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2007年5月 9日 (水)

Patentability on Non-Obviousness: Supreme Court of the US: 特許付与基準の変更可能性を含むとされる米国最高裁2007-4-30・KSR判決(第4回)

Patent on Electronic Acceleration Pedal: アクセル特許要件としての「自明性」認否論争

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(この記事に対する修正ご要求は、patent@sanari.nameにメ-ル下さい)

 始めに:

  わが国では、大型連休明けからやっと、米国最高裁「電子センサ―による位置調節可能自動車ペダル(アクセル)」特許の無効訴訟判決」(4月30日)について、論評が始まったが、米国マスコミの直訳的な紹介も多く、理解を妨げる翻訳も見受けられる。

 例えば、「今回の判断で、裁判官たちは、現在の基準を緩和するように求めた」、「下級裁判所による過去の判決の修正を求める」などの表現(ないし翻訳)は、「緩和」や「下級」の意義が不明である。「自明」とはやや違う着想にも特許性を認めることを「緩和」というのか、「自明」として拒絶査定を容易にすることを「緩和」というのか。また、本件の「下級裁判所」には、米国の地方裁判所と巡回高等裁判所を含み、前者が「無効」とし、後者が「有効」と判決し、最高裁が「無効」指向の判決をしたケ―スであるから、どちらの方向への修正を求めるのか、必ずしも明らかでない。米国内でも、立場の相異による賛否の相違と濃度差が見られるようである。

 わが国の内閣知財戦略本部は、ひたすら、特許庁内と各審級裁判における特許権の法的安定性を志向し、判断基準の精確と安定を計画しているが、米国において、それが大いに揺れているのが、今次判決である。

3.(承前May5記事)米国特許商標庁の特許審査基準における「自明性」:

  米国特許商標庁による特許付与は、MPEP(Manual for Patent Examining Practice)に基づくから、米国特許商標庁のMPEPに対する理解と、米国連邦地方裁判所のそれとは異なったが、巡回高等裁判所は地方裁判所のそれを認めなかった。

  そこで先ず、MPEPの「新規性」「非自明性」に関する記述を見る((抜粋・要約)

3-1 MPEP 2141.02 「従来技術と請求項との相違点」(Differences between Prior Art and Claimed Invention

3-1-1 請求項を「その全体として」考察しなければならない(The Claimed Invention as a Whole must be Considered)

  米国特許法第103条に基づき従来技術と請求項との相違点を認定する場合の問題点は、相違点それ自体(differences themselves)が自明であったかではなく、請求項全体(claimed invention as a whole)と従来技術との相違が自明であったかということにある。

  着想が従来技術による理解と期待に反する場合、この着想を有用化することは、当業者にとって自明でない(Because that insight was contrary to the understanding and expectations of the art, the structure effectuating it would not have been obvious to those skilled in the art)

3-1-2      複数工程による製品について、始めの複数工程が従来技術であっても、それらからの自明性が限定されている場合には、これらを組合せて次の新しい工程を着想することは、当業者にとって、その発明がなされた時点においては自明でない(Due to the admitted unobviousness of the first steps of the first steps of the claimed combination of steps, the subject matter as a whole would not have been obvious to one of ordinary skill in the art at the time the invention was made)

3-1-3      発明が全体として自明であったかどうかを認定するためには、先ず発明全体を詳細・明確に記述しなければならない。そのためには、請求項に文言をもって記述された内容のみでなく、主題とその詳細な説明に本来的に含まれている着想の固有の特性に着目しなければならない(In determining whether the invention as a whole would have been obvious, we must first delineate the invention as a whole. In delineating the invention as a whole, we look not only to the subject matter which is literally recited in the claim in question, but also to those properties of the subject matter which are inherent in the subject matter and disclosed in the specification)

4.SANARI PATENT所見

   上記の極めて少ない抜粋を見ても、「主観的」という言葉を避けて「定性的」と呼ぶにしても、原告・被告・第三者・審査官・審判官・地裁・高裁・最高裁それぞれが、as a wholeinherentについて、ニュアンスの異なる概念をもつ可能性が容易に想定される。今回は問題にしないが、用語の定義自体が知財法では先ず争点的になるという、特殊な法域である。

3-1-4      (以下次回)

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