最近のトラックバック

2016年8月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

« 2006年11月 | トップページ | 2007年1月 »

2006年12月31日 (日)

IPマルチキャスト放送開始の必須要件として著作権法改正

総務省と文部科学省の各事務局答弁の錯綜

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  大晦日は、TV視聴率が高い日と思われるが、12月に成立した著作権法改正は、国民のTV生活に大きな影響力を及ぼす。その理解を深めるために、衆議院の議事録(2006-12-1 文部科学委員会)は好都合である。下記はいずれも要旨。

1.        松本大輔委員(民主党)の質疑

  「今次著作権法改正の提案理由説明として、『第一に、放送の同時再送信に係る制度の見直しを行うこととしております。地上デジタル放送への全面移行に向け、その補完路として、IPマルチキャスト放送による放送の同時再放送が期待されております。当該同時再送信が、本年末に開始される予定であることから』と述べられていますが、大臣、当該同時再送信大本年末に開始しようとしているのは一体だれなんですか」。

2.        加茂川幸男文化庁次長の答弁

  「IPマルチキャスト放送による同時再送信が今年度末、すなわち、平成18年度末に開始されることは、ご指摘の通りです。(松本委員『年末ですか』と呼ぶ)18年末です。この12月です(SANARI PATENT 注:質疑した議員の方が正確に発言した次第)

  これは、地上デジタル放送への全面移行に当たって、このIPマルチキャスト放送が、難視聴地域における放送受信のための重要・有効な手段として、大きく期待されることを踏まえ、いわば準備手続として、関係行政機関・関係会社連携して進んでいると理解しています」。

3.「ばらばらの答弁」に伊吹文部科学大臣が代弁

  「松本先生と私の理解が合っているとすれば、『関係行政機関というのは何ですか』という先生の御質問に、みんな(SANARI PATENT 注:総務省・文部科学省の説明要員)ばらばらの答えをしていると思いますので、私がお答えを申しあげます。

  そもそも、放送事業を所管しているのは総務省ですから、総務省がこの通信形態を認可して、そして通信をする企業その他に放送の実施を許可した場合に著作権上の問題が生ずる部分について、この法律を文部科学省がお願いしています」。

3.        松本委員の疑念

  「のっけから答弁が全く正解でなかったと、総務省の事務方と文部科学省     の事務方と、あるいは総務の副大臣、文部科学省であり総務省なんだというふうなお答えがあった後、総務省の事務方からは、いや電気通信事業者ですと全く食い違った答弁をされることについて、疑念を抱きます。つまり、当該同時再送信を本年末に開始する予定を立てているのは、電気通信事業者ですね」。

  「また、本年末という根拠は何ですか」。

4.        中田 睦 総務省大臣官房審議官の答弁

  「  2003年から地上デジタル放送を開始し、20011年に完全にデジタル放送に移行するということで、全体の著作権上デジタルのスケジュ―ルが進んでいます、地上デジタル放送の再放送の手段は幾つかありますが、すべての手段を尽くして2011年への移行を円滑に進めたいというのが大きな動きです。その中で。IPマルチキャスト放送も非常に有効な手段であり、情報通信審議会等でも、2006年末を目指して準備が進められてきました」。

  「これを実現するためには、技術的検証とか、放送事業者側の体制とか色々な要件がありますが、これらの準備は完了し、残ったハ―ドルは著作権法で、これがクリアできれば実用化へのハ―ドルは殆どなくなります」。

5.        松本委員が「ぼかし説明」を究明

  「総務省がみずから手がけている実証実験と、事業者による試行サ-ビスとは分けて考えるべきであり、総務省が行っている実証実験については今回の法改正は絡まないという昨日の説明は矛盾し、わざとぼかしたようですが」。

6.        SANARI PATENT所見

「本年末」という時点の意義について、答弁が錯綜するが、要するに、著作権法の改正がわが国デジタル放送の展開のため必須であり、他の著作権法改正事項と併せて、今回可決成立させたというに尽きる。

 放送関係も薬事関係も、著作権に対する権利制限を公益の観点からどのように、この際、定めるべきかが課題であったので、SANARI PATENTでも、さらに明細な記述を別途用意する。

2006年12月30日 (土)

活況のSamsung(三星電子)に対する特許侵害訴訟提起と国際カルテル問題

WIPO統計で国際特許出願PCT世界第5位韓国(米日独英韓仏)」のトップ企業・サムスンの来春展望

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        日本サムスンが馴染むSamsung Group(以下「サムスン」)

