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2007年2月28日 (水)

キャノン田中信義専務取締役の「国際的知財活用」関係発言、中山信弘東大大学院教授・久保利英明弁護士の関連発言の考察

国際ライセンス活動の促進をめぐる諸問題に関する内閣知財戦略本部・知財サイクル専門調査会における諸発言の考察

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.発言の背景

1-1 企業活動の国際化に伴い、日本の親会社から海外の子会社に多様な知財ライセンス等の契約を締結するケ―スが著増している。これらの場合、従来は必ずしも適切なライセンス対価の評価・契約等がなされていないのではないか、税制が絡んで複雑な問題となっている。税制として現存する移転価格税制は、海外子会社との取引においても、子会社でない一般の対等な相手会社と同等の取引価格によって取引をすることを基本とし、従って、これに反する場合は追徴課税するという制度である。現に、税務当局から数百億円もの更正処分が当該企業に通告され、マスコミの対象ともなっている。

  本年初来、内閣知財戦略本部知財サイクル専門調査会は、次の事務局案を審議してきた。すなわち、

1-1-1        企業グル-プ内におけるライセンス契約締結を促進する。

1-1-2 移転価格税制に基づく適正な知財ライセンスを促進する。

2.キャノン・田中信義専務取締役の発言(要旨)

2-1 国際的な知財ライセンス活動の円滑化には、移転価格税制が関連する。知財関係のライセンス促進は重要な課題であるが、移転価格税制が関連すると非常に複雑な問題となる。すなわち、海外における販売子会社に対してのいわゆる再販売価格の問題、また、海外の生産会社に対して十分に利益を回収していないのではないかという問題である。知財に係る無形固定資産の供与に対してライセンス料を回収していないというのが最大の問題で、国税庁による追徴の問題が多発している。

  対策としては、無形固定資産の評価制度を確立できるか、移転価格税制という別途制度で対処するのか、方策を決定しなければならない。

2-2 キャノンでは、販売子会社に対しては、90年代から、キャノンのグル-プの中でのル―ルを作って対処している。生産子会社に対しては、2002年にグル-プ全体をカバ―するようなル―ルを作り、いわゆる残余利益方式で全て対処し、大きな問題を出していないが、中国等においてはアウト-アウト取引、すなわち、生産子会社がその地域の販売会社に出していくような場合には、かなり高率のロイヤリティを徴収しているものもある。これも、中国政府当局が明確に認めてくれるか、問題が絡む。無形資産評価で明確に何%というような対応にするのが良いのか、難しい問題が存在する。

2-3 そこでキャノンの場合では、グロ-バル製品法務推進委員会を経営会議に直結し、移転価格税制グル-プのほか20余のグル-プを構成・運用している。アウト-アウト取引で、生産会社がその地域の販売会社に直接下ろすような場合に、原価は低いので、問題になる可能性がある。その差分を日本に移す場合にはロイヤリティという考え方になる。

3.中山信弘東大大学院教授の発言(要旨)

   トランスファ―プライシングは極めて困難な問題を含み、到底この場で議論できる問題ではない。知財についても、特許と商標とは異なる問題を含み、ノウハウや営業の指導にも及ぶ必要がある。ライセンス促進という意図の記述には問題がない。

4.久保利英明弁護士の発言(要旨)

   税務当局に事前確認制度があるが、実はあまり良く機能するに至らず、結果的に移転価格税制の問題にも好ましい影響を及ぼしていない、という事務局案の趣旨が伏在しているならば、文面の理解はそれなりにできる。

 

5.SANARI PATENT所見

5-1 わが国企業のモノの輸出から技術の輸出へのシフト、事業のグロ-バル化、海外子会社への特許・商標・ノウハウ等の包括ライセンスなどが同時進行し、税制が絡んで、問題惹起の背景をなしている。「内閣」知財戦略本部の本領が発揮されるべき課題である。

-2 移転価格税制に基づく適正な独立企業間価格についてによる所得計算に統一するという事務局案を、実務上の問題点に即して深耕することが必要である。

4-3 適正な独立企業間価格について、税務当局に事前確認する事前確認制度の活用促進は、国際的知財活用対策として、また当面のマスコミ対策として、必要と考えるが、内閣知財戦略本部において直ちに表面化できる課題ではない。

2007年2月27日 (火)

米国特許審査基準(MPEP)における「新規・有用・知覚可能な現実的成果」

今次知的創造サイクルの推進方策案の考察(その9)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  

本日のこの記事の要旨: わが国の特許法は、発明の定義として「自然法則の利用」を要件とし、米国特許法の発明の定義には「自然法則の利用」という要件を掲げていないため、「米国では新規・有用であれば特許が付与され、ビジネス方法やプログラム特許が認められる範囲が広い」と考える向きもある。しかし、米国特許法は、「特許性ある発明」を「新規・有用なプロセス・機械・製品・組成物・それらの改良の発明・発見」と定め、米国特許商標庁審査基準における「プロセス・機械・製品・組成物」の解釈により、結果的にわが国特許法の解釈に接近している。

13-2-2(承前02-26記事)米国特許審査基準(以下「MPEP」)における特許性

13-2-2-1 コンピュ-タ関係発明の特許性について(MPEP-2106) (抜粋)

    「アイディア・概念」について: The claimed invention as a whole must accomplish a practical application. That is, it must produce a “useful, concrete and tangible result”. The purpose of this requirement is to limit patent protection to inventions that possess a certain level of “real world “value, as opposed to subject matter that represents nothing more than an idea or concept, or is simply a starting point for future investigation or research.

     「現実適用性」について: Apart from the utility requirement, usefulness under the patent eligibility standard requires significant functionality to be present to satisfy the useful result aspect of the practical application requirement.

       Merely claiming nonfunctional descriptive material stored in a computer-readable medium does not make the invention eligible for patenting.

        「単なる有用性」について: The mere fact that the claim may satisfy the utility requirement, does not mean that a useful result is achieved under the practical application requirement. The claimed invention as a whole must produce a useful, concrete “and” tangible result to have a practical application.

        「アルゴリズム」について: Transformation of data, representing discrete dollar amounts, by a machine through a series of mathematical calculations into a final share price, constitutes a practical application of a mathematical algorithm, formula, or calculation, because it produces “a useful, concrete and tangible result”—a final share price momentarily fixed for recording and reporting purposes and even accepted and relied upon by regulatory authorities and in subsequent trades.

        「アイディアの操作」について: A  process consists solely of the manipulation of an abstract idea is not concrete or tangible.   

    Office personnel have the burden to establish a prima facie case that  the claimed invention as a whole is directed to solely an abstract idea or to manipulation of abstract ideas or does not produce a useful result. Only when the claim is devoid of any limitation to a practical application in the technological arts should it be rejected.

      Further, when such a rejection is made, Office personnel must expressly state how the language of the claims has been interpreted to support yhe rejection.

13-2-3        わが国プログラム特許審査基準との対比(以下本稿その10)

2007年2月26日 (月)

「自然法則の利用」についての日米審査基準の対比

今次知的創造サイクルの推進方策案の考察(その8)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

13.(承前02-24記事)特許審査基準の国際調和

13-1 今次案

13-1-1 各国における特許制度運用の調和に向けた取組を着実に進める。

13-1-2 出願様式だけでなく、多数従属請求項の取扱など、請求項の記載に影響を与える要件についても統一することを目指す。

13-1-3 日米特許庁の審査官が共同して審査することを提案する。

13-2 SANARI PATENT所見

   審査官が直接依拠するのは審査基準である。米国特許商標庁の特許審査基準(MPEP)における特許性関係の記述を先ず考察する。

13-2-1 「自然法則利用」要件の特許法上規定の有無による日米審査基準の相異:

13-2-1-1 日本特許法が特許付与対象である発明の定義の冒頭に、「自然法則を利用した技術的思想の創作」と定めたのに対して、米国特許法には、発明の定義にも特許性の規定にも、自然法則という用語を用いていない。しかし、米国特許法が定める「特許性ある発明」は、新規で有用な次の5つのいずれかに該当しなければならないから、日米審査基準がこの点について接近する場が残されていると考える。すなわち、上記5つとは、「プロセス」、「機械」、「製造物」、「組成物」、「以上4つのものの改良」であって、1996

    年3月29日から米国特許商標庁で適用を開始したガイドラインでは、有形記録媒体に入力されたコンピュ-タ-プログラムは、上記5つのうち「製造物」に該当するとし、関節的には自然法則利用性が存在することとなる。

   従って、問題は、コンピュ-タ-プログラムそのものなどの特許性について、日米特許法の規定の相異がどのように影響するかであった。

13-2-1-2 日米審査基準対比のため、ここでは日本審査基準の「自然法則利用」に関する記述の英文を掲げる(要旨)。

   Since it is not a “creation of a technical idea utilizing a law of nature,” any one of the following is not considered to be a statutory invention.

(1)   A law of nature as such:  Since statutory inventions shall utilize a law of nature, a law of nature as such, like a law of preservation of energy or a law of universal gravitation, is not considered as a statutory invention.

(2)   Mere discoveries and not creations:  One of the requirements for a statutory invention is to be a “creation”, and thus, mere discoveries, such as discoveries of natural things like an ore or natural phenomena, for which an inventor does not consciously create any technical idea, are not considered to be a statutory invention. However, if things in nature such as chemical substanxes or microorganisms have been isolated artificially from their surroundings, then those are creations and considered to be a statutory invention.

(3)   Those contrary to a law of nature:  If a matter necessary to define an invention involves any means contrary to a law of nature, the claimed invention is not considered to be a statutory invention.

(4)   Those in which a law of nature is not utilized:  If claimed inventions are any laws as such other than a law of nature (e.g. economic laws), arbitrary arrangements(e.g. a rule for playing a game as such), mathematical methods or mental activities, or utilize only these laws(e.g.methods of doing business as such), these inventions are not considered to be statutory because they do not utilize a law of nature.

(5)   On the contrary, even if a part of matters defining invention stated in a claim does not utilize a law of nature, when it is judged that the claimed invention as a whole utilize a law of nature, the claimed invention is deemed as utilizing a law of nature.

本稿その9で米国特許商標庁の審査基準と対比すると、審査基準レベルでの両国の接近が見られる。

2007年2月25日 (日)

ヤマト宅配便と郵政: 物流・情報流の知財戦略活発化

郵便番号の高度活用、デジタルシステムの多様化

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  民営化の本領発揮を期して、郵政公社の速配システム拡充が周知され、ヤマトホ―ルディングスほか物流・情報流の先達民営企業の知財戦略も活発である。郵政の場合は、出願人の名称が郵政公社でなくても、郵政公社のためであることが明示されている特許公開も多い。例えば、「コンピュ-タ-で管理された郵便ポストに、広告収入を得るための広告掲載スペスを設けて、その媒体管理をコンピュ-タ-で行う」発明など。

  知財専門家が知的財産権関係資料の包袋をヤマト経由で受領する場合が多いが、野村證券によれば、ヤマトホ―ルディングスは、「宅配便一位(年間約11億個)。シェア4割弱。メ-ル便を第2の柱に育成。航空・海上貨物の企業物流などシステム統合を推進。増益基調」。

1.        郵政公社関係の特許公開

  注目を惹く課題を概観する(SANARI PATENTが要約)。

1-1        写真付きポストカ―ドのセルフ製作・販売システム

課題: 写真付き年賀状などの大量印刷発注の場合ではなく、セルフサ-ビスで任意にプリントできる写真付きポストカ―ドのセルフ製作・販売システムを得る。

  解決手段: 本発明のポストカ―ド販売用端末機を設置する店舗に、利用者が赴き、プリントされた写真やデジタルカメラのメモリ―カ―ド等のメディアから写真情報をポストカ―ドにプリントし、送付先・送り主の住所・氏名、通信文等を共に印刷して、ハガキとして出力し購入する。

1-2        気象情報提供システム

課題:: 局地的な降水を含めた積算雨量または総雨量を得る。

解決手段: 国土地理院の数値地図と郵政公社の郵便番号デ―タから、地名および郵便番号に対応する緯度・経度のテ―ブルを作成・記憶し、利用者による積算地名または総雨量のしきい値、地名または郵便番号の入力を受付け、入力された地名または郵便番号から該当する緯度・経度を特定し、その緯度・経度および入力されたしきい値を記憶し、気象庁が発表しているレ―ダ―アメダス解析雨量のうち、その緯度・経度に対応する格子点を算出し、その格子点におけるレ―ダ―アメダス解析雨量を積算し、それによって得られる積算地名または総雨量が当該しきい値を超えたときに、その内容をシステムの利用者に送信する。

