最近のトラックバック

2016年8月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

« 2006年12月 | トップページ | 2007年2月 »

2007年1月31日 (水)

同一性保持権侵害の有無は文字により表された思想・感情の創作的表現の同一性毀損の有無により判断→教科書とテスト教材は別個に判断

多数著名当事者間の教材関係著作権侵害損害賠償請求事件・知財高裁判決(その2)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

4.(承前01-20

4-3 著作者人格権侵害の有無について

4-3-1 同一性保持権侵害の有無→「一部に有り」と判断

4-3-1-1  著作権法20条1項は、著作者が著作物の同一性を保持する権利を有し、その意に反して改変を受けないことを規定しているが、著作物は、思想または感情を創作的に表現したものであるから、著作者の意に反して思想または感情の創作的表現に同一性を損なう改変が加えられた場合に、同一性保持権が侵害されたというべきである。

     原告らの本件各著作物は、いずれも児童文学作品等であり、文字によって思想または感情が表現される言語の著作物であるから、本件における同一性保持権侵害の有無は、原告らの意に反して、本件各著作物の思想または感情の創作的表現に同一性を損なわせる改変が加えられたか否か、すなわち、文字によって表された思想または感情の創作的表現の同一性を損なわせたか否かによって判断すべきである(SANARI PATENT 注:随分くどい表現のようであるが、判決文の精確を期したのであろう)

4-3-1-2           そして同一性保持権は、著作者の精神的・人格的利益を保護する趣旨で規定された権利であり、侵害者が無断で著作物に手を入れたことに対する著作者の名誉感情を法的に守る権利であるから、著作物の表現の変更が著作者の著作者の精神的・人格的利益を害しない程度のものであるとき、すなわち、通常の著作者であれば。特に名誉感情を害されることがないと認められる程度のものであるときは、意に反する改変とはいえず、同一性保持権の侵害とはいえない。

4-3-1-3            被告らは、本件国語テストの変更箇所には、本件教科書の表記に従い、同教科書に記載されているとおりの変更ををしたものがあり、それらは改変に当たらないと主張する。

4-3-1-4            しかしながら(SANARI PATENT 注:以下は、教科書とテスト教材との相違を説示している)、教科用図書に本件各著作物を掲載するに当たり、学校教育の目的上やむを得ないと認められる用字または用語の変更その他の改変は、著作権法20条2項1号により同一性保持権の保護が適用されないが(条文「著作物を利用する場合における用字または用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの」、本件国語テストは、教科用図書ではないから、これと同一に論ずることはできない。

4-3-1-5            教科用図書への掲載に際して改変することと、本件国語テストにおいて改変することとは、全く別個の行為であって、前者の改変が同一性保持権の侵害に当たらない場合があるとしても、後者の改変が当然に同一性保持権の侵害に当たらないことにはならない。

4-3-2      氏名表示権侵害の有無→有り

4-3-2-1           被告らは、本件国語テストは、著作法19条3項により、著作者名の表示を省略することができる場合に該当すると主張する。(条文:「著作者名の表示は、著作物利用の目的および態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。」

4-3-2-2           しかしながら、同項にいう「著作物利用の目的および態様に照らし」とは、著作物の利用の性質から著作者名表示の必要がないか、著作者名の表示が極めて不適切な場合を指すものと解される。本件各教科書に本件各著作物の著作者名が記載されるからといって、それとは別個の印刷物である本件国語テストに著作者名表示の必要性がないということはできない。

 その他の争点については、本稿その3.

2007年1月30日 (火)

SANARI PATENTは、「世界特許庁設立条約(World Patent Convention)案」の「検討」を提案する

安倍総理施政演説「各国の特許制度の共通化に取組む」(2007-01-26)(その2)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

   安倍総理大臣の今次施政方針演説中、特に経済活性化については、「具体的政策を推進ずる」旨を述べ、衆議院本会代表質問への応答(2007-01-29)においても、「具体的政策の実行」を強調する答弁がなされた。

   「具体的政策」を「各国特許制度の共通化」について、どのように考察すべきか。

4.(承前0129記事) 「各国特許制度の共通化」の具体的政策とその上位概念として「世界特許」:

4-1 今次施政方針演説の構成は、最初に「成長力強化」を掲げ、その第2パラグラフで次のように述べている。

   「絶え間のないイノベ-ションが人類の将来の可能性を切り拓き、成長の大きな原動力になります。2025年までを視野に入れた、長期の戦略指針「イノベ-ション25」を5月までに策定し、がんや認知症に劇的な効果を持つ医薬品の開発などの実現に向けた戦略的な支援や、各国の特許制度の共通化への取組など、具体的な政策を実行します。」

   なお、第3パラグラフは、次のように続く。

  「イノベ-ションにあわせ、ICT産業の国際競争力を強化すると共に(SANARI PATENT 注:官邸の公表においても、「ICT」の注釈はない。既に国民全般の日常常識用語として扱われている。演説では、「情報通信技術」と(カタカナでも頭字語でもなく)言って欲しかったという人もいよう)、医療、農業など将来有望な分野で残る規制の改革やIT(SANARI PATENT 注:ITからICTの時代であると、NTTなどでは述べている)の本格的活用により事業の効率性を高めるため、4月を目途に生産性加速プログラムを取りまとめます。」

4-2  そこで、「各国特許制度の共通化の具体的政策」を考察するため、知財推進計画06の該当箇所を引用する。なお、「各国特許制度の共通化」という用語は、知財推進計画06では用いられず、下記引用の「特許相互承認制度」が実質的にこれに該当する。また、「各国特許制度の共通化」の上位概念が「世界特許制度」であることも、下記引用(要旨)から読取れる。

「世界特許システムの実現に向け、まずは日米欧特許庁間で特許の相互承認の実現を目指し、日本特許庁がリ―ダ―シップを発揮して、第1スッテプ「次世代ドシエ・アクセス・システム」から、第2スッテプ「特許審査ハイウエイ」の構築に必要な「制度整備」に進み、第3スッテプ「実質的な日米欧特許相互承認制度」の具体的議論を、2006年度に開始する。米欧以外(SANARI PATENT 注:例えば、「頭脳立国」のインドIT技術がIntelと協力してWindows Vistaを開発した)についても並行して進め、最終的に世界特許を実現する。」

5.SANARI PATENTは、「世界特許庁設立条約(World Patent Convention)案」の「検討」を提案する:

    特許制度運用の経済性・効率性を増進するために、各国における審査結果を相互承認する制度を合意できれば、重複審査に伴う人的物的資源の極めて大幅な削減が可能である。企業等、特許制度のユ-ザ-は、各国の特許庁のうちサ-ビスが優れた特許庁を選択して出願し、特許庁間のサ-ビス競争を促し得る。

   しかし、さらに経済性・効率性を追求して、特許審査の人的物的資源の設備量を必要最小限度にとどめる見地からは、国連の付属機関として、あるいは別個に、世界特許庁を設立して世界特許を一元的に付与する構想が検討されるべきである。

   この検討を通じて、国益と世界公益とを共に増進するために、世界特許の有する意義が、改めて問い直され、明瞭に認識されると考える。

2007年1月29日 (月)

安倍総理施政方針演説「各国の特許制度の共通化に取組む」(2007-01-26)(その1)

「革新的な技術・製品・サ-ビスを生み出すイノベ-ションと、世界の活力をわが国に取り入れるオ―プンな姿勢」、安倍演説に先行する「世界の日本食ブ―ム」

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.  今次国会冒頭の安倍総理大臣施政方針演説は、「活力に満ちた経済」が「美しい国日本実現」のため不可欠であるとして、知的財産開発政策に直結する次の事項を述べた。

1-1 革新的な技術・製品・サ-ビスなどを生み出すイノベ-ション

1-2 アジアなど世界の活力をわが国に取り入れるオ―プンな姿勢

1-3 本年5月までに、長期戦略指針「イノベ-ション25」を策定

1-4 がんや認知症に劇的な効果を持つ医薬品開発の支援

1-5 各国の特許制度の共通化への取組

1-6 情報通信産業の国際競争力強化

1-7 本年4月に、医療・農業を含む「生産性加速プログラム」を策定

1-8 本年5月に、「日本文化産業戦略」および、その一環として「アジアゲ―トウェイ構想」の策定

1-9 地場産業のブランド化

1-10 新たな商品やサ-ビスを生み出す中小企業を応援

1-11 理数教育を充実

1-12 イノベ-ションに富むアジアの構築

2.各国の特許制度の共通化

   上記1-5の、「各国の特許制度の共通化への取組など、具体的な政策を実行します」という演述は、「特許制度」という用語を用いたことで、特に今後の措置が注目される。

  特許法を「特許制度」の川上として、その施行政令・施行規則から審査基準とその適用に至る川の流れの川下を見ると、特許査定の結果、すなわち、特許性の認定の共通化が計画が進捗しつつあるのに対して、法定制度の条文の共通化は、世界特許の実現と同義で、「具体的政策」には直結しがたい観が持たれているからである。すなわち、川上は多様でも(各国の産業政策の歴史・現状等に由来する多様性)、「有用な新規着想」という、「融けて流れた水」は、川下で「皆同じ」のはずだから、「川下」から共通化(審査結果の相互承認)を具体的しようというのである。

  日米特許審査ハイウエイを始め、日米特許FTA構想という呼称もあるが、

 いずれも上記の川下先行共通化の具体的政策として、理解し推進すべきである。

  特許以外の分野では、「各国制度の共通化」は、国際会議の条約案合意から締結・批准・国内立法を経て実施に至るが、特許分野では川下から川上に遡上する。この仕組みを「制度」というである。

3.総理大臣施政演説の出典

   内閣官房の機能強化が志向されているが、総理大臣施政演説の草案は、各省の登載要望事項が内閣参事官室に集約されて、官房長官や総理自身が加筆・修正する。

   このたびの「特許制度の共通化」の出典は、知財推進計画06と推定されるが、知財推進計画07でこの項目がどのように展開するか、注目される。

  その要点を、SANARI PATENT本稿その2以下で追跡したい。

 (SANARI PATENT追記その1: 安倍演説の「文化産業」は、ファッションや食文化にも及ぶ広範な分野であるが、ニュ―ヨ―ク・パリ等の「日本食ブ―ム」は、安倍演説に先行している。例えば、TV東京は、ニュ―ヨ―クの日本食店数に次いで、パリ500店(年間3割増(9割は、中国人が経営)と実況放映した(2007-01-27)。しかし、JETROの日本食認証(パリで50店認証した)が意図する「純正日本食」志向には疑問を付している。全て食文化は、現地化しつつ普及すること、日本自身のナポリタンやトンカツ等に徴しても明らかである。日本食材やその代替品の輸出、現地化するノウハウ、なまものの衛生技術等の重要性を強調したTV東京の見方は適切である。

  (SANARI PATENT 追記その2:安倍演説は、、アジア等で、文化産業の戦略とゲ―トウェイ構築をわが国がリ―ドしたいとしているが、人材育成が必要。例えば、コンテンツについて、ソウル発assahi.comによれば、韓国俳優ペ・ヨンジュンが年所得約45億5千万円の9割を日本での活動で得ているとのこと。プログラム分野でも、インドや中国のソフトウェアエンジニアの欧米における活躍が注目される)

2007年1月28日 (日)

「特許の国際標準化」と「医薬品の国際標準化」

2007ライフサイエンス知財フォ-ラムで得たもの(その2)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

2.(承前01-23記事)

2-1 内閣知財戦略本部の知財推進計画07は、本年6月までに決定を予定しているが、国際標準化戦略を特に強調する。しかし、「国際標準化」の実態とその意義が、産業分野と国情の違いによって相異することについては、言及するところが、ほとんどない。

2-2 このフォ-ラムでも、「国際標準化の動向」が示されたが、医薬品における特許と、他の分野における特許の機能の相異(「一商品一ないし少数特許権(単独独占)」と「一商品多数特許権(相互ライセンス)」が、ここにも現われている。すなわち、医薬品の国際標準化については、このフォ-ラムで次のように示された。

2-2-1 現在は、各国の医薬品承認申請制度が異なるため、国内・国外の各国承認が他国には通用せず、国ごとに別個の制度が要求する資料をもって個別に承認申請しなければならない。

2-2-2 日米EU医薬品規制調和国際会議(International conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use: ICH)が平成3年に開始されたが(SANARI PATENT 注:名称に「標準化」の語がない。内閣知財戦略本部の国際標準化志向に、「医薬品における国際標準化」がどのように巻き込まれてゆくか、同調するのか、リ―ドするのか、不明な段階である。いずれにせよ、平成3年という年次は、、国際標準化の先達であるITUより遥かに遅いが、わが国内閣知財戦略本部の国際標準化戦略よりは、遥かに早い)、このような各国の制度の相異を調整し、共通のガイドラインの策定を進めている。その成果は、わが国における医薬品承認申請に関する規則にも反映している。

2-2-3 平成10年には、海外臨床デ―タ受入に関するガイドラインが最終合意され、同年、わが国でも実施された(SANARI PATENT 注:特許審査基準と出願様式に関する国際合意の形成に先だっている)。これにより、わが国で補完的臨床試験(Bridging Study)を行い、海外デ―タを受入できる。

2-2-4 さらに平成12年11月にはCITにおいて、医薬品承認申請資料の様式を標準化するガイドライン(Common Technical Document: CTD)が合意され、わが国では平成15年7月1日以降の新医薬品承認申請について適用されることとなった。

2-2-5 上記により、日米欧における医薬品承認申請資料の編集の重複作業が軽減され、有効・安全な新医薬品の迅速な提供に資し得ることとなった。日本製薬協は、「他産業に例を見ない国際標準の完成を目指している」と、述べているが、ITUの国際標準化が実質はデファクトであることと対比しても、他産業ないし国民に誇り得る成果と考える。

2-2-6 なお、平成15年11月のICH(大阪にて)では、市販後安全対策に関するガイドラインなど多くのガイドラインの検討が、最終合意に向けて進展した旨、このフォ-ラムにおいても示された。

以下、本稿その3に記載

2007年1月27日 (土)

クリエ―タ―に著作権合法の安心を、ユ-ザ-には多様な流通の便益を

内閣知財戦略本部コンテンツ専門調査会案(要旨と考察)(その4)

サイボ―ズでは「ス―パ―クリエ―タ―」制度も

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

10.(承前 0126記事)多様なコンテンツ関連技術の開発

10-1 世界をリ―ドするコンテンツ関連技術を開発・普及する。

10-1-1 課題

コンテンツを活かすための技術開発のニ―ズと、ハ―ドメ―カ―・大学等の技術開発を架橋する。また、コンテンツの共通基盤的技術について業界が連携して開発・普及する。

10-1-2        解決策

10-1-2-1      日本発のコンテンツの関連技術において世界をリ―ドできるよう、ソフト・ハ―ドが連携する。

10-1-2-2      産学官連携で先導的技術を研究開発する。

10-1-2-3      国際競争力強化のため、基本技術を共有化する。

10-2      ハ―ド・ソフト連携ビジネスモデルを構築する。

10-2-1        課題

情報家電やケ―タイなどの機器と、それらに組み込まれたソフトウェア、および、そこで利用されるコンテンツを組み合せる新たなビジネスモデルを構築すると共に、それらの基盤インフラを整備する。