1-1  韓国文化の振興を韓国コンテンツが韓流として代表し、韓国経済の発展をサムスンが代表している観がある。一方、諸国企業からのサムスンに対する特許侵害訴訟も提起されつつあり、サムスンは力強く立ち向かうであろう。

1-2   サムスンは、次のように企業理念(Value and Philosophy)を掲げている。

1-2-1      世界中の人々に豊かで幸せな暮らしをもたらし、人類の発展に貢献したい。

1-2-2       このため、私達は常に「人材」と「技術」を磨き、

1-2-3       次代を開く最高の製品とサ-ビスの創造に挑戦している。

1-3  グル-プ構成は、電子・機械/化学・金融・貿易サ-ビスの各部門と、

非営利法人(サムスン医療院・サムスン言論財団等)からなる。特にサムスン経済研究所の業績と、その開示の在り方は、日米欧の経済研究所に優る公益性を発揮していると考える(特にトピックのバ-ジョンアップの頻度)(例えば、「2007年の韓国経済のリスク要因」解析)。

2.        サムスン電子

   サムスン電子は、サムスングル-プの中核である。2005年の売上高(単独)は、6兆6900億円(連結決算推定9兆900億円:SANARI PATENT推計)に達したから、日立製作所の9兆4648億円、東芝の6兆3435億円、三菱電機の3兆6041億円(共に、野村證券・東洋経済・会社四季報の2005年度売上高)と比肩する。

   純利益として2005年に8850億円としているから、利益率、利益額とも、上掲わが国企業よりも経営数値としては良好であるが、2005年の従業員数12万8千人(例えば、東芝17万7千人)とのことで、給与水準と共に、生産性の水準を示している。

3.        液晶国際カルテル問題

    他方、yomiuri.com-2006-12-13は、「液晶、国際カルテルの疑い。シャ―プ、サムスンなど」という見出しで、次のように報じた(要旨)。

3-1  液晶ディスプレ―の販売価格をめぐり、日韓台の主要メ―カ―が国際カルテルによる独禁法違反の不当な取引制限容疑で、日韓の公取委が販売状況などを調査中と分かった。

3-2   関係各社に対し、米国司法省は召喚状を送付、EU委員会も情報提示を求めるなど、一斉に調査に乗り出した。関係者によると、調査対象には、国際的に最大級のシェアを持つ韓国のサムスン電子やLGフィリップスLCD、わが国のシャ―プ・セイコ―エプソン・東芝松下ディスプレ―テクノロジ―・NEC液晶テクノロジ―など、台湾の友達光電や奇美電子などが含まれている。

3-3   上記各社は、薄膜トランジスタ方式などの液晶ディスプレのの販売価格の低落を防ぐため、カルテルを結んだ疑いがあるという。

4.        SANARI PATENT所見

韓国の著名な特許事務所「P..K.KIM&ASSOCIATES」から、News Letterの最新号が送付されたが、「日本のキャノン社が、サンスン電気などの国内業体(SANARI PATENT 注:原文の用語)らと交えた特許権訴訟で最終勝訴(SANARI PATENT 注:韓国最高裁判決という意味)した」と伝えている。「サンスン電気」とあるので、サムスン電子とは別と解する。

訴訟対象は、レ―ザプリンタのカ―トリッジに関し、この判決で、リサイクル業者の打撃も大となると、同News Letterは見ている。

2006年12月29日 (金)

生活産業の知財戦略とライフスタイルの変容(その2)

人気キャラクタ―、デジタルペン、カスケ―ドスキ―ム、キッヅカ―ドゲ―ム、パチスロ環境向上、高品質もやし

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  歳末は、消費者金融、ゲ―ム、賭け遊び等が、生活に進入し易い時機である。これらの関連業界にも、ビジネスプログラムやパチスロ機の構造など、パテントに馴染む分野(パチスロ機器業界のパテントプール等)が見受けられる。

  関連各社の今次中間報告書は、おおむね消費者生活の堅実化の性向を示しているように思われる。

10.(付番は承前)㈱セントラルファイナンス: 増収増益(ただし今次中間期には特別損失を計上)

   「新たにサンリオの人気キャラクタ―『マイメロディ』を起用した新規会員獲得・利用促進のプロモ―ションを実施したほか、『ワンダフルプレゼント21』の大幅リニュ―アルによりポイントサ-ビスを充実させ、稼働率の向上に注力しました」。