1-3        商品配送方法

課題;; 購買意欲を促進することが困難な商品について、ユ-ザ-にとってより簡便な商品の注文方法を提供すると共に、より効率的な配送方法

解決手段: 第1の配送会社10は、商品の在庫を保有する地域ごとのロジスティクスセンタ-100を備え、第2の配送会社20は、集約配送拠点21と近隣配送拠点22からなる配送網を備える。近隣配送拠点21において、ユ-ザ-40から受付けた商品の注文情報が受注システムに登録され、これら注文情報が第1の配送会社10の注文システム110に集約される。そして在庫システム120によって各ロジスティクスセンタ-100の在庫情報が確認され、各ロジスティクスセンタ-100の配送管理システム102に対して注文情報が出力される。この際、宛先指定用紙に対する印字も行われる(SANARI PATENT 注:「課題」の「購買意欲」との関連が明確でない)

2.        ヤマトHDの特許公開

   ユ-ザ-が親近感を持つ多くの課題が見られるので、例示する(SANARI PATENTが要約)。

2-1        配達荷物の不在連絡票、その作成装置および再配達情報システム

課題:: 不在連絡票を受取った配達荷物の受取人が、二次元コ―ド認識機能を有するカメラ付きケ―タイを使用して、簡易な操作で再配達受付Webに接続し、再配達に関する情報の入力ができるようにする。

解決手段: 再配達受付WebのURL、配達荷物の伝票番号、配達担当者特定情報をデ―タ列に編集し、これらを符号化した二次元コ―ドの表示領域を表面に配して不在連絡票を構成する。カメラ付きケ―タイで二次元コ―ドを撮影し、ケ―タイを再配達受付Webに接続して、再配達に関する情報の入力ができるようにする。

2-2        ネット利用宅配システムおよび伝票発行方法

  課題: Web上で宅配予約を受付け、荷受人が配達希望日を登録しておくことにより、その日に荷物を受取ることができるようにする。

  解決手段: ユ-ザ-端末から配達識別情報と配達希望日情報を受信し、新たな運送案件レコ―ドを作成して発送確認待ちステ―タスとして蓄積する。運送情報と荷物追跡情報を随時または定期的に照合し、新たな発送状態が確認されたら、担当物流拠点サ―バまたは担当配達者端末のIPアドレスに達識別情報と配達希望日情報を送信する。

2-3        本人限定受取管理サ―バ、本人限定受取サ-ビスシステム

課題:: 荷物受取人の本人確認を簡便に行い、集配サ-ビス業者による荷物の集配を効率良くする。

解決手段: 例えばクレッジットカ―ドの配達のように、受取人が本人であることの確認が重要な場合について、記憶手段により記憶された本人確認情報と、集配者端末から送信された本人確認の情報を照合する本人確認手段と、集配者端末への本人確認結果情報送信手段を備える。

3.        SANARI PATENT所見

3-1  インタ-ネットビジネス等が発達するに伴い、物流の宅配も規模を拡大する。「宅配便」という語を含む商標も増加し、かつ貴重化している。「味の宅配便」は平成4年登録、更新を経ているが、食肉・加工水産物・豆腐・果実・コ―ヒ―豆等を含む。「おいしいもの宅配便」、「マイカ―宅配便」(自動車の回送を含む)から「恋宅配便」(異性紹介)に至るまで登録され、時流をも示している。

3-2  郵政公社の昨年12月引受個数は、国内・国際、郵便・小包を含めて、また年賀状を除いて19億個を超えたが、郵便はメ-ル等IT化の影響で微減傾向、小包については百貨店等の利用増加が見られる。

3-3  民間・郵政の事業分野融合が最大の課題である。

2007年2月24日 (土)

日米対比: 発明の定義、特許の基本要件(自然法則利用の要否)

今次知的創造サイクルの推進方策案の考察(その7)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

12.(承前02-23記事)特許制度の国際調和

12-1 今次案

12-1-1 各国の特許制度の調和に向けた取組を着実に進める。

12-1-2 日米に共通に出願を行う出願人が両国において同等の審査結果を得られるようにするため、日米特許庁の審査官を相互に長期に派遣して、日米に共通に出願された案件を日米特許庁の審査官が共同で審査することを提案し、実現に向けた積極的な交渉を行う。

12-2 SANARI PATENT所見

12-2-1 三極のうち、欧州は欧州特許法とEU諸国特許法との二重構造のもとにあり、制度調和の成約には時日を要する。今次案が上記12-1-2において「日米」に限定したことは妥当と考える。

12-2-2 このように日米に限定した場合にも、制度の調和に先行して、審査結果の一致が政策的に優先していることは明らかであり、またそれは、実益に適すると考える。川上は異なっても、川下の水が同一に融合すれば、川下一致の相互承認、すなわち、日米互いに同一内容の特許出願に対する一方国のをそのまま他方の特許性認否とすることが、審査の経済性・迅速化・出願人の便益に適合すると考えられる。これを日米の一般FTA(自由貿易協定)の特許分野版として「日米特許FTA」と呼ぶ説が有力であることも、知財推進計画06には、未だ登場していない用語であるが、周知のとおりである。

12-2-3 日米の特許制度が川上、すなわち、特許法の規定において異なる様相を示しながら、川下の特許付与対象が同一化し得ることは、要するに、「新しく有用な着想とその公開を、実施独占権の付与により奨励する」という政策目的の一致にによるものである。

12-2-4 特許性に関する日米特許法の基本規定を対比する。

12-2-4-1 「発明」の定義

   日本: 自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの(2条1項)

   米国: 発明または発見(The term “invention” means invention or discovery)(100条1項a)

12-2-4-2        特許の基本要件

   日本: 産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。

    一および二および三 特許出願前に日本国内または外国において、「公然知られた発明」「公然実施された発明」、「頒布された刊行物に記載された発明」、「電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった発明」(29条1項)

       特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が1項に掲げる発明に基づいて容易に発明することができたときは、その発明については特許を受けることができない。(29条2項)

       先願主義(29条の2)

   米国: 新規で有用なプロセス、機械、製品、組成物、またはそれらの新規で有用な改良を発明または発見した者は、本法に定める条件と要件に従って特許を受けることができる。(101)(Inventions Patentable:  Whoever invents or discovers new and useful process, machine, manufacture, or composition of matter, or any new and useful improvement thereof, may obtain a patent therefore, subject to the condition and requirements of this title.)

         先発明主義(102g)

13.特許審査基準の調和(以下本稿その8)

2007年2月23日 (金)

今次案の最大の成果「特許の相互承認の先行実施」推進を明示

今次知的創造サイクルの推進方策案の考察(その6)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

11.(承前03-22記事)特許制度の国際調和と特許の相互承認

11-1 今次案

11-1-1 各国の特許制度・運用の調和や審査結果の相互利用・相互承認への取組を進める

11-1-2 出願様式・請求項要件の国際統一を目指す。

11-1-3 日米に共通に出願する出願人が、両国において同等の結果が得られるようにすると共に、日米特許庁の審査官相互の信頼感を醸成するため、日米特許庁の審査官を相互に長期に派遣して、日米に共通に出願された案件を共同で審査することを提案し、実現に向けた積極的な交渉を行う。

11-1-4 日米欧三極特許庁間における審査結果の相互利用を強化発展させるため、新たに設置された「ワ―クシェアリングの発展作業部会」における検討に加え、日米または日欧特許庁の二庁間において、特許の相互承認に向けて先行的に実施可能な実務協力を積極的に推進する。

11-2 SANARI PATENT所見

11-2-1 内閣知財戦略本部の知財推進計画07は、平成19年6月に決定に至ると想定されるが、同本部の知的創造サイクル専門調査会の原案のうち、「日米または日欧特許庁の二庁間において、特許の相互承認に向けて先行的に実施可能な実務協力を積極的に推進する」という項目、特に「先行的に実施」の内容は、極めて重要と考える。

   SANARI PATENTは、「日米特許FTAの締結に至るに先立って、米国特許商標庁が特許付与したと同一内容の、日本特許庁に対する特許出願に対しては特許付与する」という意味での「日米特許FTAの片面的先行実施」を、応急政策として提案し、制度調和との関連について所見を明示したい。

11-2-2 「日米特許FTAの片面的先行実施」(Preceding Enforcement of the Japan-USA Patent FTA)の構想は、日米特許FTAの成立を予定しつつ、その実際の締結が時日を要することをも予定して、あたかも片務契約におけるごとく、米国特許商標庁の特許政策のいかんにかかわらず、米国特許商標庁が特許付与したと同一内容の、日本特許庁に対する特許出願に対しては特許付与するという特許審査・特許付与実務を日本特許庁が独自に実施するというものである。

11-2-3 このような特許相互承認の構想の究極の到達目標とされる世界特許の意義について、知財推進計画05は次のように述べている。

   「各国毎への特許出願は、出願人にとって手間と費用の両面で膨大な負担であり、また各国の特許庁にとっても出願が増価する中、重複的な審査は非効率で国際的に無駄である。特に日米欧三極に対する特許出願は、全世界(約130万件)の約8割(約106万件)であり、このうち約20万件が三極で重複的に審査されている。科学技術や企業活動はグロ-バル化を急速に進めており、もはや観念的な議論をしている段階ではなく、具体的な行動を加速化する段階に達している。」

11-2-4  上記約20万件の三極重複審査対象特許出願が、全分野にわたって中核的重要性を持つ内容のものであることは、容易に想定され、その審査の迅速化と法的安定性を国際的に達成することは、全世界・全科学技術分野(プログラム特許、ビジネス方法特許を含む)に顕著な利益をもたらすものと考える。

 

2007年2月21日 (水)

韓国特許事務所による「日韓特許審査ハイウエイ」解説

AMARI知的財産プラン2007(経済産業省2007-02)のアジア広域計画

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  韓国特許事務所のトップ級「P.K.KIM & ASSOCIATES」から2月のニュ―スレタ―を受信した。日韓共通の重要政策である「日韓特許審査ハイウエイ」について周知させるべく、懇切な解説がなされ、SANARI PATENTとしても、改めて厚く謝意および敬意を表する。

  先ずその内容を要約させていただき、経済産業省が最近公表した「AMARIプラン2007」のアジア政策における意義を考察したい。

1.P.K.KIM特許事務所記事の要旨

1-1 本年4月1日から、「日韓特許審査ハイウエイ」合意が本格的に施行される。

1-2 日韓特許審査ハイウエイとは、日韓両国に共通で提出された特許出願を優先審査対象に含む一方、第一国にて特許登録された共通出願にしては、優先審査申請に必要な書類のうち一部を免除することにより、簡便な手続で迅速に審査する制度である。

1-3 特許審査ハイウエイが本格施行されると、両国の出願人は優先審査申請の際、相手国の審査結果を提出することにより、「本願発明と先行技術との対比説明書」の提出を免除され、費用と事務を節減できる。

1-4 本年4月の施行までに、両国の審査結果を両国の審査官が相互に閲覧できるコンピュ-タ-システムが構築される予定である。これにより両国の審査官は、相手国の審査結果を直接活用できるようになり、処理期間の短縮と審査品質の向上を図り得る。

2.AMARI特許プラン2007との関連

2-1 このプランは、アジア地域について、日韓特許審査ハイウエイの来る4月実施について特筆すると共に、次のように述べている。

2-1-1 日中韓特許庁長官会合において、三庁協力ロ―ドマップの中期目標をサ―チ・審査結果の相互利用とすること、および、中小企業支援シンポジュ―ムの開催に合意した(2006-12)

2-1-2 日中特許庁長官会合において、中国専利法改正案について、侵害行為の判断基準の明確化等について要請したほか、優先権書類の電子的交換を行うことについて専門家間の検討の開始を合意した(2006-11)

2-1-3 タイにおけるわが国の特許審査結果の受入による早期審査の開始について、日タイ特許庁間で書簡交換した(2006-11)

2-1-4 インドネシア・ブルネイとの経済連携協定交渉において、知的財産の保護強化を含むEPA締結を大筋合意した(2006-11~12)。 

2-2 本年1月15~16日に開催したAPEC

高級事務レベル会合において、出願手続の簡素化、審査協力、人材育成、機械化・情報化を柱とする「特許取得手続におけるAPEC協力イニシアティブを提案し、本年度内の合意を目指している。

3.SANARI PATENT所見

   経済産業省のAMARIプラン2007の基調に、日米欧やアジア域内におけ  る特許行政の協調を通じて、国際競争力を保持しつつ国際協調の利益を共有する意図が存在する。その実現過程によって、わが国の特許制度自体が改善されてゆくと考える。

2007年2月20日 (火)

「AMARIプラン2007」、(AMARIは、甘利の讀みだが、Advanced Measures for Accelerating Reform toward Innovation Plan in Patent Examinationの頭字語)