10-2-2        解決策

10-2-2-1      民間企業において、ケ―タイやワンセグの強みを活かしたコンテンツ・ビジネスを構築する。

10-2-2-2      デジタルコンテンツ流通の重要基盤として、地上デジタル放送への全面的移行を確実に実行する。

10-2-2-3      コンテンツホルダ―とメ―カ―間の信頼感を醸成し、ネット時代の技術規格について、国際標準化を視野に入れた取組を促進する。

10-3      バランスがとれたプロテクッションシステムの採用

10-3-1 課題

動画投稿サイトなどにおける、権利処理未済の違法コンテンツ流通が頻発している環境下で、デジタル放送の普及により、違法コンテンツが高画質で流通する可能性がある。

一方、コンテンツの流通促進のためには、ユ-ザ-の便益の一層配慮すべきである。

上記2つの必要性、すなわち、「クリエ―タ―に著作権合法の安心」を、

「ユ-ザ-には多様な流通の便益」を、共に提供する、バランスのとれたプロテクションシステムの採用すべきである。

10-3-2 解決策

    地上デジタル放送のコピ―プロテクッションシステムについて、権利者が安心してコンテンツを提供できる環境を作ると共に、ユ-ザ-の使い易さに配慮したル―ルを採用する。

11、コンテンツ制作の資金

11-1 課題

独立系のプロデュ―サ―やクリエ―タ―が制作資金を調達し、作品を広く流通・販売できるよう、制度を改革する。

11-2        解決策

11-2-1 優遇税制

コンテンツ制作資金の拠出を容易にするよう、エンジェル税制や寄付金税制を見直す。

11-2-2        コンテンツ市場

    信頼性の高いコンテンツの価値評価手法を民間において確立すると共に、二次利用を含めたコンテンツの取引市場を整備するよう促す。

12.SANARI PATENT所見

案の内容が多岐にわたり、各界の所見も多岐にわたることと予想されるが、SANARI PATENTとしては、ここでは、上記11-2-2の意味深な表現を考察する。

先ず、「民間において」が重要である。内閣知財戦略本部の知財推進計画04までは、「(政府が)知的財産の価値評価の手法を『確立』する」としていた。「確立」という用語は、中央官庁の作文で好んで使われるが、「知的財産の価値評価」を「定性的価値評価」と「定額的価値評価」の区別もなく計画について掲げたことは、そもそも「知的財産の定額評価」の意味を究めることなく作文したもので、当然、「確立」に遠く、知財推進計画05では記述自体を回避している。

知財推進計画06に至って、知的財産の価値評価に関する記述は、次のようになった。

「企業等が知財を活用した活動を行うためには、知財の活用の目的に応じた価値評価を行うことが必要である。2006年度は、「知的財産(権)の価値評価手法の確立に向けた考え方(中間論点整理)」等を参考にし、民間において信頼性の高い価値評価手法が確立され、知財の目的に応じた評価実務が行われるよう奨励する。」

今次案にも、この「奨励」がどのようになされているのか、記述がないが、SANARI PATENTとしては、知的財産権の類型と評価目的に対応する評価手法が必要であり、コンテンツについては、オ―クション市場の構築を予定すべきであると考える。

2007年1月26日 (金)

多様化するユ-ザ-ニ―ズに柔軟に対応(ブランド名を忘れたが図柄で検索、中国の「蝋筆小新」から「クレヨンしんちゃん」を検索等)

内閣知財戦略本部コンテンツ専門調査会の政策展開(その3)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

7.(承前 01-25記事)一般ユ-ザ-が著作物を楽しむ機会を充実する:

7-1 課題

   ネット上で誰でも気軽に参加してコンテンツが創作され(SANARI PATENT 注:ブログの急成長が意識されている。人気ブログの出版の成功例のように、デジタル→アナログ変換も含めて)、循環する時代において、ユ-ザ-が豊かなコンテンツを楽しむよう、技術の発展とユ-ザ-ニ―ズに柔軟に対応するサ-ビスを支える法制度を構築する。

7-2        解決策

7-2-1        ネット検索サ-ビスに関する著作権問題

ネット上での検索に伴う検索サ―バ―への複製・編集等や、検索結果の表示に関する著作権法上の課題を明確にし、所要の措置を講ずるなど、知の世界の秩序の再編に対応して、デジタル化・ネットワ-ク化に適応した法制度を検討する。

7-2-2        新たなコンテンツへの検索・アクセス技術の開発・国際標準化や、保護ル―ルを検討する。

7-2-3        放送番組ア―カイブの活用

NHKア―カイブの活用によるネット配信サ-ビスが行えるよう2006年度中に放送法を改正すると共に、著作権法上の課題を検討し、民間放送事業者が保有する番組を含めて放送番組ア―カイブの円滑な利用を促進する。 

7-2-4        コンテンツの保存・収集・利用の促進

7-2-5        公共的なデジタルア―カイブにおける著作物の収集・保存や、絶版知財物の提供など、非営利目的や、商業的利用と競合しない利用について、クリエ―タ―への補償措置も考慮しつつ、コンテンツの保存・収集・利用の促進方策を検討する。

7-2-6        コンテンツのネット流通の促進

著作者が予め意思表示する際の利用条件の類型化やル―ル等を検討し、意思表示のシステムを構築する。

8.国際的に通用する専門人材を育成する

8-1 課題

わが国のマンガ、アニメ、ゲ―ム等のコンテンツは、海外でも評価され、日本人のコンテンツ創出能力は世界に通用する。しかし、創出したコンテンツを一層強力に世界に発信してゆくためには、コンテンツ人材の国際的情報収集能力や国際的言語能力を高める必要がある。

また、海外における契約締結と訴訟対応のの能力を高めると共に、コンテンツ企業を支える国内弁護士を育成する必要がある。

国際的に通用する専門人材を育成する

8-2        解決策

8-2-1        プロセス一貫かつ国際的なプロデュ―サ―の育成(SANARI PATENT 注:標題前半を本稿で補完した)

資金調達から作品の企画・制作・宣伝・販売までのプロセスを一貫してマネジメントできるプロデュ―サ―を育成する。

このため、海外との企画共同開発のワ―クショップ開催や情報提供により、人材ネットワ-クの強化、ノウハウの蓄積を推進する。

8-2-2        国際的なエンタ―テインメント・ロイヤ―の育成

8-2-3        海外一流人材養成機関等への留学生支援

9.コンテンツ分野を支える幅広い人材を育成する

9-1 課題

コンテンツ産業に優秀な人材を集めるには、日本の豊かなコンテンツへの理解に基づき、コンテンツ人材に対する適切な評価や、産学における人材育成が必要である(SANARI PATENT 注:原文の文脈を整理した)

9-2        解決策

9-2-1        映画産業振興機構を中心として、産学連携する。

9-2-2        大学間連携する。

9-2-3        コンテンツを尊重する教育と国民への啓発活動を強化する。

9-2-4        日本映画の推奨リストを作成する。

9-2-5        国際マンガ賞などの顕彰制度を創設する。

「技術開発」については、本稿その4に継続

10.SANARI PATENT所見

10-1 コンテンツは、精神的文化財であると共に、営業的経済財である。今次内閣知財戦略本部専門調査会の案は、わが国のコンテンツがすべて美しい国の美しい精神文化をデジタル化したものとの、世界特許的普遍性の認識に立って、日本デジタルコンテンツの世界拡販のパイの拡大と、その分配に重点先行の観がある。

  平成19年度予算には、ODA国費の継続的増額が予定されたが、放送番組の無償供与等による「美しい国の美しい精神的文化財」が、後進国・途上国にも認識されなければ、国連等で、然るべき地位に就くことも遠ざかるであろう。

10-2今次案文では、「ユ-ザ-」という用語が「一般国民」「大衆」「世界市民」の意味に用いられた。「ネット上でユ-ザ-が誰でも参加してコンテンツを創作する時代」との指摘は適切であるが、「電車男」の営業的成功例から見れば、随分遅い指摘でもある。ブログのデジタルコンテンツが、製本化のアナログコンテンツ化変換していること、米国におけるわが国アニメのリメ―ク映画・演劇化など、コンテンツのデジタル・アナログ変換交流にも着目すべきである。

2007年1月25日 (木)

コンテンツビジネスのスキ―ムを支える著作権制度を作る

内閣知財戦略本部・コンテンツ専門調査会が「基本目標」を刷新(その2)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

5.(承前1-24記事) 法制度・契約の改革

5-1 コンテンツビジネスのスキ―ムを支える著作権制度を作る:

5-1-1 課題 

デジタル化・ネットワ-ク化など、コンテンツの環境は急変しており、ユ-ザ-ニ―ズも多様化している。コンテンツビジネスの振興は民が主体であり、官は阻害要因を排除するという視点ももとで、環境の変化に柔軟に対応する新たなビジネスを支えることができるよう、著作権制度とその運用を見直すべきである。

5-1-2        解決策

5-1-2-1           ユ-ザ-ニ―ズに迅速に対応するビジネスモデルの構築

   法的環境整備の大前提として、ビジネスサイドは、ユ-ザ-が望む新しい利用形態を、ビジネススキ―ムの一環として素早く取り込む視点が必要である。この視点が、新たなビジネスの創出と、新規参入を促進する。

5-1-2-2           IPマルチキャスト放送へのコンテンツ流通の促進:

    IPマルチキャスト放送に関する著作権法改正も踏まえ、地上デジタル放送の同時再送信を、既計画スケジュ―ルに即して実施すべく、措置する。その際、放送番組に関する権利管理情報を、放送事業者やIPマルチキャスト事業者など関係者が協力して整備する。

5-1-2-3           IPマルチキャスト方式による自主放送について、諸外国の動向を踏まえつつ、著作権法上の取扱いの明確化、プロテクションを含む端末技術の標準化の促進、放送番組等のコンテンツ流通市場の整備を速やかに進める。

5-1-2-4           クリエ―タ―の新たな創作チャンスを増やす視点も踏まえ、IPマルチキャスト事業者とクリエ―タ―のビジネスマッチングの機会を充実する。

5-1-2-5           違法に複製されたコンテンツの故人による複製については、インタ-ネット上の違法送信からの複製や、海賊版CD・DVDからの複製について、私的複製の許容範囲から除外することについて、新しいビジネスの動きを支援するため、情報の流通を過度に萎縮させることがないように留意しつつ、著作権法を見直す。

5-1-2-6           権利者不明なコンテンツの流通について、わが国が蓄積してきた豊かなコンテンツを活用するため、諸外国の動向も踏まえ、利用者が相当の努力を払っても権利者と連絡できない場合について、利用の円滑化の新たな方策を検討する。

5-1-2-7           ノンフィクション番組の利用に際し、連絡先を把握し難い一般人からの申出を受付ける期間を設け、利用者の供託金により運営する自主的取組を奨励する。

5-2                      クリエ―タ―に適正な報酬をもたらす仕組み

5-2-1        課題

海外展開やネット流通など新たなコンテンツの流通が進むことにより、クリエ―タ―も含めて関係者全体に新たな利益が生ずるという意識のもとで、業界を挙げて市場の拡大に取組む機運を高める必要がある。

5-2-2        解決策

5-2-2-1           マルチユ―スを前提とした契約ル―ルづくり:

   新たなコンテンツの流通を進めることにより、関係者全体が受益するコンテンツ大国を目指して、マルチユ―スを前提とする関係者間の契約ル―ルづくりを進める。

5-2-2-2           放送番組のマルチユ―スの促進

    放送番組のマルチユ―スにより関係者全体が受益するよう、放送事業者と番組制作会社間の契約モデルを作成し、窓口管理業務(窓口権)に関する公正な協議・契約の締結を進めるなど、放送番組の制作委託に係る課題を解決する。

5-2-2-3           権利の集中管理

マルチユ―スに際し、クリエ―タ―に適正な報酬をもたらす仕組みとして、権利の集中管理や権利管理情報を整備すると共に、著作権法上の共同実演に関するガイドラインを作成し、利用に関してほとんどの権利者の合意が得られるコンテンツの流通を促す。

5-2-2-4           契約に関する規定の整備

コンテンツ業界における契約意識の高まりを実らせるべく、著作権契約に関する法的な規定の必要性について検討する。

5-2-2-5           コンテンツ発表の場の拡大

個人クリエ―タ―などの作品を広く発信し、国内外にビジネス展開できる場を整備するため、ネット上でのコンテンツ取引機会を提供するネットマ―ケットを構築する。    

5-2-2-6           公正透明なコンテンツ業界の実現

クリエ―タ―への適正な対価の支払い等の契約内容の適正化を促し、公正透明なコンテンツ業界を実現するため、独禁法および下請代金法の

  普及・相談の充実と厳正・迅速な運用を行う。

7.SANARI PATENT所見

   わが国のコンテンツ産業振興について指摘されてきた多岐にわたる問題点への対応が網羅されている。わが国のいわゆる精神風土に根ざすものもあって、対策の実効を挙げるにはエネルギ―を要するが、遂行しなければならない。ここにも、民の力が貫かれることを強く期待する。

     一般ユ-ザ-対策については、本稿その3に記述する。

2007年1月24日 (水)

「本格的な知の大戦争時代」;内閣知財戦略本部・コンテンツ専門調査会が「基本目標」を刷新(1月22日)

コンテンツ業界におけるわが国独自の国情由来課題を摘出(以下・要旨を記載)(その1)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  内閣知財戦略本部のコンテンツ専門調査会の新しい報告ができた。作成者(同専門調査会委員は、ウシオ電機会長・牛尾治朗、東芝会長・岡村 正、角川社長・角川歴彦、小学館・久保雅一、久保利英明弁護士、ヒットメ―カ―社長・熊谷美恵、漫画家・里中満智子、テレビマンユニオン会長・重延 浩、NHK専務理事・関根昭義、日本民法連会長・日枝 久、東大助教授・浜野保樹、エイベックス社長・佐田 巽の各氏である。

  内閣知財戦略本部の知財推進計画策定において、パブコメ(全国民対象意見公募)が最も多数・多彩に送信されたのは、コンテンツ政策についてであった。デジタルコンテンツの流通促進できる急速な技術革新(知的財産権のコンテンツ流通側面)と、複製権・送信可能化権等の著作権(コンテンツの創造側面)との、知的財産内・内部相克が一挙に顕在化した観がある。

 今次コンテンツ専門調査会報告(以下・要旨を記載)によっても、上記知的財産間内部相克が急速に収まるとは予想しがたい。

1、        現時点における基本認識

1-1 デジタル化や国際化の進展、知識社会の到来により、コンテンツの分野にあっても、本格的な知の大戦争時代を迎えた。わが国内の現状は、この分野では、依然世界の高スピ―ド変化に対応できず、個々の潜在能力も発揮しつくされていない。未来に向けてクリエイティブな活動を加速しなければならない。

1-2  先ずわが国コンテンツの現状は、

1-2-1        世界の高スピ―ド変化と乖離している。

    グ―グルの発展など、コンテンツのビジネス内容や流通システムの世界的変化対して後手にまわっている。

1-2-2        潜在能力が活かされていない。

    優れたコンテンツ創作能力が潜在するのに、活かしていない。

1-2-3        市場拡大を高速化できるはず。

    コンテンツ産業は、技術革新や新ビジネスモデルの続出により、二桁成長が可能な分野である。

1-2-4        民が主体

    コンテンツ大国へのシナリオを実現できるのは民間企業のビジネス戦略であり、官は、環境整備・側面支援を行うべきである(SANARI PATENT 注:原文よりも、役割分担を強調して要約した)

1-2-5        成長を妨げている要因

    わが国が、豊かなコンテンツの創造力やコンテンツの創作・流通を支える技術開発力を備えながら、この潜在能力が活かされていない要因として次のように指摘される。

1-2-5-1           時代の変化に対応できない制度と業顔慣行

   既存の法律・契約システムや業界慣行が新たな創作活動とビジネスの芽を摘んでおり、このままでは、優秀な人材がコンテンツ業界に魅力を感じず、海外に流出し、業界先細りのおそれがある。