   「デジタルペンを使ってショッピングクレジットやクレジットカ―ドの申込ができるシステムを。信販業界で初めて開発しました」。

   「信用保証部門では、スジキファイナンス㈱を始め、提携先が運営するオ―トロ―ン事業や、大手百貨店等のクレジットカ―ド事業に対する信用保証業務が堅調です」。

   「集金代行業務や、コンビニ収納業務など、資金の回収に伴うフィ―ビジネスは引き続き堅調です」。

   「利息返還損失引当金を特別損失に計上しました」。

11.㈱プロミス: 微増収減益(ただし今次中間期には特別損失を計上)

   「消費者金融事業では、三井住友グル-プとの戦略的提携を推進しつつ、お客様とのコミュニケ―ションを重視し、多様なニ―ズに対応します」。

   「現在展開中の香港・タイの消費者金融事業に続きアジア全域を視野に入れます」。

   「戦略的提携の主力事業としては、カスケ―ドスキ―ムによるカスケ―ド事業を展開しています。カスケ―ドスキ―ムとは、ブランド・貸付金利帯が異なる3社が連携し、複数のブランドへの一括申込や紹介等により、お客様のニ―ズに総合的に応えるものです」。

12.松井証券株: 減収減益

   「わが国の株式市場は、当中間期において個人投資家の株式売買代金は133兆円で、前年同期比35%減少しました。東京・大阪・名古屋の三市場での売買代金全体に占める個人投資家の割合も22%と、前年同期の30%から大きく低下しました」。

   「当社の新規サ-ビスとしては先ず、日経225mini『ネットsトック・ハイスピ―ド』があります。これは、日経225先物取引と比べて10分の1の証拠金で始められ、大好評です」。

   「手数料体系の改訂は、『ボックスレ―ト』の細分化等により初心投資家からアクティブな投資家まで使い易い手数料体系としました」。

   「来春、即時決済取引の夜間取引PTS(私設取引システム)を開設します。わが国初の即時決済取引とは、約定と受渡が同時に行われる取引で、例えば、株券を売却後、直ちにその現金を引き出せます。すなわち、株券と現金を隔てる壁が低くなり、個人投資家に身近になります」。

13.㈱マ―スエンジニアリング: 減収減益

   「本年5月、風適法(風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律)の一部改正が施行され、規制強化により再びパチンコ業界の冷え込みが続いています。一方、国内雇用環境の改善で、パチンコ業界にとっては、人材確保が厳しくなりますので、この状況をビジネスチャンスとし、従来システムの玉積み不要・即計数可能に加え、有機ELディスプレイの搭載、操作ガイダンス表示による初心者操作の簡便化、カ―ドストックによるスタッフ業務の軽減、プリペイドによる会員サ-ビス向上など、飛躍的に利便性や性能を向上させ、かつ、低価格化を実現しました」。

14.㈱ハピネット: 増収微減益

   「玩具市場は、メ―カ―メ―カ―再編が進む中、中間流通も寡占化します。その寡占化市場で、シェアの拡大を図ります」。

   「アミュ―ズメント事業は、上期で前期1年分の利益を上回りました」。ミニプレイランドの展開の中で、『ガシャポン』というカプセル玩具に加え、流行となったキッヅカ―ドゲ―ムの積極的販売によるものです」。

   「バンダイ『轟轟戦車ボウケンジャ―』を始め、男児キャラクタ―は堅調に推移しましたが、リ―ド商材の不足で女児玩具は低調でした」。

15.㈱カネカ: 増収微減益

   「血液浄化システムとカテ―テル類の販売が堅調で増収増益でしたが、医薬バルク・中間体は既存品の販売が増加したものの、開発品が販売減のため、増収減益でした」。

   「食品素材は、コエンザイムQ10の競合激化で売上高・利益ともに大幅に悪化しました」。

16.㈱雪国まいたけ: 増収増益

   「経済産業省が進める平成18年度地域新生コンソ―シアム研究開発事業において『きのこ廃菌床からの有効成分回収と活用』というテ―マで産学官連携による技術開発プロジェクトに参加が決定しました」。

   「TVCMが好評で、雪国もやしの高品質が全国で賞味されています」。

17.SANARI PATENT所見

    性別・年齢別を問わず美容に新たなスタイルが加わり、美食の追求、ゲ―ムの興趣深化と健全性が望まれる。例えば、パチスロの射幸性の適度は風適法により規制されるが、これと興趣性増強の調和がプログラム特許の対象であり、パテントプールが形成されてきた。

