凍食品により輸出が開始され、「淡味シリ―ズ」が加わった。

  韓国では、」味の素の冷凍ギョ―ザが流行している。

  中国へは、ホタテを輸出している。

  タイでは、合弁会社「タイ味の素ベタグロ冷凍食品」が鶏肉加工している。

2-2        日清食品

1970年にアメリカ日清を設立以来、日清食品はグロ-バルにインスタントラ―メン事業を展開したが、これは、全世界で新たな食文化として受入られるをの確信にに基づくと共に、単なる完成品の輸出ではなく、各国の伝統的な味覚を活かして現地密着型製品を開発したことによる「NISSIN」ブランドの成功によるものである。現在、海外8国25工場で現地生産も活発である。

インスタントラ―メンの簡便性、保存性、安全性、非常食性、美味、低価格という特徴がグロ-バルに評価され、「人類にとって掛替えのない食品」と認識された結果、世界で年間700億食(2004年度実績)から1000億食(2010)に達すると予測される。

日清食品の安藤百福会長は、1997年に世界ラ―メン協会(IRMA)を発足させ、隔年、「世界ラ―メンサミット」が開催されている。

3.        SANARI PATENT所見

   寿司のグロ-バルな普及・好評など、米食文化に対する関心も拡大しているが、象印マホ―ビンが先般、海外向けの炊飯器を発売し、すでに米国・ドイツなどで好調の模様で、このような食周辺機器の海外向け技術開発にも、「コンテンツ政策」の力点が明示されることを要望する。なお、象印マホ―ビンの本年初来の特許公開にも、「炊飯器」を発明の名称競争するもの3件、「調理器用表示装置」「圧力炊飯器」(SANARI PATENT 注:海外で玄米食も流行し始めた)「調圧式炊飯ジャ―」(2件)が見られ、知財開発が顕著である。

2007年6月23日 (土)

Business Software Alliance グロ-バル機構としてわが国内閣知財戦略本部に意見提出 その内容の考察

Manufacturing Companies Pay Substantial Amounts for Unlicensed Software Use, BSA Reports 同アライアンスは機敏な広報体制と国際標準化の基本原則を堅持

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  BSAから提示された意見を、内閣知財戦略本部は、知財推進計画07の発表と共に、開示しているが、BSA(Business Software Alliance)のメンバ―は、アドビ、アップル、オ―トデスク、アビッド、バントレ―、ボ―ランド、CA,ケイデンス・デザイン・システムズ、シスコシステムズ、デル、EMC,エントラスト、HP.IBM,インテル、マカフィ―、マイクロソフト、モノタイプ・イメジング、PTC,SAP,ソリッドワ―クス、サイベ―ス、シマンテック、マスワ―クス、UGSであるから、今次意見の内容のみならず、機敏に実行されるその法的措置等について凝視することが必要である。

  例えば、本月11日のBSA米国本部News Roomは、「ライセンスされていなかったソフトウェアの使用について、製造諸会社が総額1.43百万ドル(約1億7300万円)の侵害額についての相応額を、アドビ、マイクロソフト、ソリッドワ―クスおよびシマンテックに支払うことで決着」と題して、かつ「全世界向け」として報告している。

1.        BSAの意見(要旨)

1-1  インタ-ネットオ―クションへの模倣品の出品について、米国のデジタルミレニアム著作権法に定められているのと同様のノ―ティスアンドテ―クダウンのシステムに賛同することを表明すると共に、この分野において採用される規制は、技術ではなく違法行為をその規制対象とし、技術革新や製品開発を阻害することのないよう要請する。

1-2  著作権法における「親告罪」制度を見直して、海賊版対策を強化することにについては、違法コピ―の情報提供者に関する情報を保護する法的システムがないことからも、非親告罪にすることは有用と考える。ただし、告訴なくしても当局が捜査できるようにする一方、私人である権利者が告訴すること、また友好的に事件が解決された場合には告訴を取下げられるようなシステム自体は維持すべきである。

1-3  急増する特許出願と増加する滞貨に直面しているが、ハ―モナイゼ―ションおよび相互承認は、国内外の特許庁が高品質な審査の提供を確保するため不可欠である。

1-4  技術標準は、ソフトウェア・ハ―ドウェア開発の要であり、健全で競争力あるITのエコシステムを促進する上で重要な役割を果たす。BSAのメンバ―企業は、幅広い技術標準を開発・活用し、定期的に国際標準化機関に参加し、貢献している。供給者側が自発的にリ―ドする取組が、高度な標準化を達成についてための最良の方法であると確信する。

1-5  BSAのメンバ―企業は、オンライン上の著作権保護と、インタ-ネットを通じて著作物にアクセスできるようにするための新技術やビジネスモデル開発の双方について強い関心を持っている。

2.        SANARI PATENT所見

  BSAは、「技術標準に関する基本原則」として、次のように述べているが(要約)、精読に値する。

  「政府は、政府間で標準を義務づけたり、幅広く支持される標準の開発・採用を阻害するような政策を立てるべきでない。政府は、相互運用性を装って市場の勝者を選ぶべきではないし、相互運用性を名目にして技術を規制すべきでない。

   政府主導の技術分野の標準化は、意図しない結果を招くことが多くある。義務化された技術や強制された標準は、イノベ-ションを萎縮させ、研究開発へのインセンティブを衰退させる傾向がある。このような義務化は、すぐに時代遅れになってしまうかも知れない特定の商品に、消費者をロックインすることにもなり得る。

   これに対し、市場主導の解決策は、イノベ-ションに順応でき、変わりゆく消費者のニ―ズにも迅速に対応できる。企業は、オ―プンな標準の開発に参加するよう推奨されるべきである。」

   なおBSAは、「政府は、標準が、公式に設立された標準化機関が作成したものか否かということだけで、その標準を優遇すべきでない」と述べているが、少なくともITUについては、政府間国際機構でありながら、国際企業の活動と世界市場性に基づいて勧告の評決が行われていると、SANARI PATENTは理解している。

2007年6月22日 (金)

Japan Video Soft-Ware Association Expresses Opinion on IP Policy 映像ソフト協会から内閣知財戦略本部への意見の考察

Ripping of CSS(Content Scrambling System) 私的使用目的の例外的規定と社会悪的利用の画定問題

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  コンテンツ振興の大黒柱である「映像ソフト」(劇映画、アニメ、コンサ―ト、カラオケ、報道、スポ―ツ、教育・教養、および、「これらと一体的に記録された音響」であって、「テ―プ、ディスク等に記録されたもの」および「電気通信回線等を通じて送信可能状態にされたもの」)に関する団体として、社団法人・映像ソフト協会は、1971年に任意団体・日本ビデオ協会として設立から36年の業務歴を有する。

  役員名簿を見ても、高井東宝社長、稲畑ポニ―キャニオン社長、気賀ジェネオネオンエンタテインメント社長、石黒東映ビデオ社長、稲垣エイペックスマ―ケッチング会長、井上角川映画社長、大谷松竹会長、川城バンダイビジュアル社長、小池キングレコ―ド社長、三枝NHKエンタ―プライズ社長、佐藤日活社長、椎名角川エンタテインメント社長、竹内ソニ―ピクチャ―ズエンタテインメント社長、内藤20世紀フォックスホ―ムエンタテインメントジャパン社長、夏目アニプレックス代取、春名ショウゲ―ト社長、平井バップ社長、広瀬コロンビアミュ―ジックエンタテインメント社長、宮下アミュ―ズソフトエンタテインメント会長、依田ギャガコミュニケ―ションズ会長、後藤映像ソフト協会事務局長、渋谷ビクタ―エンタテインメント社長、和田第一興商社長が名を連ね、映像ソフトの知財に関する総合的意見の策定に好適な顔ぶれと考えられる。協会の事業内容8項目にも、「映像ソフトに関する知的財産権の擁護確立および施策の推進」を掲げている。

1.        内閣知財戦略本部の知財推進計画07に関する「映像ソフト協会の意見(要旨)

1-1-1 協会意見1

「違法複製物のダウンロ―ドが著作権法30条1項柱書に該当しない旨の明記」を提案する。知財推進計画は、模倣品・海賊版の個人所持を社会悪としているのであるから、上記柱書によって適法とすべきでない。

1-1-2 SANARI PATENT所見1

  知財推進計画06は、「模倣品・海賊版に関する国民への啓発活動を強化する」と題して、「模倣品・海賊版を撲滅するためには、模倣品・海賊版が社会悪であることを国民に広く認識してもらうことが必要であり、消費者基本法に知財権等の適正な保護が消費者の責務であると規定していることを踏まえ、2006年度も引き続き、国民への啓発活動を強化すると共に、学校教育等を通じ、適切な消費行動等についての教育を推進する」と計画した。

  知財推進計画07は、同一題名で、「2007年度も引き続き、模倣品・海賊版が社会悪であることを明確にすると共に、その氾濫が社会にもたらす悪影響について訴求し、政府が推進している対策を周知する」と計画している。

  「政府が推進している対策」のうちに、映像ソフト協会の提案が含まれているかについて、明確性を欠く計画である(換言すれば、「私的利用限定の可能性」と「社会悪組織資金源根絶」の調和について議論の余地を残した観がある)。

12-1        協会意見2

「複製防止目的の暗号化技術を解除して複製する行為の禁止を、著作権法で明記すること」を提案する。著作権法30条1項2号は、技術的保護手段を回避して複製することを禁止しているが、文化審議会著作権分科会の報告書によれば、暗号化技術は、それが複製防止目的のものであっても、著作権法上の技術的保護手段ではないとし、複製にお墨付きを与える結果になっているからである。

1-2-2 SANARI PATENT所見

  著作権法が「私的使用」についての著作権制限をひとつの柱としていることは、社会悪的利用の便乗を招くことともなり、かつ、その技術が高度化しているから、まさに、内閣知財戦略本部の総合政策機能を発揮すべき対象である。

1-3-1 協会意見3

「不正競争防止法上の技術的手段回避機器等の譲渡に刑事罰を導入すること」を提案する。リッピングソフトの流布防止の強力な手段が必要だからである。

1-3-2 SANARI PATENT所見

知財関係刑事罰の強化は、逐次進められている(例えば、育成者権について検討中)。意見3は、「譲渡」に限定しているようであるが、リッピングソフトを用いて、CSS(Content Scrambling System)をリップしてDVDをコピ―するなどの行為の「私的使用極限性」の実効に本質的課題があると考えられる。

1-4-1        協会意見4

「CJマ―ク事業の支援を継続すること」を提案する。CJマ―ク事業は、未だ途半ばであるからである。

1-4-2        SANARI PATENT所見

知財推進計画07により、CJマ―ク(コンテンツ海外流通マ―クの普及・調査・摘発活動は継続されると解する。知財推進計画07の関係記述は、知財推進計画06と全く同一である。

2.        コンテンツの振興、特にその流通と、著作権法との調整に関する問題が、コンテンツサイクルとITの新たな技術開発に伴って、多様・多岐に発生しつつあるから、著作権関係の他団体・個人の意見も、SANARI PATENTにおいて別途考察する必要が大きいと考える。

2007年6月21日 (木)

Patent on Functional Foods and Functional Cosmetics 機能性食品の用途発明に関する検討を提案

Drug Makers and Bio-Industry State IP Policy  日本製薬工業会・バイオインダストリ―協会の知財意見を考察

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  内閣知財戦略本部の知財推進計画07策定に際して、日本製薬工業会と(財)バイオインダストリ―協会の知的財産合同検討委員会(以下「製薬・バ  イオ団体」)は、7項目にわたり重要な意見を提出したが、ここでは「機能性食品・機能性化粧品」に関する要望に着目する。

 「機能性食品等の開発促進による国民健康増進と、機能性食品等の国際競争力確保のため、特許保護が必要であるが、この特許権の行使が一般食品等に及ぶことへの対策も、併せて検討されたい」という趣旨である。

 機能性食品の語はマスコミに溢れる現代であるが、「機能性化粧品」の語も(あるいは別の魅力的用語が発想される可能性もあるが)男性化粧品の活況と相俟って流行すると予想される。製薬・バイオ団体が掲げた項目は、「食品・化粧品等消費財の新規用途発明の特許保護」と題されている。

1.        製薬・バイオ団体の意見(要約)