12-5-2        将来に着眼し新しい産業や収益源を見出す視点の欠如

   既存システムでの利害調整に終始し、新ビジネス生成のエネルギ―を浪費しているため、革新的発展を図れない。

1-2-5-2           産業界の海外戦略の欠如

   国内市場に安住し、海外市場を拡大する意欲とその具体的実現の戦略を欠くため、ビジネス展開が受身・後追いで、既存市場のパイの取り合いに留まっているおそれがある。

2.コンテンツ政策の基本目標

2-1 世界に通用する業界となる

2-1-1 「特別な業界」から「普通の業界」として世界に飛躍する。

2-1-2 業界の近代化・合理化により競争を促進する。

2-1-3 ハ―ド・ソフトの連携によりビジネス戦略を強化する。

2-1-4 クリエ―タ―へ適正な利益配分がなされ、将来を担う人材が業界外からもあつまるようにする。

2-2 世界のコンテンツのハブとなる。

2-2-1 世界中のコンテンツや人材・資金が日本に集まりように努め、また、コンテンツに係る人・モノ・カネの国際的交流を図る(SANARI PATENT 注:この項、若干補筆した)

3-2-2 魅力あるジャパンコンテンツを世界に発信する。

4.具体策

4-1 海外を意識したコンテンツ制作を促進する。

4-2 コンテンツ事業者の法務能力を向上する。

4-3 海外展開を見据えた権利処理を促進する。

4-4 流通支配力を強化する(海外のメディアや流通事業者への出資や業務提携、現地法人の設立、オンライン配信やケ―タイ配信の強化を促進する。

4-5 映画に関する国際協力覚書について、締結済みのフランス・韓国以外の主要国に及ぼす。

4-6 事業者の戦略的海外展開に資する各種情報を提供する。

4-7 コンテンツ事業者の国際競争力を強化する。

4-8 日本の魅力に関する情報の収集と発信力を強化する。

4-6 国際コンテンツカ―ニバルを行う。

4-7 アジア域内の優秀な人材の交流を促進する。

4-8 国際コンテンツカ―ニバル等において、クリエ―タ―の活躍の場を提供する。

4-7 日本の多様な文化・コンテンツの市場機能を強化する。

4-8 コンテンツポ―タルサイトの開設と運用を支援する。

4-9 国際放送を活用する。

4-10 国内のフイルムコミッションとの連携を強化する。

4-11 EPAにより海賊版対策を強化する。

4-12 在外公館における相談機能を強化する。

4-13 JETROによる知財権保護支援を強化する。

4-14 コンテンツ海外流通マ―ク(CJ)の周知・普及を促進する、

5. コンテンツビジネスのスキ―ムを支える著作権制度を作る。

 上記5については、詳述を要するので、以下本稿その2に記述する。

2007年1月23日 (火)

2007ライフサイエンス知財フォ-ラムで得たもの(その1)

日本製薬工業協会とバイオインダストリ―協会に表敬・感謝しつつ

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

 標記フォ-ラム(2007-01-19)においては、01-22記事に述べたように、秋元 浩・製薬協知的財産委員会委員長ほかの講演・パネルディスカッション・文献の配布が行われ、多彩かつ豊富な内容であったが、内閣知財戦略本部の「融合的人材育成」の大方針に従って、これら知財資源(以下「このフォ-ラム」と称する)を融合した所見の記述を、以下に試みることとする。

1.        リサ―チツ―ル特許について(定義の多様性、汎用性と非代替性の高低等)

1-1  内閣知財戦略本部の知財推進計画06では、リサ―チツ―ルの意味ないし定義を、「研究を実施するための道具。遺伝子改変マウス等のモデル動物、スクリ―ニング方法などがある」と記述している。

   しかし、このフォ-ラムによって指摘されたのは、リサ―チツ―ルの定義が文脈によって異なることである。例えば、米国国立衛生研究所の定義は、分野をバイオ領域に限定せず、発見のためのツ―ルであり、多くの研究者や企業にとって有用な発明であり、ツ―ルとして現に実用化ないし配布可能であることとしており、研究ライセンスの適用範囲を拡大する意図のもとに、広い分野にわたる定義になっている。

   また例えば、リサ―チツ―ルに関する裁定実施権、すなわち、特許権の制限について述べる場合、権利制限の例外性、従って、最小限度性から、化学・生物学の研究道具であって、汎用性が高いのに代替性がないものに限定して定義される。

   このようなリサ―チツ―ルという用語使用の不明確性が、リサ―チツ―ルについての対策検討に混乱を招いていると、このフォ-ラムで指摘があった。

1-2  このことは、遺伝子関連発明のライセンス供与に関するOECDガイドラインと、わが国総合科学会議の「リサ―チツ―ルの使用の円滑化のための指針案」とを総合して考察するとき、改めて認識される。すなわち、OECDの上記ガイドラインは、人の健康の保持・回復を目的として使用される遺伝子関連発明に係る知的財産権のライセンスに適用するものであり、遺伝子関連発明とは、「核酸、ヌクレオチド配列、形質転換細胞株、ベクタ―」、「これらの作成・使用」、「これらの分析の方法・技術・材料」を含むとしているから、上記1-1の広狭何れのリサ―チツ―ルの定義にも該当し、従って、このガイドラインがリサ―チツ―ルに関するパテントポリシ―の一環としての内容を有することは、先ず共通の認識とすべきであると考える。

1-3  一方、わが国総合科学会議の「リサ―チツ―ルの使用の円滑化のための指針案」においては、リサ―チツ―ル特許とは、「ライフサイエンス分野において研究を行うための道具として使用される物または方法に関する特許と定義され、実験用動植物、細胞株、単クロ―ン抗体、スクリ―ニング方法などと例示されている。総合科学会議の課題意識は、リサ―チツ―ル特許には高汎用性・低代替性のものも多いこと、従って、研究開発促進のためリサ―チツ―ル特許の使用の円滑化と、保護と活用のバランスのとれた実務運用の必要性に存する。

1-4  上記指針案の「代替性が低いものが多い」という、非代替性と代替性との程度の分布が大きな意味を持つと考える。非代替性リサ―チツ―ルについては、現在、二つの課題に直面していると考える。

   一つは、特許法上、特許権の効力が及ばない範囲としての「試験・研究のためにする特許発明の実施」の、試験・研究の範囲が不安定で、紛争の因子すら内包していることである。

   他の一つは、裁定実施権制度の発動を意図するのか、ガイドライン、指針、パテントポリシ―というような(これらの名称も流動し不安定だが)、いずれも法的には「勧告」に留めるのかの選択である。

  なお、バイオ分野でスクリ―ニング方法などの国際標準化に進むならば、標準化対象のリサ―チツ―ルの非代替性が一挙に顕在化することになると考える。

2以下は、本稿その2に記述する。

2007年1月22日 (月)

医薬品における用途(効能・効果)の語義

エ―ザイの食道炎先発医薬品の著効を認識←特許権の延長に関する知財高裁 1月18日判決)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        今次判決の背景

  原告・エ―ザイ、被告・特許庁長官「平成17年(行ケ)第10726号 審決取消請求事件」知財高裁平成19年1月18日判決は、医療・医薬経済の課題と関連して、盛んに話題にされるジェネリック医薬品の続発問題とも関係する重要な判決である。

  医薬品特許については、薬事法に基づく製造販売承認を要するため、5年間以内の特許権存続期間延長が認められている。すなわち、特許法第67条第2項は、「特許権の存続期間は、その特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であって、当該処分の目的・手続等からみて、当該処分を的確に行うには、相当の期間を要するものとして、政令で定めるものを受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があったときは、5年を限度として、延長登録の出願により延長することができる。」と定め、さらに同条第5項には、「特許権の存続期間の延長登録の出願があったときは、存続期間は、延長されたものとみなす。ただし、その出願について拒絶すべき旨の査定が確定し、または特許権の存続期間を延長した旨の登録があったときは、この限りでない。」と定めている。

2.        事案の概要

2-1  本件特許発明「酸不安定化合物の内服用製剤」の特許権者・エ―ザイは、本件特許権存続期間の延長登録を、平成15年10月15日に出願し、平成16年4月26日に補正した。

2-2  上記補正後の記載事項は、

2-2-1      延長登録の理由となる処分: 薬事法14条1項の「医薬品に係る同項の承認」についての同条7項の「医薬品製造承認事項の一部変更承認

2-2-2      処分を受けた日: 平成15年7月17日

2-2-3      処分の対象となった物: ラベプラゾ―ルナトリウム

2-2-4      処分の対象となった物について特定された用途: 再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法

2-3 延長登録出願に対する拒絶査定日は平成16年7月7日、審査請求日は平成16年8月17日、「本件審判の請求は成立たない」とする審決日は平成17年8月24日である。

3.        知財高裁の判断と説示

3-1        特許法67条2項の解釈:「用途の同一性」

「その特許発明の実施について処分を受けることが必要である」との文言は、「物(有効成分)と用途(効能・効果)という観点から処分を受けることが必要であったこと」と解すべきであり、本願に係る処分における「用途」と先の処分に係る「用途」が同一である場合には、特許発明の延長登録は認められない。この解釈については、当事者間に争いはない。

3-2        主たる争点は、先の処分に係る「用途」と、本件処分に係る「用途」が同一であるかどうかである。

3-3        エ―ザイは、本件処分に係る「用途(効能・効果)」は、「再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法」であって、先の処分に係る「逆流性食道炎」とは異なると主張する(SANARI PATENT 注:精確には、「逆流性食道炎の維持療法」であろう)

特許庁は、先の処分と本件処分に係る「用途(効能・効果)」は、いずれも「逆流性食道炎」の治療であり、本件処分において変更されたのは、用法および用量に過ぎないと主張する。

3-4 「用途(効能・効果)」の意義

   一般に、「用途」とは、「使い道、使いどころ」を意味するが、このよう  な通例の意義によれば、医薬品の用途とは、医薬品が作用して効能または効果を奏する疾患や病症等をいい、これ対して、医薬品の投与間隔・投与量・摂取方法等、当該疾病に対して医薬品が効能または効果を発揮するための具体的な方法等を「用法および用量」というと解すべきである。

3-4        これに対してエ―ザイは、製造承認書の製造承認書の形式的な記載にによって直ちに当該医薬品に係る特許権の存続期間の延長登録に関する「物(有効成分)」ないし「用途(効能・効果)」を特定することは、許されないと主張する。

3-5         しかし、医薬品の「効能・効果」という用語の意義について、薬事法と特許法で別異に解すべき理由はなく、当該医薬品具体的適用される疾患をいうと理解することが相当である。両処分に係る医薬品の適用対象となる

疾患名具体的同一である場合には、新たな処分に係る医薬品の適用対象がその病態等に照らして実質的に異なる疾患と認められ、あるいは、当該治療法における医薬品の薬理作用が先の処分とは異なるなどの事情が認められない限り、その「用途(効能・効果)」は同一であるというべきである。

4.        SANARI PATENT所見

   上記の見地から、知財高裁はエ―ザイの今次請求を棄却したが、同一性の具体的検討において、エ―ザイの先発医薬品の効能・効果が、より広範に顕著であることを、判決文が示す結果になったと考える。

2007年1月21日 (日)

阿部博之・荒井寿光・小島康寿・秋元 浩・4氏のライフサイエンス特別講演の総合考察(リサ―チツ―ル特許に対するパテントポリシ―案等)

日本製薬工業協会・バイオインダストリ―協会の知財フォ-ラム(1月19日)(医療特許の拡大、バイオ産学連携における思惑の相違等)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

   特別講演者のご発言内容は、『 』を付して記載する。すなわち、『』内のほかは、ご発言についての考察である。

1.        プロイノベ-ション(その多様な定義)とプロパテント

「イノベ-ション」は、安倍総理大臣の就任演説以来、「技術革新」と括弧書きされ、言葉としては別段新しい用語でないから、その新しい意味を把握することが必要である。

 『阿部氏(前総合科学技術会議議員・東北大名誉教授)は先ず、総合科学技術会議におけるイノベ-ションの定義、「科学的発見や技術的発明を洞察力と融合し発展させ、新たな社会的価値や経済的価値を生み出す革新」を掲げた。』

 『小島氏(経済産業省産業技術環境局長)は、「イノベ-ションとは、新しい知

 この「新たな社会的価値や経済的価値を生み出す革新」が実現するタイミングが実は当面、最大の問題であろう。米国で現在強調されているイノベ-ションは、「研究開発の結果が新たな社会的価値や経済的価値を生み出す」のではなくて、「新たな社会的価値や経済的価値を生み出すべく(目的を設定して)研究開発する「営利企業型」の革新に特化しようとしている。

 わが国のプロパテントは、新たな科学的知見の積み重ねによる結果的進歩性を重視するもので、当面する経済的・社会的課題に近接する意図は表面化せず、進歩性を認定された特許権も、休眠している割合が高い。

 勿論、科学技術の進歩性を長期的に戦略化することは必要であり、『阿部氏は、安倍内閣の「イノベ-ション25」の「25」は「2025年」の25であると解説』を付されたが、これを踏まえて、短期の基本計画を策定し(第3期は平成18年3月決定)逐年実際的な成果を収めることを期している。

 米国特許商標庁は、近く「米国パテント新5年計画」を公表するが、5年と3年の比較よりも、その中身の実行性が問題である。米国では、特許行政におけるIT化を一層進め、サイバースペ-スの活用を全国に展開する用であるが、わが国では、未だ面接主義が根強く、インタ-ネット本人出願の中小・ベンチャ-企業への普及や、知財専門家のメ-ル応対に難点がある(ユ-ザ-のメ-ル応対に対する苦情)。

2.        リサ―チツ―ル特許に対するパテントポリシ―

わが国製薬工業界における上記は、いわゆるRAND条項を含めて、2005

年4月に、日本製薬工業会の機関誌に公表された指針が実施されてきたと認識しているが、『阿部氏が示された「ライフサイエンス分野において研究を行うための道具として使用される物または方法に関する特許」の使用の円滑化のための指針案』は、特許権者と使用者を3区分して、「原則無償」、「無償または合理的な対価」、「合理的な対価」をライセンス条件とする』ものであり、パテントポリシ―の大先輩であるITUのそれを含めて、今後諸分野で策定を要するパテントポリシ―の参考になるものと考える。ただし、グロ-バルな諸インフラの必須特許という点、すなわち、非代替的という点では、リサ―チツ―ル特許も基幹国際電気通信特許も同様であるが、「標準化」という用語が馴染むか否かは別問題である(秋元氏は、パテントポリシ―という用語は用いなかった)。

3.        医療特許の拡大

   世界特許への過程として、制度調和の先進国間基本合意等が進められれているが、特許法のベ―スで見て、制度未調和が顕著な分野の一つが医療分野である。わが国の特許法に、医療分野の特許性を否定する規定はないが、「産業上利用可能性」の「産業」の解釈により、審査基準の段階で医療関連発明の特許性が、その範囲を規制されてきた。

  『荒井氏(知財評論家・前内閣知的財産戦略推進事務局長)は、「日本の医療特許は狭すぎる」、「狭い特許付与で守られていては、いつまでも世界と勝負できない」として、「医療特許は、患者・医師・研究者・企業の三方一両得」と強調した。』

   4氏の特別講演時間が各25分間で、あまりにも簡潔を要したため、例えば、米国において、特許法上、医療関係の特許性を限定する規定がない代わりに、特許権の独占性を医師の医療行為に及ぼさず、損害賠償請求権も排除していること、また、後進国・途上国において、強制実施権の設定が行われていること(わが国では強制実施権の設定の規定はあるが、発動事例はない)など、世界市民の全ての福祉・利益との調整規定を別途要することについて、さらに解説が望まれたところである。

  前項1のイノベ-ションとの関係からみると、安倍内閣は、経済成長を「イノベ-ションと規制緩和」で果たそうとしており、「規制緩和」は、潜在需要が規制のために顕在化しないのを、顕在化させるものであるから、安全性等の要件が満たされれば、経済成長の一翼を担うことは明らかである。保険外診療、薬局・コンビニ販売医薬の対象拡大等には、現在、需要が待ち構えているが、規制にはそれぞれ理由が付されてきたから、その解除には関係者全ての納得を得るべき解説が必要である。