イノベ-ション促進のための特許審査改革加速プラン2007、その重点4分野の考察

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  甘利経済産業大臣の就任早々に策定された「イノベ-ション促進のための特許審査改革加速プラン」を深化・発展させたプランとして、標記「プラン2007(2007-1-25)が公表されたが、これをどのように活用すべきであろうか。

1.        AMARIプラン2007の概要(SANARI PATENTが要約)

1-1        AMARIプラン2007の目的

   経済のグロ-バル化に対処し、国際競争力強化のため、知的財産を早期に権利化する。

1-2        本年度初の日米合意

1月8日に、甘利経済産業大臣と米国商務長官の間で、「知的財産の保護・執行・その他のグロ-バルな課題への協力強化への共同イニシアティブ」が合意された。なお、これに先立ち、日米欧三極特許庁会合で出願様式の統一に関する合意(2006-11-17)、日韓特許庁会合で日韓特許審査ハイウエイの本年度4月開始が合意(2006-11-27)されている。

1-3        深化と発展: 重点4分野

 第1 グロ-バルな権利取得の促進と知財保護の強化

   外国特許庁との協力(アジア地域途上国の知的財産制度整備に係る要請と協力、特許取得手続におけるAPE協力イニシアティブの推進)、制度の国際調和の推進(三極出願様式の統一、特許法条約への早期加盟、特許制度の実体的調和)、模倣品対策の強化(模倣品・海賊版拡散防止条約案の早期実現、先進国とのEPAによる連携、官民合同模倣品対策の派遣拡大、消費者の啓発と企業への支援)

 第2 特許庁による審査迅速化・効率化に向けた更なる取組

   特許審査の迅速化・効率化(審査官の増員、先行技術調査の外注拡大、審査の質の向上、先行技術文献調査の精度の向上)

 第3 企業における戦略的な知財管理の促進

   企業の戦略的知財管理(トップ懇談、戦略的発明管理ガイドラインの策定、特許戦略懇談会の開催、知財活動優秀企業の顕彰、情報提供、出願・審査請求構造の改革)、研究開発効率・審査迅速化に資する情報提供(検索システムの充実、検索エキスパ―トの育成)

 第4 地域・中小企業の知財活用に対する支援の強化

   地域知財戦略本部の充実、中小企業の知財活用支援

1-4        本年度度以降は審査請求件数は漸減、審査順番待ちは増加

2003年度22.9万、2004年度38.3万、2005年度39.1万と増加したが、2006年度38万、2007度以降、当面は漸減が見込まれる。

   審査順番待ち案件数は、2006年度末86万で漸増傾向が続く。

  審査順番待ち期間は、200611月時点で平均25.7月であるが、その短縮は、次項の理由で相当困難である。

1-5        審査の環境

1-5-1        技術の複雑化・高度化

1-5-2        一出願当たり請求項数の増加(2005年平均9.5項)

1-5-3        特許協力条約基づいて作成すべき国際報告書の増加

1-6               数値目標の改訂

1-6-1        一次審査件数を、2007度24.5万件(前年度比+6.9%)とする。

1-6-2        審査順番待ち期間を28月台にとどめる。

1-6-3        審査官一人当たり年間処理請求項数を、1300項以上とする。

2.        SANARI PATENT所見

  制度の具体的改正には言及していないが、国際協力体制の諸案が実現してゆけば、段階的に制度改正の必要が発生する可能性がある。しかし、審査基準改正で間に合わせる場合も想定される。

  中小企業については、中小企業対策の行政機構の末端に至るまで、知財コンサルの実力を涵養することが必要である。

2007年2月19日 (月)

遊技機エンタメシステム事業・ダイコク電機の知財戦略

パチンコ遊技市場・年間29兆円規模の重要性

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  ダイコク電機(東証・名証一部)から現況報告資料の送付を受けた。同社は、パチンコホ―ル向けコンピュ-タ-システムの最大手であり、パチンコ・パチスロ向けユニットの製造・販売も行っている(野村證券・東洋経済)。

  上記資料が引用した(財)社会経済生産性本部「レジャ―白書2006」によれば、国内パチンコ遊技市場の年間規模は、貨玉料ベ―スで約29兆円、遊技人口(ファン数)1700万人超である(SANARI PATENT 注:全国パチンコ遊技店舗数1万5千店以上は、全国郵便局数の3分の2に近く、日常生活に親近している)

  生活消費の他分野と比べても、大丸・松坂屋統合の1兆1661億円、現在・百貨店売上高首位の高島屋1兆311億円、全国百貨店合計約8兆円弱の3.6倍に達している。

  パチンコ遊技の年間29兆円、月平均2兆4200億円は、公営競技の月間売上高(2006-10実績)、競輪705億円、中央競馬2499億円、地方競馬345億円、競艇791億円、オ―トレ―ス93億円、合計4433億円の5.5倍に及ぶ。

1.        ダイコク電機の本年初来・特許公開概要

  同社報告資料の考察に先立ち、2007公開番号の標記7件を見る。(解決手段の項の記述をSANARI PATENTが要約)

1-1        発明の名称: パチンコ遊技機

課題: 確変モ―ドを遊技者が任意に選択可能なパチンコ遊技機を提供する。

解決手段: 確変モ―ドを選択できる複数のボタンを設ける。

1-2        発明の名称: スロットマシン

課題: 特別役のフラグが成立しているときのみに表示される特定の図柄を探究する楽しみを向上させると共に、その特定の図柄を新たに出現させたことに対する遊技をの満足度を高めることが可能なスロットマシンを提供する。

解決手段: 過去に出現させたリ―チ目を、遊技者が自ら操作して確認するためのリ―チ目確認ボタンを配置し、液晶表示部で表示する。

1-3        発明の名称: スロットマシン

   課題: 1-2と同じ。

  解決手段: 新たに出現させたリ―チ目の記憶装置を設け、現在のリ―チ目数を表示更新して、その増加により技能ランクが更新されるか否かをチエックして、技能ランクを更新表示する。

1-4        発明の名称: スロットマシン

課題: 目押しの楽しさを強調して興趣を高めたスロットマシンを提供する。

解決手段: 複数機能の変動停止信号発生スイッチ、停止図柄設定手段、特別状態発生手段、「積算引込量が上限引込量に到達するまで特別状態を継続する構成を備える。

1-5        発明の名称: 台毎情報表示装置および台毎情報表示システム

   課題: 演出と遊技情報アピ―ル可能、省スペ―スで効率よい台毎情報表示装置および台毎情報表示システムを提供する。

解決手段: 呼び出しランプユニット等を、遊技機との対応および演出表示部との配設における図示設計により配置する。

1-6        発明の名称: スロットマシン

   課題: 特別役のフラグが成立しているときにのみ表示される特定の図柄を探究する楽しみを向上させると共に、その特定の図柄に気づいたときの遊技者の満足感を高めることが可能なスロットマシンを提供する。

  解決手段: 遊技者が操作するためのリ―チ目認識ボタンを配置する。

1-7        発明の名称: パチンコ遊技機

課題: 複数段階の抽選結果を一体的に表示することにより、遊技者に対して違和感のない表示演出,および、より当たり易い感覚を与えることが可能な表示演出を行う。

解決手段:図柄表示部に、普図と特図の表示部を一体的に設け、内部的には複数段階の抽選を行っている場合であっても、抽選結果を一体的に表示する。

2.        ダイコク電機のセグメント別本年度上半期の特記状況(要旨)

2-1        情報システム事業

2-1-1        ファンが求める情報と、ファンに伝えたい情報を効果的に結びつけた新しい情報表示ツ―ルを提供した。出玉推移グラフや大当たり発生履歴等を見ることもできる。

2-1-2        ダイコク電機とパチンコホ―ルとの間に、高度なネットワ-クを構築し、日々の営業デ―タを収集し、分析・加工後、付加価値の高い情報を提供して、顧客ホ―ルを支援した。

2-2 制御システム事業

2-2-1 多様なゲ―ム性を持ったバリエ―ション豊かな開発機種数を増加した。

2-2-2 パチンコ・パチスロメ―カ―に向けて、人気機種の分析に基づく仕様の提案や人気キャラクタ―の確保等の開発パ―トナ―事業を行った。

2-3 アミュ―ズメントコンテンツ事業

2-3-1 プレステ向けコンシュ―マゲ―ムを開発した。

2-3-2 ケ―タイ用コンテンツの開発と配信を、NTTドコモ等のキャリアに向けて行った。

3.        SANARI PATENT所見

3-1  遊技機または「パチンコ」には、パチンコ・パチスロ・スロットマシンを含み、パチスロの機種分類上の名称は「パチンコ式スロットマシン」である。

  そのいずれも電子機器としてわが国において高度に開発され、偶然性を基調とする遊技においても工夫と学習を好む日本人の性格に適合している。

  産業として、貨玉料29兆円のほか、パチンコ機器生産金額、輸出金額等を合算すると、大産業分野であるが、内閣知財戦略本部の知財推進計画やコンテンツ振興法・文化芸術振興基本法の対象として、コンテンツまたは地域文化に内包されている確かさがない。これは政策担当者の配慮が欠落している結果とも見えるが、およそ政策配慮に依存しない遊技機業界の力強さを示すものでもある。ただし、パチンコ機器は多数の特許に支持されており、パテントプールの形成と運用において、司法や公取の関与を招いた業界でもある。

3-2 上記のようなパチンコ業界の大産業性に対応して、その健全な魅力を増進するダイコク電機等の事業は、国民生活と経済政策上、注目すべき地位にある。

2007年2月18日 (日)

「知的財産検定の法定化案」「金沢工業大学の知財スキル標準案」ほか、知財サイクル専門調査会の参考人として川田洋輝発明協会理事長(経済産業省出身)の発言

「放送大学が知的財産の講座を開設」「弁護士知財ネット」など、主として「知的財産人材育成推進協議会」の会長としての発言

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

9.(承前記事) 川田参考人の発言(2007-01-26)要旨

9-1 内閣知財戦略本部の知的財産人材育成総合戦略に基づく「知的財産人材育成推進協議会」の会長を勤めている。協議会は作業部会も設け、活発な活動を展開している。協議会の委員は、清水 勇・工業所有権情報・研修館理事長、棚橋裕治・知的財産教育協会代表理事、軽部征夫・日本知財学会会長、吉野浩行・日本知的財産協会会長、平山正剛・日弁連会長、谷 義一・日本弁理士会会長である。

9-2 知的財産人材育成総合戦略(2006-01-30)には、3つの目標と10個の重点施策が掲げられたので、この重点施策のそれぞれについて民の立場からレビュ―したところを報告する。(SANARI PATENT 注:3つの目標は、「知的財産権専門人材の量を倍増し、質を高度化する」、「知的財産創出・マネジメント人材を育成し、質を高度化する」、「国民の知財民度を高める」。また、10個の重点施策は、「知的財産人材育成推進のための協議会の創設」、「知的財産教育研究への支援プログラムの充実」、「先端技術を理解できる人材等の誘引・活用」、「実務経験者の活用」、「キャリアパスの確立による融合人材の育成」、「海外派遣など海外との交流の促進」、「人材のネットワ-ク化」、「学会の活用と支援」、「教材・教育ツ―ルの開発」、「知的財産人材に関する民間資格の充実」である)

9-3 10個の施策の実施例として

9-3-1 金沢工業大学では、経済産業省の委託事業として、知的財産人材に求められるスキルの明確化を目的として、知財スキルのフレ―ムワ―クを作成し、現在、知財スキル標準の完成を目指して作業を進めている。

9-3-2 社団法人・日本知財学会では、人材育成に関する分科会として、初等中等教育における人材育成をテ―マとした知財教育分科会、社会人への知財教育をテ―マとした知財人材育成研究分科会、企業の知財人材マネジメントをテ―マとした知財人材マネジメント分科会を設立した。

9-3-3 発明協会では、知的財産アドバイザ―、知的財産ライセンスコ―ディネ―タ、知的財産コンサルタントの育成を開始した。

9-3-4 放送大学が知的財産の講座を開設する。

9-3-5 知的財産教育協会では、知的財産検定の法定検定化を目指し、取組を進めている(同協会会長・棚橋前通産次官が推進)。

10.SANARI PATENT所見

10-1 人材育成については、妹尾堅一郎・東大先端科学技術研究センタ-特任教授の次のご発言(要旨)に同感である。

10-1-1 地域の支援人材について、団塊の世代の大企業知財経験者を活用することについて、この世代は、知財マネジメントには従事していない方々も有るから、人選に留意すべきである。

10-1-2 各自治体に、多様な発明クラブを設立することが望ましい。

1—1-3 知財のコア業務を支援する検定認定あるいは民間資格のプロを増強すべきである。

10-2 知的財産権の訴訟力発揮のため、弁護士の増員が必要であり、今年約2500人と見込まれている司法試験合格者の「弁護士・弁理士(両資格)」登録に、どのように対応すべきか、検討されるべきである。