1-1 高齢化とライフスタイルの変化に呼応して、生活習慣病への関心が高まり、医薬分野に限らず、健康・容姿を指向する研究開発が拡大している。食品・化粧品等の消費財分野で、生理学的機能に関与する特定の機能を有する成分の探索、その応用が研究開発の主流となり、食品分野では、生理学的機能に着目した食品を機能性食品と呼んでいる。

1-2 平成18年6月改訂の特許審査基準では、公知食品・公知化粧品の用途限定発明の判断基準が明確化され、これら消費財の用途発明による特許保護は、原則として困難になっている。しかしながら、企業による機能性食品の研究開発には多額の投資が必要であるにもかかわらず、ただ乗りが容易な現状であって、特許保護によるインセンティブが得られず、開発意欲が削がれて、ひいては、この分野におけるわが国の技術力・国際競争力の低下を来たすこととなる。

1-3 一方、機能性食品に特許権が付与されて、その行使が一般食品にも及ぶなどの懸念もあるから、機能性食品の新規用途発明に関する特許保護の在り方を、権利行使の在り方と共に検討されることを要望する。

2.        SANARI PATENT所見

2-1        機能性食品・機能性化粧品に対する行政の輻輳

    後述するように、美容願望に応える「機能性食品・機能性化粧品」の併用(経口・経皮の双使用)製品も多くなってきた。

2-1-1      厚生労働省は、「トクホマ―ク」、すなわち、特定保健用食品の認定を行っている。認定されると、例えば、次のような表示が許される。

「このビスケットは○○を含有するので、食生活で不足し易い食物繊維を補給し、良好な便通に役立ちます。」「一度に多量に摂り過ぎると腹が緩くなる」ことがあるので、摂取量を守ってください。」

2-1-2      しかし、現在流行している機能性食品は、上記効能よりも広汎かつ高度な機能を標榜し、コンセプトとして、免疫・分泌・神経・循環・消化の各系に関与するが、疾病の「予防」を機能とし、医薬の「治療」機能と画定され、薬事法や不当表示規制法(原材料の産地表示を含めて)の監視下にある。

2-2  製薬企業の新たな機能性食品・機能性化粧品の例

2-2-1 「Self-Medication」を旗印とする大正製薬は、Poly-Phenolを豊富に含有する天然由来成分を配合した「美望活彩」を、ナリッシュとクレンジングクリ―ムの双方に冠し、昨年来、通信販売している。

2-2-2 大正製薬はまた、大麦若葉に和漢17種類の素材を配合した「からだ環境青汁」を昨年来、通信販売している。

2-2-3 久光製薬は、「健康食品」の呼び名で、乳酸菌とオリゴ糖(SANARI PATENT 注:定義が多様であるが、腸内有用菌の活性化等の機能を有する)のダブルパワ―を有する乳酸菌商品等について、オンラインショップを昨年来、運営している。

2-3 ITの全国普及により、機能性食品・機能性化粧品が地域の格差なく、健康で美しい国民を育むことが期待される。

2007年6月20日 (水)

Japan Electronics and Information Technology Industries Association states IP Policy 電子情報技術産業協会の対内閣知財戦略本部意見中、知的財産権制限、通信と放送の融合、職務発明など

Keeping Balance between IP and Other Values 「知的財産権者の利益」と「公共の利益」のバランスのための権利制限(電子情報技術をめぐって)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  社団法人・電子情報技術産業協会の役員構成を見ると、常勤は専務理事2 名で、経済産業省・国土庁OBが占め、いわゆる行政外部機構の印象もあるが、会長と副会長は、シャ―プ、日立製作所、松下電器産業、三菱電機、日本電気、ソニ―、東芝、富士通、横河電機、村田製作所の社長または会長が役割分担をもって就任している。例えば、法務・知財権担当は現在、佐々木 元・日本電気会長である。

  電子情報技術産業協会の定款上の目的は、「電子機器、電子部品の健全な生産、貿易および消費の増進による電子情報技術産業の総合的な発展」であるが、来月3日には「組込系ソフトウェア開発の課題分析と提言」のワ―クショップを予定するなど、ソフトウェアにも及んでいる。

  内閣知財戦略本部の知財推進計画07策定について電子情報技術産業協会(JEITAが内閣に提出した要望のうち、他団体の言及が不十分な項目に着目したものとして、SANARI PATENTが特に重要と考えるのは次の諸項目である。

1.        知的財産権者の利益と公共の利益のバランスのための権利制限

1-1        電子情報技術産業協会の意見(要旨)

以下の利用を可能とするための権利制限規定が必要である。

1-1-1        ネットワ-クシステムの運用や通信効率向上のために行うシステムキャッシングやバックアップに伴う複製

1-1-2        新たな技術・機器の研究開発過程において技術・機器の評価・検証に用いるための複製、上映などの利用

1-1-3        プログラムの研究・開発、性能の検証、バグの発見・修正、相互運用性確保等を目的として行うそのプログラム複製・翻案

1-1-4        店頭における機器のデモのための上映・一般への伝達

1-1-5        障害者・高齢者による著作物享受を可能とするための複製等

1-1-6        検索エンジン、翻訳ソフト、OCRソフト(SANARI PATENT 注:紙文書やPDFを電子デ―タに変換・編集するソフト。Optical Character Recognition Software)、要約、サムネイル作成ソフト(SANARI PATENT 注:多数画像の一覧表示のための縮小画面作成ソフト。Thumb-Nail  Picture Software)等の、コンテンツを有益に検索・活用するための仕組みを創出し提供するため必要な複製・翻案・送信

1-1-7        著作物の通常の利用を妨げず、著作権者等の正当な利益を不当に害しない行為一般

1-2               SANARI PATENT所見

    知財推進計画07は、「知的財産の円滑・公正な活用を促進する」と題する項において、「不当な権利行使を取り締まる」「ソフトウェア分野における知的財産活用の円滑化を図る」の文節を設けて、「既存の知財権制度の利用を前提に、各企業が保有する知財権についてパブリックドメインを構築し、ソフトウェア間の相互運用性の確保等によるイノベ-ションの向上を図るなど、産業界における自主的な対応を促進する」と計画している。

  電子情報技術産業協会が提起した上記課題は、知財推進計画07の冒頭に掲げた「知的財産権とそれ以外の価値とのバランスに留意する」(新憲法案の財産権規定中の「知的財産特段留意条項」にも対応すると解する)を受ける文節としては、不十分の観がある。「既存制度を前提」でなく、制度改正が必要であり、不明確なパブリックドメイン概念では公益を充足できず、「自主的」に委ねては、「制度改正」の行政機能を果たし得ない。

2.電子情報技術産業協会の意見は、上記のほか、「通信・放送の融合」「コピ―ワンスの見直し」などの分野特異的な事項と、「職務発明制度の再再検討」「特許の質の向上」など業界共通の要望事項を含み、それぞれ重要な提言であるので、その考察は、稿を改めることとする。

2007年6月19日 (火)

Needs Second Reading : “The Intellectual Property-Conscious Nation” ©WIPO 知財推進計画07の言及を補完するために要再読

Mapping the Path From Developing To Developed:  「知的財産の本質を反映しない見解」など

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  内閣知財戦略本部の知財推進計画07は、その基本方針を「イノベ-ション25」と「日本文化芸術戦略」という2つの最近作((2007-6-1 閣議決定)の引用で間に合わせ、「世界特許の構想・基本理念」「世界主義と属地主義」「知的財産権と他の価値との調和」「イノベ-ションとオ―プンプログラム」「著作権とコンテンツ流通」「医療特許と強制実施権」というような基本問題を「検討事項」に委ねる結果になっている。

  この意味で、世界知的所有権機構(WIPO)を著作権者とする「知的財産権重視国―途上国から先進国への道程」(The Intellectual Property Conscious Nation: Mapping The Path From Developing To Developed)(©2006 by WIPO)(著者 Kamil IdrisWIPO事務局長)、Hisamitu Arai(当時・内閣知財戦略本部事務局長)は、その後、「世界知財戦略」の書名で日本語版も出版されたが、上記の基本論を考究するための手掛りを含んでいると考えるので、その日本語版を抜粋・要約して、考察する。(上記書を以下「WIPO文献」と略称)。

1.        知的財産の本質を理解しない見解

1-1  WIPO文献

知的財産制度は、それが注意深く立案・運用された場合には大きな利益をもたらすが、ただし、知的財産は、途上国が直面する課題全てを解決するような効能を有するものではない。

例えば、次のような見解は、知的財産の本質を反映するものではない。   

1-1-1        知的財産権を強化すればするほど、社会は幸福になる。

1-1-2        国際的ル―ルや国際的義務に従った知的財産権制度を作れば、それだけで外国からの直接投資や先進技術の移転が増大し、利益を享受できる。

1-1-3        多様な国々の多様なニ―ズを、世界普遍の知的財産権制度により充足できる。

1-2               SANARI PATENT所見

上記の意見は、知財権を国際的に論ずる場合の基本認識とすべきである。すなわち、

1-2-1        少なくとも、独占の弊害を除去する制度と、その的確な実施が不可欠である。

1-2-2        知的財産権制度の適切かつ実効的な運用体制の樹立、および、経済・社会のインフラ整備が、先決要件である。

1-2-3        世界普遍の基本原則に基づき、これに所要の修正を加えた各国独自の知的財産制度(例えば、わが国旧特許法の化学物質特許を認めなかった例)

が、調和することが必要である。

2.        発展と知的財産の関係についての誤解の有無

2-1            WIPO文献

    次の見解は、誤解である。

2-1-1        知的財産制度は、先進国のための制度であり、低所得の途上国に利益をもたらすものではない。途上国の国内産業にとっては、弱い知的財産制度の方が大きな利益をもたらす。

2-1-2        知的財産制度は、情報や必須医薬品へのアクセスを阻害する。

2-1-3        知的財産制度は、競争を阻害する。

2-2               SANARI PATENT所見

2-1-1      各途上国の多様な産業構成と経済発展の段階によって、政策と産業界・一般国民の選択が異なる課題である。先進国は、各国家主権の尊重を前提として、属地主義との調和を図るべきである。

2-1-2      知的財産制度に内在する撞着として、コンテンツの複製権とコンテンツ流通のプログラム創作権との相克などが現実の課題である。必須医薬品については、強制実施権制度の円滑な発動を確保することが不可欠である。

2-1-3      知的財産権は独占権を本質的要素とするから、そのクレ-ム内で競争を阻害することは必然的である。特許性の寛厳、特許期間、強制実施権制度の活用等が、独占権の創作喚起効果とどのように両立できるか、政策課題である。

3.        上記全体についてSANARI PATENT所見

社団法人・日本知財学会が6月30日~7月1日の同学会で、「プロパテントとオ―プンイノベ-ションの関係」「グロ-バル化と属地主義」「知財における行政と司法のバランス」など、世界的視野と国民全体のレベルで見た知財制度の意義を問い直し、産学官の立場を超えて、知財に関する新たな論点について検討することとしていることは、意義深い。なおSANARI PATENTは、「内閣知財推進計画の刷新」と題して、予稿を同学会に送信済みである。

2007年6月18日 (月)

Ratio of Engineering Students 工学系学生数の比率の動向など、弁理士法改正審議における質疑

Capability of Patent Attorney  登録前研修が参入障壁にならないよう措置、弁理士所在の偏り

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  弁理士法改正を審議した衆議院経済産業省委員会(2007-6-8)においては、工学系の大学卒、大学院卒の比率の減少など、知財立国の基盤に関する問題について質疑応答が展開された。その要旨を若干摘記する。

1.        工学系大学卒業者の比率の減少

   大学の全卒業者数に対する工学系大学卒業者の比率は、平成7年に19.5%であったものが、平成17年には17.8%まで減少している。〈佐藤ゆかり衆議院議員〉

2.         工学系大学院修士課程卒業者の比率の減少

   同様に、平成7年の48.5%から、平成17年には42.2%まで低下している。〈佐藤ゆかり衆議院議員〉

3.        工学系卒業者数について文部科学省の見解

近年、大学工学部の卒業者数が若干減少傾向にあることは事実であるが、一方で、工学部卒業後、大学院に進学してより高度な工学系の知識を身につけるという者の実数は増加傾向にある。

このような状況を踏まえて各大学においては、情報工学部・システム工学部等、学部の再編やカリキュラムの充実に積極的に取組んでいる。

文部科学省では、例えば、「現代的ニ―ズの取組支援プログラム」を起こして特色ある取組を支援しており、静岡大学中心の「小中高校を通じたものづくり人材の育成支援事業等を採択した。