   しかし、競馬・競輪・競艇等の動向を見ても、消費者の行動は射幸の取締りを俟たず、健全と見受けられる。公営競技の入場者一人当たり車券・馬券等購入額は毎期逓減し(平均2万2800円)、年間総売上高は5兆円にとどまる模様である(本年度上半期2兆5427億円で、対前年同期比98.9%)。全盛期の半ばに過ぎない。

   ちなみに、パチスロ業界全体の売上は、全公営競技の合計額を上回り、今後は、サッカ―くじの新工夫と、カジノ許容案の成否が注目される。

2006年12月28日 (木)

生活産業の知財戦略とライフスタイルの変容(その1)

「スイッチOTC薬の拡販」「体内に吸収されるポリ乳酸製吸収性骨接合材」「美尻・美腹・美腿のパ―フェクトボディ」「男性用美尻パンツ新種」等々

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  団塊・高齢・少子に適応する生活産業の知財戦略が、関係各社の今次中間事業報告書にうかがわれる(引用はSANARI PATENT要約)。ここにも、増収増益・増収減益など多様性が見られる。

1.        総合メディカル㈱: 通期増収増益予想

  「病院の勤務医ポストは頭打ちで、新規開業は地域によっては競争激化で困難になっています。当社のDtoD(Doctor to Doctor)システムは、豊富な転職・開業情報を提供します」。

  「開業医全体の4分の1が70歳を超え、3分の1が後継者不在とのことで、毎年4000件近い診療所が休廃止しています。DtoDは、後継者がない開業医に医師を紹介します」。

  「医師の専門医志向、都会志向による意志不足の地方について、医師紹介と医療連携を手伝います」。

  「全国病院の約半数がDtoDに登録済みです」。

2.        ㈱アデカ: 増収増益

  「優れた生理活性と高い水溶性・吸収性を持つ大麦ベ―タグルカンと発酵ベ―タグルカンを商品化し、健康食品・サプリメント・化粧品等、幅広く応用されています」。

  「世界的なバイオ燃料の開発により、油脂原料の価格が高止まりしました」。

3.㈱ワコ―ルHD:  増収増益

  「女性の美や健康に対する多様なニ―ズに対応する新たな事業モデル『カロロカ(caroroca)』を展開しました」。

  「当社は、乳がん早期発見の世界的活動「ピンクリボン」に参画し、乳がんのビフォアケア―を行なうピンクリボン活動と、アフタケア―のリマンマ事業を同時実践しています」。

3.        テイカ㈱: 増収増益(連結)

  「当社の表面処理製品は、微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛、シリカなどの無機粉体を、各種有機化合物でコ―ティング処理した高機能・高付加価値の粉体材料です。この処理により各種粉体の表面状態が変化し、希望する特性を付与します。皮膚がんや、しみ・しわの原因といわれる紫外線UVB波を遮蔽します」。

4.        永谷園: 微減収微減益

  「高齢者向けの宅配弁当『宅配クック ワン・ツゥ・スリ―』は、当社グル-プとのシナジ―効果が見出せないため、運営会社との資本関係を解消しました」。

  「回転寿司は、不採算店を閉鎖しました」。

5.        ㈱ファンケル: 微増収微減益

  「メイク製品やボディケア製品が、通信・店頭・海外向けの各販売とも堅調でした」。

  「ビュ―ティサプリメント・ダイエット関連製品は好調でしたが、前年記録的売上を計上したコエンザイムQ₁₀やα-リボ酸の売上減少をカバ―できませんでした(SANARI PATENT 注:消費者の移り気?)」。

6.        シチズン時計㈱: 微増収微減益

  「宝飾製品は、貴金属相場の高騰による買い控え、婚姻件数の減少により厳しい状況が続いています」。

  「球機用機器は、多くのホ―ルが大幅な遊技機の入れ替えをした結果、周辺機器の需要は低迷し、減収となりました」。

7.        グンゼ㈱: 同収増益

  「女性のスタイリッシュパンツのバリエ―ションを広げ、美尻・美腹・美  腿と、パ―フェクトボディへの進化を続けます」。

  「治療後、体内に吸収されるポリ乳酸製吸収性骨接合材は、海外を含め拡販中です」。

8.        御幸HD株: 増収増益(計上利益)

「来春、『ナノスペ―ス』を発売します。これは、ナノレベルの薬剤を使い、ウ―ルに高機能を持たせたナノテクノロジ―素材です。撥水・発油性が優秀です」。

「男性用美尻パンツに新種を加えました」。

9.        エスエス製薬㈱: 減収減益

  「当社は、OTC(SANARI PATENT 注:薬局販売医薬)のチャンピオンを目指しています。現在の国内OTC薬の市場規模は約7千億円ですが、近年縮小均衡が続いています。一方、ドラッグストアで併売されているコスメティック市場は、全体で約2兆2千億円(うち機能性化粧品1兆6千億円)です。当社は、現在は商品化されていない予防薬や、スイッチOTC薬(医療用医薬品を一般医薬品へ転用したもの)を商品化し、新たな市場を創造します」。