  『遺伝資源・伝統的知識のアクセスと利益配分』にも、後進国・途上国の民間医療に係るTraditional Knowledgeを、先進国特許権が蹂躙する結果となる場合についての、具体的配慮が必要である。

4.        ライフサイエンスにおける産学連携の実際

  秋元氏(武田薬品常務・製薬協知財委員会委員長)は、『特許発明と、実用化可能な発明との認識の相違について、大学・研究機関は、特許されたタネは必ず芽が出るものと考えていないか』と問いかけ、『企業は、特許化=有用性あり、とは考えていない』と指摘した。

  また、『産業側の視点として、「大学の特許件数はここ数年間で確かに飛躍的に向上した」しかし、「特許化された技術の価値観について、産業側と大学・研究機関側の間では大きな溝がある」と指摘』した。

  「有用性」という用語が使われたが、これは米国特許法の特許要件の用語であって、わが国の特許要件の進歩性とは必ずしも同一でない。秋元氏の産学各感覚の対比、すなわち、『大学・研究機関の感覚は、「特許が認められた=産業上価値のある発明だから、どんどんライセンスしたい」「こんなにアカデミア発の特許発明が増えたのだから、連携はもっと進んでいいはず」、「ライフサイエンス企業の感覚は、「特許件数が増えても、研究成果が結実するスピ―ドは変らないのだから、産学連携が飛躍的に増えるわけではない(=現状は適正レベルではないか?)」「実用化の価値があるのは、特許発明のごく一部に過ぎない(実務上の経験)。玉石混交の技術からそれらを見出すのは非常に困難」と指摘した。』と指摘した。

  上記の指摘は、多くの関係者が同感しながら明確に発言しない重要な事柄である。ちなみに、他の分野の中小・ベンチャ-企業が知財専門家対して失望する場合があるのも、特許権に対する即効性の感覚差による基づくのが多いと考える。

  一方、小島氏(経済産業省産業技術環境局長)は、イノベ-ション・ス―パ―ハイウェイのポイントとして、『出口につなげるための課題は、「わが国では優れた医薬品・医療機器が諸外国と比べて利用されにくい状況にある」とし、具体例として「薬事審査基員の増強、治験拠点の整備等、薬事審査を迅速化する体制の整備が必要」と述べたが』、日米特許FTA構想と同様に日米薬事FTA構想が妥当であるかは、医薬作用の人種差等の問題もあり、安全性を捨象(薬事法の領域とする)した特許付与とは別個の検討が必要と考える。

2007年1月20日 (土)

多数当事者間の著作権侵害損害賠償請求事件・知財高裁判決(その1)

教科書とテスト教材の著作権法上の相違、著作者人格権侵害の態様

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  小児科医・児童文学者等々、いずれも著名な詩人、作家、学者等またはその遺産者族人等が、著作物の一部を 小学生用の大手副教材制作販売会社数社によって、許諾なく教材に使用され、著作権を侵害されたとして、損害賠償を請求した事件が、原審「東京地裁平成15年(ワ)29709平成18年3月31日判決」によって一部認容されたが、原審原告が知財高裁に控訴し、知財高裁は、「平成18年(ネ)10045 損害賠償請求控訴事件・平成18年12月6日判決」によって控訴を棄却した。

  知的財産権としての著作権の、他知財権と異なる様相を教材的に示した事例として、以下に原審・控訴審の要点を摘記する。

1.        多数当事者

1-1 原告原告・控訴審控訴人

    児童文学者、別の児童文学者(故人)の相続人、多摩美大教授、東京農大教授、詩人(故人)の相続人、翻訳家(故人)の相続人、詩人(故人)の未亡人、翻訳家、ジャ―ナリアウト、文学者(故人)の養女、作家、学者

1-2 原審被告・控訴審被控訴人

    青葉出版、教育同人社、光文書院、新学社、日本標準、文渓堂、

2.        原審事案の概要

    小学生用国語教科書に掲載された著作物の著作権者である原告らが、これら著作物を掲載した国語テスト教材を制作販売した被告ら対して、同国語テスト教材を制作販売する行為は、原告らの上記著作物に対する複製権および著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)を侵害すると主張して、被告ら対してそれぞれ主位的に、複製権および著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償を求め、同請求権が消滅時効した場合には予備的に、法律上の原因なくして使用料相当額の支払いを免れたと主張して、不当利得の返還を求めた。

3.        原審における争点

3-1        訴えの追加的変更の許否

3-2        著作権法36条1項該当性(条文「公表された著作物は、入学試験その他、人の学識技能に関する試験または検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験または検定の問題として複製することができる。」)

3-3        著作者人格権侵害の有無

3-4        故意・過失の有無

3-5        損害を知った時点

3-6        権利濫用の成否

3-7        損害発生の有無および発生した損害の額

4.        争点に対する東京地裁の判断

4-1  原告による「訴えの追加的変更」を認めない。

(理由)原告らは、訴状はもとより、その後の原告らの主張にも一切現れていなかった「国語ドリル」等を追加する「訴えの追加的変更」を、提訴から2年以上経過した口頭弁論終結の直前の時期に、何らの事前の予告なく突然申し立てた。これを攻撃方法の提出とみても、少なくとも原告らの重大な過失により時機に後れてされたもので、訴訟の完結を遅延させることは明らかである。(民事訴訟法156条違反)

4-2  被告による「著作権法36条1項該当性」の主張を認めない。

(理由)試験または検定の公正な実施のために、その問題としていかなる著作物を利用するかということ自体を秘密にする必要性があり、そのために当該著作物の複製について予め著作権者から許諾を受けることが困難である試験または検定の問題でない限り、著作権法36条1項所定の「試験または検定の問題」としての複製に当たるものということはできない。

著作者人格権侵害に関する争点については、本稿その2

2007年1月19日 (金)

野間口 有・三菱電機取締役会長(内閣知財戦略本部員)の同本部でのご発言を考察

「20世紀においては国際標準の普及というのが、枯れた技術を国際標準にしたので、知的財産との関係はむしろ相反するものと考えられていた」(重要)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

 前回「久保利英明内閣知財戦略本部員」の記事に続く。

1.        野間口本部員のご発言(要旨)

1-1  イノベ-ション戦略には、強い知的財産の創出が必須である。知的財産なくしてイノベ-ションはない。

1-2  「日本発の技術を国際標準へ」というスロ―ガンのもとで、国際標準総合戦略を強化することは、極めて重要である。

1-3  20世紀においては、国際標準の普及というのが、枯れた技術を国際標準にしたので、知的財産との関係は、むしろ相反するものと考えられていたが、知識社会である21世紀では、これらをバランスさせて取組むことが必須である。

1-4  産学官連携については、大学に対し、世界をリ―ドするような独創的な基本特許につながる重要な発明を、是非創出していただきたい。そのためには、大学の知的財産本部とTLOとの連携強化や、地方・地域の大学における産学官連携機能の強化など、大学側の一層の体制整備を期待し、産業界もこれに協力する。

1-5  日米欧等の特許年度の調和、特許出願の書類様式の統一、審査結果の相互承認等に、積極的に取組むべきである。日米欧に、韓国・中国・タイなども連携に加えることが望ましい。

1-6  特許出願審査請求の構造改革は、産業界側は要求をしなかった項目であるが、産業界が今まで、数重視の活動が多すぎたので、質を重視して抜本的な改革をなすべしという、特許庁を始め官側の強い意向によって問いかけられたと受け取っている。これを契機として、わが国の知財活動の質を一段と高めたい。

1-7  世界特許システムは、世界各国で出願する出願人の手続・費用負担の軽減と、各国特許庁の業務負担の軽減を実現するものであるから、審査結果相互利用の動きを加速し、先進国間での相互承認の実現と共に、特にアジア諸国との間で、審査協力、人材育成、IPカルチャ―醸成支援等による特許制度の調和促進が望まれる。

2.        野間口三菱電機会長が例示された「MISTY」

2-1  わが国発の国際標準化の具体的として、かねてより野間口会長が挙げておられるのが「暗号アルゴリズム『MISTUY』の事例」である。

2-2  MISTYの開発・完成は1995年9月であるが、開発の契機は、1980年代から15年間、解読不能であった米国標準暗号DESが1994年1月に解読されたことである。

2-3  開発後、MISTYは、霞ヶ関WAN(省庁間電子文書交換システム)、警視庁「サイバースフォ―ス」、ケ―タイW-CDMA端末・基地局、高速道路ノンストップ料金収受システム等への適用を経て、EU推奨暗号に認定されるなど、国際標準化への歩を進め、2005年5月に、MISTY ISO/IEC国際標準規格採用に至っている。

3.        SANARI PATENT所見

  野間口氏が指摘されたように、国際標準化を先駆した電気通信の分野においても、先進国間の合意形成が遅滞するため、多国籍企業等の世界市場制覇が先行し、国際標準化が後追いする観があった。

  「標準化と知的財産開発のバランス」を重要課題としたい。

2007年1月18日 (木)

久保利英明弁護士・日比谷パ―ク法律事務所代表・大宮法科大学院大学教授

「このままでは、優れたコンテンツ人材は日本を捨てる」:内閣知財戦略本部にて

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  前回の記事・中山信弘東大大学院教授記事に続く。

1.        本年度内閣知財戦略本部におけるご発言(要旨)

1-1  内閣知財戦略本部コンテンツ専門委員会で、「ハリウッドで活躍中の映画プロデュ―サ―・一瀬隆重氏」と「アニメ・造形ア―チスト・村上隆氏」のご意見を聴いたが、そこで明らかになったのは、「このままでは、優れたコンテンツ人材は日本を捨てる」ということである。

1-2  お二人とも、「映画もア―トも産業であるから、利益を無視し得ない。そして、コンテンツが個人の能力に依拠する産業である以上、その利益は個人に還元され、個人が利得することが、優れたコンテンツを成立させる原点であるという哲学を披露された。カネのためにコンテンツを創るわけではないにしても(SANARI PATENT 注:ここのフレ―ズも極めて重要)、優れたコンテンツが利益を生み出せば、当然にカネが製作者に廻ってくる仕組みが必要であり、この仕組みは、契約書にによってのみ担保され得る。

1-3  しかし、日本では契約書の締結を提案するだけで嫌悪され(SANARI PATENT 注:コンテンツ業界の過半ではの意と解する)、失礼な奴として排斥される。

1-4  芸団協の調査によれば、契約書不交付が52.7%、一瀬氏によれば日本映画の90%が映画完成後にしか契約書が締結されていない。契約書の不整備が国外との折衝で損失を招いていることにも気づいていない。

1-5  契約書の締結さえ嫌悪するから、弁護士の介在はさらに限定される。NPO法人としてエンタ―テインメント・ロイヤ―ズ・ネットワ-クを立ち上げたが400人近い弁護士が参加していても、活用されていない。

1-6  このままでは、日本のコンテンツはビジネスたり得ず、趣味にとどまる。成功報酬すら契約書締結できないわが国を、優れたア―チストが捨てて、欧米に拠点移動する。

1-7  わが国が欧米に劣るのは、上述のほか、多様な高度専門教育を受けたコンテンツプロデュ―ス人材の不足と、投資資金の不足である。コンテンツの産業化ができていないため、資金調達・制作・販売などのストラクチャ―が確立せず、プロデュ―サ育成の学校を創っても何を教えるのか確定できない。

1-8  米国では、プロデュ―サの重要な供給源として、コンテンツビジネスに詳しい弁護士やMBAがいるが、わが国にはそれがない。

1-9  わが国では、商品投資法の規制を逃れるため、海外展開に不適な制作委員会方式に安住するので、海外市場を視野に入れたベンチャ-資金やエンジェルの新規投資の流入が困難である。

1-10            税制についても、寄付金控除が限定的で、かつ所得税にのみ適用され地方税の控除は、ほとんど認められない。知財戦略として必要な税制面の改革がほとんどできていない。

1-11            日米の、個人寄付に対する税制の相違が、人材育成の大学等施設の整備の格差をもたらしている。

1-12            IPマルティキャスト、すなわち、インタ-ネットのシステムによる放送について、自主放送を促進すべく、著作権法上および放送法上のネックが除去されてゆくことは、素晴らしい。

1-13            さらに、有線放送と無線放送の区別等について、法制度が技術革新に遅れないよう措置すべきである。

2.        SANARI PATENT所見

2-1 「プロデュ―サ」の定義は、未だないようであるし、無理に定義づけてもその内容は流動的であろう。しかし、脚本家の脚本制作、監督の承諾、俳優の選定、宣伝、装置、撮影完結に至るまで、終始一貫して個々の映画製作に関与する主体が、プロデュ―サと呼ばれているようであるから、その重要性は最高ながら、いかにしてプロデュ―サの人材ができるのか、答えがわが国にはないのではないか。

2-2 内閣知財戦略本部の知財推進計画は、国際競争力を強調するが、国際競争力の具体的対比を欠いている。税制の具体的比較、弁護士制度の日米対比と、その得失の検討(例えば、、米国の弁護士数100万人とわが国の弁護士数2万人という基盤的相違の評価)が、内閣知財戦略本部においてなされていない。

2007年1月17日 (水)

中山信弘東大大学院法学政治学研究学科教授の本年度内閣知財戦略本部におけるご意見の考察

著作権国際条約と特許権国際条約の性格の相違、検索エンジン事業の日米差等

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  前回の「安西祐一郎・慶応義塾長」記事に続く。

1.        中山信弘本部員のご発言(要旨)

1-1 内閣知財戦略本部が2002年に発足し、知財基本法正立を経て数次にわた り戦略計画が策定され、国家戦略という観点からは、改革の道筋、すなわち、メニュ―はほぼ固まった。勿論、問題の全てが解決したのではなく法改正も必要であろうが、今後は基礎固めされた方向に基づく実施方針を明確に策定し、実効あらしめることが重要である。

1-2  著作権法については、デジタル技術・通信技術の進歩の影響を最も強く受けている分野であり、未だこの新しい分野に対応できているとは言いがたい。しかし、特許の場合と比較して、著作権に関する国際条約はかなり細かな実体的な側面まで規定しており、わが国だけで改革できる事項は限定されている。画期的な方向転換が行いにくい状況にもある。その上、現在はアナログとデジタルが混在し、かつ、デジタル技術発達の速度も著しく、方向も流動的であって、何れの国も確固たる対策を樹立し得ない状況にある。

1-3  しかしながら、著作権の分野は、今後の発展が大いに期待されるコンテンツビジネスのインフラであり、内閣知財戦略本部が重要な関心を持つべきである。

1-4  例えば、通信と放送の技術革新は、極めて重要な問題であるが、関連する著作権法の改正は緒についたばかりである。また、Googleのような検索エンジンをわが国で作ろうと考えても、著作権法に抵触する可能性がかなり強い。従って、現在わが国にある検索エンジンは皆、米国にサ―バ―を置いており、わが国では実施し難い。ただでさえ米国に情報が集中しているのに、著作権法が障害となって、わが国では検索エンジンのような事業ができないという事態を改めるべきである。

1-5  アジアの知的財産人材養成のため、東大でも多くの留学生を受けいれているが、住居・奨学金等、具体的に多くの準備が必要である。この問題を含めて、政策の実効を収めるためには、多くの細かい問題についての解決を集積してゆくことが必要である。

2.        SANARI PATENT所見

2-1  内閣知財戦略本部の場は、中山信弘教授のご所見が十分に述べられるためには、回数も時間も少ない。世界特許構想についての実際的な考え方、知的財産以外の価値と知的財産権との調和、創造権と識別子権の体系の構築、文化財としての著作権と取引財としての著作権の整合、中小企業の知的財産開発適性、知財専門家の量的・質的在り方等々、産業構造審議会の場では、ある程度ご趣旨が述べられる時間があるが、それでも、不足していると考える。従って、ご著述等を広く参照すべきである。