さらに本年度から、「ものづくり技術者育成支援事業費」を新規計上し、工学系人材の育成を支援する。(辰野祐一文部科学省大臣官房審議官)

4.        知的財産教育

    平成17年度には、知財関連の授業科目が280大学の511学部において実施されている。平成13年度の183大学・262学部に比べて著増している。(辰野祐一文部科学省大臣官房審議官)

5.弁理士登録前実務研修と「弁理士への参入障壁」防止

    弁理士の資質向上を目指すとハ―ドルが高くなって参入障壁になってしまうのではないかということについて、基本的に、弁理士数が増えれば良いということではないが、かといって、参入障壁になっても困る。

(大畠章宏衆議院議員)

5.        弁理士数の増加と資質

平成8年に3916名であった弁理士数が、平成18年に7000名(SANARI PATENT 注:本年4月末7236名)と、約倍増したことは良いことであるが、一万人になったときに、人数が多ければ質も多様になるのは仕方ないかも知れないけれども、実習の強化も必要と感ずる。(大畠章宏衆議院議員)

6.審査官経験者の弁理士登録

審査官経験者の弁理士新規登録(SANARI PATENT 注:現に審査官OBで弁理士登録者の数は約670名)については、審査官を経験している方は、 日常の審査・審判実務を通じて、明細書の記載などの実務能力をある程度修得しているということで、一部の科目を免除することもあるが、詳細は省令で定める。(渡辺博道経済産業副大臣)

7.        弁理士による訴訟代理

特定侵害訴訟についての訴訟代理人制度については、制度ができてから3年であるが、代理の実績がそれほど多くない。将来的に単独代理を含めて、引き続き検討する。(中嶋 誠特許庁長官)(SANARI PATENT 注:この委員会でこの項が「付帯決議」された)

8.        弁理士の著作権関係業務

弁理士法の中にも、弁理士の業務として、著作権に関しても、裁判外紛争解決手続についての代理業務、著作権に関する契約の締結に関する代理・媒介、あるいはこれらに関する相談業務が位置づけられている。弁理士の活躍を望む。(吉田大輔文化庁官房審議官)

9.        弁理士所在の偏り

全国で年間40万件の特許出願のうち、中小企業のそれが4万件に過ぎず、わが国事業所数の99%を中小企業が占めるのに対比して過少であるが、一つの事情として、弁理士の大都市圏偏在がある。(三谷光男衆議院議員)(SANARI PATENT 注:本年4月末に、東京都23区に4504名で、全国  7236名の62%。しかし、特許事務所からの弁理士求人件数は、都区部特許事務所によるものが多く見受けられる)

2007年6月17日 (日)

Opinion of CompTIA on Cabinet Strategy for IP コンピュ-タ技術産業協会の対内閣知財戦略本部意見

International Telecommunication UnionEuropean Telecommunication Standards Institute等との連携を「業界主導で」と提案

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

内閣知財戦略本部が知財推進計画の策定に際して広く意見を求めることは、多様な業界・個人の主張が表明される機会として貴重である。また、知財関係諸団体の性格や、個人の忌憚ない意見を知る好機である。特に特許制度の国際調和が重要課題である現在、自然法則利用性など日米欧の法規定が一致していないコンピュ-タ・ソフトウェア関係の業界・個人の意見は、綿密な考察を要する。

1.        コンピュ-タ技術産業協会

1-1        同協会の自己紹介

コンピュ-タ技術産業協会(CompTIA)(本部シカゴ。1982年設立)は、世界で最大の規模を有する情報通信の団体で、日本を含む100余の国で2万2千社を超える企業を会員に擁している。日立、富士通、リコ―、キャノンなど日本に本拠を置く200社以上を含む。業種としては、ハ―ドウェア製造、ソフトウェア開発、アプリケ―ションサ-ビス提供、インタ-ネットサ-ビス提供、流通、小売、再販、IT研修、通信を含む。

1-2        CompTIAの業界観

情報技術(IT)セクタは現在、110万の事業体で構成され、1100万のIT関連の高収入職を支えている(SANARI PATENT 注:1事業体当たり10名ということになるが、そのランクは記載していないが、従業者数は数十万人としている)。これらの事業は、世界経済に年間1兆7千億ドルを貢献している。

2.        CompTIAの意見

2-1        ソフトウェアの相互運用性

ソフトウェア開発業者が自社製品の相互運用性を高めるべく、最先端の技術進歩にその水準を合わせてゆけるよう、ウェブサ-ビス規格、文書交換規格、マ―クアップ規格、コラボレ―ション規格、セキュリティ規格、その他情報規格の相互運用について配慮すべきである。

2-2        業界規格コンソ―シアム

2-3        OASIS、W3Cなどの業界規格コンソ―シアム(SANARI PATENT 注:OASISは、ビジネスにおける情報交換技術の標準を策定するための民間国際組織。約100国に数百の会員企業と数万の個人会員が加入している模様。Organization for the Advancement of Structured Information Standards。W3Cは、ワ―ルドワイドウェブ利用技術の標準化促進団体。米国MIT等が設立し、わが国では慶応大学SFC研究所が運営。www

Consortium。SFCは、湘南藤沢キャンバス)やISO/IEC、ITU、ETSI、ANSI等と連携する(SANARI PATENT 注:ETSIは、欧州通信規格協会。 European Telecommunications Standards Institute。ITUにおける欧州企業の立場を優位に保持する組織と解する。ANSIは、米国の工業分野の標準化組織)

2-4        規格と標準規格

時間の経過により、規格は標準規格となり得る。そして、継続し得る規格を設定するのは業界である。

2-5        業界主導型の規格促進を提案

2-5-1        業界が自主的、業界主導型、コンセンサスに基づく相互運用性の促進を先導することを認める。

2-5-2        政府による相互運用性プログラムは、公的にアクセス可能な明確な一連の技術規格に基づくようにする。

2-5-3        規格設定に市場も参加させる。

2-5-4        業界主導型のオ―プンスタンダ―ドを支える法的な枠組みと、規制による枠組みを提供する。政府が規格決定基幹への代表を務める場合(SANARI PATENT 注:ITUは、ほぼこれに該当する。しかし、ITUは、勧告機関である)、業界の参加予定者すべてに対し開かれた強力な諮問手段が設定されるようにする。

3.        SANARI PATENT所見

多数国・多数会員を擁するCompTIAのような団体においては、意見を合成することが簡単ではないと考えるが、大勢として、業界主導を基本としていることが読み取れる。

2007年6月16日 (土)

Turf TV: Commercial Success as a Factor of Patentability 他社が着想・実施・成功しなかったことは、「非自明性」充足の一要素

US Supreme Court didi not Totally Reject the Use of “Teaching, Suggestion, or Motivation” as A Factor in the Obviousness Analysis  KSR事件と対比

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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1.「光ファイバ混紡人工芝」(タ―フTV)特許権

1-1 先般、Forbes(2007-3)が標記の特許権について紹介したが、ここで特に関心を持つのは、記事の結びに用いられた、「技術そのものには目新しさはない。それを競技場に利用しよう、と考えた者がいなかっただけだ」という創業者M.Nicolus(Canada Ontarioの人工芝メ―カ・スポ―テグゼ社のCEO)の言葉である。従来技術の組合せの特許性が、米国最高裁のKRS事件判決を受けて、米国特許商標庁の「従来技術の組合せの特許性」に関する審査基準改正の要否の検討が進行中であるからである。

1-2 同誌記事に基づいて、SANARI PATENTがこの特許権のクレ-ムを要約すると、次のようである。

1-2-1 ポリエチレン繊維に光ファイバを混紡した素材によって人工芝を製造する。

1-2-2 画像をコンピュ-タ-から、相互に接続された回路盤に送信する。

1-2-3 光ファイバが送信信号により発光する(芝生が巨大なコンピュ-タ・モニタ―になる)。

1-3 ハ―フタイム中にスポンサのロゴの芝生上表示、選手の行動判定、イベントの舞台構成など、収入源に富む。

1-4 同様な技術は、すでに人工クリスマスツリ―などに利用されているので、従来技術の組合せとも見られるが、人工芝に組合わせる着想に特許性が認められたことになる。換言すれば、寄せ集めではなく、新たな機能を創生する組合せであって、当業者が容易に想到できないと認められたことになる。

1-5 SANARI PATENTが推測するところでは、米国特許商標庁の特許審査基準(MPEP)における「商業的成功」、すなわち、「商業的に成功する着想であるのに拘わらず、他の同業者がその着想と実施・特許出願に至らなかったのは、容易想到性を欠く(新規性、従って、特許性がある)という査定であったかも知れない(この場合、商業的成功の可能性が確実に近いという意味で、投下資本を回収し、すでに多額の利益を得ているという段階には達していないようである)。

2.KRS事件の米国最高裁判決(2007-4-30)(SANARI PATENT 注:「アクセルペダル特許事件判決」と通称されている)の「シラバス」と「オピニオン」

2-1 日米とも、知財判決の情報は迅速に開示されるようになったが、特に米国最高裁判決については、判決当日に「シラバス」(判決要旨)が公表され、数日以内に「オピニオン」(判事意見・判決理由)と共に全文が公表される。

2-2 事件の技術的・経済的背景をシラバスに解説的に記述することは、米国判決の方が、わが国のそれより懇切度が高いようである。すなわち、次のように述べている(要約)。

 「自動車の速度を制御する在来の方法は、ガスペダルの操作であるが、ペダルの位置が固定されていたので、運転者とペダルの位置関係を変えるためには、運転者自身が動くか、運転席を動かすかのいずれかであった。スロッツルのコンピュ-タ制御が発達するに伴い、電子センサによるアクセル制御が考案されるようになり、TELEFLEXの特許もその一つであるが、KSRは、その無効を「新規性欠如」を理由として主張している」。

2-3  米国地裁、巡回控訴裁、最高裁の判決は、それぞれ結論を異にしているが(SANARI PATENT関連記事May3)、米国特許商標庁は、最高裁判決に基づき審査基準改正の必要性の有無を検討中である。要するに、従来技術の組合せが特許性を認められる場合(米国では「新規性」、わが国では「進歩性」を認められる場合についての審査基準に関する課題である。

2-4  上記1-5に関係するが、今次米国最高裁判決は、判例中の、「商業的成功、長年望まれてきたが充足されなかったニ―ズの充足、他社は試みに失敗したことなどを、従来技術との同一性比較に次いで考察することは、従来技術の組合せによる発明の特許性判断に役立つ可能性がある」という説示を引用している。

3、SANARI PATENT所見

   経済産業省・特許庁は、進歩性に関する検討を進めているが、上記米国最高裁判決に対する米国特許商標庁の措置を注目する意向を表明している。

2007年6月15日 (金)

JAPAN IBM’s “Applications on Demand” イノベ-ション推進のため、日本IBMが内閣知財戦略本部に要望

Quality of Patent must be Enhanced 特に進歩性要件の厳格化を強調

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  日本IBMは相変わらず、イノベ-ションを推進する新たなIT形態を市場に展開している。 例えば、5月30日にマスコミ公表したAoDApplications on Demand)は、ユ-ザ-が主要なビジネスアプリケ―ションを利用する場合に必要なハ―ドウェア、基本ソフトウェア、ネットワ-クで構成する対応インフラを米国のIBMに整備し、ユ-ザ-の必要に応じてネットワ-ク経由でこれらインフラ資源を提供するサ-ビスとして、ユ-ザ-の経営合理化(システム構築・保守負担の削減)とIT活用の高度化(IBMノウハウの活用)に資するところが大と考えられる。

  IBMの米国での特許取得件数は、1993年以来、14年連続首位と統計されてきたが、わが国における特許制度の在り方にについても、「特許の質の向上」「ソフトウェアのオ―プンスタンダ―ドと知的財産権についての議論の必要性」「倒産・譲渡時における知財ライセンスの保護」「日本版バイド―ル制度の適用拡大」の4項目について、内閣知財戦略本部に意見を提示している。ここでは先ず、日米欧を通じて当面の課題とされている「特許の質」すなわち、「特許要件、特に進歩性基準の在り方」に関する日本IBMの主張を、特許権の技術的水準の高位保持(独占権に値し、イノベ-ションに寄与する)、特許権の法的安定性、特許権のイノベ-ションにおける役割、日米欧の特許審査結果相互承認などの見地から考察する。

