Questions on Mechanical Strength: ヤング率と曲げ強度に一定の相関関係があるか
Examination of Patentability: 京セラ・ニコンの審決取消請求事件知財高裁判決(第3回):審決の判断の不相当点も指摘
弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT)
(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)
審査・審決・知財高裁判決が、共に特許性を否定した事例であるが、京セラ・ニコンの主張に対する各段階の対応の微差が注目点である。
5.(承前Apr.21記事)知財高裁の判断
5-1 京セラ・ニコンの主張に対する知財高裁の評価:
「京セラ・ニコンは、相違点に係る容易想到性について、審決に、判断の誤りがあると主張すると共に、本件補正発明と刊行物の一致点・相違点の認定の誤りがあると主張する。
しかし、本件の実質的争点は容易想到性であり、他の主張は、その主張自体からみても、失当として排斥されるべきものであるか、または審決に違法を來たさないことが明らかな主張である。そこで、先ず容易想到性について判断し、他の主張については補足的に判断する。」
5-2 相違点に係る容易想到性の判断の正誤について:
5-2-1 「京セラ・ニコンは、審決の次の判断は誤りであると主張する。
5-2-1-1 コ―ジェライトが緻密になり高強度化されれば、半導体露光装置における支持部材として有用であることは、当業者にとって自明であり、コ―ジェライトを主体とする低熱膨張セラミックスに、希土類元素の定量を添加することによって、緻密質な高強度の低熱膨張性のコ―ジェライトセラミックスを得られることは周知である。
5-2-2-2 本件補正発明においては、ヤング率に数値限定を加えているが、比較例の唯一のヤング率が、実施例の下限値の近傍値とは認められず、数値限定の臨界的意義を見出すことができない。(SANARI PATENT 注:着眼点が何かによって、臨界的意義が異なるのではないかという疑問が残る)。
5-2-2 「上記5-2-1の京セラ・ニコンの主張に対する特許庁の否定は正しく、その認定に基づく審決が、容易想到性を判断したことに誤りはない。」
5-3 一致点認定の誤りについて
5-3-1 京セラ・ニコンは、審決が、「機械的強度に優れる点で、本件補正発明と刊行物発明が一致する」と認定したことは、「本件補正発明におけるヤング率の設定と、機械的強度に優れることとが同義でないから、誤りであると主張する。
5-3-2 確かに、ヤング率と曲げ強度は、測定方法が異なる別の指標であり、両者に一定の相関関係各があるとまでは認められないこと、また、本件補正発明の請求項に、「機械的強度に優れた」との記載がないこと等を考慮すると、審決が両発明について「機械的強度に優れた」ことを一致点として掲げていることは相当でない。
5-3-3 知財高裁→しかし、審決は、支持部材の成分の相違点を認定した上で、同相違点についての容易想到性を判断しているのであるから、審決が「機械的強度に優れた」ことを一致点として掲げていることは、審決の判断の違法性の有無に影響を与えない。
5-4 相違点の看過について
5-4-1 京セラ・ニコンは、次のように主張する。
5-4-1-1 本件補正発明においては、支持部材が、コ―ジェライトを主体とするコ―ジェライトセラミックスからなるのに対して、刊行物発明では、支持部材が、サイアロン結晶粒子(SANARI PATENT 注:例えば、窒化珪素を主成分とし、アルミナと窒化アルミニウムを添加焼結して得る)からなる点で実質的に相違する。
5-4-1-2 本件補正発明の課題の一つが、高速移動に基づく振動に由来する位置決め精度の低下を有効に回避することであるのに対して、刊行物発明は、その支持部材が、コ―ジェライトを主体としない複合セラミックス焼結体を提供することにある点で相違する。
5-4-2 知財高裁→5-4-1-1については、審決も、相違点として認定した上で、相違点の判断をしているから、結局、審決に、5-4-1-1の相違点看過の誤りはない。
また、5-4-1-2については、請求項に記載された事項に基づくものでないから、京セラ・ニコンの主張は、主張自体が失当である。
6.SANARI PATENT所見
知財高裁の判断のように「容易想到性」が明らかであるならば、本件補正発明によると同様の製品が何故他社から発売されなかったのかなど、容易想到性の判断自体の緻密化を要するのではないか。
コ―ジェライト、複合セラミックス焼結体、サイアロン結晶粒子、窒化アルミニウム、京セラ、ニコン