2-2  とりあえず、上記1-2に、著作権法について、「国際条約で実体的にかなり細部まで規定されている」とのご指摘があるが、それならば何故、例えば、検索エンジンについて日米間に難易差があるのか、われわれは至急検討すべきである。

2007年1月16日 (火)

安西祐一郎・慶応義塾長の本年度内閣知財戦略本部におけるご意見の考察

ネットワ-クとコンテンツの双方の先進性の相乗効果の発揮: 著作権特区構想、デジタル・メディア・コンテンツ統合研究機構

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

 有識者本部員の意見の集約を基盤として、知財推進計画07が策定される時機を迎えたので、先ず、安西本部員の本年度内閣知財戦略本部における発言(以下要旨)を考察する。

1.        安西本部員の発言

1-1        わが国が、特にアジアにおいて、デジタネットワ-クの先進国であることは事実である。一方、コンテンツについても、アニメ等を含めて、デジタル時代の新たなコンテンツが世界から注目されている。

1-2        従って、ネットワ-クとコンテンツの相乗効果を発揮する政策が、知財戦略として極めて強く要求される時代になっている。

1-3        その中で、特に通信放送の制度改革は、産学官連携して一層進める必要がある。

1-4        また著作権の側面から見ると、デジタル著作権に関する基盤がまだまだ未整備である。デジタル分野のイノベ-ションを促進するためにも、例えば、著作権の特区制度を設け、通常の特区が場所的であるのに対して、デジタルネットワ-ク上の、例えば、大学においてだけ著作権についての特有の制度を実験してみるようなことは、十分あり得ることで、そういう実験の結果、イノベ-ションの意義あることであれば全面的に採択するということが、この分野では極めて重要である。

1-5        さらに、著作権のような知的財産に関する「取引市場」も、まだ全く取り上げられていないが、実験する価値は十分ある。

1-6        「デジタル著作権法」(仮称)等の新たな仕組みを、特にコンテンツの生産・消費を促す方向で整備することは、重要である。

1-7        これら政策について、通信・放送行政と著作権行政が、もっと連携を持つよう、縦割り行政機構における内閣知財戦略本部の役割が重要である。

1-8        人材育成については、政策・デザイン・マネジメント・技術のバランスがとれた人材が、わが国に不可欠であるが、現存していない。

1-9        アジアゲ―トウェイのソフトパワ―版を構築すべきである。わが国をアジアの情報ハブとすることが、これからのアジア、また世界に向けての日本の知財国際戦略の大きな方向である。このためには、分野を超えた産学官の横断的プラットフォ―ムが必要であり、内閣知財戦略本部も含めて、構成されたい。

1-10     WIPOと連携しつつ、国際知財戦略をデジタル知財の分野から切り開くべきである。

1-11 知財立国、IT立国の基本はデジタル時代になることの認識である。デジタル時代は、デジタルの編集技術等を用いて個人が多様なコンテンツを創出できること、および、ネットワ-クによりそのコンテンツの全世界における共有が可能になることを時代の特徴とする。

1-12 デジタル時代の知財制度については、「権利者と利用者」(企業・個人)の入り乱れたニ―ズの中で、権利保護と活用促進のバランスを根本的に見直すべきである。

1-23 慶応義塾では、DMC(デジタル・メディア・コンテンツ統合研究機構)を設け、産学官のオ―プン政策・日韓のメディア融合政策・韓国の延世大学や中国の清華大学等々との連携によるグロ-バルな知の共有を志向しているが、制度の確立を日本が先導するべきである。

2.SANARI PATENT所見

   上記1-5の「知的財産取引所」提案が、「知的財産のオ―クション市場」の創設を意味するのであれば、素晴らしい発想と考える。

   内閣知財戦略本部の年次知財推進計画は、発足当初から、「知的財産の評価手法を確立する」(SANARI PATENT 注:しかも、知財推進計画04では、「本年度中に」としていた)と計画してきたが、その「成果」の報告はない。そもそも「価値評価」の意義(定義)を明示していない。定性評価の手法は、特許庁がおおむね示したが、問題は定額評価である。前提条件が多い評価方式提案によるよりも、企業価値の総合評価に混入さsる場合が圧倒的に多いと考える。

   相対取引では定額評価が必然的になされるが(SANARI PATENT 注:包括的ライセンス契約や包括的ライセンス契約は別として)、主観的評価である。「知的財産のオ―クション市場」は、発芽したばかりであるが、急速な成長が望まれる。

2007年1月15日 (月)

岡村 正・東芝会長の本年度内閣知財戦略本部員としての所見: (菅総務大臣は、別途、「情報通信省構想」を示す)

保護と活用のバランスが重要: ケ―タイのコンテンツビジネス

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        標記所見の位置づけ: 知財推進計画07策定の段取り

1-1  本年3月下旬ごろ開催予定の内閣知財戦略本部会議で、知財推進計画07原案が決定される。その前後に、広く意見の公募がなされ、新年度開始早々に、知財推進計画07が公表されると考えられる。

1-2  原案決定の前段階として、内閣知財戦略本部の知的財産サイクル専門調査会およびコンテンツ専門調査会の報告書・提言が、本月中に内閣知財戦略本部に提出される。

1-3  両専門調査会の報告・提言を踏まえて、内閣知財戦略本部有識者本部員が会合する。

1-4  国際標準化戦略は、知財推進計画07の主要な課題であるが、「国際標準総合戦略」を昨年12月6日の内閣知財戦略本部会議で決定したので、実質的に、知財推進計画07の内容として決定されている。

2.        岡村本部員の所見

御手洗前本部員(現・経団連会長)の後任として、上記前回内閣知財戦略本部会議で紹介され、次のように述べている(要旨)。

2-1        知的財産の保護と活用のバランスが極めて重要:

知財立国のため、イノベ-ションの創造が必要であるが、そこからもたらされる利益を最大化する戦略が重要である(SANARI PATENT 注:「イノベ-ションの創造」というのは、「知的財産の創造」と同義と解する)

2-2        コンテンツ産業の成功例に期待:

わが国ソフト業界の創造力、ハ―ド業界の技術力、キャリアの通信サ-ビスがwin-winモデルの連携により、ケ―タイのコンテンツビジネスが成功した例に見るように、日本特有の新たなイノベ-ションが生まれるよう、法改正・制度変更を含めて、新たな連携を進め易くする環境づくりを推進すべきである(SANARI PATENT 注:コンテンツ振興の強調と、コンテンツを例示したイノベ-ション推進と、二つを同時に述べている)

3.「国際標準総合戦略」の要旨

3-1 国際標準の例として、「互換性の確保」、「先端技術分野(多数特許が関与)」、 「マネジメント分野(品質マネジメントシステム、環境マネジメントシステム)」がある。

3-2 国際標準の意義は、「互換性・相互接続性の確保」、「一定の品質・安全の保証」、「低コスト化・調達の容易化」、「技術の普及・市場の拡大」である。

3-3 国際標準総合戦略の必要理由は、「世界市場の一体化への対応」、「国際標準を国内標準の基礎とする義務(WTO)」、「特許権を含む国際標準の増加(第3世代携帯電話・DVD等)」、「標準化対象分野の拡大(品質・環境マネジメント・サ-ビス等)」、「諸外国の戦略的な標準化活動への対処(米欧・韓国・中国)」である。

3-4 戦略の三つの視点(イノベ-ション促進・国際競争力強化・世界ル―ル形成への貢献)

3-4-1 研究開発の成果を、国際標準により市場と社会に展開することによって、イノベ-ションを実現する。

3-4-2 わが国の先進的技術を国際標準化し、産業競争力を強化すると共に、国際貿易の促進を図る。

3-4-3 国際標準化により、社会に役立つ技術の普及と環境・安全・福祉の向上を促し、世界に貢献する。

3-5 五つの戦略

3-5-1 産業界の意識を改革し、国際標準化への取組を強化する。

3-5-2 研究活動と国際標準化活動との一体的推進など、国全体として国際標準化活動を強化する。

3-5-3 国際標準人材の育成を図る。

3-5-4 アジア等の諸外国との連携を強化する。

3-5-5 国際標準化のための公正なル―ル作りに貢献する。

4.        SANARI PATENT所見:

上記2および3を通じ、国際標準化とコンテンツ振興が、最も迅速に,

かつグロ-バルにその効果を発揮する情報通信の分野に関し、菅総務大臣が、「総務省・経済産業省・文部科学省・内閣府の各情報通信担当部局を統合する 『情報通信省」 構想を示した(2007-01-13)ことは、経済財政諮問会議での同大臣による提案yo予定と相俟って、極めて注目される。知的財産制度の横断的革新が要請される分野でもあるからである。

2007年1月14日 (日)

総務省「通信・放送の新展開に対応した電波法制の在り方 ~ワイアレス・イノベ-ションの加速に向けて」(案)についての意見

「ワイアレス・イノベ-ション」の語義、試験無線局(仮称)制度

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

総務省の標記案について、SANARI PATENTは、下記のように意見書を総務省に提出した。

        記

              意見書

                        平成19年1月8日

総務省総合通信基盤局

電波部電波政策課御中

「『通信・放送の新展開に対応した電波法制の在り方 ~ワイアレス・イノベ-ションの加速に向けて(案)』に対する意見

           弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

(意見の要旨)

1. 「ワイアレス・イノベ-ション」の語義を示してください。「イノベ-ション」を「技術革新」よりも広く、社会・経済・文化の革新を含む用語とし、無線情報通信の技術と制度の革新が、広義のイノベ-ションのため必要であることを、お示しください。

2. 新たな電波法制案により、試験無線局(仮称)制度が創設され、また、電波の柔軟な利用のため無線局運用者の一時的変更制度が創設されることによって、情報通信関やコンテンツに関連する知的財産の創造と活用の新たな環境が与えられることを、指摘してください。

3. 「ワイアレス・イノベ-ションの加速」によって、わが国のNGN(新たな次世代ネットワ-ク)が構築されますが、これを国際標準化に進展させるよう、戦略的に行動するべきことを、強調してくさだい。

(意見の本文)

1. 「第1章 電波法制の検討の視点」(1)に、次のような記述を加えられたい。

   「以下に述べるように、通信・放送のそれぞれの分野で技術革新が進んでいるが、両分野の機器・装置を両分野の双方において活用し、有線と無線の両システムを統合して活用する技術革新が進むことによって、次世代ネットワ-クが構築される。

電波利用の制度と技術の革新は、その過程における必須の要件であり、「ワイヤレス・イノベ-ション」は、「ワイヤレス革新による新たな情報通信システムによって、経済・社会・文化の革新が加速すること」を意味する。」

 (理由)

   案のⅠ-1-(2)には、「技術革新(イノベ-ション)」と表現されましたが、現在、日米等のトップ理念として強調される「イノベ-ション」は、単なる技術の革新にとどまらず、新たな経済・社会・文化の創造を意味すると考えます。

イノベ-ションという用語そのものは、技術革新という用語と同様に、新たな用語ではありませんが、「ワイヤレス革新によるイノベ-ション」は先端的構想であり、その意義を全国民が認識して、「ワイヤレス・イノベ-ション」加速の声を大にしたいと考えます。

   

例えば、本年施行される著作権法改正による「電話線インタ-ネット」が、屋内に限定されていることなども、ワイヤレス・イノベ-ションの進展によって拡大されることが望ましいと考えます。

   

主題表示の「通信・放送の新展開」は、「通信と放送の融合」、「有線と無線の統合」、「固定と移動の融合」、、「次世代ネットワ-ク(NGN)の構築」等、総務省が掲げてきた政策の総括的表現でありますから、ワイヤレス・イノベ-ションの語義を明示されますことは、上記諸視点から見た「電波法制」改正提案の位置づけを明確にする意味があると考えます。

2.「第5章 電波の柔軟な利用」の(4)提言に、次のような記述を加えられたい。

  「試験無線局(仮称)の創設」と相俟って、「無線局の運用者の一時的な変更制度の創設」が法制化されることによって、、新たな情報通信機器やビジネス方法の開発に係る知的財産の創造と活用が可能になるものと考えられる。」

 (理由)

   情報通信の分野は、知的財産の創造・保護・活用に関する活動が最も活発な分野であり、電波制度の革新を利用する知財戦略の展開も加速すると考えます。

    これに伴い、通信・放送とその活用に関する知的財産の創造が、国際的にも優位になるよう、技術の共同開発等における発明の帰属や特許出願適格者の明示など、知的財産の創造・活用と、これに伴う権利関係の円滑な処理に、注意を喚起していただきたいと考えます。

3.「第6章 電波法制の見直し」の(3)に、次のように「なお書き」を加えられたい。

  「なお、電波法制の見直しによって加速される次世代ネットワ-クの構築については、国際電気通信連合による国際標準化も進められているが、わが国の国際標準化戦略の見地からも、電波制度革新への迅速な対応を、重ねて要請する。」

  (理由)

   電波法制の革新について先進的であることは、情報通信に関する国際標準化について、戦略的に優位であるための必須の要件と考えます。国際電気通信連合がかねてより進めてきたNGNの概念は、既に「新たなもの」ではなく、「新たなNGN」概念をわが国が先導することが望まれます。(以上)

 

2007年1月13日 (土)

ソフトバンク(その2): その発想には、競合者も続出

ケ―タイ薄型11.9mm、サイクロイド機構により画面7.5cm

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  ソフトバンクの開発分野が多岐に展開するが、例えば、ケ―タイについても、薄型約1センチを掲げる競合者、スライド広画面を誇る競合者等々、デザインと機能の間断ない進歩を触発している観もある。

3(承前) ソフトバンクが掲げる4施策

3-1  本年度上半期の事業報告書にソフトバンクは、「携帯電話端末ラインアップの充実」、「コンテンツの拡充」、「ネットワ-クの拡充」、「営業体制・ブランドの強化」の4施策を掲げた。業界全体の動向から、その内容を考察する。

3-1-1        携帯電話端末のデザイン

  「薄さの追求」、「色彩の美麗・多様性」、「面積拡大等、画面の多様性」が、業界共通の追及課題である。「薄さ」には強度の問題が伴い、素材の変更に及ぶ。「色彩の美麗・多様」には各ロットの生産数設計と展示面積の拡大を要する。「大画面」には、在来上部機構の90度回転等の新設計が必要である。

   「薄さ」についてソフトバンクは、11.9mmの「SoftBank707SC」を発表した(2006-11-20)。「質感の美しさを極めたス―パ―スリムケ―タイ」として発売したが、「質感」とは、「材料から受ける感じ」である。「薄さ」は、まさに、材料の革新によって実現していると共に、例えば、チタン合金の「美麗・多彩」色彩適性が、同時に確保されなければならない。なお上記ソフトバンク製品は、「超薄型折たたみタイプ」、「CDの曲をワイヤレスで楽しめる」、「海外旅行に便利な翻訳機能を搭載」、「  Word ExcelPower PointPDFも読める」ことを特徴としている。

   ソフトバンクが同時発表した「SoftBank911SH」は、「ワンセグをスマ―トに、約22mmの薄型ボディ」、「3.0インチ(SANARI PATENT 注:

  7.5センチメ―トル)ワイドQVGAモバイルASV液晶(SANARI PATENT 注:QVGAは、VGAの4分の1の画素数)」、「テレビを観ながらメ-ルも電話も楽しめる」、「画面が90度回転のサイクロイド機構(SANARI PATENT 注:液晶部分が横に回転する機構)でパソコン向けのウェブサイトの閲覧も快適」であることを特徴としている。

3-1-2 コンテンツ

   ソフトバンクグル-プの「Yahoo JAPAN」が提供するサ-ビスと連携してコンテンツを拡充する。「パソコンからでもケ―タイからでも送受信できる『□□@yahoo.co.jp』のメ-ルの無料使用」、「着うた情報」、「ゲ―ム検索」、「コミック立ち読み」、「数百万点品揃えのショッピングとポイント」、「出品数約1100万点のオ―クションサイト」、「株価等のファイナンス一覧情報」