10.SANARI PATENT所見

   エスエス製薬の報告に関連して、消費者が、OTC薬、特にスイッチOTC薬やジェネリック医薬品を賢明に活用し、医師不足に巧みに対応することが望まれる。

2006年12月27日 (水)

健康産業に各社集結

日東電工、横河電機、東洋紡、東レ、カネカ、電気化学工業

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

 今次中間事業報告書には、諸分野からの健康産業開発計画が見られる。各社の記述を要約する。

1.        日東電工

1-1  認知症薬の経皮投与: 「先日発表したアルツハイマ―型認知症用の貼り薬を始め、日東電工グル-プの基本であるテ―プ技術を応用した、シ―トから皮膚を通して薬品が身体に入ってゆくというコンセプトの製品が世界で受け入れられ始めています。高血圧やニコチン抑制など多数のテ―マがあり、このうちの幾つかが成長エンジンになる可能性を秘めています」。

1-2  薬価改訂: 「気管支拡張用(喘息用)経皮吸収型テ―プ製剤が、薬価改訂と在庫調整のため低調でした、また、衛生材の化粧品関連も、市場一巡による重要緩和のため低調でした」。

2.        横河電機

2-1  脳磁計: 「臨床分野での活用が期待される脳磁計、バイオ分野で注目される共焦点スキャナなど、先端技術の粋を集めた製品群で幅広いニ―ズに応えます」。

2-2  生細胞観察: 「共焦点スキャナは、生きた細胞の観察に最適な顕微鏡として、世界各国の大学や研究機関で活用されており、トップのシェアを築いています」。

3.        東洋紡

3-1        糖尿病診断: 「血糖値測定用酵素などの診断薬用酵素が、国内外で順調に売上を伸ばしました。また、免疫診断システムも堅調に推移し、新たに、腎臓疾患などの指標に用いるイヌリン測定試薬を発売しました」。

3-2        受託製造: 「医薬品製造受託事業では、受注案件の拡大により増収となりました」。

3-3        薬価改訂: 「抗血栓コ―ティング材や人工腎臓用中空糸膜は、薬価改訂で減収となりました」。

4.        東レ

4-1  効能追加: 「東レは、天然型インタ―フゼロン ベ―タ製剤『フゼロン』について、『C型代償性肝硬変』における効能・効果の追加承認を国内で取得しました。これまで日本では、C型代償性肝硬変の治療薬として肝機能の安定化を図る薬剤以外の使用は認められていませんでした」。

4-2  「市場環境: 薬価改定・競争激化で、人工腎臓や敗血症治療用吸着式血液浄化器の拡販に取組んだものの、若干の減収となりました」。

5.        カネカ

5-1  世界標準: 「世界水準の安全性を備えた当社の新型血漿浄化装置等の血液浄化システムと、カテ―テルの販売が堅調に推移し、増収増益となりました」。

5-2  パンの多様化に最適イ―スト: 「製パン業界において品種多様化の傾向が年々強まり、多機能でかつ汎用性のある、使い勝手の良いイ―ストへのニ―ズが高まってきました。当社が開発したイ―スト『ドルフェ』は、生地糖濃度やパン製法に関係なく、一般製パン、無糖生地用、冷凍生地用など多彩なパン作りに使用できっます。さらに、黴抑制効果による日持ち向上効果という、これまでにない機能も併有しています」。

6.        電気化学工業

6-1  関節機能剤: 「高分子ヒアルロン酸製剤の関節機能改善剤『スベニ―ル』は、順調に販売を伸ばしました」。

6-2  インフルエンザワクチン: 「デンカ生研の主力製品・インフルエンザワクチンの出荷の一部が上半期に前倒しになったこともあり、増収となりました」。

7.        SANARI PATENT所見

  各社内の事業分野別報告で、「機能性」を冠する分野が目立つ。例えば、カネカは、今次中間報告書の営業利益構成を、「機能性樹脂33%(売上高18%)、エレクトロニクス27%(11%)、ライフサイエンス27%(9%)、化成品10%(19%)、食品9%(23%)、発泡樹脂製品-2%(15%)と示している。

2006年12月26日 (火)