日本IBMは、「特許の質の向上」について次のように述べている(要旨)。

1.        質が低い特許の存在は、権利が不安定であるため、産業界に無用の紛争を招き、却ってイノベ-ションを阻害する。

2.        従って、特許の質を向上させるため以下の政策を採るべきである。

2-1 特許要件の基準、特に進歩性基準の厳格化

情報化・ネットワ-ク化が進む今日では、従来に比べて情報へのアクセスが格段に容易になっている。従来であれば一部の専門家のみが有していた専門知識に、インタ-ネットを介して誰でも容易かつ低コストでアクセスできる。さらに、改善された教育制度と従来技術の蓄積により、平均的な個人の技術レベルが着実に向上している。このような実状にかんがみて、進歩性基準をより厳格に定めるべきである。このような要請は、IT分野において特に顕著である。

2-2 出願書類の質の客観的指標を策定・公表

質が低い出願書類は、特許審査の遅延を招くのみならず、その結果成立する特許の質を低下させる。従って、出願人には透明性・明確性の高い出願書類を準備・提出することが求められるが、それを支援する手段として出願書類の質を客観的に示す指標を官民協力して策定・公表すべきである。

2-3 公衆・コミュニティの審査資源の活用

審査件数の増大、出願内容の高度化に対処し、米国で検討が進んでいるコミュニティパテントレビュ―を検討推進すべきである。また、コミュニティの成果物を審査資料として活用する見地から、ソフトウェアの分野ではオ―プンソ―スソフトウェアを先行技術として利用し易い仕組みを確立するなど、多様な技術・資源の活用を図るべきである。

2-4        特許庁の先行技術資料へのアクセス実現

インタ-ネット経由での全面公開を2014年1月に予定しているが、前倒して実現し、出願人の利便を早期に図るべきである。

3.        SANARI PATENT所見

特許要件について、わが国特許庁の進歩性(特許庁の英文では、Inventiveness)、米国特許商標庁の非自明性(Un-obviousness)、欧州特許庁・英国特許庁の進歩性(Inventive Step)が要するに、「従来技術から、当業者が容易に想到可能か否か」の判断であり、その判断基準が変動性ないし不明確性を政策的および本質的に示し来ったことは、周知のことである。現に米国最高裁のKRS判決(2007-4-30)も、非自明性の判断態様に関するもので、その決着は米国特許商標庁の措置待ちである。

加えて、特許審査基準に分野別、業種別考察を要することは、コンピュ-タ-関連、バイオ関連等について夙に認識され、相応の基準設定が行われてきたが、特に先端的革新が高速なこれら分野・業種の需要に、立法・行政・司法とも即応し切れない現象がある。

日本IBMの要望は、この現況に重要な一石を投じたと考える。

2007年6月14日 (木)

IP Diversity of 750 Universities & Colleges 大学知財体制の多様化、東京ミッドタウンの情報システムにおける「坂村 健 東大大学院情報学環教授と三井不動産」の情報システムIPなど

Innovation of Cabinet IP Policy 2007  内閣知財推進計画自体のイノベ-ションは見られるか

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  イノベ-ションがグロ-バルな課題となり、先ずわが国内閣知財推進計画自体のイノベ-ションが期待されたが、知財推進計画07では、どのように実現されたか。

  知財推進計画07は、基本方針の基盤を「イノベ-ション25」と「日本文化産業戦略」の2戦略としているが、いずれも本年6月1日に閣議決定ないし了承されたもので、当然、新登場したものである。

  期待されたのは、「目標とする世界特許の理念と構想の明示、途上国の属地主義との調整」、「日米特許FTAの先行実施」「特許権と他の価値との調和」「自明性・進歩性・有用性の特許基準の日米欧統一」などであったが、いずれもほとんど、これまでの表現の繰り返しである。

  しかし、経済社会の変貌と、コンテンツ技術の革新に牽引されて、新たな政策項目も若干は見られ、政策がイノベ-ションを牽引することも期待される。

  以下、知財推進計画07の目新しい項目を掲げる。

1.        大学知財組織の多様化

1-1        知財推進計画07の計画

  2007年度から、大学知財本部とTLOについては、その関係の多様性に配慮し、既存の組織にとらわれることなく、連携強化や一体化を促進するなど、個々の事情に応じ体制を再構築する。

1-2        SANARI PATENT所見

  大学知財本部とTLOを画一的に併設し、文部・経済産業両省がそれぞれ助成する在来官庁型構想が、修正されることになったと解する。

  現にイノベ-ションと直結したと見られるのは、坂村 健 東大大学院情報学環教授と三井不動産」の情報システムIPの開発のような連携態様である。ただし、坂村教授は慶応大学出身であることも想起される。

2.        イノベ-ション実現のための知財の戦略的取得・活用

2-1 知財推進計画07の計画

2007年度から、事業化を目指した競争的資金による研究開発等において、基本特許の国際的取得等に必要な費用をあらかじめ確保することを促すと共に、競争的資金の審査において知財戦略や国際標準化戦略を考慮することを制度の趣旨に照らして検討することなどにより、知財の戦略的取得・活用を促進する。

2-2 SANARI PATENT所見

国際標準化戦略と知財戦略の関係を明確に示すことが必要である。国際標準化戦略は、要するにデファクトスタンダ―ドの戦利獲得によるデジュ―ルスタンダ―ドの設定戦略であるから、この目的に合致する企業連携や基本特許選択が行われなければならない。

3.        地域の大学等の支援

3-1  知財推進計画07の計画

2007年度から、地域の知の拠点再生を担当するコ―ディネ―タや知財アドバタイザなど地域に配属された専門家に関する情報提供を進め、これらが連携して地域の大学等の活動を行うことを支援する。

3-2  SANARI PATENT所見

全国約750の大学のうち、知財本部やTLOを設置しているものは6%程度に過ぎず、かつ大都市に集中しているから、2007年度からでも格差是正を計画することは当然であるが、地方大学では、各研究室ごとに地元企業と密着して開発の成果を挙げ、また、地方大学の教員が中小・ベンチャ-企業を創業ないし役員参加する例も続出している(バイオ等)から、その事例を顕彰すべきである。 

4.        多様な国際標準化スキ―ムの活用

4-1        知財推進計画07の計画

企業や産業界に対し、工業会を通じた国際標準化のほか、企業の直接参加、現地法人の活用、フォ―ラム標準やファスト・トラック制度の活用等、種々の国際標準化スキ―ムを戦略的に活用するよう促す。

また、2007年度中に、国際標準化に関する成功・失敗事例集および種々の国際標準化スキ―ムについて具体的な事例を含め、そのメリット・デメリットを解説したガイドラインを作成・周知する。

4-2        SANARI PATENT所見

国際標準化の経済的意義は、業種、製品分野によって著しく異なる。例えば、国際標準化の歴史がもっとも長い国際電気通信の分野ではITUの勧告議決に至るまでの多国籍企業連合や知財力・市場力・訴訟力に優位な企業によってデファクト国際標準が形成され、その提案が勧告される。複数案が競合すれば、ファミリ―コンセプトの導入などにより妥協される(第3世代無線通信の事例)。

2007年6月13日 (水)

Defense Patent 経済産業省の「知財戦略事例」に補完の要望

Request for Examination 他社特許出願の審査請求に要する経費

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  経済産業省・特許庁「知財戦略事例」は、本年6月1日の最近更新後も、随時更新を重ねることが期待されるが、先ず277ペ-ジに及ぶ解説の過半を占める知財戦略論説について、業界からも補完を要望すべき事項を検討する必要がある。以下、これを例示する。

1.        冒認出願への対応

1-1 「発明者または、発明者から特許を受ける権利を承継した者」のみが特許   

  を付与され得るが、これ以外の者が自己を「発明者または、発明者から特許を受ける権利を承継した者」であると偽って特許出願することを冒認出願というが、文字通り解釈すると、大企業や著名大学においても、冒人出願該当行為は存外見受けられる。職務発明訴訟などでこれが露見するが、対社外上も。冒認出願に関連する事項を、「知財戦略事例」に補完することが望まれる。

1-2  冒認出願は、拒絶査定の対象となり、また、誤って特許付与された場合に特許無効の理由を有し、さらに、同一発明についての先願地位が認められない。しかし、冒認出願について出願公開がなされると、その後に「発明者または、発明者から特許を受ける権利を承継した者」が特許出願しても、冒認出願によって「公知効果」は発生するから、特許要件である新規性の欠如によって拒絶査定を受ける。「発明者または、発明者から特許を受ける権利を承継した者」が冒認出願の名義を自己名義に直ちに変更できるという規定はない。また、冒認出願に特許付与された場合、「発明者または、発明者から特許を受ける権利を承継した者」が自己の名義に直ちに変更できるという規定もない。

1-3  従って、「発明者または、発明者から特許を受ける権利を承継した者」が構ずるべき措置としては、次のように考えられるが、むしろ防衛出願によることが経済的である場合を想定すべきである。

1-3-1        冒認出願の後に同一発明を出願して、先願地位を得る。

1-3-2        特許を受ける権利の侵害に対して、民法不法行為の損害賠償を請求する。

1-3-3        冒認出願による特許に対して無効審判を請求する。

1-4               経済産業省・特許庁「知財戦略事例」は、「なぜ特許庁を取得するのか」(自社事業からの利益の最大化)「特許権から得られる直接利益の獲得」)の項に続いて、「公知化という戦略」の項を設け、次のように述べている。

  「自社事業に抵触するような特許権を他社に取得されてしまうと、企業において一番重要な自社事業の安定的遂行の阻害条件になることから、このような特許権取得を防ぐことは非常に重要である。これを防ぐために最も有効な手段は、公開技報などによる単なる公開であると考え、これを積極的に活用している企業がある。このような企業は、他社の権利化を阻止するためには、出願するよりも公開技報などを用いて早期に公開する方が、コスト面、スピ―ド面、排除力等の点から効果的と考えている。ただし、その後の自社の特許出願の審査において、自社の公開技報が従来技術として引用されるリスクがあることや、単なる公開を選択すると、特許権を取得する道を自ら完全に放棄することになってしまうため、その後の特許戦略やその発明の開発地を十分に見極めた上で、この選択をすることが必要である。」

1-5 上記の論旨に、冒認出願対策を含めて理解することも可能であるが、むしろ明示する方がユ-ザ-に対して親切である。

2.        他社の特許出願の審査請求

    特許出願人でない第三者(他社の特許出願の査定に関心がある場合など)も審査請求できるが、他社出願に対して審査請求の印紙代を支払うことになる(168600円+請求項*4000円)。

    このような事項を示すことも、実用に適する。

3.        SANARI PATENT所見

   経済産業省・特許庁は、出願処理迅速化の見地からは、特許出願の厳選を勧奨しているが、いわゆる防衛特許の企業戦略的意義を要素に入れることが必要である。

2007年6月12日 (火)

IP Management Guidebook by METI 知財戦略事例集を6月1日に更新

Some Concrete Examples by SANARI PATENT 「新日鉄とミッタル」「三菱自動車とダイムラ―」

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  経済産業省・特許庁「知財戦略事例集」は、本月1日に表現等の更新がなされ、今後、成功・失敗を含む具体的事例が補完されることが期待される。

  しかし、論説の充実に比べて、行政庁が直接、企業から「公表前提の具体的事例」を徴することは、企業の側に「ためらい」もあって、難渋も予想される。企業としては、充実した論説に依拠して、業界の成功・失敗例を自ら考究すべきであると考える。

  例えば、包括クロスライセンス契約の在り方については、日立製作所やキャノンの職務発明対価請求事件の地裁・知財高裁判決に詳細な考察がなされ、M&Aによる知財の包括的移転については、企業研究や経営評論、トップ発言等によって窺知できる余地が多い。

  ここでは、「新日鉄とミッタル」「三菱自動車とダイムラ―」を事例とする。

1.        新日鉄とミッタル(所有特許権数等)

1-1  世界鉄鋼生産量においてミッタルが首位、新日鉄が第2位であるが、例えばWikipediaによれば、「所有特許数は40足らずで、新日鉄の1000超には大きく水をあけられ、また、アジアに拠点を持たないので、アジア所在の製鉄企業を次期買収対象としているともいわれている」。