  等、現在の「Yahoo JAPAN」のコンテンツを拡充するとしている。具体的には、既に、新しいソフトバンク第3世代携帯端末に「Y!」ボタンを登載したが、このボタンを押すだけで豊富なコンテンツを楽しむ新モバイルインタ-ネット・ポ―タルサイトを実現し、パソコンサイトに至るまで無限に広がるインタ-ネットの世界へのアクセスを可能にしたと述べている。

3-1-3 ネットワ-ク

   第3世代移動体通信システム上の高速デ―タ通信方式の一つであるHSDPA方式(High Speed Downlink Packet Access)に準拠した「3Gハイスピ―ド」サ-ビスを開始した(2006-10)。ベストエフォ―ト方式で最大通信速度1.8Mbpsが可能であり、メ-ル添付ファイル・音楽・動画のダウンロ―ドを快適にした。

3-1-4 営業体制とブランド

   「これまでの携帯電話の複雑な料金体系を、シンプルで分かり易い体系にしたい」と述べている。

   また、「様々なチャネルを通じてソフトバンクブランドを強化し、特に、TVCMでハリウッド女優の起用、意外シリ―ズなどバライエティに富む展開でブランドを浸透させると述べている。

4.SANARI PATENT所見

4-1 新発売したケ―タイ2種の特徴(各11.9mm薄型と7.5cmサイクロイド機構大画面)の双方具備については、言及されていない。いずれにせよ、わが国のケ―タイの多機能化・高度化は欧米中韓のケ―タイに優越しているが、これが現時点ではケ―タイ機器の海外展開を抑制している。

4-2 ボ―ダフォンの買収によって、今次中間期の売上高は1兆1202億円(前中間期5228億円)、営業利益6153億円(前中間期44億円)、中間純利益144億4千万円(前中間期損失41億8千万円)を計上している。

4-3 公取委が、楽天やヤフ―など「インタ-ネット商店街の大手運営業者が、不当な手数料引き上げを一方的に押し付けた場合、独禁法の優越的地位の濫用に当たる」との調査報告書を発表(2006-12-27)したのに対し、上記2社とも抵触を否定したと報道されたが、ソフトバンクは、インタ-ネットカルチャ―事業の一環として位置づけ、手数料収入・収益ともに、楽天と同様、好調であることから、上記「不当な引き上げ」の必要もないと推察する。

2007年1月12日 (金)

ソフトバンクの知財戦略(その1): 拡販ノウハウの続発

ソフトバンクの「また新料金」と、ソ―スネクストの「セキュリティ年間更新料無料」

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

   ソフトバンクモバイルが「通話料0円」から、「ホワイトプラン」新料金に展開したが、ソ―スネクストの「セキュリティ年間更新料無料」も、拡販ノウハウの秀逸な着想と考えられる。SANARI PATENTが見るところでは、ソフトバンクの新発想が先行したが、ソ―スネクストの着想(朝日新聞2007-01-06「クリ―ンヒット」欄)は、ソフトバンクのそれと異質の業務に関するものである。今春、ウイルスセキュリティソフト需要者の選択が何れに向かうか、注目される。  

さて、ソフトバンクは「総合デジタル情報カンパニ―」として、「革命的変化を実現すること」を、社是としている。順序として先ず、その特許公開状況を見る。

1.        発明の名称と課題: 2006年及び200512月公開分(日付昇順)

1-1 「情報配信システム及び情報配信装置」

    自分の移動体通信端末の表示手段に表示される地図画面上の特定の場所に関して、他人が入力した情報(登録情報)を、その地図画面から確認する。

1-2 「情報提供方法、情報提供装置及び移動体通信端末」

    移動体通信端末で受信する地図情報のデ―タ量を抑制しつつ、利用者が必要とする地図情報を移動体通信端末で受信して表示することが可能になる情報提供方法、情報提供装置及び移動体通信端末を提供する。

1-3 「決済方法、決済用情報処理方法、決済用情報処理システム及びプログラム」

    クレッジットカ―ド未加入の店舗においても、商品に対するクレッジットカ―ド決済を可能にし、店舗がクレッジットカ―ドで支払いを受けた場合に比して、売り上げた料金をより速やかに回収できるようににする。

1-4 「オブジェクト出力方法及び情報処理装置」

    原画像に含まれる画像の表示と同時にオブジェクトを出力する際における出力オブジェクトの切換を簡易に行うことを可能にする。

1-5 「IP固定電話システム及びIP固定電話方法」

    IP電話における緊急通話の際やそのデ―タを基に実施できる各種サ-ビス事業に対して、公衆電話回線番号に依存することなく、IP固定電話の位置情報等を通話相手に通知する。

1-6 「経路策定システム及び経路策定方法」

    電話線等の共架経路の策定における人口や世帯分布、顧客分布等のマッピング及び適合エリアの選出を適正に行う。

1-7 「通信接続システム及び通話接続方法」

    インタ-ネットへのダイアルアップ接続において、ユ-ザ-が負担する通信コストを増加させることなく、全国で単一のアクセスポイントの設置を可能とする。

1-8 「会議電話システム及び会議電話方法」

    インタ-ネット等の通信網を通じて複数人(3人以上)が同時に通話できる電話会議システムにおいて、ユ-ザ-の総意に基づき、その時々における着信許否あるいは通話排除を行う。

1-9 「留守番電話システム及び留守番電話方法」

    個人が複数の通信機器を利用する場合であっても、ユ-ザ-の意志に基づいて任意の端末において留守番メッセ―ジを録音することができ、特に、IP電話アプリケ―ションソフトにかかってきた電話であっても、任意の端末において留守番メッセ―ジを録音する。

1-10 「交換接続システム及び              交換接続方法」

    個人が複数の通信機器を利用する場合であっても、ユ-ザ-の意志に基づいて確実に通信ができ、特に、IP電話アプリケ―ションソフトに付与された電話番号(または他の識別子)を定常的に利用可能とし、当該アプリケ―ションソフトの利用頻度を向上させる。

1-11「代行処理システム及び代行処理方法」

    インタ-ネット等の通信ネットワ-クを通じて求人を行っている団体を自動的に収集し、収集された団体に対する求職手続を、簡単な操作により一括して行う。

1-12 「業務管理システム及び業務管理方法」

    製品の発注や、納品、設置工事、処理結果報告など複数の処理業務が多数の関係者において行われるような状況において、ユ-ザ-の個人情報が直接、多数の関係者に瞬時に流出するのを防止する。

1-13 「通信システム、集線装置、終端装置及び通信方法」

    xDSL等の既存のメタリック電話回線を有効に利用して、伝送デ―タ量の増大及び伝送距離の長距離化を図る。

1-14 「光ファイバ―ケ―ブル検査装置及び検査方法」

    コストの低減に寄与することができる光ファイバ―ケ―ブル検査装置及び検査方法を提供する。

1-15 「コ―ルエ―ジェントサ―バ、発信者番号通知システム及び発信者番号通知方法」

    IP電話からIP網を利用して電話をかけた場合であっても、発信者番号として発信元の一般加入電話番号を表示する。

1-16 「伝送ケ―ブル、及びその配線方法並びに配線構造」

    光ファイバ―ケ―ブルやLANケ―ブル等、信号を伝送するための伝送ケ―ブルの屈曲性を改善して、信号伝送媒体線に作用するストレスやテンションを低減し、配線工事を容易に行うことのできる配線方法並びに配線構造を提供する。

1-17 「ネットワ-ク構築システム及び方法、並びにネットワ-ク構築プログラム」

    ユ-ザ-の利便性の向上と、セキュリティの向上に寄与することができる無線LANインタ―フェイス及び無線アクセスポイントを提供する。

1-18 「通話システム及び方法」

    Webペ-ジ上における特別な記述を要することなく、Webペ-ジ上に掲載されたすべての電話番号に対して自動的な発呼処理を行う。

1-19 「情報提供システム及び方法」

    心理検査や適性検査の検査結果を容易に理解できると共に、求職等における企業検索の際に、求人側の情報を適正に提供する。

2.        SANARI PATENT所見

上記1-19の発明者は、孫 正義代表取締役社長で、出願人はソフトバンク・ヒュ―マンキャピタルである。

上記1の内容の考察は、本稿「その2」に継続する。

 

2007年1月11日 (木)

「知財マネジメント技能士」を「弁理士と並ぶ」国家資格とする報道案についての要望

特許出願書類作成実務の技能にも重点を置く国家資格とする場合は、本人出願の促進、弁理士負担の軽減等、弁理士の量的・質的政策にも影響

2007-01-11 弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

 標記についてSANARI PATENTは、内閣知財戦略本部に次のように要望した。

 

           記

1.        内閣知財戦略本部の知的財産人材育成総合計画においては、知財高裁人材を、「知的財産専門人材」・「知的財産創出マネジメント人材」・「裾野人材」の三つに分類し、「知的財産専門人材」については、企業の知的財産部員・中小企業の知的財産担当者・弁理士・弁理士スタフ・知的財産関係弁護士等が挙げられております。

2.        上記の知的財産専門人材もうち、国家資格に位置づけられているものは、

   弁理士および弁護士でありますが、マスコミの報道(例えば、朝日新聞2007-01-10夕刊)にによりますと、

2-1  国による技能検定に、特許等の保護(内閣知財戦略本部では、特許権等の設定を意味します)などの実務能力を試す「知的財産」分野が、2008年にも追加される。

2-2  検定試験の実施股間は、知的財産教育協会(棚橋前通産次官)で、近く、技能検定として、厚労省が認可する方向で調整している。

2-3  合格者は、「知財マネジメント技能士」を名乗れるようにする予定。

2-4  弁理士と並ぶ国家資格と位置づけ、「知財のプロ」の育成を促す。

3.        知的財産教育協会の公式発表が見られませんが、特許出願書類作成実務の技能にも重点を置く国家資格とする場合は、本人出願の促進、弁理士負担の軽減等、弁理士の量的・質的政策にも影響するものと考えます。

4.        従って、知財推進計画07において、知的財産専門人材の機能の画定と協働の両面について、「知財マネジメント技能士」知的財産人材育成総合計画の実施段取りをお示しください。(以上)

2007年1月10日 (水)

経済産業省の「化学物質政策基本問題」(案)に対する意見

産業上利用可能性と安全性、リスク評価の国際標準化、毒性と安全性

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

標記案(SANARI PATENT 1月9日記事)に対するSANARI PATENTの意見を、下記の通り経済産業省に送信した。

       記

経済産業省製造産業局 化学・バイオ部会化学物質政策基本問題小委員会中間取りまとめ」に対する意見            平成19年1月8日

意見1. 「目的・背景等」(3ペ-ジ)について

(意見)

  この「中間取りまとめ」が対象とする「化学物質」の範囲を示してください。

(理由)

  「化学・バイオ部会の案」ですが、意見募集対象である国民全般は、医薬・食品(合成タンパク質等)・食品添加剤・核酸等を、案に含むか否か、認識できません。工業用・薬用・食用に共用される化学物質(従来例のニトログリセリン・エタノ―ル誘導体等)が、今後、多く開発されると予測されますので、法の所管分野と競合分野の明示が、化学物質全体の安全性の前提になると考えます。

意見2. 「安全性」(3ペ-ジ)という用語について

(意見)

国際的整合のため、「安全性」と「毒性」の異同を明示してください。

(理由)

   案には、生物を用いる「毒性試験」についても言及されましたが、日米欧を通じて、化学物質の「toxicology」(毒性学)に基づく「毒性試験」が試験段階の定着した用語であり、「安全性」と「毒性」の異同を、この際、明示されることが、国民全体の認識を明確にするため、有益と考えます。

意見3. 「安全性情報の伝達」(4ペ-ジ)について

(意見) 

   日米間を始め、先進国間の安全性情報の相互伝達を、先ず掲げることが適切と考えます。

(理由)

   「情報伝達」に関する政策については、国際間伝達、特に米国の政府機構の情報とわが国のそれとの相互伝達を第1に掲げることが適切と考えます。米国のCASシステムで新規化学物質が登録され、世界共通のデ―タベ―スになっていますが、米国食品薬品局(FDA)の毒性試験結果が全世界で承認されていることを、化学物質全般に及ぼすことが、コスト・能率の両面から最も有利と考えます。

   いうまでもなく、わが国の情報を米国等に迅速に伝達し、相互にその結果を受容する体制が必要と考えます。

意見4. 「化学物質政策の在るべき姿」(5ペ-ジ)について

(意見)

    知的財産の開発において、化学物質については、「産業上利用可能性」という特許要件との関連で、安全性基づく社会的許容が配慮されるよう、特許権の設定・保護・活用、ノウハウの保護に関する政府の知財戦略(内閣知財戦略本部知的財計画)に記載されるべきことを、案に加えていただきたいと考えます。

(理由)

    わが国の特許法では、新規性・進歩性・産業上利用可能性が特許要件であり、米国では、新規性(Novelty)・有用性(Utility)・確実な結果(Tangible Results)が特許要件でありますが、安全性を欠く化学物質が「産業上利用可能性」や「有用性」を有するとは考えられないことを、知的財産政策上も明示するよう、今次案のからも求められることが、適切と考えます。ノウハウについても、これに準じます。

意見5、 「国際的な制度調和の推進」(7ペ-ジ)について

(意見)

    リスク評価の国際標準化を提案してください。

(理由)

    国情の相違によるリスク評価の補正を含めて、リスク評価の基準と方法の国際標準化は、新たな化学物質のリスク評価の結果を世界的に共有し、効率的・低コストの化学物質安全性確保を達成する捷径と考えます。(以上)   

2007年1月 9日 (火)

本月28日期限:産業構造審議会・化学バイオ部会「化学物質政策基本問題小委員会中間とりまとめ」への意見

リスク評価の重点分野とナノ粒子等の新たな課題への対応

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        目的・背景

  標記「中間とりまとめ」は、次のように述べている(要旨)。

1-1 新たに開発された化学物質の市場導入前の安全審査や有害化学物質の製造規制等を規定したわが国の化学物質審査規制法は、世界最初の化学物質規制法として、米欧の同趣旨規制法整備の契機となった。

1-2 しかし、化学物質をめぐる環境変化により、多様な課題が新たに発生し、次のような観点から、検討することが必要になった。

1-2-1 官民において対応すべき政策領域が、規制のみならず社会規範までを含めて拡大した。すなわち、

1-2-1-1 化学物質管理は、化学産業だけの問題からサプライチェ―ン全体へと拡大した。

1-2-1-2 リスクベ―スの化学物質管理への要請が増大し、規制体系の合理化を必要とする。

1-2-1-3 新規化学物質届出等が大幅に増加し、イノベ-ションは進展するものの、官民コストは増大する。

1-2-1-4 工業ナノ粒子の安全性問題のような新たな課題が出現した。

1-2-2 国際動向への対応を要する。すなわち、

1-2-2-1 化学品分類表示調和システム(GHS)やサプライチェ―ンの国際等、化学物質管理のグロ-バル化が進展する。

1-2-2-2 欧州REACH,米国TSCA等、他国の化学物質規制の見直しの影響が顕在化する。

1-2-2-3 持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)の合意「化学物質の製造と使用による人の健康と環境への悪影響を2020年までに最小化する」の実現に向けた国際的取組が活発化する。

1-3 このため、産業構造審議会・化学バイオ部会においては、新たに「化学物質政策基本問題小委員会」を設置し、社会生活に不可欠な化学物質の安全確保と、世界経済の持続可能な発展のため、更なる安全・安心の追求、国際的制度調和への対応、合理的規制体系の追求、新規化学物質開発に係るイノベ-ション確保の観点から、今後の化学物質政策の在るべき姿を検討した。