特許出願日の認定における「分割要件の充足」

充足の成否を左右する「自明」該当性、遡って、「周知技術」の画定

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  複数の発明を含む特許出願の一部を、新たな特許出願とする「特許出願の分割」について、分割の要件が満たされているか否かによって、新たな出願の出願日が、原出願日か現実の出願日かが決まり、それによって、周知技術該当性も決るから、「分割の要件」の解釈は極めて重要である。

 また、「周知技術」の要件も、特許性の判断上、法制上は決定的に重要であるが、その具体的認定が「判断」に委ねられることは、特許権の本質である。

 平成18年(行ケ)10159号 特許取消決定取消請求事件判決(2006-11)ににおいて知財高裁は、原告・東京応化工業の請求を棄却したが、知財高裁の判断理由は、実務上、参考とすべきである。

1.「分割要件の充足」に関する知財高裁の判断

   知財高裁は、次のように説示した。

1-1  原告は、原明細書に本件発明が記載されているのもかかわらず、本件出願が。分割要件を満たしていないとして、本件出願の出願日を、現実の出願日であるとした本件決定の認定は誤りである旨、主張する。

1-2  しかし、

1-2-1      原明細書中には、従来用いられていなかった本件A成分について、単独で用いることを示唆する記載はない。

1-2-2      本件A成分を単独で使用することが、原明細書に記載した事項から自明な事項であるとはいえない。

1-3  従って、本本件出願は、原出願との関係で特許法44条1項の分割要件を満たさないというべきであり、これと同旨の本件決定の判断は是認できる。

(関係条文)特許法44条1項 特許出願人は、願書に添付した明細書又は図面について補正することができる期間内に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。

1-4  これに対し原告は、特許法44条1項は、原明細書に記載されている二つ以上の発明が互いに匹敵する作用効果を示すものでなければならないことを分割の要件とするものではばいから、本件出願は原出願との関係で特許法44条1項の分割要件を満たさないとした本件決定の判断は誤りであると主張する。

1-5  しかし、分割出願の発明が特許法44条1項の「二以上の発明を包含する特許出願の一部」であるためには、分割出願の発明において特定する技術的事項のすべてが、もとの出願の当初明細書(原明細書)の発明の詳細な説明に記載されていなければならないものであるところ、1-2に示すように、本件分割出願はこの要件を満たしていない。

1-6  原告はさらに、本件出願は、原出願2の分割出願でもあり、本件発明が原明細書2に記載された発明であることは明らかであるから本件出願の出願日は原出願日とされるべきであると主張する。

1-7  この点については、本件決定が本件出願の出願日を現実の出願日と認定したことは誤りである。しかし、引用刊行物の頒布が原出願日よりも前になされているから、この誤りは、本件決定の結論に影響を及ぼさない。

2.本件発明と引用刊行物記載事項との相違点に関する知財高裁の判断

2-1 引用刊行物によって、「本件原出願の前に、『ポリヒドロキスチレン誘導体からなるエキシマレ―ザ―用ポジ型レジスト組成物において、基材樹脂が単分散であることが望ましいこと』は、既に知られており、本件決定の認定に誤りはない。

2-2 原告は、「周知技術とは、文字通りあまねく知られている技術であり、例えば、汎用の技術専門書や一般に入手可能な文献等の総説に記載されていて、不特定多数の人が知り得る状態になっていることを意味し、単に複数の公知文献に記載されている事項であるからといって、周知技術ということにはならない。また、同一出願人に係る特許公報がいかに多数存在したとしても、それに記載されている事項をもって周知技術ということはできない」と主張する。

2-3 しかし、周知技術ないし周知の知的財産権であるか否かは、文献の数によって決るものではなく、また、必ずしも汎用の専門書や文献等の総説に記載されている必要もないというべきである。

3.SANARI PATENT所見

   「周知技術」を画定する基準はどのように規定されるべきであるか、「自明」判断の審査基準をどのように補完べきであるか、判示の集積に注目すべきである。

2006年12月25日 (月)

「国際文化交流推進会議」の声を大に

わが国のソフトパワ―を世界に: 知財推進計画07への要望(内閣知財戦略本部に送信済):

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        知財推進計画06における「国際文化交流推進会議」

  内閣知財戦略本部の知財推進計画06は、その第4章「コンテンツを活かした文化創造国家づくり」に、「日本の魅力を海外に伝える」として、「積極的に文化外交を進める」という項を設け、次のように述べている。