1-2  新日鉄がミッタルに技術供与する立場になっているのは、新日鉄が技術供与していたアルセロ―ルをミッタルが買収した結果である。この新会社、すなわちアルセロ―ルミッタルは、現在の契約では、新日鉄から技術供与を受ける対象が米国・欧州・中国所在の新日鉄・アルセロ―ルミッタル合弁会社の工場数件に限定され(新日鉄としては、これら地域所在のトヨタ等への製品供給が目的)、他の工場においても新日鉄の技術、例えば自動車用薄鋼板の防錆技術を導入したいアルセロ―ルミッタルの意図に即していないと見られる。

1-3  ミッタルによる企業買収の経過を見ると、1990年代以降に限定しても、メキシコの鉄鋼民営化に際し同国政府からシバルサを買収したのを始め、1994年にカナダのシドベックドスコ、1995年ドイツのハンブルガ―シュタルヴェルケ、カザフスタンのカルメト、1998年米国のインランドスチ―ル、

1999年フランスのユニメタル、2001年アルジェリアのアルファシド、2003年チェコのヴァフット、2004年ポ―ランドのポルスキ―フティスタリ、ボスニアヘルツェゴビナのBHスチ―ル、さらに、インタ―ナショナルスチィ―ルグル-プを買収してミッタルスチ―ルを形成。

1-4  ミッタルは上記もような形成過程で拡大したため、高級鋼板の技術開発が遅れ、200610月にアルセロ―ルの買収によりアルセロ―ルミッタルとして製品の高度化を急いでいる。

1-5  新日鉄とアルセロ―ルミッタルの知財戦略・経営戦略は、次のように見られている。

1-5-1      世界所在のわが国自動車メ―カにとっては、両者の合弁会社を通ずる高級鋼板の安定供給が必須である。

1-5-2      新日鉄が最新技術を全面的にミッタルに供与し、優位バランスに影響することには、慎重を要する。

1-5-3      新日鉄は、ブラジルのウジミナスへの出資比率を高め、南米を拠点とする単独の市場支配領域を拡大することを意図するのがひとつの戦略と考えられる(SANARI PATENT 注:ウジミナス現地で高炉建設に参画、国内優良電炉に出資拡大などを野村證券・東洋経済が対抗軸として把握しているようである)

2.        三菱自動車とダイムラ―(資本提携解消により、関係良化)

2-1 三菱自動車とダイムラ―の資本関係(SANARI PATENT 注:1985年にはDiamond Star Motorsを共同設立)が、200511月の「ダイムラ―がその保有三菱自動車株全部を売却することによって終了したが、両社の関係はこれによってむしろ良好化したと、三菱自動車側は考えているようである。ダイムラ―の世界戦略の一環として三菱自動車が位置づけられる場合の違和感が解消したためとと解される。

2-2 三菱自動車の特許公開件数は1万1495件に達し、例えば「速度制御」に関するものとして、「内燃機関の制御装置」「内燃機関の排気浄化装置」「車両の走行制御装置」「車両速度制御装置」「電動車両の速度制御装置」「車両用情報表示装置のスクロ―ル制御装置」「モ―タアクチュエ―タ」「車両用エンジン制御装置」「筒内噴射型火花点火式内燃エンジン制御装置」など34件に及ぶ。

   三菱自動車エンジニアリングの開発設計・試験研究・コンピュ-タ-ソフトウェア開発等が注目される。

2-3 一方、ダイムラ―は、本年5月、クライスラ―部門を米国の投資会社に売却する基本合意が成立したと報じられている。

3. SANARI PATENT所見

  資本移動を伴う包括的知財・経営戦略がグロ-バルに展開してゆくと予測される。経済産業省が、その対世界性を発揮して国際企業の事例を解析されることを望む。

2007年6月11日 (月)

Usefulness of Patents 製品化コスト等を考えない発明と特許権のイノベ-ション価値

Culture Value of  Sleeping Patents 休眠特許権の日米比較

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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1.知財民度

 「知財民度」(内閣知財戦略本部が使った用語)が向上して、技術的創造が企業・国民全般に活発化することが、知財立国に直結すると認識されてきた。他方、イノベ-ションが強調されるに至ったのは、特許出願や特許権取得の数の増加が経済発展に直結するのではなく、イノベ-ション、すなわち、経済社会に進展と改革をもたらす知財の開発こそ、国民を裨益するものであり、イノベ-ション効果の認識が先行すべきであると、日米ともに考えているからである。

逆に言えば、産業や生活に対する有用性の顕現が見られない特許権への消極的価値評価である。「休眠特許」と呼ばれる特許権のうちには、将来を嘱目されるものもあるが、数年を経ても実用されない特許権には、経済性を含めた有用性の具備に考察を欠くと考えられるものも多い。

2.わが国の休眠特許権

例えば、朝日新聞が「休眠特許」と題して折々紹介してきた特許権については、SANARI PATENTとしては次のような所見である。

2-1 松下電器産業の「貝の生死判定装置」

2-1-1 内容。 貝殻の表面に電極を付けて、貝の心臓の動きを微弱電圧(生体パルス)により計測する。2003年に特許権取得。2005-1-5の朝日新聞は、「直ぐに売れる新製品に繋がりそうもない」と紹介した。

2-1-2 SANARI PATENT所見。 貝の大きさや種類によって検出される電圧に差があり、また、貝一個づつ生死判定する消費者は数少ないから、消費者向けでなく、養殖業界・生鮮市場などでの実用に適する開発を加えることが期待される。

2-2 農業食品産業技術総合研究所の「低温糊化澱粉」

2-2-1 内容。 品種改良によるサツマイモ「クイックスイ―ト」の澱粉成分を低温で糖化し、高度の食感を得て、2002年に特許権取得。しかし、キロ300円の価格となり、2006-9-10現在では高級和菓子用に引き合いがある程度である。

2-2-2 SANARI PATENT所見。「クイックスイ―ト」そのもの、または低温糊化澱粉そのものが商品化されることを期待する。

2-3 Y氏の「混乱した状況下でも確実に鳴らせる防犯ブザ―」

2-3-1 内容。従来技術では、突然の危機に鳴らし損なう場合があるので、環状の磁石ブレスレットとし、磁石で繋がっている部分を離すと鳴るようにし、特許権を取得(2004)。しかし、製造コストが高い、既存のブザ―が多様にあるなどの理由で、2006-3-12時点では製品化に至らない。

2-3-2 SANARI PATENT所見。 特許品の製造コストを見積らない特許権は、わが国の特許要件「進歩性」を充足しても、米国特許法の「有用性」に距離がある場合が多い。

2-4 K氏の「履物自動回転装置」

2-4-1 内容。玄関で脱いだ靴の向きを手で半回転させなくても済むように、体重をバネに蓄え、部屋に降りたときにに、その力で半回転しながら上昇する台の特許権を取得(2005-8)。しかし、2007-3-18現在、問合せがあったのみ。

2-4-2 SANARI PATENT所見。その台に、老人などがつまずく惧れに注意が及ばなかったために、それ自体の有用性はあっても、別の環境要素がその有用性を消去している。

3.米国ではどうか

米国でも、特許権が実用に直結しない状況が報道されている。例えば、

Forbes誌は、「Inside Invention Land」(日本語版では「発明家に夢を売る『発明の国』の内幕」: 副題「ディビソン社は、チヤンスに恵まれない発明家達に商品化の希望を与えている。だが実際に得をしているのは誰なのか」において、発明家のために試作・売込み・ロイヤリティ折半等の事業を営むディビソン社を紹介した。年間売上27億5千万円、純利益2億2千万円に達した(2005)。発明者は、従来技術と市場性調査料約9万円を支払い、クリアすれば試作品制作等を委託する。3日に1件の割合で特許権を取得している。しかし、商品化成功率は、1%前後であると、同社の創業者自身が言う。商品化できても、過去5年間に、約3万3千人契約のうち、ロイヤリティ収入が同社に支払った費用を上回るのは8件という(SANARI PATENT 注:単純に計算すれば0.024%であるが、ほかに、自己生産している場合もあると考える)

4.発明と特許権そのものを楽しむ知財民度

  特許権を取得しても、収入、すなわち、実用に結びつかない事例は極めて多いと考える。しかし、一般国民が、日米とも、発明と特許権それ自体を楽しむとすれば、実に優秀な知財文化であると、SANARI PATENTは考える。

2007年6月10日 (日)

Patent on Fishing Rod 特許庁による特許無効審決の取消請求を知財高裁が棄却(2007-6-5) 語義が特許性認否の要素になった事例

Meaning of a Word Determines Patentability 本件「中通し釣竿の製造方法」特許の無効を知財高裁が維持

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  釣具業界は、「自然と共生する業界です」と標榜しているが、地球上の水域変動に対応しつつ、グロ-バルに億単位で増加する人口に密着する業界である。集魚ライト、針結び器、電気ウキ専用リチュ―ム電池など、個人需要の製品から、電動リ―ル用バッテリ等、個人・企業の広汎なニ―ズに即応する高性能新製品まで、松下電器産業、ダイワ精工、シマノ等々、楽天市場等に名を連ねるメ―カも数多である。カ―ボンロッドなどを通じて、東レ等の素材メ―カも関連深い。

 

 釣具のうち「釣竿」と絞ってグ―グル検索しても、5万5900件ヒットするから、知財開発の底知れない分野である。

 さて6月5日の知財高裁判決では、ダイワ精工(訴訟代理人、鈴江武彦弁理士・河野 哲弁理士ほか)の「中通し釣竿の製造方法」を無効とする特許庁審決の取消をダイワ精工が請求したのに対して、知財高裁がこの請求を棄却したものである。

 上記無効審判は、シマノ(訴訟代理人、岩坪 哲弁護士ほか)が請求した。

 

1.本件発明の内容(要旨)

 次の特徴を有する「中通し釣竿の製造方法」

1-1 樹脂をマトリックスとして強化繊維によって強化形成された竿管内に釣糸を挿通させる中通し釣竿の製造方法である。

1-2 マンドレルに厚さの厚い巻回部材を、その巻回部材側縁間に釣糸ガイド部材を沿わせる隙間を有するように巻き回す。

この隙間を厚さの薄い柔軟部材によって覆い(この薄い柔軟部材の側面同士が接触する状態に密巻きする方法を除く)かつ巻回部材の表面全体を覆う。

1-3 この薄い柔軟部材の上から上記の隙間に沿って釣糸ガイド部材を配設する。

1-4 その上に前記樹脂を含浸または混合した繊維強化したプリプレグを巻回し、加圧・加熱して形成する。

1-5 その後、上記マンドレルを引き抜き、上記厚い巻回部材と薄い柔軟部材を除去する。

1-6 上記各方法によって、釣糸ガイド部材周りに流入する樹脂によって囲まれた釣糸ガイド部材の形状を、薄い柔軟部材の存在によって竿管の半径方向に突出する表面を滑らかに形成する。

. 本件訂正発明の内容

  明細書に次の記載がある。

2-1 産業上の利用分野

   本発明は、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂をマトリクスとして強化繊維により強化形成し、内面側に釣糸ガイド部材を配設した中通し釣竿の製造方法に関する。

2-2 本件発明が解決しようとする課題

釣糸ガイド部材が竿管内表面から安定露出し、釣糸を円滑に案内して挿通抵抗を小さくできる中通し釣竿の製造方法を提供する。

3.特許無効審決の理由(要旨)

本件発明は従来技術と実質的に同一である。

4.知財高裁の判断(要旨)

4-1 「沿う」の通常の語義は、「線状的なもの、または線状的に移動するものに、近い距離を保って離れずにいることである。長く連なるものから離れずに進んだり続いたりする場合に「沿」を使う。本件訂正発明の「沿わせる」についても、通常の語義を離れた意味を有するとと解すべき理由はないから、釣糸ガイド部材を隙間に沿わせるとは、釣糸ガイド部材が、巻回部材側縁間の隙間に対して近い距離を保って離れずにいる状態を意味すると解するのが相当である。

4-2 訂正発明の特許請求の範囲には、「厚さの厚い」「厚さの薄い」の語義について、絶対的なものか、相対的なものか、相対的なものであれば何に対して厚い薄いことなのか、何ら記載がない。

4-3 語義についての以上の判断を前提として本件訂正発明と従来技術との一致点および相違点を判断すると、「巻回」について先願発明と本件訂正発明は、同一の構成と認められる。