2.        現状認識と今後の方向性

2-1        長期的視野に立つ政策立案

2-2        化学物質のライフサイクルを考慮したリスクベ―ス管理の推進

2-3        国際的制度調和

3.        主要な論点

3-1        安全性情報等の伝達・表示はどのように進めるべきか。

3-2        化学物質のサプライチェ―ン上の事業者間で共有すべき情報とは何か。

3-3        サプライチェ―ン上における安全性情報等の伝達・リスク評価の実施・リスク削減策の共有は、関係者間で、どのような役割分担・責任分担で進めるべきか。

4.        リスク評価の重点分野とナノ粒子等の新たな課題への対応

全ての化学物質に対するリスク評価の実施は事実上困難であるため、評価対象となる化学物質の優先順位を一定の考え方に基づいて定めた上で、リスク評価を行う化学物質を具体的に選定することとなる。

特にナノテクノロジ―は、次世代の産業基盤技術として、幅広い分野で社会に大きな便益をもたらすことが期待されている一方、粒径が極めて小さいことに起因する新たな特性を有するが故に、人や環境に対する影響可能性についての懸念も指摘されており、かつ、基本的な問題に対しての明確なデ―タが国際的にも得られていないのが実情であり、各国共通の新たな課題として検討が緒に付いた段階である。

5.        SANARI PATENTの意見は、別途、経済産業省に送信する。

2007年1月 8日 (月)

電力線インタ-ネットが展開する新ライフスタイル:(Web上の諸コメントにも要注意)

:日立製作所のメ-ル通信が、新春のITライフスタイルを画く::  松下電器の家庭用アダプタ、住友電工のビル用アダプタも発売:

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        日立製作所ナビバラ通信が電力線インタ-ネットを推奨(以下要旨)

1-1  電力線インタ-ネット(SANARI PATENT 注:PLC=Power Line Communications)と略称される電気通信方式に属するが、この略称は未だ一般に馴染むに至らず、日立製作所ナビバラ通信においても「電力線インタ-ネット」と「PLC」の両呼称を併用している)解禁の意義を、日立製作所ナビバラ通信(2006-12)は、次のようにメ-ル送信している(要旨)。

1-1-1 韓国・中国で既に実用されているPLCが、総務省令改正(2006-10)により、屋内に限り解禁された。PLCは、電力線を通信回線として利用する技術で、コンセントがあれば、PLCアダプタを使用してインタ-ネットの利用が可能になる。松下電器産業が開発低向けPLCアダプタ―3製品の発売を発表した。

1-1-2  家庭内インタ-ネットの通信方式として、有線LAN・無線LAN・PLCの3選択肢ができた。コンセントで電力電源とインタ-ネットの共用も可能である。最大通信速度は、TCPプロトコルで55MbpsUDPプロトコルで80Mbpsで、実用的に全く問題ない。

1-1-3  上記3選択肢を比較すると、

1-1-3-1           有線LANは、安定・高速デ―タ通信が可能だが、ケ―ブル敷設を要する。

1-1-3-2           無線LANは、手軽に利用できるがセキュリティ面の不安がある。

1-1-3-3           PLCは、通信のための新たなインフラが不要で、有線接続によるセキュリティ面の安全性がある。

1-1-4               さらにPLCのメリットとして、その普及を契機とする家電のネットワ-ク化が一気に進む可能性がある。

1-1-5               家電にPLCアダプタを接続・内蔵することが一般化し、ネットワ-クを介してコントロ―ルできる家電ネットワ-クのインフラが手早く整備できる。外出先からのエアコン調節や電燈の点滅ができる。家電ネットワ-クとマンションを組合せたインタ-ネットマンションが登場する(韓国が先行)。

1-2                      上記日立製作所ナビバラ通信には、「PLCは、ノイズが漏れることで他の無線通信を妨害する問題など、製品開発や普及に向けての技術的な課題があるが」として、残存課題も指摘しているが、「人々が快適な生活を送るためのツ―ルとなることは間違いない」と結んでおり、残存課題の解決を期待する向きが極めて多いと考える。

2.        Web上では多様な見解

ブログ等のWeb上発信が急速に普及し、電力線インタ-ネットについても多様な見解や動向が表明されている。若干、以下に要約する。括弧内はWeb登載日。

2-1        目黒で、PLC行政訴訟原告団(主にアマチュア無線関係)の第1回集会が開催された(2006-11-18)(SANARI PATENT 注:屋内限定の段階でどの程度の訴訟要因が認められるのか、電波審議会の審議は緻密であり、提訴側の訴訟維持が可能であるのか、経過を見たい)

2-2        PLCの規格は、海外メ―カ―など3社が競争しているため、互換性ないし統一が当面の課題である(2006-11-13)

2-3        実際に電力線にPLCアダプタを接続した結果は、家屋内のファイル転送30Mbpsで、最大能力を発揮できている。

しかし、電力線を常時流れる電流の状態は、電燈や電気製品の使い方次第で刻々と変る。従って、PLCアダプタ間の通信はこれに左右される可能性がある。つまり、ノイズが電力線に混入して実効速度低下の要因にならないか。その実証を試みたところ、PLCアダプタはノイズの影響を受け易い(2006-11-16)

2-4        色々問題はあるようですが、前進あるのみ。都会で先ず普及し、地方に波及を望む(2006-11-16)

3.        SANARI PATENT所見

    欧米・中国・韓国が電力線インタ-ネットの実用で先行しているから、その状況を詳細に周知させることが望まれる。英国ではわが国より停電が多く、ほとんど無停電のわが国で電力線インタ-ネットが遅発することを不審とする発言、また、「無線LANも便利だけど電磁波の問題があるみたいだし、有線にすると、もうそこらじゅう配線だらけで大変だし、それに比べると、コンセントからインタ-ネットが接続できるなんて素晴らしいですよね」(2006-11-13)という率直な発言も見受けられる。

2007年1月 7日 (日)

三洋電機のチャレンジ:「太陽電池事業における世界トップレベル事業体への進化」等

太陽電池、エネル―プの世界展開、ハイブリッド自動車用二次電池の進化等

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  新年度予算で、中小・ベンチャ-企業向けの再チャレンジ対策が強調された が、名門大企業の全世界に向けての先端技術チャレンジこそ、中小・ベンチャ-企業にも積極的波及効果を及ぼすものと考える。

  顕著な例として、三洋電機の本年度上半期中間報告書を見つめつつ、そのチャレンジに期待する。三洋電機は、昨年、「第三の創業」として新ビジョン「Think GAIA(SANARI PATENT 注:地球)」を掲げ、スリム化・再構築・成長の3段階で改革を推進し、現在、再構築の追加段階に入ったと述べている。

1.        太陽電池関係の特許公開

1-1  三洋電機は、今後の重点項目として先ず、「「太陽電池事業における世界トップレベル事業体への進化」を掲げている。特許庁の資料によって三洋電機の太陽電池関係公開公報を見ると、特許587件、実用新案50件が示されるが、2006年度の特許公開件数は40件で、最近の特許公開10件の名称と課題を列挙してみても、その旺盛なチャレンジがうかがわれる。

1-1-1 「太陽電池モジュ―ルの製造方法及び太陽電池モジュ―ル」

   太陽電池の生産性の向上、シ―ル性及び外観の向上を図ることができる太陽電池モジュ―ルの製造方法及び太陽電池モジュ―ルを提供する。

1-1-2 「薄膜太陽電池およびそれを用いた光起電力装置」

   薄膜太陽電池を載置する際に発生する反りを矯正することを可能にした薄膜太陽電池およびそれを用いた光起電力装置を供給する。

1-1-3 「太陽電池モジュ―ル、製造方法およびその修復方法」 

   製造時における短絡部の発生が防止されると共に、逆バイアス電圧の印加による短絡部の修復が可能なタンデム型の太陽電池、それを備えた太陽電池モジュ―ルおよびその製造方法を提供すること、および、タンデム型の太陽電池の修復方法を提供する。

1-1-4 「太陽電池モジュ―ル」

   太陽電池セルへの光の入射量を増大させて、出力の向上を図ることができる両面光入射型太陽電池モジュ―ルを提供する。

1-1-5 「太陽電池モジュ―ルおよびその取付装置」

   太陽電池セルに入射する光量を増大させて、出力の向上を図ることができる太陽電池モジュ―ルおよび当該太陽電池モジュ―ルの取付装置を提供する。

1-1-6 「太陽電池モジュ―ル」

   重ね合わせに手間を取らず、多くの太陽電池モジュ―ルを重ねて保管または搬送することができる太陽電池モジュ―ルを提供する。

1-1-7 「太陽電池セルの梱包物の製造方法及び梱包物」

   梱包および輸送などの際に変形や破損などが発生するのを低減することができる太陽電池セルの梱包物の製造方法及び梱包物を得る。

1-1-8 「太陽電池モジュ―ル及びこれを備えた太陽電池装置」

   生産性のよい太陽電池モジュ―ル及びこれを備えた太陽電池装置を提供する。

1-1-9 「太陽電池モジュ―ル及びこれを備えた太陽電池装置」

   出力効率および耐絶縁性(SANARI PATENT 注:「耐」の字は不要と思われる)が良好な太陽電池モジュ―ル及びこれを備えた太陽電池装置を提供する。

1-1-10 「太陽光発電装置」

   汎用性を維持し、コストの上昇を回避しつつ、昇圧回路が運転を開始した場合、インバ―タ回路のMPPT(SANARI PATENT 注:Maximum Power Point Tracker: 最大電力点追従)制御に悪影響を与えることを防止する。

1-2  三洋電機は、セル変換効率19.7%により設置面積当たり発電量世界一を誇り、世界市場の太陽電池需要増(20041000MWから20061500MWを経て20104000MWと推定)に対応する。今後2010年度までに累計400億円以上を投資し、売上高を現在の3倍の1800億円以上に拡大するとしている。

2.        使い捨てない電池「eneloop」の世界展開

   三洋電機は、パワ―ソリュ―ション事業として、「二次電池においては、圧倒的な地位の確立を目指し、投資を実施すると共に、「eneloop」の世界展開を加速します」と述べている。

   特に、太陽光から「eneloop」を充電し(ソ―ラ―充電器)、身の回りのもので繰り返し使う「eneloop universe」のクリ―エネルギ―循環を旨とする「使い捨てない電池」は、既に国内を中心に、発売後1年を経ずに1500万本以上を出荷し、海外での展開を本格化するとと共に、環境意識が高いドイツメディア等の関心と評価述べている。応えるとしている。

3.        連結損益計算書

三洋電機は、今次中間報告書において、「今中間期連結損益計算書における売上高1兆955億円(国内4812億円、海外6143億円)、営業利益158億円、継続事業税引前利益70億円を表示しており、構造改革追加の成果が期待される。

2007年1月 6日 (土)

「通信・放送の新展開に対応した電波法制」(その3)

電波利用の形態が多様化、免許人等以外の者が免許人等と合意の上で無線局を一時的に運用(案)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

6.電波の柔軟な利用

6-1 論点(下記見解の当否)

6-1-1 電波利用の形態が多様化する中で、多様な経済活動・社会活動と連動して、電波利用の需要も動的に発生していると考えられる。これら重要の中には、突発的に発生するもの、臨時的・一時的に生ずるものもある。これらを含めて、当面する需要に応えるために適した者において、無線局の運用が臨機応変に行われることが必要な場面が増加する可能性がある。

6-1-2 このような場面について、新サ-ビス等の展開の制約を緩和・解消できるような制度の見直しの必要性を検証する。

6-2 検討(下記見解の当否)

6-2-1 現行の電波法では、無線局の運用は当該無線局の免許人等によって行われることが前提とされており、それ以外の者が運用すれば処罰対象になる。

   しかし、無線通信・放送の利用分野が広汎に及ぶに伴い、次のような場合には運用者の範囲を拡大することが適切である。

6-2-1-1           屋内無線局のサ-ビス利用者側による運用

6-2-1-2           イベント会場・建設現場・選挙活動等における簡易無線設備の貸出

6-2-1-3           災害時等における応援者への無線設備の貸出

6-2-2 運用者を免許人等と一致させる現行制度の原則は、無線局の管理を適格者に委ねる考え方に基づくもので、この原則自体は引き続き維持することが必要であるが、他方、免許人等以外の者が免許人等と合意の上で無線局を一時的に運用することができれば、次のような利点がある。

6-2-2-1 運用の効率的な分担を通じて、無線局の面的な展開を円滑に行うことができる。

6-2-2-2 無線設備の貸与等を通じて、短期的・臨時的な電波利用ニ―ズに即応できる。

6-2-2-3 無線設備の貸与等を通じて、非常時における関係者の連携を確保できる。

6-2-2-4 その他の新しいサ-ビス提供形態が創出される。

6-3 提言: 無線局の運用者の一時的な変更制度の創設

6-3-1 多様な経済活動・社会活動と連動して動的に発生する電波利用への需要に的確に対応できるよう、一定の無線局について免許人等が無線局の廃止を行うことなく一時的に、当該無線局を他者に運用させることができる制度を創設することが適当である。

6-3-2 新制度の適用対象は、電波干渉の排除が比較的容易に行えるものであって、運用者の資格を厳密に捉える必要がないものとし、それにに伴い、運用者の変更に際しても、手続が届出等の簡便なもので足りるとすることが適当である。

6-3-3 一時的な運用者に対しては免許人等から、必要なインストラクション等と、それを前提とした運用者変更の合意を要する。

6-3-4 実際の運用に当たっては、運用者による責任ある対応が必要であり、これを担保するため、免許人等は運用者を適正に監督する責任を負い、無線局の運用責任については実際の運用者が責任を負うこととする必要がある。

7.SANARI PATENT所見

   上記提言について、電波法制の見直しと、所要の法改正の迅速を、総務省「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」は求めている。

   SANARI PATENTの意見は、近日中に総務省に送信する。

2007年1月 5日 (金)

通信・放送のイノベ-ション(その2)

試験無線局(仮称)制度の創設等

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

3.試験目的の無線局の拡大

3-1 論点(下記見解の当否)

3-1-1 電波利用は、基本的には実用目的で開設される無線局について行われるが、実用に至らない目的のために開設する無線局についても、電波法は制度を設けている。

3-1-2 新システム・新サ-ビスの利用に際しては、実際に無線局を開設して様々な試行をなすことが有用である。

3-1-3 現行制度ではこれらの需要に十分対応できないのであれば、試験目的の無線局開設が認められる範囲の拡大について検証する必要がある。

3-2 検討(下記見解の可否)

3-2-1- 急激なイノベ-ションに対応して新システム・新サ-ビスを開発することは、電波を効率的に利用するシステムやサ-ビスの開発を通じて、電波の有効利用のも寄与することにもなる。

3-2-2 現行の実験無線局は、新規技術開発のため開設するものが基本で、実用化が視野に入った既存の技術についての検証や、科学技術と無関係な事項についての検証は予定されていない。また、試験の結果次第では実用に移行しないような無線局の開設は予定されていない。

3-2-3 試行的な無線局を、現行の実験無線局と同様に、通常の無線局よりも容易に開設できるようにすることは、新システム・新サ-ビス開発のため有用である。

3-3 提言: 試験無線局(仮称)の創設

3-3-1 試行的に無線局を開設し、通信・放送サ-ビス等に係る技術的可能性や利用者の需要動向を検証することを可能とするために試験無線局(仮称)の制度を創設することが重要である。試験無線局(仮称)では、「電波の利用の効率性の試験」と、「電波の利用の需要に関する調査」ができるものとする。

3-3-2 周波数割当については、実験無線局と同様、開設の必要性が随時随所で発生するから、周波数割当計画上、周波数割当表に定めるところとは別に、周波数を割り当てることとすることが適当である。

4.無線局等間の調整の円滑化

4-1 論点(下記見解の当否)

4-1-1 近年、周波数が逼迫し、新無線局開設に際して、既存無線局との間で妨害排除のための当事者間調整が必要になる場合が多い。

4-1-2 現行制度ではこれらの調整が難航し、新システム・新サ-ビスの導入が円滑に進まない事態が生じているならば、これに対応する制度を設けることが必要である。

4-2 検討(下記見解の当否)