2007年2月17日 (土)

文化庁長官官房政策課に表敬:: パブコメ提供者に、文化芸術振興基本方針閣議決定資料を速送

文化芸術振興基本法の「メディア芸術」、コンテンツ振興法の「コンテンツ」、知的財産基本法・知財推進計画の「コンテンツ」

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        パブコメ(公募意見)尊重の具体的表現

   内閣および各省庁の政策決定に先立ちパブコメを求めて、審議会等の委員以外の意見を広く徴する構えは、諸行政分野について見られるようになったが、パブコメ内容の全貌開示と検討の経緯・結果について周知させる充分な体制には至っていない。当該本部・委員会等の委員が、政府側説明者(原案起草者)に対して「パブコメの検討・配慮状況」を質問している例もあるほどである。

2.        文化庁長官官房政策課長からの報告

文化審議会(委員に、市川團十郎歌舞伎俳優、尾高忠明交響楽団指揮者、田村孝子NHK解説委員、中山信弘東京大学大学院教授、嶋田実名子・花王コミュニケ―ション部門部長、吉本光宏ニッセイ文化芸術プロジェクト室長、米屋尚子・日本芸能実演家団体協議会員ほか)は、本月初に「文化芸術の振興に関する基本的な方針の見直しについて」文部科学大臣に答申(2007-02-02)し、これに基づく「第2次基本方針」が閣議決定(2007-02-09)されたが、この間におけるSANARI PATENTのパブコメに対して、関係資料と共に、丁重な謝辞が速送されたことは、パブコメ尊重の意思表示として率直に表敬したい。

3.        「コンテンツ」「メディア芸術」の定義と、「文化芸術」の内容

3-1  文化芸術振興法は、「映画、漫画、アニメ―ションおよびコンピュ-タ-その他の電子機器を利用した芸術」を「メディア芸術」というと定めている(同法9条)。

3-2  一方、コンテンツ振興法は、コンテンツの定義を「映画、音楽、演劇、文芸、写真、漫画、アニメ―ション、コンピュ-タ-ゲ―ムその他の文字、図形、色彩、音声、動作、映像、若しくはこれらを組合せたもの、またはこれらに係る情報を電気計算機を介して提供するためのプログラム(電気計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わせたもの)であって、人間の創造的活動により生み出されるもののうち、教養または娯楽の範囲に属するもの」と定めている(同法2条)。

3-3  さらに、内閣知財戦略本部の知財推進計画06は、ライブエンタ―テイメントの振興、ホ―ル・劇場等の集積化、観光との連携、地域文化の振興、日本食文化(庭園文化も加えるべきか)の世界普及、日本ファッションの世界ブランド化等を計画しており(同第4章)、コンテンツの内容が、デジタルコンテンツ、アナログコンテンツ、ライブコンテンツにわたると共に、創作コンテンツと伝統コンテンツの双方にわたる「コンテンツ」を対象としている。

4.        今次決定についての所見

4-1  文化芸術あるいはコンテンツの内容の画定よりも、文化芸術あるいはコンテンツが、文化財としての価値と、産業財としての価値を併有すること、従って、国際流通においても、各国民・民俗・宗教感情への配慮や、対途上国無償援助等、わが国の国際的地位と品格の保持が、優先的に考慮されるべきである。すなわち、国内外市場での拡販的ビジネス戦略意識が、過度に優先しないことが必要と考える。

4-2  文化財としても産業財としても、文化芸術あるいはコンテンツの内容の流通促進と、著作権尊重の調和の具体的対策に関する国民的合意の形成が、当面の急務である。

4-3  なお、今次文化庁資料は、海外でも注目されるところ、「文化関係予算の諸外国との比較」において、国家予算に占める比率がフランスや韓国の8分の1に過ぎないと表示されているが、文化庁以外のコンテンツ文化予算をも合算し、わが国文化芸術政策への評価を適切に維持することが適切である。また、イタリ―等も、例示に加えることが望まれる(史跡修復の国費支出)。

2007年2月16日 (金)

「HEAD」と「HEADs」(登録商標の無効審決について、知財高裁は審決取消請求を棄却)

原告・栗原(訴訟代理人・ 経夫弁理士ほか)、被告 ヘッドスポ―トアクチェン(訴訟代理人・水野勝文弁理士ほか)((2007-01-23判決) 

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  「帽子」花倍の著名企業「栗原」の商標権について、「構成商標」の見地から知財高裁が判示した(平成18行ケ10307審決取消請求事件)

1.経緯

1-1 栗原の登録商標「文字『Heads』による図形構成・指定商品は帽子」(以下「本件商標」)について、ヘッドテクノロジ―は、ヘッドテクノロジ―の登録商標「文字『Head』による図形構成・指定商品は被服等」(以下「引用商標」に対する「出所混同のおそれ」があり、商標法4条1項15号違反の登録として、無効審決を求めた。

1-2 特許庁は、次の理由(要約)を総合して、無効審決した。

1-2-1 引用商標は、本件商標出願前から「男の一流品大図鑑」等に掲載され、著名性が認められる。

1-2-2 本件商標の称呼「ヘッズ」と引用商標の称呼「ヘッド」を比べると、ともに促音を含めた3音で成り、称呼における識別上重要な要素である語頭音を含めた2音「ヘッ」が同じだから、極めて近似する。

1-2-3 引用商標が使用されるテニス・ゴルフ用品と、本件商標が使用される帽子に含まれるテニス・ゴルフの帽子は、同時に使用される場合が多く、需要者の多くが共通だから、両者は密接な関連を有する。

2.栗原の主張(要約)

2-1 引用商標の商標権者はヘッドテクノロジ―で、知財高裁に訴訟提起した被告名ではない。ヘッドテクノロジ―は登録取消請求人適格を有しない。

2-2 引用商標が著名性を有したのは被服についてであって、スポ―ツ用品を含まない。

2-3 本件商標の称呼「ヘッズ」と引用商標の称呼「ヘッド」を比べると、相違点である「ズ」と「ド」は、子音・母音のいずれも共通にしていないから、近似していない。

2-4 観念上の対比においても、本件商標図形からは「帽子をかぶった顔」の観念が生ずるが、引用商標の図形からは「頭」の観念が生ずる。

2-5 栗原はファッション性の帽子の販売を専業としており、テニス・ゴルフ用品の傍らに置かれて販売される物と、取引者・需要者を共通にしない。

2-6 本件商標は、図形から受ける印象が極めて強く、混同のおそれはない。

2-7 引用商標は、帽子については識別力の乏しい商標である。引用商標がスポ―ツ用品・靴で著名・周知であったとしても、そのことによる混同の範囲は、「識別力の乏しい帽子」にまでは及ばないと解すべきである。

3.知財高裁の判断

3-1 ヘッドテクノロジ―は、引用商標を米国法人ヘッドスポ―ツから譲受し、これを同社全額出資のヘッドテクノロジ―に移転したことが認められ、引用商標に係る商標権者の特許庁審決認定に誤りはない。

3-2 「HEAD」の文字図形と、これとスキ―板図柄を組合せた図形を「引用構成商標」と一括すれば、審決の認定説示は不正確ではあるが、審決のその余の記載に基づいてその趣旨を理解し得るものであるから、これを誤りとまでいうことはできない。

3-3 「ズ」と「ド」の子音は異なるが、現代仮名遣いが、本来は「づ」である音を、原則として「ず」と表記するよう定めていることから窺えるように、引用構成商標と本件商標の称呼は近似する。

3-4 本件商標の図形部分は、極めてありふれた円輪郭に過ぎず、取引者・需要者の注意は文字部分にのみ向かい、「顔」ではなく「頭」の観念を先ず生ずる。

3-5 本件商標の指定商品から、テニス・スキ―・ゴルフ用の帽子が除かれてはいないから、それらにしようされることは、あり得る。

3-6 仮に引用構成商標が、商品「帽子」との関係において、商品の用途を表示したものに当たるとしても、識別力がないということはできず、いわゆる広義の混同を生ずる・

3-7 以上により、栗原の主張は理由がなく、棄却されるべきである。

4.SANARI PATENT所見

   今次知財高裁の判断理由によれば、「HEAD」という普通名詞に、広範な独占権を付与する結果になる。栗原の綿密な主張に対しても、例えば、「母音『u』と『o』が相違するだけ」という「だけ」は、粗雑である。

2007年2月15日 (木)

ソニ―が液晶テレビ世界市場で金額トップ、台数3位: 関連特許開発の活況

液晶テレビ国際競争におけるコスト低減と製造期間短縮の着想(プラズマテレビでは松下電器産業が金額世界首位)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        液晶テレビの世界出荷金額

1-1  ソニ―が、液晶テレビの世界出荷金額において初の年間首位を達成したと、 asahi.com(2007-02-14)が報道した。その要旨は、「米国の調査会社・Display Search2007-02-13にまとめた「2006年薄型テレビ世界出荷状況によると、液晶テレビの出荷金額ベ―スのメ―カ―別シェアで、ソニ―が16%で初めて年間首位になった。大画面・高精緻化を進める液晶テレビ『アラビア』の好調が要因と見られる。(2位はサムスン電子で15.0%、3位シャ―プは11.5%)」

1-2  さらにasahi.comによれば、「台数ベ―スでは、韓国サムスン電子が13.4%で首位を占め、ソニ―は11.6%(フィリップスに次ぐ3位)」。

1-3 「なお、プラズマテレビでは松下電器産業が金額世界首位で29%、韓国LG電子が2位、サムスンが3位である。」(asahi.com)

2.        ソニ―の関連知財戦略

   国際競争において品質と共に、製造のコストと期間が決定的重要性を持つから、新年に入ってから公開された資料を見ても、これらを重点とするソニ―の知財戦略が見られる。

2-1  ソニ―出願・発明の名称「プロジェクタユニットおよびプロジェクションテレビジョン装置」

2-1-1      課題: コストを削減する上で有利で、また、製造期間を短縮する上で有利なプロジェクタユニットおよびプロジェクションテレビジョン装置を提供する。

2-1-2      解決手段: プロジェクタユニットにおいて、照明光学部を構成する照明光学部用ハウジングと、分離部を構成する分離部用ハウジングとが、別個に構成されている。熱の影響下において、光学部品の取付に高い精度が要求される照明光学部用ハウジングは、熱硬化性樹脂で形成されている。照明光学部用ハウジングに比べて寸法精度の許容量が大きい分離部用ハウジングは、熱硬化性樹脂 よりも安価な熱可塑性樹脂で形成されている。

2-2  ソニ―出願・発明の名称「プロジェクタユニットおよびプロジェクションテレビジョン装置」

2-2-1      課題: 光源の交換作業を簡単に、しかも画像の品質を確保する上で有利なプロジェクタユニットを提供する。

2-2-2      解決手段: ロック機構は、係合ピンと係合爪とスプリングとで構成されている。係合ピンは、ハウジング部分に設けられている。係合爪はその延在方向の中間の軸受け部が支軸により光源部ハウジングに揺動可能に支持されている。係合爪に、光源部用ハウジングAとハウジングの合わせ面Bとが合わされた状態で、係合ピンに係合可能な係合連結片とにわたり掛け渡されている。

2.        SANARI PATENT所見

    ケ―タイに比べて、わが国テレビ機の国際市場における比重は高い。上記ソニ―の特許公開資料のほか、個人名による出願を含めて、情報通信機器に関する特許出願は活発であり、台数で優位にある韓国等企業に対応できるコスト力をも具備することが望まれる。

2007年2月14日 (水)

プロダクトデザインの高機能化と改正意匠法

KDDIにおけるデザインの進化

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        本年4月1日に、改正意匠法2条2項等施行

1-1  画面デザインの保護の拡充、部分意匠制度の見直し、関連意匠制度の見直し、意匠の類似の範囲の明確化等の改正規定は、平成19年4月1日から施行される。

1-2  これにより、「物品がその機能を発揮できる状態にするための操作の用に供される画像であって、当該物品またはこれと一体として用いられる物品に表示されるものを保護の対象とすること」が実施される。

2.        プロダクトデザインの進化と画面デザイン保護

2-1 KDDIから送られた「TIME&SPACE」誌(2007-2/3)には、「機能美の先を志向するプロダクトデザイン」が特集され、「プロダクトデザインのさらなる深化」として(SANARI PATENT 注:同誌は、「深化」「進化」の両用語を併用しているが、この際は、同義であろう)、「加速するデザインの新たな動き」、「スマ―トさだけでなく温かみを求めて」、「自然素材や伝統工芸とデジタルの融合によるノスタルジ―」等々の追求成果が述べられている。