4-4  また、密巻の方法についても両者に実質的な相違点となるものはない。

 さらに従来技術との相違点とする隙間被覆の方法も、当業者なら適宜採用できる程度の設計上の微差に過ぎない。

5.SANARI PATENT所見

   請求項に用いられる用語・文節の字句が同一であっても、当事者が異なる内容で用いる場合も多い。この判決は広辞苑を引用しているが、一般用語辞典と専門分野の辞書と、異なる解釈を与えている場合も多い(例えば、高分子重合、重層)。

2007年6月 9日 (土)

Cabinet Establishes Innovation Promoting Headquarters 内閣にイノベ-ション推進会議を新設(6月1日)。 知財権取引業を育成支援。

IP Trade Business must be Developed 「特許流通・技術移転のための専門家のネットワ-ク化」「知的財産権取引業の育成」

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  本月初めに閣議決定をもって新設されたイノベ-ション推進会議は、知財政  策をどのように方向づけてゆくか、関心がもたれる。

知財推進計画07は既に、イノベ-ション25と文化産業戦略の2戦略を基本として計画・実施することを、冒頭に宣明しており、イノベ-ション25の運用がイノベ-ション推進会議において計画されてゆく態様に、知財政策が対応することが必要である。

1、        閣議決定(6月1日)

1-1  長期戦略指針「イノベ-ション25」と共に、「イノベ-ション推進会議の設置について」(2007-6-1)をを閣議決定した。内容(要旨)は次の通りである。

1-1-1      イノベ-ション立国実現のため、2025年を目指して社会システムの改革、技術革新に向けた取組を長期にわたり実行することが不可欠であるので、その総合的・効果的推進のため、内閣にこの会議を設置する。

1-1-2      本部長は総理、副本部長は官房長官とイノベ-ション特命大臣、本部員は他の国務大臣全員。

1-1-3      幹事は、本部長が指定する官職にある行政機関職員とする(SANARI PATENT 注:民間人を加えるべきである。官邸には、この旨を送信した。早速、7日に、「首相官邸より」として「今後の政策立案の参考にしたい」旨、返信があった)

1-1-4      本部長は必要に応じ、有識者の参集と意見陳述を求める(SANARI PATENT 注:有識者本部員として固定せず、臨機に招集し意見を求めることが効率的と考える。農林水産省の知財戦略本部もこの方式で成果を挙げている)

1-1-5      庶務は内閣府で処理。

1-2 イノベ-ション25の知財側面

1-2-1 人類の持続可能性への脅威となっている環境・水・食料・感染症等、地球規模の課題の解決に、技術・外交等の戦略的取組が強く求められる。

1-2-2 イノベ-ションとは、技術革新にとどまらず、これまでとは全く違った新たな考え方、仕組みを取り入れて、新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすことである(SANARI PATENT 注:特許発明の進歩性は、技術上の進歩性であるから、社会的変化に直結する場合としない場合とがある)

1-2-3 イノベ-ションの創出・促進に関する政策は、従来の政府指導による「個別産業育成型」「政府牽引型」から、国民一人ひとりの自由な発想と意欲的挑戦的な取組を支援する「環境整備型」へと考え方を大きく転換していかなければならない(SANARI PATENT 注:この「支援」に、どの程度の行政干渉を許容するかがイノベ-ションの成否を決定する)

1-2-4 Plan、Do、Check、Action(改善)サイクルを機能させることが重要である。

1-2-5 多様性を備えた、変化と可能性に富む社会への変革(SANARI PATENT 注:ケ―タイの高機能、複合プリンタの多様性など知財開発の関与を強調すべきである)

1-2-6 基本的にイノベ-ションは、既存の組織、価値の「創造的破壊」である(SANARI PATENT 注:創造的破壊対象に行政組織を含むことを明示すべきである)

1-2-7 これからのグロ-バル化の特徴は、知識・頭脳をめぐる世界大競争である。IT、ナノ、バイオ等の分野では、各国が世界中の頭脳獲得にしのぎを削る。

2.戦略の実施

   イノベ-ション25が、下記諸点を実施の基本としていることを評価すべきである。

2-1        府省横断的な政策の推進

2-2        多様な政策の選択肢を提供する仕組み

2-3        官主導ではなく民の活力を最大限活かす仕組み

2-4        各種規制の見直しを含む環境整備

2-4-1        決済システムの強化等、金融市場の国際競争力向上(SANARI PATENT 注:ビジネス方法特許の活用)

2-4-2        電波の2次取引、新世代自動車物流等m新サ-ビスの促進

2-4-3        特許流通・技術移転のための専門家のネットワ-ク等を目的としたセミナ―の開催等により、知的財産権取引業の育成支援を実施(SANARI PATENT 注:流通促進の方向自体には賛成するが、このような業務に何故政府の育成支援が必要なのか、理解できない。米国等では既に自発的に充分発達しており、わが国でも政府の干渉は違法取締に限定すべきである)

2007年6月 8日 (金)

IP High Court Denies JPO Decision「特許庁の特許無効審決は、一致点・相違点の認定判断を欠く誤りあり」知財高裁判決(2007-5-30)

TOPCON Case トプコンの「異物検出装置」特許出願(SANARI PATENT 注:半導体基板関係発明)拒絶査定・同維持審決に対する審決取消請求事件に対する請求認容判決

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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   特許性の認定において、特許庁の査定と審決の結論は一致したが、知財高裁は、審決取消請求を認容した事例である。

  特許性認定の基準とその適用の安定性は、日米欧・アジア等の諸国が共に希求するところであるが、検討を重ねる段階を超えていない。

  丁度、中華民国のトップ級特許事務所である台一国際専利法律事務所から、「特許法の非自明性要件」に関する情報を受信した。台湾特許法において、「特許性の3要件」すなわち、「産業上利用可能性」「新規性」「進歩性(非自明性)」を定めているが、「要件の明確かつ決定的な基準(Absolutely definitive criteria)は示されておらず、特に「進歩性」の認否に起因する特許拒絶・特許取消・訴訟が多い」旨を、この情報は指摘している。

  知財専門家としては、判決研究を重ねることが職責のひとつである。なお、トプコンは、東証一部・大証一部上場。東芝系。測量機の技術力に定評かつ海外好調(野村證券・東洋経済による)。

1.        トプコンの本願発明

  次の特徴を有する異物検出装置

1-1 次の構成による直流電流成分除去部を有する。

1-1 -1 異物存在の可能性ある「回転する検査対象物・ウエハ」を照明する照明光学系。

1-1-2 このウエハ(SANARI PATENT 注:半導体基板)からの散乱反射光を受光し、電流信号を出力する電流源たる受光部。

1-1-3 この受光部から電流信号を入力し、その直流電流成分を除去して出力するため、電流信号をア―スに導く抵抗部。

1-1-4 電流源と抵抗部の間から分岐し増幅部との間に配置されるコンデンサ部。

1-2  このコンデンサ部からの出力を電流電圧変換し増幅する増幅部を有する・

1-3  増幅部からの出力から異物を検出する異物検出部を有する。

2.   特許庁による無効審決の理由本願発明は、従来技術(SANARI PATENT 注:刊行物・引用発明・周知技術)に基づいて容易に発明できたものである。

3.   知財高裁の判断

3-1  原告トプコン(訴訟代理人・新村 悟弁理士)は、「審決が、本願発明の構成を認定するに当たり、『直流電流成分』を除去する」という特徴的部分を捨象して、単に『直流成分除去部』とのみ認定し、『電流電圧変換』が『増幅部』ではなく、『直流成分除去部』で行われると認定したこと、その結果、相違点看過の違法がある」と主張する。よってこのことについて以下のように判断する。

   「審決は、本願発明の『直流電流成分除去部』が直流電流成分を除去するとの構成、および、『増幅部』が電流電圧変換するとの構成について従来技術と対比していないので、一致点・相違点についての認定判断を欠いた誤りがある(SANARI PATENT 注:トプコンの主張を認めた)」。

3-2  被告特許庁は、「本願発明の『直流電流成分除去部』『増幅部』をトプコン主張のとおり解して従来技術との相違点を認定・判断すべきであるとしても、本願発明は、従来技術の組合せにより当業者が容易に発明できたものである」と主張する。よってこのことについて以下のように判断する。

   「容易想到性について判断するためには、一致点・相違点についての認定判断が前提的になるが、上記3-1のように、これを欠くから、特許庁の容易想到性に関する主張は採用しない(SANARI PATENT 注:特許庁の主張を認めない)」。

2007年6月 7日 (木)

Technical Policy for Japan Culture Industry 内閣「日本文化産業戦略」が掲げる技術政策(知財推進計画07コンテンツの基盤戦略)

Pop-Culture as Soft-Power 世界をリ―ドするコンテンツ技術開発、ハ―ド・ソフト連携

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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「日本文化産業戦略」(アジア・ゲ―トウェイ戦略会議2007-5-16)は、本月1日に閣議決定された「イノベ-ション25」と並んで、知財推進計画07の双璧をなしているが、「文化産業戦略」という用語自体が、今回、第5次計画としての知財推進計画07に至って初めて登場したものである。

 すなわち、知財推進計画07は冒頭の「基本的考え方」において次のように述べている。

 「政府は、本年5月、日本社会に新たな活力をもたらすイノベ-ションを創造するための戦略『イノベ-ション25』、および、世界の活力を呼び込み日本の魅力を世界に発信していくための戦略『日本文化産業戦略』をそれぞれ取りまとめた。」

 「イノベ-ション25および日本文化産業戦略は、グロ-バルな大競争時代の中で、技術のもならずアニメ、音楽、食文化などを梃子に、日本の成長への貢献と、日本の良さ・日本らしさの世界への発信を図るものであり、まさに知財に成長と活力の源泉としての役割が期待されている(SANARI PATENT 注:「まさに」以下の文章は要するに、二つの新戦略を知財戦略に結び付けたものである)。」

 従って、知財専門家としてはこの際、内閣のアジア・ゲ―トウェイ戦略会議の内容を含めて、「日本文化産業戦略」と知財戦略の一体性を確認する必要があるが、技術政策としては、次のように述べている。

(1)世界をリ―ドするコンテンツ関連技術の開発・普及の推進

(2)ハ―ドとソフトを連携させたビジネスモデルの構築

(3)バランスのとれたプロテクションシステムの採用

 1.アジア・ゲ―トウェイ戦略会議のメンバ―

   座長は、伊藤 元重・東大大学院教授(東京テレビの人気番組・World Business Satelliteで学際・先端・文理融合の所見を披瀝など、多面・多角の活躍)、委員は、中村 邦夫・松下電器産業会長、氏家 純一・野村ホ―ルディングス会長など計6名。

1.        官邸ホ―ムペ-ジ上の公表

2-1 平成19年5月16日に、アジア・ゲ―トウェイ構想、および、その別添として、「日本文化産業戦略」を公表した。

2-2  「文化産業を育む感性豊かな土壌の充実と戦略的な発信」と副題して、次のように述べている(要約)。

2-2-1        基本的視点

文化産業は、わが国の経済的利益や、他国民を魅了するソフトパワ―を通じた外交上の利益に直結する。

2-2-2        文化産業の影響力

   総合的な国の魅力を文化力として発揮すべく、ポップカルチャ―(SANARI PATENT 注:「一般市民の日常の活動で成立している文化」という定義が外務省の文化外交審議において見受けられ、現代ではアニメ、マンガ、ゲ―ム、ファッション、食品文化等、歴史的には浮世絵、茶道などが例示されるが、簡単に「大衆文化」と解すれば足りると考える)に加え、幅広い文化・芸術について海外との交流や発信を多様な次元で進めることが重要である。

2-2-3        文化資源大国と経済大国

日本は文化資源大国であるが、歴史上、必ずしも「資源大国」が「経済大国」にそのままなれるわけではない。化資源大国として、資源の発掘から活用までの戦略的な対応が必要である。

2-2-4        文化産業戦略の射程範囲

    文化産業としては、ポップカルチャ―だけでなく、ファッション、食、建築、日用品、工業製品、サ-ビスを含めた幅広いものとして捉えることが必要である。例えば、物の単なる機能よりも、物に化体されたデザイン、スト―リ―性、文化的な背景、ブランド等の付加価値を消費者は求めている。

2007年6月 6日 (水)