4-2-1 干渉許容レベルの認識、妨害回避策の選定と費用負担に対立がある場合、合意を見出すことが困難である。

4-2-2 調整の長期化を放置することは、電波の有効利用の視点から好ましくない。

4-3 提言

   新たなサ-ビスの実現等のため、上記調整について第3者が斡旋・仲裁する手続を創設する。

5.新システム導入手続の迅速化

5-1 論点(下記見解の当否)

   新たな技術的条件による無線局を開設するには、通常、新たな技術基準を策定する手続が必要となる。

5-2        検討(下記見解の当否)

技術基準の策定に関して、利害関係者に意見陳述とその検討の機会が充分に与えられ、電波妨害の排除と能率的利用に支障ないならば、手続の簡素化・迅速化を進めるべきである。

5-3        提言

   義務的規定とする必要がない規定は、省令から除外するなど、手続を簡素化する。

6.電波の柔軟な利用(以下、本稿「その3」)

2007年1月 4日 (木)

今月15日が意見提出期限: 「通信・放送の新展開に対応した電波法制」

周波数逼迫への対応(その1)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

   総務省は、「通信・放送の新展開に対応した電波法制の在り方(案)」(2006-12-23)について、パブコメを求めている。先ず案の要旨を摘記する。

1.通信・放送分野の技術進歩の実績

1-1 通信と放送は、間断なく進展する最新技術が投影されることによって発展し、その利便性が高められてきた。それにより情報の発受信が容易になり、経済・社会活動が活発化し、豊かな生活、実り多い文化が実現されてきた。

1-2 通信・放送分野においてイノベ-ション(技術革新)の成果を投入する動きは、最近さらに急速化し、その結果、通信分野においてはブロ―ドバンド化、放送分野においてはデジタル化を軸として、情報通信全体に大きなパラダイムシフトを促している。この動きは、IP化やモバイル化の動きと相俟って、容易に処理できるデジタル情報を、短時間で大量に流通させる手段をもたらした。

1-3 通信分野におけるブロ―ドバンド化は、有線・無線ともに、Mbps級の家庭向けサ-ビスにおいて進行している。

1-3-1 有線

1-3-1-1 ケ―ブルテレビの同軸ケ―ブルを用いたインタ-ネット接続サ-ビスは、Mbps級も普及してきた。

1-3-1-2 電話加入者回線の銅線ケ―ブルを用いたデジタル加入者回線サ-ビスは、競争環境のもとで、低料金で最大約50Mbps級のアクセスを実現した。

1-3-1-3 光ファイバは、100mbps級のアクセスを実現した。

1-3-1-4 平成18年6月30日現在で、ブロ―ドバンドサ-ビス契約数は、CATVによるインタ-ネット接続300万、DSL1400万、FTTH600万を超えた。

1-3-2 無線

1-3-2-1 無線LANは、高速アクセスシステムの技術基準により、2.4GHz

  帯で最大約54Mbpsのアクセスが実現した。

1-3-2-2           ケ―タイについても、Mbps級の高速サ-ビスが始まり、ブロ―ドバンドサ-ビスの一翼を担っている。

1-3-2-3           移動通信におけるブロ―ドバンドサ-ビスの契約数は、第3世代ケ―タイで5200万台、公衆無線LAN550万を超えた(2006-6-30現在)

1-3-2-4           放送のデジタル化は、地上放送、衛星放送、ケ―ブルテレビの各々において進められてきた。

1-4      通信・放送両分野の相互乗り入れ

    上記のような通信・放送各分野の動きは、その各々の分野の中での展開にとどまっていない。放送設備を用いる通信サ-ビス、通信設備を用いる放送サ-ビス、CATV設備によるインタ-ネット接続、IPマルチキャスト方式による放送サ-ビスの提供が、次々に開始されてきた。

2.今後の新技術導入における周波数対策の重要性

2-1  情報通信の代表的な伝送手段は、固定系の有線と、固定・移動の両系の無線である。ブロ―ドバンド化・デジタル化を軸とした伝送の高度化は、その各々における新技術の導入により進めえあれてきた。

2-2  有線の伝送路に係る高度化については、固定通信に関して進められてきたアンバンドル政策により、伝送路設備の両端に接続する伝送装置の高度化が円滑化し、一定の進展が見られるのに対し、無線の伝送路、すなわち電波に係る高度化については、有線の場合と異なり、電波の利用が他の無線局等に混信等の妨害を生じないよう、技術的条件を策定することが前提となる。

2-3  電波を利用する新たな需要に対応すべく、ケ―タイ・無線LANの高速化やBWA(Broadband Wireless Access)の実用化等により100             mbps級のアクセスを実用化する動きが進められている。

2-4  電波利用の高度化に向けた新技術の導入をさらに促すことは、通信・放送の新サ-ビスの展開を促し、国際競争力の確保にも資する上に、双方を融合・連携させる新サ-ビスの動きにも有効である。

2-5  他方、電波利用に関しては、需要の増加により周波数の逼迫が進行している。今後急速に進む技術革新の成果が、さらに円滑に市場に投入されてゆくためには、新技術開拓から試験を経て実用サ-ビスへ成長する過程と免許制度を再検討し、これが円滑に進められるよう具体的な方策を講ずる必要がある。

3.電波法制に関する検討(以下本稿その2)

2007年1月 3日 (水)

年始の話題(その2): 「次世代ネットワ-ク」と「固定・移動融合」と「トリプルプレイサ-ビス」と

用語は新らしくないが、語義は間断なく進歩する分野

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

3.NGN概念の進化と国際標準化の追随

3-1 ネットワ-クの進化と共に、用語の内容も進化する。NGN、Next Generation Networkも用語としては旧語でありが、その内容は間断なく進化しており、現時点でのNGNが何かが、先ず把握されなければならない。

  例えば、2005年間を通じて、ITU(国際電気通信連合)の国際標準化作業におけるNGNは、次のようにその提供サ-ビスを分類していた。

3-1-1        ISDNと従来電話網との互換サ-ビス

3-1-2        電話機とのインタ-フェ―スをIPとし、従来の電話機はアダプタを介して接続するサ-ビス

3-1-3        IP網によるマルチメディアサ-ビス

3-1-4        インタ-ネットへの接続サ-ビス

3-1-5        ファイル転送等のデ―タサ-ビス、ユ-ザ-機器の管理を代行するOT(Over the Network)デバイス管理など

3-1-6        社会的インフラとしての公共的サ-ビス

  上記を本稿その1のNGNと比較すると、内容の質に格段の進化が見られる。

3-2               ここでSANARI PATENTが強調したいことは、NGNに限らず、情報通信の分野においては、国際標準に基づいて情報通信インフラが構築されることは考えられず、技術革新に追随して国際標準化の試みが追行することである。国際市場を制覇できる情報通信ネットワ-クを構築できた国家群・企業群がNGNの国際標準化を形成し、複数の国際標準化が競合すれば、互換性をもって並列することとなる。

4.固定・携帯融合

4-1  FMCも、固定移動統合あるいは固定携帯融合と呼ばれ、頭字語として新らなものではないが、その内容は固定・移動の両通信技術の発達と共に進歩し、「有線・無線」の「統合・融合」の進捗に伴って発展しつつある。

    すなわち、同一端末を固定・移動の両通信で利用可能とするサ-ビス、携帯電話を内線電話あるいはコ―ドレス電話の子機として利用可能とす

るサ-ビスから始めて、有線通信端末とケ―タイを連携させて両者の機能を統合利用可能とするサ-ビスに至る。この「両者の機能」のそらぞれが多機能化・高度化するのに伴って、統合された機能も、多機能化・高度化するから、同一用語の内容が間断なく進歩する。

4-2    総務省が旧年末に公表した「通信・放送の新展開に対応した電波放送の在り方: 副題 ワイヤレス・イノベ-ションの加速に向けて(案)」(2006-12-22)も、固定・移動の融合を促進する方向性を有する。

  「通信・放送」の「通信」には、「固定通信としての有線通信」と「移動通信としての無線通信」を含み、「放送」にも、固定・移動の発受信機構があって、かつ、放送と通信の双方向性・「多対1」の双方向性が形成されてきたから、「固定・ケ―タイの融合」と「通信・放送の融合」は、現時点では、同義語と考えられる。

2007年1月 2日 (火)

年始の話題(その1): 新たなNGN(Next Generation Network)とFMC(Fixed Mobile Convergence)とTPS(Triple Play Service)と:

新春に展開するNTTフィ―ルドトライアル、新たなビジネスモデルやスキ―ム創出の潮流に乗る企業

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

 本年度上半期の電気通信関係各社の中間報告書には、「次世代情報通信ネットワ-ク」(NGN)や「固定・ケ―タイ融合」(FMC)の本格的展開に参画してゆく戦略が見受けられた。NGN等の用語自体は新たでなくても、用語の内容は、情報通信ネットワ-クの進化と共に、間断なく進化する。

 例えば、日本電話施設㈱(NDS)の本年度上半期中間報告書には、「200612月には、NTTグル-プを中心にNGNのNGNフィ―ルドトライアルが開始されることから、新たな技術サ-ビスの出現、これまでにないビジネスモデルやスキ―ムが創出されてゆくことも想定される」旨を述べた。

また同報告書は、「固定通信網においてFTTH(SANARI PATENT 注:各家庭内に光フザイバ)の普及が加速すると予測され、移動体通信においても、携帯電話サ-ビス(SANARI PATENT 注:「電話」という限定が既に全く不適切なので、「ケ―タイ」としたいが、ここは原文そのままにして)の多様化・高度化が進展し、FMCに向けての動きも活発化してゆく」旨を想定している。

これら動向の環境として同報告書は、FMC(SANARI PATENT 注:この頭字語は、おそらく、SANARI PATENTが制作)について、「ブロ―ドバンドサ-ビスとして、インタ-ネット・IP電話・映像配信を提供するいわゆる「トリプルプレイサ-ビス」が広がりを見せる」と述べている。

1.        NGN: 次世情報通信ネットワ-ク

1-1                NTTの解説(要旨)

1-1-1        NTTが牽引し、構築を進めているNGNは、2000612月からフィ―ルドトライアルを実施し、2007年には本格的サ-ビスの開始を予定している。

1-1-2        NGNは、固定電話のように安心で高い信頼性を持ち、かつ、IPネットワ-クの自由度を目指した、次世代ネットワ-クである。現在、多様なネットワ-ク(固定・携帯・専用線・IP-VAN・広域インサ-ネット・インタ-ネット等)が、個別の技術に支えられて機能している。

1-1-3        例えば、固定電話は音声通信を目的とするネットワ-クで、高速・クリアの高品質が保証されるのは音声デ―タに限られ、画像デ―タには不向きである。インタ-ネットは、画像デ―タについても高速・大容量というメリットがある反面、実効速度はベストエフォ―トベ―スで、かつ、セキュリティの問題がある。従って、特に企業は信頼性を追求して、専用回線・IP-VPN/高速インサ-ネット・インタ-ネットVPNを使用することになるが、専用線はコストが高く、IP-VPN/高速インサ-ネットやインタ-ネットVPNは、回線使用コストは抑制できても、ル―タやスィッチなど高価なネットワ-ク機器が必要であり、煩雑な機器設定など、ユ-ザ-の負担が大きい現状である。

1-1-4        NGNは、既存のネットワ-クの「いいとこ取り」をしたネットワ-クで、企業が、品質保証・安全性・自由度のどれを取るかで回線を選択する必要をなくする。さらに従来、ユ-ザ-側の個別のネットワ-ク機器が行っていた制御を、NGNはネットワ-ク側で用意することができるので、イントラネットを構成する装置を減少できる。「何をつなぐか」で、できることも異なるから、自由度も高い。」

1-2 「IPv6」の採用

    NGNは基盤技術として次世代IPプロトコルである「IPv6」を採用する。現在普及している「IPv4」と比べて膨大な数のアドレスを使用でき、ネットワ-クに接続する全ての機器に個別のアドレスを付することが可能になる。

2.        NGNの国際標準化体制

内閣知財戦略本部が策定する知財推進計画07は、国際標準化を重要課題として戦略的に取組むが、具体的な標準化対象に言及することが望まれ、特に、GNGは、グロ-バルな情報インフラとして極めて重要と、SANARI PATENTは考える。(その2)に記述する。

2007年1月 1日 (月)

「世界特許」の初夢(正夢化の所要年数に異論)

日米特許FTA締結案の先行実行案(早期正夢化は「やる気次第」

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

謹んで 知的財産関係各位に 新春のお慶びを申しあげます

さて、シャ―プの電子辞書で「初夢」には、古歌が添えられています。「年暮れぬ 春来べしとは思い寝む まさしく見えて 叶う初夢」。

 実現の時期は別として、「世界特許」は内閣知財戦略本部知財推進計画が掲げるグロ-バルな大目標である。従って、その実現が「叶う」まで、日米特許FTA締結案の実現、さらに、その実現が「叶う」道順として、わが国の先行実行案を実現することが、内閣知財戦略本部事務局の提案である。SANARI PATENTは、この先行実行案を知財推進計画07に明示するよう、提言している。

1.        知財推進計画06における世界特許

    世界特許システムの実現は、わが国既定の知財戦略であるとして、その構築に向けた取組を強化するという項目のもとに、次の三つの方策を掲げている。

1-1        日米欧三極特許庁間で、特許の相互承認の実現を図る:

1-1-1        第1ステップ

    日米欧各特許庁の従来技術調査・特許出願審査の結果を相互に有効活用し、重複調査・審査の無駄を省くよう、これらデ―タの共用ネットワ-クとして、「次世代ドシエ・アクセス・システム」を利用する(SANARI PATENT 注:「ドシエ」は、特許出願と審査の一件書類で、「包袋」と訳されてきた)。このシステムは、既に始動した。

1-1-2        第2ステップ

    日米欧三極特許庁相互に、第1庁で特許査定された出願については第2庁において、簡易な手続で早期審査が受けられる「特許審査ハイウェイ」の構築を、2006年度から、先ず日米間で試行開始する。

   この際、第1庁の従来技術調査・特許性審査結果の利用が制度的に担保されるよう、第2庁における追加的調査が不要な部分を、ガイドラインで明定するなど、運用の明確化または必要な制度整備を行う。

1-1-3        第3ステップ

1-1-3-1           日米欧三極特許庁間で、一国で成立した特許は、他国でも原則として認めるよう、実質的な特許相互承認制度を実現する。

2006年度には、日米欧三極特許庁会合にワ―キンググル-プを設置し、他の特許庁の審査結果の試験的な受入れを検討する。

1-1-3-2           米欧以外の外国特許庁への対象拡大を進め、最終的に世界特許を実現する。

1-2                      日米欧三極特許庁の出願明細書記載様式の統一(One Application/One format)を進める:

   上記1-1の取組と並行して、日米欧三極特許庁の特許出願明細書の記載様式を、PCT(特許国際協力条約)に基づく国際出願の様式を基本に統一するための取組を、官民協力して進める。

   日米欧三極特許庁間で同時に統一することが困難な場合には、先ず2庁間の統一を目指す。

1-3                      特許制度の国際的な調和を促進する:

1-3-1      WIPO(世界知的所有権機関)における、利用者の利便向上等を目的としたPCT改革の議論や、実体特許法条約に関する議論に精力的に取組む。

1-3-2      米国における出願公開制度の全面的導入、先願主義への統一、グレ―スピリオドの統一を含めた、特許制度の国際的調和の議論を促進する。

2.        SANARI PATENT所見

    各国の特許制度は、各国の産業政策の一環として理解されてきたから、産業の発達段階を等しくする先進国間で先ず、世界特許へのステップを踏み出すことが、「初夢を叶える」実際的な方策であるし、現に、その姿勢が採られつつある。

« 2006年12月 | トップページ | 2007年2月 »