2-2 例えば、KDDIau携帯電話「W42CA」を含めて、家電製品におけるプロダクトデザインの「深化」と「進化」は次のように語られている(要旨)。

2-2-1 家電の機能が多様・多数化することに伴い、外形のデザインに加えて操作方法のデザインが重要な製品価値となる。従来の、スイッチやダイヤルを直接操作する設計から、コンピュ-タ-や携帯電話におけるように、画面を見つつクリックする設計に進化し、ユ-ザ-にとって分かり易く、直感的に操作できるインタ―フェ―スがデザインされている。

2-2-2 さらに、KDDIau携帯電話「W42CA」では、待受画面に「顔」が用意されている。端末を開けるたびに表情を変える「顔」を見ていると、携帯電話そのものが人格を持っているようにも感じられる。他の家電と異なり携帯電話は、わが身を離れず、対面する頻度が高いから、「愛着」を産む感性のデザインを求めた。

2-2-3 医療診断機器としてMRIは、一般に馴染まれる装置となるほど全国に普及したが、東芝メディカルシステムズのMRI診断装置「EXCELART Vantage」は、「優しい卵」のように患者を柔らかく包み込む薄型化・静音化したプロダクトデザインで、患者の不安感・圧迫感をなくしている。

2-2-4 イデアインタ―ナショナルのデジタル時計「to:ca」は、電源を入れなければ天然の角材であるが、通電すると木材の表面にデジタル時計が写し出され、自然との融合が海外でも評価されて、最近、ドイツのiFデザイン賞を得た。

3.        プロダクトデザイン、インタ―フェ―スデザイン、インダストリアルデザインと意匠

3-1  これらの用語は、内容が関連するが画定されてはいない。デザイナ―の育成も重要な政策事項であるが、例えば、多摩美術大学の生産デザイン学科にはプロダクトデザイン専攻コ―スがあって、次のように説明している(要旨)。

3-1-1      快適な生活に必要なあらゆる「もの」や「こと」に、その機能を備えた「かたち」を与えるのが、プロダクトデザインの役割である。生活がより便利で豊かになる一方、福祉や医療に対する関心が高まり、心の問題が重要になってきたが、プロダクトデザイン専攻は、「かたち」をつくり「もの」を生み出す生産活動において「もの」と「こころ」をつなぐためのバランスをとり、科学技術と人間性のハ―モニ―を奏でることを目指している。

3-1-2      過程としては、プロダクトデザインの分野が広範囲にわたり、しかもデザインの形態は、機能性・強度・人間工学・審美性・経済性などの要素が複雑に絡み合って成立しているから、先ずシンプルな問題を設定して表現技術の基本を学ぶ。その後、主題を実社会におけるもの近づけて、その創造活動を具体化する。

3-2       ドイツのデザイナ―グル-プ・dialog05の「ユニバ―サルコネクションズ」は、要するに従来のUSBであるが、ITデザインがインタ―フェ―スデザインにとどまらず、わが身に密着した用具として「懐かしさ」の感性をデザインに求められた好例と考える。

4.        SANARI PATENT所見

上記多摩美大のプロダクトデザイン専攻卒業生は、ワコ―ル、資生堂、セイコ―エプソン、ソニ―、トヨタ、日産自動車、本田技研、カシオ、富士写真、コクヨ等々に広く就職しているようである。各職域でさらに後進を育成することを望みたい。

2007年2月13日 (火)

「審査・審判の充実」の意味、法的安定性、最近の特許庁敗訴事例(知財高裁)

今次知的創造サイクルの推進方策案の考察(その4)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

7.(承前02-11記事)的確な権利付与

7-1 今次案

7-1-1 特許審査の迅速化と同時に、安定した権利の付与など特許の質に対する要求も強まっており、迅速かつ的確な権利付与に向けて、審査・審判を通じた取組が求められている。このため、先行技術調査の民間外注の拡大と効率化、審査に関する品質管理体制の強化など、特許審査の質を維持・向上しつつ、その迅速化を図るための取組を着実に実施する。

7-1-2 特許審査における外部の知見の積極的な活用を促進するため、現在「書類」の提出に限られている特許庁への情報提供をオンラインでも可能とすると共に、特許審査着手見通し時期照会を他者の出願に関する情報も得られるよう拡充することにより、特許出願に関する情報提供制度をより使い易いものとする。

7-1-3 審査処理件数の増価にに伴い、拒絶査定不服審判の請求件数が増加することが予想されることを踏まえ、審査の上級審としての厳正かつ的確な審理を担保しつつ、拒絶査定不服審判における審理の迅速化のため、外部能力の活用、前置報告書による審尋を実施する。なお、近年における請求不成立率の上昇にかんがみ、請求人に対して審判請求の厳選等を求める。

7-2 SANARI PATENT所見

   法的安定性の問題は、抽象的に論じても解決の緒を見出しがたい。拒絶査定不服審判の請求に対して「請求不成立」の審決を受け、知財高裁判決ではこの審決が取消された事例、さらには、付与された特許が審判で無効とされ、知財高裁で有効と判決された事例や、拒絶査定不服審判により特許付与され、知財高裁で無効とされた事例の有無・内容を具体的に考察し、知的財産権の本質を究めることが必要である。

   例えば、昨月末(平成19年1月25日)に知財高裁判決が言渡された「平成18年(行ケ)10267 審決取消請求事件」は、原告ビ―ピ―ケミカルズの請求を認容して、拒絶査定維持の審決を取消し、訴訟費用は被告・特許庁長官の負担とした。

   主たる争点は、本願発明と引用方法の一致点と相違点の認定の当否である。この判決は、知財高裁の判断として、「本願発明における『重合反応器に、重合の間、一定速度でアルファオレフィンを供給する』の意義について検討すると、文言上、少なくとも二つの供給方法の意味に解釈することが可能であって、特許請求の範囲の記載からは一義的に明確に理解することができない」等と述べた上で、「本願発明と引用発明が実質的に同一であるとの審決の判断は、効果についての判断の誤りについて判断するまでもなく、誤りである」と判示した。

   特許庁の査定・審決の2段階の判断が、拒絶該当理由とした「実質的同一性」が、知財高裁により否定された事例であって、特許性の本質を示すものと考える(法的不安定性の内在)。

8.戦略的特許出願の推進

8-1 今次案

8-1-1 わが国では年間40万件以上の特許出願がなされているが、そのうち最終的に特許されるものは約30%に過ぎない。わが国産業の国際競争力を高めるためには、わが国企業が国内における特許出願の件数を競い合う状況を改め、積極的な海外出願の促進を含む戦略的な特許出願を行うようにする必要がある。

8-1-2 特に中国を始めとするアジア諸国が市場としてのみならず、わが国産業の競争相手としても着実に力をつけているから、アジアを含めた世界的な競争に勝ち残るため、戦略的な海外出願を促進すると共に、わが国出願人の権利が他国においても適切に保護されるよう、諸外国政府に積極的に働きかける。

8-2 わが国における特許率の低さから、海外出願の促進に直結する前に、国内特許率の低位のもかかわらず、出願数が増加している要因を明確にする必要がある。その要因ごとに対策を示すべきである。

以下本稿その5

2007年2月12日 (月)

国民生活のイノベ-ション、格差なき生活の一局面として「家族葬」の知恵

Ceremony Creation for You」の(有)東葛福祉葬祭のノウハウと、NECソフトの「葬祭アシスト」との対比

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        社会生活のイノベ-ション

1-1  情報源として新聞紙がテレビに優る一つの事項は、いわゆる著名人やその父母・配偶者の死亡記事である。最近は、「葬儀は近親者による密葬で過日済ませた」という記事が多く、社葬の経費を使用したり、旧職域の労を煩わすことがないようにという、故人の遺志や遺族の謙虚さが偲ばれて、「美しい国」の「美しい心」と感ずる。故人を慕う人が別に企画する「偲ぶ会」は、また別の「美しい心」である。

   一方、社会的活動や接触が多かった故人について、多数縁故者が集う葬祭は、御無沙汰解消や世代交代の儀礼ともなり、社会的に重要な機能を果たしてきた。大家族の一堂集結も「美しい心」を表し、戦後退役軍人等の庶民の知恵に根ざした冠婚葬祭互助会のビジネスモデルが、これを支えてきた。

1-2  内閣知財戦略本部の知的財産人材育成総合戦略では、エリ―ト的な知財専門家のみでなく、広く一般国民の生活知財意識こそ知財立国の基礎であるとして、「裾野人材」と称しているが、「密葬・家族葬祭専門店」として東京23区から都内・千葉・埼玉・茨城にわたる東葛地域の葬祭を、新しいビジネスモデルの創出をもって実行している(有)東葛福祉葬祭は、国民生活の合理化と便益に直結する知財人、「裾野人材」の適例であると考える。

2         内閣知財戦略本部の知財政策が、このような範囲にも及んで、社会生活のイノベ-ションが進むことを期待する。

2.        (有)東葛福祉葬祭の創案

2-1        同社ホ-ムペ-ジの表現の優秀(要旨を例示)

「明るく上質な家族葬を低予算でご提案」、「ご希望に合わせた葬儀を企画」、「葬儀費用は、家族葬プラン・火葬プラン・無宗派プラン・斎場別プラン別に明示してご案内」、「費用の内訳」、「家族葬施行例」など。

2-2        冠婚葬祭互助会との対比

SANARI PATENT02-0402-06記事に述べたように、冠婚葬祭互助会の仕組みの創出は、第2次世界大戦後の国民生活の低位に対処して、加入会員から集めた資金で共用品を購入する合理性に基づいていた。戦前からの葬儀社は、家族経営的小規模なものが多く、月に5件程度の施行でも、「値切られることのない業態」として存続し続けてきた。リ―ス産業の一種であることは同様だが、リ―スに共通の「規模の利益」を、冠婚葬祭互助会は会員の著増と共に著増し、葬祭場や結婚式場建設にも資することができた。

2-3        (有)東葛福祉葬祭は、冠婚葬祭互助会と対比して、「業者選択の余地を必要発生時まで、ユ-ザ-が保有できること」、「サ-ビス内容は、いずれでも提供可能であること」、「冠婚葬祭互助会の積立金には利子が付かないこと」、「冠婚葬祭互助会の解約には解約手数料を要すること」などを示しているが、いずれも、両面性を有する事項である。すなわち、「業者選択の必要がなく、事前に安心していれれること」、「利子の代わりに、利子相当額の施行内容増価を約し得ること」(関西系の事例)、「積立済み額を冠婚にも使用できること」など、冠婚葬祭互助会も多様な創案を重ねている。

2-4        従って、(有)東葛福祉葬祭の発想と、冠婚葬祭互助会の創案の積み重ねが利点を競い、国民生活の知恵を高めることとなるよう、期待する。

3.NECソフトの「葬祭アシスト」について

NECソフトの「葬祭アシスト」プログラムは、システムとしては冠婚葬祭互助会に限らず、葬祭の合理的な施行に役立つ創案であるから、冠婚葬祭互助会以外の葬祭業者にも、広く普及することが望ましい。

2007年2月11日 (日)

特許審査・審判の「迅速化と充実」の本質は何か→ 「迅速に審査しても、審決や知財高裁で特許性の認否が逆転しないこと」か?