  「2006年度も引き続き、『国際文化交流推進会議』において、海外に向け  た日本の魅力の発信や、海外における日本のイメ―ジについての調査を始めとする、国際文化交流のための諸施策について、連携協力する体制を構築し、わが国の文化の海外への発信を効果かつ効率的に推進する。」

2.「国際文化交流推進会議」の構成

   国際文化交流推進会議は、平成6年6月に、内閣官房長官決済という、機敏な形式で創設された。議長も、内閣官房副長官補で、副議長は、内閣審議官、外務省の広報文化交流部長、文化庁次長、構成員は、経済産業省商務情報政策局長ほか関係各省庁の局長等、および、有識者会合構成員として、青木 保・法政大大学院特教授、王 敏・法政大教授、岡本真佐子国士舘大教授、マリ クリスティン―ヌ・異文化コミュニケ―タ―、高原明生・東大教授、田波耕治国際協力銀行副総裁、東儀秀樹・雅楽師、ロジャ― パルパ―ス・作家 東京工大教授、平山郁夫・東京芸術大学長、福原義春・資生堂名誉会長、宮島達男・現代美術家 京都造形芸術大教授、山内昌幸・東大教授、山折哲雄・国際日本文化研究センタ-名誉教授、山崎正和・東亜大学長、山下泰裕・東海大教授と列記されている。

2.        開催状況

内閣官房のホ-ムペ-ジによると、国際文化交流推進会議は、平成17年と18年に各1回開催され、有識者会合は、会議に先立つ日時で各1回開催された。

2-1        有識者の発言

2-1-1 各省庁が様々な案件を考え出しているが、うまく実施連携されたい。例えば、外務省や国際交流基金の日中21世紀交流事業で招聘した中国の若者に、日本の世界遺産を見せたり、様々な文化体験をさせるためのネットワ-クを構築してケアする必要がある。

2-1-2       新たに招聘制度を作るのみならず、既に日本にいる外国人に対するケアが重要である。

2-1-3       地方自治体は、様々な誇りを持っているから、それを発信できるような地方自治体と協力することが効率的である。

2-1-4       例えば、「フランスにおける日本年」において、総務省を通じて各地方自治体に依頼したところ、30以上の地方自治体が費用自己負担で、流鏑馬や郷土芸能を派遣された。

2-1-5       ユネスコ本部で、バチカン主催で宗教間対話に関する会議が単発的に実施されたが、わが国としては日本に限らず東アジアの文化ということに着目しつつ、文明間対話に関する会議の継続的開催のイニシアティブを発揮することが望ましい(SANARI PATENT 注:文化庁主催の国際文化フォ―ラムでは、カシミ―ルを巡る印パ間対話、イスラエル・パレスティナ間対話、イラン関係対話に取組んできた)

2-1-6       日本文学の中でもミステリ―や大衆文学に対する海外での需要が伸びている。潜在的需要が開拓されていない地域においても、新たな需要を喚起すべきである。

2-1-7       中国のインタ-ネット人口1億人余の関心に応えるべきである。

3.        SANARI PATENT所見

3-1  国際航空連盟・日本航空協会のような国際業務事業者団体の文化活動の助 成が望まれる。上記2団体は、来年先ず、「青少年航空宇宙国際絵画コンテスト2007」予選を催すが(テ―マ Airfield)、これは、在日諸国人の幼少年を対象としている。2006 年には日本人高校生が世界3位を獲得したと報じているが、スイスに本部を置く国際航空連盟のような全世界文化活動への積極的参加と、その状況の総合的周知が望まれる。

3-2  最近、富士山北側山麓の伏流水が、天然ミネラル水として国内で珍重され始めた。花崗岩地質基盤の日本の水と、石灰岩地質基盤の欧米メ―カ―水と、茶道や食文化の独自性にも影響しているが、自然遺産と文化遺産の融合した文化交流が望まれる。

 

2006年12月24日 (日)

情報産業界の開発状況報告: アパレルのグンゼの偏向板タッチパネルなども

従来業種の枠超え、多様な今次中間事業報告書例(要旨)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        NEC

1-1 大規模グロ-バルVolP(Voice over IP)ネットワ-クシステム:

   VolPは、インタ-ネット等のIP(SANARI PATENT 注:Internet Protocol))ネットワ-クを使って、音声デ―タを送受信し、音声通話を実現する技術です。NECは、アジア・北米を中心に最高級ホテルを運営するペニンシュラホテルグル-プに、ホテル業界では初の『ホテルやオフィスなど世界14拠点を結ぶ音声網・デ―タ網の高品質融合システム』を構築しました。」