Motivation by Prior Arts 動機づけとなり得るものは、技術分野の関連性、課題の共通性、作用・機能の共通性、引用発明の内容中の示唆

Patent on Silicone Semi-Conductor 特許庁による特許無効審決を、知財高裁が支持(動機付けの存在を実質的に認定)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  現在、日米欧の特許当局・実業界・知財専門家グル-プが、行政・営業・法務の在り方に直結する実際上の課題として直面しているのが、「非自明性」(米国)、「進歩性」(日本)という特許性認定要件の具体的基準である。

  知財専門家としては、内外判決の解析がひとつの検討方法であるから、ここには、先般の「シリコンウエハの製造方法」特許に関する知財高裁判決を考察する。

1.        小松電子金属の「シリコンウエハの製造方法」特許

1-1  原告・小松電子金属(訴訟代理人:正林真之弁理士、相川俊彦弁理士)の標記本件特許について、被告・シルトロニック・ジャパン(訴訟代理人:内藤俊太弁理士、田中久喬弁理士)が無効請求し、特許庁が無効審決したので、小松電子金属がその取消を知財高裁に訴求したが、知財高裁は、小松電子金属の請求を棄却した(H19-5-22判決)

1-2  本件発明の要点は、

1-2-1      請求項1:「引上げ速度/固液界面近傍の温度勾配」を各所定値とするCZ法またはMCZ法で製造され、窒素濃度が所定範囲値内にある熱処理用シリコンウエハに非酸化性熱処理を施した、半導体デバイス用シリコンウエハ

1-2-2      請求項2:上記同様の熱処理用シリコンウエハに水素、アルゴン若しくは水素・アルゴン混合ガス雰囲気下で、非酸化性熱処理を施した、半導体デバイス用シリコンウエハ

1-3       無効審決の要点は、「本件発明は従来技術と同一ないし容易想到性のものである」。

2.        今次知財高裁判決における「容易想到性」など、原告請求棄却理由

2-1        引用例に記載された発明の認定は、必ずしも実施例の構成や方法に限定されない。

2-2        「雰囲気を特定しないこと」は、「非酸化性でも酸化性でもよい」と明記しているのと同じである。

2-3        本件発明と従来技術の、1-2-1数値範囲が、いずれも周知慣用の数値範囲を含む以上、実質的な相異点とはなり得ず、また本件発明の各所定値は、従来技術から当業者が容易に想到できる。

2-4        窒素濃度について、最適上限数値を選定することは、当業者が困難なくなし得る(当業者であれば、当然試みる)。

2-5        従って、本件特許の出願時点において、「上限なく、できる限り多くの窒素を添加すること」が技術常識であったとはいえず、従って、本件請求項1が上限数値を設定したことをもって、本件発明の進歩性を基礎づけることはできない。

2-6        本件明細書に記載された「製品として優れたウエハ特性を示すものを提供すること」であり、このような効果は、従来技術から容易に予測し得る。

3.        SANARI PATENT所見

3-1  特許審査基準の進歩性に関する記述は、「論理づけ」について、かなり詳述しているが、知財高裁の「判断」には、「容易に想到できる」などの結論的記述が多い。

3-2  上記2-4の記述は、実質的に「審査基準における動機づけ」に該当するが、ここには、経済産業省の審査基準検討における「動機づけ」について要約する。

3-2-1「動機づけ」の有無は、容易想到性認定の重要な要素であるが、経済産業省の検討状況は、4月時点では、特許庁の見方を引用して次のように報告されている(SANARI PATENT 注:原文に若干不備があると考えるので、補足ないし補正した)

3-2-1-1 日米欧の制度と運用について

複数の従来技術の組合せについて、その進歩性を否定するためには、当業者がそれらを組合せようとする「動機づけ」が存在することを示めす必要がある、という点で、日米欧はおおむね共通するが、次の点に留意すべきである。

3-2-1-2 わが国において「動機づけ」は、課題の共通性、作用、機能の共通性、技術分野の関連性など、幅広い観点のいずれかに存在すればよい(SANARI PATENT 注:「動機づけ」の存在が認められるという意味)。また、「動機づけ」となるものが当業者の技術常識である場合には、必ずしも先行文献に記載されていなくてもよい。

3-2-1-3 欧州特許庁において「動機づけ」は、課題をどのように解決するかという観点から検討する。当業者が従来技術の課題を認識し、それ(SANARI PATENT 注:「新たな課題」と解すべきである)を解決するために、他の従来技術を組合せるといえなければ、「動機づけ」は認められない。

3-2-1-4 米国では、「複数の従来技術を組合せるためには、教示、示唆、または「動機づけ」が先行文献に記載されていなければならない」というCAFC判決に基づいて判断されている(SANARI PATENT 注:米国では「グラハムテスト」と称している)。この判断手法の適否については、現在、連邦最高裁にて審理中である(SANARI PATENT 注:審理結果については、May26記事ご参照)

2007年6月 5日 (火)

Number of Patent Applications Decrease 特許出願件数4.3%減

How About the Quality of Patent Application ? 出願件数競争への反省(技術情報・ノウハウの流失、特許権取得コスト等)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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1. 特許出願件数が2006年は40万8674件で、2005年(427078件)に対して4.3%の減少を示したことの評価は、減少の要因いかんによる。

  特許庁は予ねてより、出願件数至上主義から出願選択主義への移行を強調してきた。その理由は次のように要約できる。

1-1  内閣知財戦略本部も予てより、「特許出願の取下・放棄制度の利用」を促すとして、「企業に対し、審決請求したがその後権利化の必要性が低下したものについて出願取下・放棄制度の利用を促す」と計画し、出願の選択を間接的に慫慂してきた。

1-2  また、同本部は、「特許出願による技術流出を防止するための環境を整備する」として、「先使用権制度が有効に活用されることにより、企業が本来秘匿すべきノウハウまで防衛的に特許出願する必要がなくなるよう、先使用権が認められる要件・範囲を明確化する」ことなどを計画してきた。

1-3  企業風土としても、わが国では特許の出願件数を競争する行動様式が定着してきた。反面、出願後の公開によりライバルに企業戦略を知得される結果を伴った(SANARI PATENT 注:内外競争企業の技術水準向上に裨益することとなった)

1-4  一方、特許権販売業も日米双方に発達し、特許権の譲渡代金とライセンス料の利益を大にする企業も増加し、米国では「特許トロ―ル」としてその弊害が忌避される局面も見られるが、わが国では、中小・ベンチャ-企業が開発資金獲得のため、特許権売却を行うという、価値ある業務も見受けられ、出願数の増減の要因性と評価は、さらに分析を要する。

1-5  イノベ-ションが社会経済の拡大と革新に直結することが求められ、特許出願についても、有用性への直結が選択基準として作用する。

1-6 M&Aによる知財統合や包括クロスライセンス契約による大企業連携も、特許出願の合理化に寄与すると考えられる。

2.他国との比較

2-1 わが国の2006年統計が集計早々で、他国との比較は2005年についてとなるが、米国39万0733件、中国17万3327件、韓国12万0921件、欧州特許庁12万8679件に対して、わが国の42万7078件は、GNP規模や人口規模から考えても過多の観がある。経済効果から考察しても、効率性に疑問がもたれる。

2-2 一方、イタリ―のシズベル社(特許管理受託会社)のような特許権取引業者の高収益が話題になっているが、特許信託の制度が諸国に普及し、世界特許構想の逐次進展と相俟って、知財専門家の新たな活動が、出願件数競争と別個に展開する可能性が大きいと考えられる。

3.特許出願数以外のわが国件数

  2006年の実用新案出願は1万0965件(対前年3.7%減)、意匠出願

 3万6724件(6.4%減)、商標出願13万5777件(増減なし)、特許登録14万1399件(15%増)、新実用新案登録1万0591件(0.2%増)、意匠登録2万9689件(9%減)、商標登録10万3435件(9.5%増)と集計されている。

4.SANARI PATENT所見

  経済産業省の「知財戦略事例集」(2007-4)は、「漫然と特許出願するのではなく、特許制度の利用目的を十分に認識し、それと合致した発明のみを『厳選』して特許出願することが、戦略的な発明管理産業重要であり、また求められる企業行動である」と強調している。諸般の施策もこの方針に従うものと解する。

2007年6月 4日 (月)

Lawyer in Cabinet IP Strategy Headquarters  三尾 美枝子弁護士(内閣知財戦略本部員)が知財推進計画07の人材計画について意見と提案

Web-Search System for IP Lawyers 弁護士の情報開示をウエブ検索システムの新たな構築により充実

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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1.        知財推進計画07における弁護士対策

  知財の国際関係がグロ-バルに進展し、また、知財と他の社会経済価値との調整課題が広汎化することから、知財政策において弁護士対策は益々重要性を増している。

  従って、内閣知財戦略本部の知財推進計画07(2007-5-31)は、「弁護士の大幅な増員や資質の向上を図る」として、次の計画を掲げた。

1-1  法曹人口の大幅な増加が図られている中で、2007年度も引き続き、知財に強い弁護士を増加させる。また、知財法を含む選択科目別の司法試験合格者を調査するなど、知財に強い法曹人材の養成が適切に行われているかを検証する(SANARI PATENT 注:知財関係の広汎な訴訟事件について、知財高裁・地裁の事件が著増しているのに拘わらず、裁判官と弁護士の活動は緻密かつ活発であり、今更このような「検証をする」意義は疑問である。弁護士総数の増加が着実に行われることが重要である)

1-2  2007年度も引き続き、知財に関する研修への参加や講義の受講等、弁護士の自己研鑽を通じて、知財に強い弁護士が増加することを期待する(SANARI PATENT 注:弁護士法に規定する自己研鑽義務が実行されて知財法務への活発な関与が現に実現している。弁護士の弁理士登録の促進など、米国のパテントアト―ニ―と同一資格の知財専門職の増加を計画すべきである)

1-3  また、2007年度も引き続き、弁護士が企業内で知財実務に直接携わることができるよう、意識の改革や環境の整備を促す(SANARI PATENT 注:米国では法廷弁護士よりも企業内弁護士が多い。経団連等の意見を徴すべきである。「環境の整備」の具体的説明がない)

2.        三尾 美枝子弁護士(内閣知財戦略本部員)の意見(2007-5-31)

2-1  昨年度まで、内閣知財戦略本部員として、弁護士が一人も委嘱されてこなかったことは、重大な欠陥であった。本年度、本部員の更新に伴い、三尾 美枝子弁護士が本部員に委嘱されたが、知財制度の改革にについての発言は、これからである。

2-2  知財推進計画07の策定について、三尾 美枝子弁護士は次のように述べている(2007-5-31 内閣知財戦略本部)(要約)

2-2-1 従来、弁護士には広告自体が禁止されていたこともあり、開示に消極的な意見も多く、広告宣伝が解禁された現在においても、「依頼者漁り」と見られて信用が傷つく等々の理由で、開示すべきでないとの意見も多く聞かれた。

2-2-2 一方、一部の弁護士は、業務拡大のため積極的に開示しているが、開示基準の精査も行われないまま、個々の弁護士の扱いに任されているという状況にあった。

2-2-3 しかし、中小・ベンチャ-企業や、地方の企業等にとっては、適正な開示基準で弁護士の取扱分野等の情報が開示されることは、非常に有用である。

2-2-4 日弁連と各弁護士会が協力して、弁護士情報のウエブ検索システムを整備するに際して、大分類として知財権の項を設け、小分類を法域に分けて、サ―チできるようにしたい。

3.        SANARI PATENT所見

  上記2-2-4については、弁護士会のホ―ムペ-ジへのアクセスが、中小・ベンチャ-企業にとって簡便であるよう、検索ワ―ドの選定と、その周知が必要である。

2007年6月 3日 (日)

IP Strategies by Capital Shift 資本移動による知財戦略、その総合的展開を東芝によるウェスティングハウス社グル-プ買収に見る(対比・日立とGE)

Mergers and Acquisition as Sample of Capital Shift Strategies 東芝・西山 厚聡社長の「投資・事業提携戦略」 WiMAXにも布石

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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1.        経済産業省の知財M&A戦略