今次知的創造サイクル推進方策案の考察(その3)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

6.(承前02-10記事)特許審査・審判の迅速化と充実

6-1 今次案

   企業の知財意識の高まりや審査請求期間の短縮に伴う審査請求件数等の急増等により、審査請求件数が一次審査請求を上回る状態が続いており、特許審査の迅速化に向けた取組を更に強化していく必要がある。

  同時に、安定した権利の付与など、特許の質に対する要求も強まっており、迅速かつ的確な権利付与に向けて、審査・審判を通じた統一的な取組が求められている。

このため、「特許審査の迅速化のための取組の着実な実施」、「情報提供制度の活用の促進」、「拒絶査定不服審判における審理の迅速化と充実」を図る。

6-2 SANARI PATENT所見

6-2-1 「特許審査の迅速化に向けた取組」の内容が、現行制度の枠(手直し改正は色々行われてきたが)を、どの程度弾力的ないし枠外しして、この際、検討する意図があるのか、明確でない。

6-2-2 先ず特許審査に限定して、内閣知財戦略本部発足以来、一般からの意見と要望としては、「特許庁は先ず拒絶をするというスタンスであるが、これでは新しい知財は生まれない」、「特許庁は裁判所の顔色ばかり見て審査している」、「審査官は、新しい技術を理解しようとしてくれない」、「新しい技術概念がなかなか特許にならない」、「特許庁は、新しい技術概念について基本特許を広く認めるべきである」、「審査の判断基準があいまいなので、審査基準を体系化し公表すべきである」、「どうして拒絶されたのか分からないが、中小企業に対してもっと親身に指導して欲しい」、「明細書と請求項との間で権利の整合性がとれておらず、他社の特許に対して対応しにくい」、「審査に時間がかかり過ぎる」、「米国の特許を受けたら無審査で特許を付与するシステムにして欲しい」、「特許出願明細書等が、通常人ではとても理解できない日本語で書かれることになっているため、中小企業のハ―ドルを高くしている」、「特許出願明細書、特に特許請求の範囲の記載を平易かつ分かり易いものとなるようにして、権利範囲を明確化すべきである」、「特許出願明細書の記載における多義的な表現を排除し、自動翻訳に耐えられる記載とすべきである」、「特許請求の範囲の記載は分かり易くあるべきで、例えば、使用する用語の共通化や記載の仕方のル―ル作りをすべきである」など数多く述べられてきた。

6-2-3 特に内閣知財戦略本部や産業構造審議会知的財産部会の傘下委員会において、一時期、無審査制度論が展開されたことは、十分記憶さるべきである。無審査制度という用語は、現行制度から見ていかにも突飛な印象を受ける向きもあろうが、実質的には、それほど突飛な発想でなく、実際上の効果も審査主義と接近する可能性を持っている。

  すなわち、現に、実用新案権は無審査登録制度によるが、特許庁に対して技術評価を請求できる。一方、わが国の特許審査基準は、特許性に関する特許法の規定における「高度の」という限定は「さしたる意味をもたない」としている。無審査特許の付与後、特許性を争うか、審査特許の後に特許性を争うか、権利の不安定性にについて現実の相異がどの程度あるか、実証的に検討する必要がある。

7.「特許審査・審判の充実」の意味(以下本稿その4)

2007年2月10日 (土)

「特許情報活用の態様」、「イノベ-ション創出の妨げとなる仕組み」

今次知的創造サイクルの推進方策案の考察(その2)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

4.(承前02-08記事)特許情報の活用

4-1 今次案

  大学等における特許・論文情報統合検索システムの運用が、2006年度中に開始されることにかんがみ、国からの特許情報の提供を強化すると共に、各大学等においてパテントマップの作成を進めるなどにより、特許情報を活用した研究開発の戦略化を図り、研究開発の成果がイノベ-ションとして結実するよう促す。

4-2 SANARI PATENT所見

  結局何を言っているのかといえば、「経済成長の新たな展開を確実にもたらすような研究開発を行うため、特許庁が保有している特許関係情報を大学等に提供する」ということである。

  SANARI PATENTとしては、3つの問題点を挙げる

4-2-1      大学等の「等」が、独立行政法人程度に限定されるとすれば、研究開発の主体である企業を除外する記述となり、極めて不適切である。

4-2-2      「特許情報」の範囲が極めて不明確であるが、審査基準の適用に関する審査官用資源を、予ねての言明に沿って一般にアクセス可能とすべきである。

4-2-3      特許公開資料を、アジア等の諸国が率先活用して、わが国特許基準の進歩性充足に至らない程度の進歩性をもって自国特許を付与するなどのトレンドが、今次案により拡充する結果となるか、予測と検討を要する。

5.イノベ-ションの妨げとなる仕組みの改革

5-1 今次案

   研究開発型独立行政法人における知財収入の取扱いの改善をはじめとする研究開発を阻害する規制・運用の見直しを行うなど、知的財産に関連した、イノベ-ション創出の妨げとなる仕組みに係る課題を早急に改革する。

5-2 SANARI PATENT所見

   この項も、具体的事例を挙げていないことが欠点である。例えば、研究開発型独立行政法人は、みずからその予算(国費)により研究開発を行うが、配賦された国費を民間に交付する業務も行う。淵源が国費であるので、特許権の共同化(分有)やロイヤリティ配分について行政上の制約を受ける。これが、産学連携における産学関係の不円滑をもたらす場合がある。

    また、プログラム特許についての、イノベ-ションとの相克については、ここに方策を明示すべきである。

6.特許審査・審判の迅速化と充実(以下本稿その3)

2007年2月 9日 (金)

今次知的創造サイクルの推進方策案の考察(その1)

イノベ-ションと知的財産、戦略的特許出願、大学による国際的権利取得

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  新制度の内閣知財戦略本部知財推進計画は、同本部知的創造サイクル専門調査会の標記案(2007-01-26)に本部検討が加えられて策定される。本年度のそれと対比しつつ主要な項目を考察する。

 なお、同専門調査会のメンバ―は、阿部博之東北大名誉教授、板井明子医薬分子設計研究所社長、加藤郁之進タカラバイオ社長、久保利英明弁護士、下坂スミ子弁理士、妹尾堅一郎東大先端研特任教授、田中信義キャノン専務、中山信弘東大教授、八田達夫国際基督大教授、前田裕子東京医科歯科大特任助教授、吉野浩行本田技研相談役である。

1.イノベ-ションと知的財産

1-1        今次案

イノベ-ション創出に向けて、科学技術の成果を知的財産として適切に取り扱うことが不可欠(「知的財産なくしてイノベ-ションなし」)である。特に大学等では、非本特許につながる重要な発明を知的財産として創造・保護・活用していくことが重要である。

1-2        SANARI PATENT所見

  今次案の括弧書きは新鮮でない。「イノベ-ションへの直結なくして知的財産の価値なし」とすべきである。企業等が知的財産と自意識しながらイノベ-ションに寄与しない着想ないし出願が非常に多い。イノベ-ションは「技術革新」と注記される場合が多いが、技術革新は、単なる技術の革新ではなく、技術による社会経済の革新でなければならない。

2.        戦略的な特許出願

2-1        今次案

  大学・研究開発型独立行政法人等において、出願を行うか否かについて、事前に当該特許の市場性や将来性を評価して厳選するなど、戦略的な特許出願を行うよう促す。

2-2        SANARI PATENT所見

  大学・研究開発型独立行政法人を並列しているが、大学と研究開発型独立行政法人とは、市場性・将来性・戦略性についての自意識が異なり、また異なることが当然である。全国約750に達する大学の、地域・学部・教室(それを率いる教授)の多彩な特異性にも注目すべきである。

  大学に対する国の研究開発関係予算の配分において、2-1のような視点がどのような比重で関連するのか、明示すべきである。

3.        大学による国際的権利取得

3-1        今次案

  今後、大学等による国際的な権利取得の必要性が増大することに鑑み、海外出願に対する支援を抜本的に強化すると共に、紛争が生じた場合の支援体制を構築する。

3-2 SANARI PATENT所見

  米国では弁護士数百万人(わが国は約2万人)を母体として特許弁護士2万3千人(わが国で弁護士の弁理士登録者数は約370人)を擁し、米国語がグロ-バルに通用するが、今次案考える。「支援」は米国等の弁護士に委嘱するときの支援に帰すると予想される。

  わが国における弁護士および特許弁護士の層の厚さを増すことが急務である。

4.        特許情報の活用(以下本稿その2)

2007年2月 8日 (木)

マルチユ―スの促進、「窓口権」の意味(用語として不適切)

コンテンツ政策が直面する諸問題(その2)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

3.マルチユ―スの促進

3-1 企画WGの論旨

3-1-1 内閣知財戦略本部の事務局案では、「放送番組のマルチユ―スを促進することにより、関係者全員が潤うよう、放送事業者と番組制作会社との間での契約モデルを作成し、窓口管理業務(窓口権)に関する公正な協議・契約の締結を進めるなど、放送番組の制作委託に係る課題を解決する。」しされているが、実は、放送事業者と番組制作会社との間では既に、制作委託に係る契約見本、あるいは、委託取引に関する自主基準が策定されている。

3-1-2 しかし、現状において放送局から出ている自主基準というのは確かにあるけれども、実際の放送業界全体で考えると、両社合意ではないとか、中小的であるとか、実行の程度が局により差があるとか、自主基準があっても実行されていないとか、実態を認識すべきである。

3-1-3また、事務局案に、「窓口管理業務などの窓口権」とあるが、実際には、いわば慣用句として「窓口権」という言い方がされてはいるが、実質的に窓口権という権利が別にあるわけではない。何しなく使われている言葉が独り歩きしているようで、不適切である。

3-2 SANARI PATENT所見

  事務局案は、3-1-13-1-2の事実認識の相違を総合した表現と解する。

4.コンテンツビジネスのインフラ整備

4-1 企画WGの論旨

4-1-1 事務局案では、「地上デジタル放送はデジタルコンテンツの流通を促進するための重要な基盤である。政府としては、2011年を地上デジタル放送への全面移行の期限としているが、これを確実に実施するため官民連携して取組を進める。」と表現しているが、「デジタル受信機の全世帯普及」を極めて重要とすべきである。

4-1-2 事務局案では、「地上デジタル放送のコピ―プロテクションシステムについて、権利者が安心してコンテンツを提供できる環境を作ると共に、ユ-ザ-の使い易さに配慮したル―ルの採用を進める。」としているが、もう一つ、動画配信サ-ビスのコピ―プロテクションシステムを整備することが重要である。

4-2 SANARI PATENT所見

   コンテンツビジネスのインフラとして、メディア、コピ―プロテクションおよび著作権法等の諸制度という、ハ―ド・ソフト・法制の三インフラの整備が必要である。

5.コンテンツ流通の促進

5-1 企画WGの論旨

5-1-1 事務局案で標準化本認識として、「民の活動を主体とし、官は阻害要因を排除することを基本とすべきである。」と述べているが、その各論が課題である。

5-1-2 すなわち、権利の集中管理については、一部の権利者がノ―と言った場合には、やはり現状ではコンテンツは出回らない。ほとんどの権利者がOKだと言った場合には流通させることが重要である。

5-1-3 権利者不明の場合のノンフィクション番組の利用に際しても、権利者本人が自主的な枠組みの利用を拒否した場合に実効性を欠くことがないよう、法的な後ろ盾が必要である。

5-2 SANARI PATENT所見

   コンテンツ流通の社会的・経済的利益と、知的財産権の権益保護のバランスを適正にするという課題の一環をなす。

6、放送番組ア―カイブの活用と肖像権(中山信弘オブザ―バ―・東大教授)の発言:

6-1 企画WGの論旨

   放送番組ア―カイブの活用については、著作権法上の問題だけでは解決できず、肖像権の問題が人格権に関係して非常に難しい問題である(SANARI PATENT 注:肖像権は肖像に関する人権で、人格権と財産権の両側面を持つ、という見方もある)

6-2 SANARI PATENT所見

   マスメディアの公的報道における公益と、プライバシ―との調整という側面を持つ。コンテンツ振興の名のもとで、放送番組ア―カイブの活用が「公益報道の優越性」の誤用をもたらすことがないよう、内閣知財戦略本部が責任ある計画を示すべきである。

2007年2月 7日 (水)

コンテンツ政策が直面する諸問題(その1)

次世代DVDのフォ―マット、東京アニメセンタ-のコスト

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

 内閣知財戦略本部のコンテンツ専門調査会・企画ワ―キンググル-プの4回にわたる会合を経て、コンテンツ政策が直面する諸問題が摘出されつつある。その要旨を考察する。なお、企画WG委員の出身は、ウシオ電機、ACCESS、東芝、角川、フュチャ―システムコンサルティング、小学館、テレビマンユニオン、NHK、民放連、ギャガコミュニケ―ションの会長・社長・理事等、および、慶応教授、弁護士である。

1.        次世代DVDのフォ―マット

1-1        企画WGの論旨

ブル―レイとHD-DVDのパッケ―ジ商品が発売されたが、どのコンテンツも売れ行きが芳しくないとの情報を得ている。二つのフォ―マットが存在し続けることから、予想通りの残念な結果となり、ソジュト業界にとって大きなマイナスである。2フォ―マット並存によるマイナス要因を4つ挙げる。

1-1-1        店頭での販売可能コンテンツ数が半分になる(品揃えが貧弱になる)。

1-1-2        ハ―ドメ―カ―間のフォ―マット勝負の成り行きを見守って買控えるユ-ザ-が多く、新しいハ―ドの普及が低速化し、メ―カ―の対抗的な宣伝が浪費となっている。

1-1-3        韓国メ―カ―が先駆けてコンパチ機を発表し、わが国には勝者なしの結果しなる可能性がある。

1-1-4        VHSとベ―タの先例から見て、いずれかのハ―ドとメディアは産業廃棄物化し、資源の浪費となる。

従って、現在は、フォ―マット戦争が民間企業間の争いと位置付けられているが、政府による調整が必須な課題として認識すべきである。

1-2               SANARI PATENT考察

次のような立場からの検討もくわえるべきであると考える。

「大局的・長期的に考えて、わが国企業によるコンパチ開発を含め、競争による技術進歩効果が、経過的な停滞や敗退ハ―ド・メディアのコストを上回ると考えるべきである。ユ-ザ-も、技術進歩におけるリスク負担を修得すべきである。」