Questions on Mechanical Strength: ヤング率と曲げ強度に一定の相関関係があるか
Examination of Patentability: 京セラ・ニコンの審決取消請求事件知財高裁判決(第3回):審決の判断の不相当点も指摘
弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT)
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審査・審決・知財高裁判決が、共に特許性を否定した事例であるが、京セラ・ニコンの主張に対する各段階の対応の微差が注目点である。
5.(承前Apr.21記事)知財高裁の判断
5-1 京セラ・ニコンの主張に対する知財高裁の評価:
「京セラ・ニコンは、相違点に係る容易想到性について、審決に、判断の誤りがあると主張すると共に、本件補正発明と刊行物の一致点・相違点の認定の誤りがあると主張する。
しかし、本件の実質的争点は容易想到性であり、他の主張は、その主張自体からみても、失当として排斥されるべきものであるか、または審決に違法を來たさないことが明らかな主張である。そこで、先ず容易想到性について判断し、他の主張については補足的に判断する。」
5-2 相違点に係る容易想到性の判断の正誤について:
5-2-1 「京セラ・ニコンは、審決の次の判断は誤りであると主張する。
5-2-1-1 コ―ジェライトが緻密になり高強度化されれば、半導体露光装置における支持部材として有用であることは、当業者にとって自明であり、コ―ジェライトを主体とする低熱膨張セラミックスに、希土類元素の定量を添加することによって、緻密質な高強度の低熱膨張性のコ―ジェライトセラミックスを得られることは周知である。
5-2-2-2 本件補正発明においては、ヤング率に数値限定を加えているが、比較例の唯一のヤング率が、実施例の下限値の近傍値とは認められず、数値限定の臨界的意義を見出すことができない。(SANARI PATENT 注:着眼点が何かによって、臨界的意義が異なるのではないかという疑問が残る)。
5-2-2 「上記5-2-1の京セラ・ニコンの主張に対する特許庁の否定は正しく、その認定に基づく審決が、容易想到性を判断したことに誤りはない。」
5-3 一致点認定の誤りについて
5-3-1 京セラ・ニコンは、審決が、「機械的強度に優れる点で、本件補正発明と刊行物発明が一致する」と認定したことは、「本件補正発明におけるヤング率の設定と、機械的強度に優れることとが同義でないから、誤りであると主張する。
5-3-2 確かに、ヤング率と曲げ強度は、測定方法が異なる別の指標であり、両者に一定の相関関係各があるとまでは認められないこと、また、本件補正発明の請求項に、「機械的強度に優れた」との記載がないこと等を考慮すると、審決が両発明について「機械的強度に優れた」ことを一致点として掲げていることは相当でない。
5-3-3 知財高裁→しかし、審決は、支持部材の成分の相違点を認定した上で、同相違点についての容易想到性を判断しているのであるから、審決が「機械的強度に優れた」ことを一致点として掲げていることは、審決の判断の違法性の有無に影響を与えない。
5-4 相違点の看過について
5-4-1 京セラ・ニコンは、次のように主張する。
5-4-1-1 本件補正発明においては、支持部材が、コ―ジェライトを主体とするコ―ジェライトセラミックスからなるのに対して、刊行物発明では、支持部材が、サイアロン結晶粒子(SANARI PATENT 注:例えば、窒化珪素を主成分とし、アルミナと窒化アルミニウムを添加焼結して得る)からなる点で実質的に相違する。
5-4-1-2 本件補正発明の課題の一つが、高速移動に基づく振動に由来する位置決め精度の低下を有効に回避することであるのに対して、刊行物発明は、その支持部材が、コ―ジェライトを主体としない複合セラミックス焼結体を提供することにある点で相違する。
5-4-2 知財高裁→5-4-1-1については、審決も、相違点として認定した上で、相違点の判断をしているから、結局、審決に、5-4-1-1の相違点看過の誤りはない。
また、5-4-1-2については、請求項に記載された事項に基づくものでないから、京セラ・ニコンの主張は、主張自体が失当である。
6.SANARI PATENT所見
知財高裁の判断のように「容易想到性」が明らかであるならば、本件補正発明によると同様の製品が何故他社から発売されなかったのかなど、容易想到性の判断自体の緻密化を要するのではないか。
コ―ジェライト、複合セラミックス焼結体、サイアロン結晶粒子、窒化アルミニウム、京セラ、ニコン