経済産業省・特許庁の「戦略的知財管理」(副題「技術経営力を高めるために」(2007-4)の内容は、「共同研究・技術導入も一つの戦略」「特許出願かノウハウ秘匿か」「審査請求の餞別」など276ペ-ジを費やしているが、知財権・ノウハウ・人材を包括的に取得するM&A等の資本移動による知財戦略については、「ライセンス・M&A」と題する小文節に2ペ-ジ余を割いているに過ぎない。「自社開発に限定せず、ライセンスやM&A(SANARI PATENT 注:経済産業省原文は「買収」と括弧書している)などを検討することも重要である」と述べ、その効能を、「知財部門が特許技術の多面的な取得も視野に入れて積極的に活動することにより、研究開発の選択と集中の効果的な実施を行うことができ、収益力の高い事業体制を構築できる」としているが、M&Aを含む「資本移動による知財戦略」は、国際的にもっとスケ―ルの大きい変革をもたらすものとして、記述・例示されるべきであると考える。

2.        資本移動による知財戦略の一環としてのM&A

  M&A(合併と買収)は、商法や独禁法の改正と、企業の制圧・生残闘争的な環境のもとで、多くの事例が現出しているが、知財戦略の立場から見れば、知財権・ノウハウ・人材・ブランド・商圏を包括的に取得する経営戦略の一環であり、国家政策上も、世界市場占有計画上も、大局的考察の対象とすべきである。

3.        東芝によるウェスティングハウス社グル-プ買収の事例

3-1 東芝の西山社長の演述(SANARI PATENTMay31記事)においては、ウェスティングハウス社グル-プの買収が2006-10-16に完了し、沸騰水型軽水炉と加圧水型軽水炉の両炉型を推進する、原子力分野の世界的リ―ディングカンパニ―たる知財基盤を具備したことが報告された(SANARI PATENT 注:世界総発電力量の約2割が原子力発電により、この比率は、フランス約8割、韓国約4割等の高率国に比べて、わが国は約3割)

3-2 東芝・西山社長は、「米国・アジアの原子炉新規建設需要が増大し、COL申請(Combined Construction and Operation License)が著増していること」「燃料/保守・サ-ビス事業の安定成長を見込まれること」を強調した。

3-3 ウェスティングハウス社は、加圧水型軽水炉(SANARI PATENT 注:発生した熱エネルギ―を交換する冷却水に高圧を加えて沸騰を抑制し、高温高圧水の出願次の熱交換発生蒸気がタ―ビンに送られる)の建設・保全・燃料製造の知財に長じ、東芝は、沸騰水型軽水炉の自社知財と、ウェスティングハウス社の知財を併有する。

4.        東芝の「資本移動および業務提携による知財戦略」の事例(SANARI PATENTが西山東芝社長演述に基づき要約)(知財再編を含む)

4-1          カナダ・ノ―テルシャと、WiMAX(次世代ワイヤレス・ブロ―ドバンド通信)(SANARI PATENT 注:無線による50Mbpsないし1Gbpsの超帯域通信。総務省が示した周波数割当案をめぐって、NTTドコモなどの参入企業の単複を含めて帰趨が注目の的である)基地局の共同開発を開始した(2006~07)

4-2          中国における電力開閉設備用真空バルブの製造販売会社を設立した(2006~)

4-3          火力発電サ-ビス充実のため、米国レジェンコ社を買収した(2006~)

4-4          液晶ディスプレイ増産のため、東芝松下ディスプレイテクノロジ―に投資した。

4-5          東芝エンタテイメント株式を博報堂DYメディアパ―トナ―ズに譲渡した(2006~)

4-6          放送用映画製作・編集システムについて池上通信機と協業開始(2006~)(SANARI PATENT 注:一方、松下東芝映像 ディスプレイの東芝所有株式を、松下電器産業に売却譲渡)

5.        SANARI PATENT所見

日米の原子力発電展開の速度は両国の政策の変動に依存するが、進展の趨勢には疑問がない。従って、東芝のウェスティングハウス社グル-プ買収が極めて注目されるが、日立製作所とゼネラル・エレクトリックは、それぞれの原子力発電関係事業を分離して、日米にそれぞれ新会社を設立し、相互に資本参加する業務連携方式を採る。これも資本移動による知財戦略の一形態であると考える。

2007年6月 2日 (土)

Patent for Wireless Car Control] 特許明細書訂正の認否、容易想到性の認定

IP High Court Cancels JPO Decision: カルソニックカンセイ対デンソ―知財高裁判決(第3回)(SANARI PATENT関連記事Apr21

 

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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  本件知財高裁判決における当事者を、企業系列によって「トヨタ系」「ニッサン系」と呼び換え、経緯を要約すると、「ワイヤレス車両制御システム」について、次のように要約できる。

 (1)「ニッサン系」が特許庁に対し、「トヨタ系」の本件特許権について無効審判を求め、

 (2) 特許庁は、「無効とすることはできない」と審決し、

 (3)「ニッサン系」が知財高裁に対し、この審決の取消を請求し、

 (4)知財高裁は、この取消請求を認容した。

 

  知財高裁は、デンソ―および特許庁が、本件訂正を容認したことは、誤りでないと判断すると共に、デンソ―の本件特許発明が、「刊行物1、4、5記載の発明から容易に想到し得たものとはいえない」とした審決の判断は、誤りであると判示している。

6(承前04-21記事)本件訂正の認否に関する知財高裁の判断(要旨)

6-1  本件特許発明請求項1の「送信装置からの変調制御信号の受信回路、その復調・出力回路、外部信号に応じ両回路に給電開始・停止する電源制御回路を、受信装置に設ける」という受信装置の構成は、本件訂正の前後で何ら変更されない。

6-2  訂正前の請求項1は、受信装置にCPUが設けられている点を特定したものでない。

6-3  「受信装置にはCPUが設けられていない」との訂正事項は、受信・復調・電源制御各回路からなる受信装置の構成をさらに限定するもので、実質上、特許請求の範囲を変更しない(SANARI PATENT 注:従って、訂正は容認される)

7.相違点の認定に関する知財高裁の判断(要旨)(SANARI PATENT 注:想到容易な相違点のみであること、あるいは、相違点が実質的に同一と認められることは、本件特許発明の特許性を否定し、審決の判断を誤りとすることとなる)

7-1 刊行物5の記載によれば、「キ―コ―ド受信器KCRは、その内部にCPUが設けられていないものであって、キ―コ―ド発信器KCGから発せられる電波信号の受信・復調を行い、シングルチップマイクロコンピュ-タ-CPUは、CPUが設けられていないキ―コ―ド受信器KCRから受け取った検波信号の識別結果や操作スゥイッチの操作信号に応じて、ドアロック/アンロックのための駆動信号を出力し、車載機器であるドアロック装置の駆動制御を行うのであるが、このキ―コ―ド受信器KCRは、本件特許発明の受信装置における受信回路および復調回路に相当する機能を有し、シングルチップマイクロコンピュ-タ-CPUが、本件特許発明の制御装置の構成要素である信号識別回路に相当する機能を奏するものと認められる。

7-2 刊行物5記載の発明において、受信装置に相当するキ―コ―ド受信器KCRと、制御装置の構成要素に相当するシングルチップマイクロコンピュ-タ-CPUとを互いに離れた位置に設けることは、適宜に採用することができる設計的事項であり、それを排除する要因は見あたらない。

7-3 そして、CPUを設けていない受信装置が、それを設けている受信装置と比べて、小型化し、受信装置設置可能な対象箇所が拡大されることは、自明な効果として当然想定され、インパネがが受信装置設置対象箇所となり得ることも容易に認識できる。

7-4 デンソ―は、CPUの配置場所を考慮して、「受信装置にCPUが設けられていない」ことにすることには、大きな技術的意義があり、本件特許発明は、車両内に受信装置と制御装置とをどのように配置し、さらにCPUをどこに配置しどのような機能を果たさせるかにについて総合的・有機的に結びつけたものであって、単一のCPUをどこに配置するかは、単なる設計事項にとどまらないと主張する。しかし、受信装置と制御装置とを互いに離れた位置に設けることは、出願時において周知である。

7-5 従って、本件特許発明が、刊行物1、4、5記載発明から、「容易に想到し得たものとはいえない」とした審決の判断は誤りであり、この誤りは審決の結果に影響を及ぼすことが明らかである。

8.SANARI PATENT所見

  電子機器の分野で、包括クロスライセンス契約が用いられ、企業間特許問題を防止する機能を併有していることは、現在掲載中のSANARI PATENTの「キャノン職務発明対価事件」 や、判例としての「日立製作所職務発明対価事件」に明示されているが、業界内の市場力・特許力の均衡等の事業から、特許権がクロスライセンス的になるか、競争的になるか、またそのいずれが戦略に適するかは、別途考察すべきである。

2007年6月 1日 (金)

EISAI Reports on IP Management ライセンス導出・導入など知財報告顕著なエ―ザイ資料

Pharmaceutical Companies face Multi IP Problems 合併企業と独行企業の選択

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

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1. エ―ザイは、本月22日の定時株主総会資料として117ペ-ジに及ぶ参考書類を発信したが、その内容は、事業報告書と知財報告書を含み、特にライセンスインとライセンスアウトの双方について、相手会社別に対象技術を明示したことは、わが国知財戦略の方向性に沿って、先達的な在り方を具体的に示したものと考える。

2.すなわち、内閣知財戦略本部は、「知的財産に関する情報開示による企業価値の向上を促進する」として、「知的財産報告書等の作成企業が100社を超えることを目指し、その継続的発行、多様なメディア・電子媒体の活用、投資家向け説明会開催など、効果的な開示を促進する」と計画してきた。

3.知的財産報告書の意義は、業種によって異なる面もあるが、特に製薬業界は、アステラス(山之内+藤沢)、第一三共(第一+三共)、大日本住友(大日本+住友)、田辺三菱(田辺+三菱ウェルファ―マ)など、大手企業間の合併が相次いでいるから、合併の知的財産戦略面の効果,および、合併後の知財戦略展開(例えば、アステラスの「米国フィブロジェンからの貧血治療薬ライセンス導入」)について、判断材料が一層求められる。

  さらに、新薬開発の基盤である安全性・薬効の動物実験(発癌試験、代謝試験、急性・慢性毒性試験等)についても、実験動物数の確保が容易な中国への依存(SANARI PATENT 注:GLP適合を前提とする)や、ジェネリック販売体制の改革、国際戦略製品の特許切れなどの変動要因を孕んでいる製薬業界について、知財情報の開示の在り方は、企業情報開示の核心をなすと考えられる。

4.エ―ザイは、今次総会資料において技術導入契約については、武田薬品(製剤特許に関するライセンス・契約期間は特許の有効期間)、ドイツ・アボット(ヒトモノクロ―ナル抗体注射剤・肥満症治療剤開発)、富山化学(リュウマチ治療剤開発)、イタリア・ユ―ランド(硝酸イソソルビド製剤)、スイス・ノバルティス(抗てんかん剤開発)、大日本住友製薬(糖尿病合併症治療剤開発)について示している。

  技術導出については、米国フザイザ―(アルツハイマ―型認知症治療剤包括提携)、ベルギ―・ヤンセン(プロトンポンプ阻害型抗潰瘍剤包括提携)について示している。

 

5.また知財戦略の一環としてエ―ザイは、「買収契約」の項に、「エ―ザイの連結子会社・米州統括会社EISAI Corporation of North Americaは、バイオ分野への本格参入と 癌領域の抗体治療薬等創出のため、米国モルフォテックと買収契約を締結し、本年416日に発効したこと」「全株式取得によること」などを述べている(SANARI PATENT 注:M&Aによる知財戦略と考える)

6.さらにエ―ザイは、「合弁契約・販売契約等」について、英国・ロンドン大学(研究所の建設・運営に関する連携)、イタリア・フラッコ(造影剤製造)、アイルランド・エラン(抗てんかん剤)、日東電工(アルツハイマ―型認知症治療剤)、米国ライガンド(抗癌剤)、ノボノルディクスクファ―マ(低血圧治療剤の販売)、杏林(片頭痛治療剤の販売)、サノフィアベンティス・味の素(骨粗鬆症治療剤の販売)、米国ファイザ―(血液凝固防止剤の販売)などの内容を述べている。

7.総評としてエ―ザイは、野村證券・東洋経済によれば、「自社比率が高く、神経系・消化器系に強く、抗潰瘍薬を世界展開し、海外比率(57%)が高い(57%)。アルツハイマ―薬も高度病態に適応を取得し、薬価引下げなく、増益」。

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