2.        英語版ホ-ムペ-ジの推進

2-1 企画WGの論旨

東京アニメセンタ-のホ-ムペ-ジは、日英の2国語対応であるが、英語サイトのアクセスが非常に多くなっている。アニメ情報をほぼ連日更新翻訳しているので、コストも増加しているが、このように海外からのアクセスが非常に多くなっている背景として、中小のコンテンツ企業が英語版ホ-ムペ-ジをあまり作らないことを指摘されるが、それには5つの理由が考えられる

2-1-1        翻訳スタフが少なく、翻訳コストが高い。

2-1-2        英語版ホ-ムペ-ジを作っても、海外からの問合せは冷かし的なものが増えるだけで、応答が煩瑣である。

2-1-3        日常的にコンテンツを売買している会社の数は限られており、新たに店を開くに及ばないと考えられている。

2-1-4        コンテンツ販売益が航空機代にも満たないような国へのビジネスは、コスト効率に合わない。

2-1-5        他国は、政府がサポ―トしている。

    しかし、コンテンツ企業の国際展開のためには国外に開いたポ―タルサイト作りが必要なステップである。経団連が進めているポ―タルサイト作りに対して、国家予算は極少であり、企業規模に関係なく実作業が個々の企業の負担になっている。中小コンテンツ企業への配慮が必要である。

   なお、英語翻訳ソフトの開発に、政府の関与が望まれる。

2-2               SANARI PATENT所見

  わが国のコンテンツが、現に海外で販売されていることも事実であるから、政府関与の必要性の要点をさらに明確にすべきである。「皆で手を繋いで連れていって貰わないと海も渡れない」でというのでは困る、という人はいないと思うけれども。

3.マルチユ―スの促進(以下本稿その2)

    

2007年2月 6日 (火)

「冠婚葬祭互助会」は、ニフティ検索やグ―グル検索で約7000件ヒット

NECソフトの「冠婚葬祭互助会関連プログラム」による住民行事の合理化(その2)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

5.(承前02-04記事) 冠婚葬祭互助会許可制度の意義

5-1 ニフティ検索やグ―グル検索で、「冠婚葬祭互助会」と入力すると、その合理性を示す情報が数千件にわたって得られる。例えば、「愛知冠婚葬祭互助会」(新幹線

名古屋駅

前高砂殿も所有)のホ-ムペ-ジは、「互助会とは?」題して次のように解説している(要旨)。

  「互助会は儀式費用の積立です。人生の節目節目で体験する様々なセレモニ―。どうせなら、もっと自分らしいセレモニ―をしたい。そう思うはずです。でも、自分らしさにこだわれば、当然お金がかかります。その負担を減らし、人生の節目をより感動的に思いだしたい。それが互助会の本質です。多くの人が掛け金を積立て、その費用によって積み立てたお金以上の盛大なセレモニ―ができる、それが互助会の魅力です。」

5-2  具体的には、月額数千円(コ―ス別に加入者具体的選択)の積立によって、必要発生時に即時セレモニ―の手配ができ、特に一般人が不慣れな葬祭について全ての段取りを実行サ-ビスするから、コ―ス別のセレモニ―内容は約款(法定基準準拠)によって確保されると共に、その時点での支出能力に応じて、付加サ-ビスを付することができる。

6.NECソフトの「葬祭アシスタント」

6-1 「葬祭アシスタント」についてNECソフトは、次のように解説している。

  「葬祭アシスタントは、互助会に関するNECソフトのノウハウを結集して開発されたパッケ―ジソフトで、中堅・中小葬祭業者および互助会向けの葬儀受注を行えます。タブレットPC上で画像を確認しながら商品を受注し、その場で見積書を作成できるなど、業務の効率化と顧客満足度向上を両立させることが可能です。」

6-2 「200511月からシステム化をスタ―ト。問題は、使い勝手の向上でした。葬祭アシスタントは、それまでの互助会のやり方と異なっていたからです。互助会に合わせた計算式に変更したり、難しい人名のフォントを作ったりなど、徹底したカスタマイズが必要でした。」

7.SANARI PATENT所見

7-1  冠婚葬祭互助会と同時に割賦販売法の前払い式特定取引として規制対象になったのは、百貨店の友の会、家庭用品販売店の家具の積立金販売である。この3つのうち、冠婚葬祭互助会は最も著しい発展を示し、社名も「互助会」を付すことから脱却して、企業としてのブランドを構築しつつある。

7-2 冠婚葬祭互助会が法規制対象とされたのは、冠婚葬祭互助会の倒産等によって冠婚葬祭のサ-ビスがうけられないまま、前受金の返還もできないというような事態に対処し、消費者保護の立場からの理由による。

  しかし、規制の設定が冠婚葬祭互助会に対する信頼性を高め、昭和47年以降の物価上昇(特にオイルショック後)を上回る賃金所得の上昇が、家計における衣食等日常生活必需費以外の「その他支出」の支出能力を高め(当時の家計統計を見ると「その他支出の比率が著増している」、冠婚葬祭にも内容の充実が一層希求されるようになった。既積立金に金員を付加して規格以上の冠婚葬祭を望む向きが増え、冠婚葬祭互助会会員は、そのような顧客の予約者集団としての企業資産価値を潜在することとなった。

7-3  物価の上昇は、負債の性格を法定された前受金の過年度受取額の実質的減額をもたらした。

7-4  過年度前受金によって取得した葬祭式場・結婚披露宴会場等の施設は、評価額を増価し、担保能力を増した。

7-5  冠婚葬祭のいずれについても、その施行は他の冠婚葬祭の情報と予約を入手する場となった。

7-6  前払い式特定取引のうち、このような特長を持つ冠婚葬祭互助会に着目したNECソフトのプログラム企画能力を高く評価したい。

2007年2月 5日 (月)

NECソフトによる冠婚葬祭互助会関係ノウハウの開発(その1)

知的財産に関する権利は、特許権や著作権等の知的財産基本法定義よりも、もっと広い分野の制度にも存在する

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

   NECソフトの活動に言及する前に、先ず、冠婚葬祭互助会システムの知的財産性について、SANARI PATENTの見解を伸べる。

1.「知的財産」の真の意義

   新たな着想で有用なものに対しては、社会経済を益する対価として、実施独占権等の適切な利益を付与することが、知的財産制度の理念である。

  しかし、新たな着想で有用なものは、知的財産権の保護対象よりも広く、知的財産権法以外の制度によって保護されている。その1例として割賦販売法に基づく冠婚葬祭互助会がある。

2.冠婚葬祭互助会システムの知的財産性

2-1 冠婚葬祭互助会システムは、制度上、割賦販売法に基づく前払式特定取引に属する一システムである。古来の割賦販売は、消費者が商品を入手後、対価を分割支払いするので、その実質利子率を規制する等の必要から割賦販売法が施行されていたが、第2次世界大戦終結後のわが国において、予め商品やサ-ビスの対価を販売業者に分割交付(SANARI PATENT 注:ここで「交付」という用語を用いたことに重要な意味がある。後の項で詳述する)しておき、商品・サ-ビスを受領する必要が発生した時に随時受領できるとする取引形態が急速に発達した。

2-2 その一つは冠婚葬祭互助会である。敗戦後の経済疲弊の底辺にあっても、結婚と葬祭の需要は発生し続け、かつ、発生する時点が必ずしも予想できないことと、段取りに不慣れな公衆が多いことから、前払いで業者と予備契約しておくことが便利であり、業者は、集まった金で婚礼衣装や葬祭祭壇を購入し、多数に貸してて購入資金回収後の利益を得るという、業者・消費者双方の利益が一致する取引方法として発生した。

2-3 前払式特定取引が制度化されたのは、昭和46年で、冠婚葬祭互助会も同法施行令の指定役務に該当し、許可制となった。制度化は、前受金保全措置等の義務に伴う反面、冠婚葬祭互助会の乱立を抑制し、地域独占的な受益をもたらす場合もあった。これは、冠婚葬祭互助会システムの国民生活に関する新しい有用な着想への対価として妥当であったと、SANARI PATENTは考える。

3.NECソフトが「葬祭アシスタント」を開発した優秀な着眼

3-1 「冠婚葬祭互助会ノウハウを凝縮した『葬祭アシスタント』」の開発について、NECソフトは次のように述べている。

  「少子高齢化、外資参入など葬祭業界にも競争の波が押し寄せている。いかに顧客満足度を高めて、選んでいただくかが葬祭事業の課題だ。山形で互助会をカバ―する㈱ナウエルは、NECソフトの互助会ノウハウを凝縮した「葬祭アシスタント」の活用で、業務効率の向上だけでなく、顧客満足度の向上を実現した。」

3-2        また、上記ナウエルについては次のように述べている(要旨)。

「山形の置賜地方全域で冠婚葬祭の全般をカバ―しているナウエルは、冠婚葬祭互助会創設から25年という節目を迎えた2005に、斎場を8箇所に建設するなど地元のニ―ズに積極的に応えているが、同社は、食品製造販売からスタ―トし、弁当・仕出し・ブライダルを経て1980年に将来性を見据えて葬祭業に参入した。現在、互助会会員数は約5万人である。」

4.SANARI PATENT所見

  ナウエルの冠婚葬祭互助会としての創立および発展経過は、北日本では、札幌冠婚葬祭互助会(札幌平安閣が著名)に似ているが、全国約200社の

 冠婚葬祭互助会の着実な発展ぶりをも見据えてからの参入で、堅実性の一端を示している。参入の許可を得るには、所定の財務条件を充足することを要するが、その維持も、前受金保全措置の履行を通じて明示されている。

  上記の詳細は、本稿その2にて。

2007年2月 4日 (日)

株価戦略、ブランド戦略、知財戦略

ミレアホ―ルディングス石原邦夫社長の説明の考察(その4)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

9.(承前0203記事) 時価総額と知財価値評価

   単に「時価総額」と呼ばれて企業評価の1次指標とされる「株式時価総額」の国際対比を、石原社長も示され、わが国保険業界の世界的地位も、最新の株価によって認識することができた。

  ここでSANARI PATENTが指摘したいのは、時価総額と知財価値評価との関係である。知財の定額的価値評価の手法には確定的なものはなく、内閣知財戦略本部も政策を転換して、経済産業省等が自ら策定することを予定せず、民間の評価活動の一層の活発化を「奨励する」こととしている。

  結局現在では、多様な定額的価値評価の手法が乱立しているが、その一つが「残余法」と呼ばれる手法である。

  これは、企業の価値を時価総額によって評価し、有形資産・金融資産等の企業会計原則によって定額評価が可能な資産の総額を時価総額から差し引いた残余額を、無形資産の額とするものである。知財を含む無形資産の定額評価は、収益還元法など多様であるが、過去の収益数値の存在を前提とするほか、還元率の設定等、仮定条件が本質をなす。残余法は、有形資産・金融資産で評価し尽くされない無形資産の定額評価が加えられて企業の時価総額という定額評価になっているという、簡明な考え方である。株式時価総額が変動に富むから、無形資産の定額評価額も変動に富むこととなるが、そのことこそ無形資産の本質でもある。ただし、株式戦略が、投資家の適切な評価を実現すべく、考慮されていることが必要である。

10.ミレアホ―ルディングスの株式分割と中間配当

10-1 ミレアホ―ルディングスは、「投資家がより投資し易い環境を整えるため、株式の分割と、投資単位当たり金額の引下げを実行している。すなわち、2006年9月末に株式1株を500株に分割し、続いて、この分割した株式を100株単位で売買できるようにした。実質的には5分割と同じ効果があり。分割前の株価を200万円とすると。40万円単位で株式の売買が可能となった。

10-2 また2006年度から中間配当を実施するが、従来の1株当たり年間配当金が2000年度10000円から、11000円、15000円と推移し、2006年度の株式分割後1株当たり年間配当金30円*2回は、従来の配当金15,000円に相当する。

11.ミレアグル-プの成長性

   国内損保・国内生保・海外保険の各事業について、石原社長は次のように説明すると共に、金融一般事業・保険周辺事業の拡大による保険事業との相乗効果を実現する戦略を述べられた(要旨)。

11-1        国内損保事業: 従来の保険の概念を超える新しい商品・サ-ビスを提供するため、

11-1-1  代理店システム刷新と完全キャッシュレスを軸とした業務プロセス革新、保険約款・特約の大幅簡素化、基幹ITシステムの刷新・スルム化によって、業務品質を飛躍的に向上し効率化する。

11-1-2  業務革新プロジェクトとして、上記のほか、商品ラインナップの簡素化、分り易い約款への変更、特約の削減と統一化、早期継続の推進、重範はリ保険金対応のシステムサポ―ト、代理店システムでの保険料試算機能の拡充を行う。