Questions on Mechanical Strength: ヤング率と曲げ強度に一定の相関関係があるか
Examination of Patentability: 京セラ・ニコンの審決取消請求事件知財高裁判決(第3回):審決の判断の不相当点も指摘
弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT)
(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)
審査・審決・知財高裁判決が、共に特許性を否定した事例であるが、京セラ・ニコンの主張に対する各段階の対応の微差が注目点である。
5.(承前Apr.21記事)知財高裁の判断
5-1 京セラ・ニコンの主張に対する知財高裁の評価:
「京セラ・ニコンは、相違点に係る容易想到性について、審決に、判断の誤りがあると主張すると共に、本件補正発明と刊行物の一致点・相違点の認定の誤りがあると主張する。
しかし、本件の実質的争点は容易想到性であり、他の主張は、その主張自体からみても、失当として排斥されるべきものであるか、または審決に違法を來たさないことが明らかな主張である。そこで、先ず容易想到性について判断し、他の主張については補足的に判断する。」
5-2 相違点に係る容易想到性の判断の正誤について:
5-2-1 「京セラ・ニコンは、審決の次の判断は誤りであると主張する。
5-2-1-1 コ―ジェライトが緻密になり高強度化されれば、半導体露光装置における支持部材として有用であることは、当業者にとって自明であり、コ―ジェライトを主体とする低熱膨張セラミックスに、希土類元素の定量を添加することによって、緻密質な高強度の低熱膨張性のコ―ジェライトセラミックスを得られることは周知である。
5-2-2-2 本件補正発明においては、ヤング率に数値限定を加えているが、比較例の唯一のヤング率が、実施例の下限値の近傍値とは認められず、数値限定の臨界的意義を見出すことができない。(SANARI PATENT 注:着眼点が何かによって、臨界的意義が異なるのではないかという疑問が残る)。
5-2-2 「上記5-2-1の京セラ・ニコンの主張に対する特許庁の否定は正しく、その認定に基づく審決が、容易想到性を判断したことに誤りはない。」
5-3 一致点認定の誤りについて
5-3-1 京セラ・ニコンは、審決が、「機械的強度に優れる点で、本件補正発明と刊行物発明が一致する」と認定したことは、「本件補正発明におけるヤング率の設定と、機械的強度に優れることとが同義でないから、誤りであると主張する。
5-3-2 確かに、ヤング率と曲げ強度は、測定方法が異なる別の指標であり、両者に一定の相関関係各があるとまでは認められないこと、また、本件補正発明の請求項に、「機械的強度に優れた」との記載がないこと等を考慮すると、審決が両発明について「機械的強度に優れた」ことを一致点として掲げていることは相当でない。
5-3-3 知財高裁→しかし、審決は、支持部材の成分の相違点を認定した上で、同相違点についての容易想到性を判断しているのであるから、審決が「機械的強度に優れた」ことを一致点として掲げていることは、審決の判断の違法性の有無に影響を与えない。
5-4 相違点の看過について
5-4-1 京セラ・ニコンは、次のように主張する。
5-4-1-1 本件補正発明においては、支持部材が、コ―ジェライトを主体とするコ―ジェライトセラミックスからなるのに対して、刊行物発明では、支持部材が、サイアロン結晶粒子(SANARI PATENT 注:例えば、窒化珪素を主成分とし、アルミナと窒化アルミニウムを添加焼結して得る)からなる点で実質的に相違する。
5-4-1-2 本件補正発明の課題の一つが、高速移動に基づく振動に由来する位置決め精度の低下を有効に回避することであるのに対して、刊行物発明は、その支持部材が、コ―ジェライトを主体としない複合セラミックス焼結体を提供することにある点で相違する。
5-4-2 知財高裁→5-4-1-1については、審決も、相違点として認定した上で、相違点の判断をしているから、結局、審決に、5-4-1-1の相違点看過の誤りはない。
また、5-4-1-2については、請求項に記載された事項に基づくものでないから、京セラ・ニコンの主張は、主張自体が失当である。
6.SANARI PATENT所見
知財高裁の判断のように「容易想到性」が明らかであるならば、本件補正発明によると同様の製品が何故他社から発売されなかったのかなど、容易想到性の判断自体の緻密化を要するのではないか。


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