11-2 国内生保事業:少子高齢化による生存保障、年金商品市場の拡大に対応するため、

11-2-1 対顧客提案から契約保全までの業務ピロセスを抜本的に見直す。

11-2-2 現在の収益構造を見直し、より効率的な経営資源の配分方法を再検証する。

11-3 海外保険事業: アジア・欧米での積極的活動のため、

11-3-1 中国のPICC、韓国の三星火災と日中韓3社連携している。

11-3-2 天安社、中盛国際社、生命人寿社に出資した。

11-3-3 インドに、ITG社を設立した。

11-3-4 台湾の新安社に出資し、統一安聨社を買収して、両社を合併した。

11-3-5 タイのMLITH社に出資し、バンクタイ社と連携している。

11-3-6 マレ―シアのアマナ社を買収し、タカフルJV会社設立の免許を取得し、アジア社買収を主要株主と合意した。

11-3-7 シンガポ―ルに、ミレアアジアを設置し、リタカフル社を設立し、アジア社買収を主要株主と合意した。

12.修正利益の概念

    ミレアホ―ルディングスでは、以下の定義による修正利益を、経営計画や株主還元の指標としている・

   「修正利益は、損保事業に特有の各種準備金の影響を除くと共に、資産の売却・評価損益など、必ずしも損益の源泉が当期だけでないものを控除することにより、当期の純粋な損益を明確にしたことによる利益である。」

    ミレアホ―ルディングスの業績は、修正利益の増勢に徴しても好調と、SANARI PATENTは考える。

2007年2月 3日 (土)

ミレアホ―ルディングス傘下企業(以下「ミレアグル-プ」の世界におけるポジション

ミレアホ―ルディングス石原邦夫社長の説明と提供資料、および、SANARI PATENTの考察(その3)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

7.(承前02-02記事)ミレアホ―ルディングスの現況

  石原邦夫社長の説明は、誠に明確であったが、言及の時間的余裕がなかった事項もあるので、現況として、野村證券・東洋経済の会社四季報の記事を引用・要約する。

 「損保首位の東京海上日動。生保子会社も成長中。自動車・火災堅実。損害率悪化、台風被害に加え、変額年金拡大に伴う費用先行あるが、再保険黒字化。株売却益効く。実質増配余地。来年3月期は、日新火災に続きアジア・ジェネラルを完全子会社化計画。

8.ミレアホ―ルディングスの所属は「金融分野」

8-1 石原邦夫社長の説明においてミレアグル-プのわが国におけるポジションが解説されたが、金融機関ランキングとして、三菱UFJや野村と対比している。

  上記会社四季報の分類は、「銀行」「その他金融」「証券」「商品先物」「保険」としているが、保険の「金融機関」所属性はどのように解かれているか。同社長が席上配布された「日本の保険会社誕生物語」に見られる。すなわち、「東京海上が明治12年に日本人による日本初めての保険会社として設立されたが、保険という制度自体に対する明治政府要人の理解が十分でなかったところ、大隈重信は、『保険会社は是非設立しなければならない。保険を実施しないと金融が疎通しない』と力説し、東京海上の設立に至った。保険が金融機関として認識されていたと解する。なお保険は、租税の金納化にに伴い、米輸送の荷為替を対象しする海上から始まり、火災や生命は後発した。

8-2 石原邦夫社長の説明においてミレアグル-プのわが国におけるポジションは、「日本の金融機関の株式時価総額ランキング(2007-01-19現在)において、

 三菱UFJフィナンシャルグル-プ16兆2503億円、みずほフィナンシャルグル-プ10兆5663億円、三井住友フィナンシャルグル-プ 9兆6671億円、野村ホ―ルディングス4兆6101億円に次いで、第5位ミレアホ―ルディングス3兆8465億円が位置する。ミレアホ―ルディングスに次いで、りそなホ―ルディングス3兆7959億円、オリックス3兆1426億円、三井住友海上火災保険2兆2516億円、住友信託銀行2兆2056億円、T&Dホ―ルディングス(SANARI PATENT 注:大同・太陽等の生保持株会社)2兆0445億円が位置している。

8-3 さらに、石原邦夫社長の説明においてミレアグル-プの世界におけるポジションは、株式時価総額ランキング(2007-01-19現在)において、AIG(SANARI PATENT 注:アリコグル-プ)22兆5044億円、バ―クシャ―ハザウェイ(SANARI PATENT 注:「会長バフェットからの手紙)」に示された投資理念書が有名)20兆4877億円、中国人寿17兆3071億円、ING11兆3071億円、アクサ10兆9241億円、アリアンツ10兆3200億円、ジェネラリ6兆6788億円、マニュライフ6兆3071億円、メットライフ5兆6699億円、米国プルデンシャル5兆1452億円、アビバ5兆1144億円、オ―ルステ―ト4肇8307億円、チュ―リッヒ4兆8307億円、ミュンヘン再保4兆6106億円、セントポ―ルトラベラ―ズ4兆2993億円、英国プルデンシャル4兆2039億円、エイゴン3兆9509億円、スイス再保3兆8880億円に次いで、ミレアホ―ルディングスは、3兆8465億円、19位に位置している。

このような国際・国際地位に立脚するミレアホ―ルディングスの戦略を、その4において考察する。

2007年2月 2日 (金)

新たなリスク、新たなニ―ズに新たな保険設計: ミレアホ―ルディングス傘下企業

ミレアホ―ルディングス石原邦夫社長の説明会における提供資料等(その2)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

5.(承前02-01記事) 新たなリスク、新たなニ―ズ、新たな保険設計:

   ミレアホ―ルディングス傘下企業の事例を見る。下記は、SANARI PATENTが要約ないし注釈したものである。

   リスクに対応する一つの新たな措置が、その措置に伴う新たなリスクを発生し、新しい保険設計が需要される場合も見られる(例えば、5-3)。

5-1        新しいコンセプトの糖尿病専用の医療保険

糖尿病は、高血圧症・腎臓病・眼病・皮膚疾患等の合併症を誘発し易く、かつ、血糖値がある程度の水準に達して初めて自覚されるなど、警戒困難な疾病である。

 東京海上日動は、糖尿病による合併症の発症などに対する補償に加え、糖尿病に対する正しい知識の提供や生活習慣の改善などに役立つアシスタンス機能を保険に組込み、より一層大きな安心を提供する糖尿病専用の保険を開発した。

5-2        白血病などの新治療法の普及に貢献する保険

東京海上日動は従来、「骨髄バンク団体傷害保険」を開発してきたが、全身麻酔を行うことなく末梢血から造血幹細胞を採取し移植する「末梢血造血幹細胞移植技術」が開発されたことに即応して、昨年、「末梢血造血幹細胞ドナ―団体傷害保険を開発した。

5-3        会社役員賠償責任保険の企業情報開示リスクへの対応

投資家のリスクに対処する証券取引法改正や「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正により、企業にとってディスクロ―ジャ―にに伴うリスクマネジメントの強化が一層重要な課題となった。東京海上日動は、従来の会社役員賠償責任保険の補償内容に加えて、企業がディスクロ―ジャ―書類の記載不備に起因して損害賠償請求訴訟を提起されることに伴う損害を補償することとした。

5-4        駐車違反取締業者向け保険

昨年6月の道路交通法改正に伴い、警察から委託を受けた民間事業者が放置車両確認機関として違法駐車取締を実施しているが、その業務に関する補償を提供する「放置車両確認業務総合保険」を東京海上日動が開発した。

5-5        自動車保険「ト―タルアシスト」

従来の保険に「アシスタンス」を融合させるという発想のもとに、顧客やその家族が事故で入院した場合に、フラワ―提供・ホ―ムヘルパ―派遣・差額ベッド代提供などの好みのサ-ビスを選択できる保険設計を東京海上日動が開発し、いわゆる保険自由化後の自動車保険としては、業界最速で販売件数をのばしている。

5-6        自動車事故削減に向けた取組を支援する自動車保険

「業務中の自動車事故を減らしたい」、「長期安定的に自動車保険料を節減したい」などの顧客のニ―ズに即応して、東京海上日動は「フリ―ト事故削減アシスト」を開発し、事故パタ―ン分析と最新のカメラ付きドライブレコ―ダ―を用いた危険場面の収集に基づくサ-ビスを開発した。

5-7        災害時の事業継続計画の策定支援

内閣府中央防災会議の業務継続ワ―キンググル-プの事務局担当として、東京海上日動コンサルティングは、「事業継続ガイドライン」策定に関与したので、昨年来、その結果を踏まえたコンサルティングを実施している。

5-8        様々なライフステ―ジに対応した変額個人年金保険商品

「年金受取総額保証付変額個人年金保険」、「多機能付変額個人年金保険」などを、東京海上日動フィナンシャル生命が提供したいる。

6.SANARI PATENT所見

 保険の設計は、リスクの定額評価に基づくが、統計値が所与の在来リスクと異なり、経済の変動による新たなリスクの定額評価は、新しい特許発明の定額価値評価と同様に、前提条件を設定したものとなる。

 要するに、新しい保険設計も一つのリスクを含む業務であるが、これを含めて、ミレアホ―ルディングスの戦略を、その3で考察する。

2007年2月 1日 (木)

ミレアホ―ルディングスの石原邦夫社長が保険経営戦略を説明(07-01-31 帝国ホテルにて)(その1)

わが国で初めての上場保険持株会社として、東京海上、日動火災等を傘下に、業容拡大: 保険設計システム等の知的財産基盤

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  石原邦夫社長の説明要旨に入るに先立ち、本稿(その1)では先ず、ミレアホ―ルディングス傘下企業の特許活動を、SANARI PATENTの立場で考察する。

1.        保険と特許

  経済社会と国際関係の迅速な変動によって続出する新たなリスクに、新しい保険が次々に対応することが、対内対外国策上も必要であり、保険は、物質の構造に化体しない知的財産とノウハウの結晶である。

  ミレアホ―ルディングス傘下企業のうち、東京海上と日動火災について特許公開の一部を見ても、ミレアホ―ルディングスの特許活動の活発さが見られるが、東京海上と日動火災の例示内容から見ても、特徴を異にする特許活動を傘下において融合する利益も大と考える。

2.        東京海上の特許公開例

2-1        事故防止支援装置、アドバイスシ―ト生成方法およびプログラム

2-2        契約内容変更受付システム、サ―バ、方法およびプログラム

2-3        情報消去機能付き記録メディア

2-4        コンピュ-タ-、確定拠出年金規約管理方法

2-5        ファイルやシ―トを結合または分割するための情報処理方法

2-6        車両の運行状況監視システムおよびその構成装置、運行状況監視方法およびコンピュ-タ-プログラム

2-7        損害方法処理のためのデ―タを収集するためのプログラム、方法および装置

2-8        事業活動包括保険のための情報処理方法および装置

2-9        保険約款交付のための情報処理方法および装置

2-10    保険の業績または販売手数料配分のための情報処理方法および装置

2-11    セキュアな社内ネットワ-クを拡張するためのサ―バおよび方法

2-12    見込み顧客対応のための情報処理方法および装置

2-13    財務分析コンピュ-タ-システムおよび方法

2-14    コンピュ-タ-システムおよび情報処理方法

2-15    自走式貨物損傷管理システム、自走式貨物損傷管理プログラムおよび自走式貨物損傷管理方法

2-16    リスク診断システム、リスクマップデ―タ生成方法およびプログラム

2-17    リスク分析システムおよびその方法、保険設計システムおよびその方法、保険約款作成方法、並びにコンピュ-タ-上で動作するリスク分析プログラム、保険設計プログラムまたは保険約款作成プログラムを記録した記録媒体

2-18    保険取扱者紹介システムおよび方法

2-19    事故リスク診断方法およびシステム、事故リスク分析装置、および、プログラム

2-20    自動車損害賠償責任保険用契約用紙および自動車損害賠償責任保険の保険契約の印刷用紙

3.        日動火災の特許公開例

3-1        衝撃解析装置、方法およびプログラム

3-2        保険適用方法、保険業務支援装置、ならびにプログラム

3-3        災害発生施設からの避難に関する情報処理方法および装置

3-4        保持している共有デ―タのセキュリティ保持のためのプログラムおよびコンピュ-タ-

3-5        更新処理方法および装置

3-6        保険案内書作成方法、保険案内書および印刷デ―タ作成システム

3-7        コンピュ-タ-、年金規約管理方法およびプログラム

3-8        保険条件特定処理方法および装置

3-9        地震関連デリバティブの管理方法および装置、コンピュ-タ-プログラム

3-10    土壌汚染リスク診断装置、方法およびプログラム

4.ミレアグル-プのコンプライアンス行動規範に「知的財産権の保護」を掲げていることも、注目される。(以下本稿その2)

 

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