1-2        断層撮影の原理をネットワ-ク品質監視に応用するアルゴリズム:

「アルゴリズムは、コンピュ-タ-使用の処理手順です。NECは、音の途切れや映像の乱れなどの通信品質の劣化箇所を、大規模ネットワ-クにおいても、ほぼ瞬時に見付け出す監視手法を開発しました。これは、大規模ネットワ-クの端末から収集した通信情報から、ネットワ-ク内部の状態を、断層撮影の原理を応用して推定するアルゴリズムを開発したことによるものです。」

2.        日本信号

2-1 「この中間期の売上高構成は、情報制御事業が62.2%で、信号事業は37.8%でした。」。

2-2 「今回の共通ICカ―ド化が一段落した後の当社グル-プの新たな展開として、駅内における機器・サ-ビスを当社グル-プの市場として捉え、これまで培ってきたコア技術を駆使して積極的に事業展開してまいります。」

3.        シチズン時計

3-1  「液晶デバイスについて、携帯電話向けデバイスは、中国顧客は相変わらず低調でしたが、欧米の大手顧客向けが回復し増収となりました。また、当社独自のDVDピックアップ用収差補正素子も、DVD市場の拡大に伴い増収となりました。」

3-2 「カメラ付携帯電話向けのフラッシュLEDに注力すると共に、超薄型バックライトユニット等の新製品により拡販を図りました。」。

3-3 「アミュ―ズメント市場などの新市場開拓にも挑戦し、一定の成果を挙げました。」。

4.        グンゼ

4-1 「偏向板タッチパネルは主に映像機器に搭載され、『アドバンスト ディスプレイ オブ ザ イヤ―2006』の部品。材料部門にて優秀賞を受賞しました。来春発売のマイクロソフト社の新OSWindowsVista対応タッチパネル付ノ―トパソコンの企画も進行中です。」

4-2 当社の今次セグメント別営業利益の構成は、機能ソリュション事業が57.7%で、アパレル事業は33.8%です。」

5.        日立情報システムズ

5-1 「子供達で話題のキッザニア東京が、当社のRFID入退場管理システムを採用しました。RFIDRadio Frequency Identification)は、電磁波を用いて認識や証明を行う仕組みです。当社のシステムは、来場者全員が装着するセキュリティブレスレットにICタグを埋め込むことにより、独自通貨『キッズ』など、ユニ―クなコンセプトを可能にしています。」

6-2 「システム構築事業について、企業情報システム分野は、ERPパッケ―ジ(SANARI PATENT 注:Enterprise Resource Planning Package; 統合業務) パッケ―ジ。」を中核にしたパッケ―ジビジネスのほか、製造業向け基幹業務システムの再構築や、カ―ドクレッジットシステムなど金融関連ビジネスに注力した結果、増収となりました。」。

7.        SANARI PATENT所見

   従来異業種間およびアジア諸国企業との業務・技術競争も激化し、増収 減益を報告している部門も少なくない。

2006年12月23日 (土)

新ビジネスと新システムの多様な展開を各社中間事業報告

GTL(Gas to Liquid)技術開発、SEA-LIP(Sea-Earth-Air Logistic Integrator Program)物流グル-プ等

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  今次中間事業報告書には、産産官技術連携、欧米メ―カ―メ―カ―買収など、新ビジネスシステムの多様な展開が報告され、技術開発に連なることが強調されている。例えば:

1.        GTL(Gas to Liquid)の開発システム

1-1  国際石油開発帝石ホ―ルディングス㈱の今次中間事業報告書は、次のように述べている。

「当社の子会社国際石油開発は、本年10月、新日本石油、石油資源開発、コスモ石油、新日鉄エンジニアリング、千代田化工建設の5社と共に、日本GTL技術GTL研究組合を設立し、独立行政法人・石油天然ガス金属鉱物資源機構と共同で、GTL(Gas to Liquid)製造の実証研究を開始します。

 世界に広く存在する天然ガスを液体燃料化するGTL技術は、一次エネルギ―供給を多様化する有効な技術であり、環境に優しいエネルギ―として期待されています。

 今回の実証研究で開発するプロセスは、炭酸ガスを含む天然ガスをそのまま利用する点において、世界初の画期的な技術となります。この研究を通じて、先行する石油メジャ―に対し競争力ある技術を開発し、次世代エネルギ―供給の安定と地域環境の調和に取組みます」。

1-2  SANARI PATENT所見

    天然ガスの世界分布は広範であるが、いずれもわが国にとっては海外であり、採掘権取得コスト・受給権取得コスト・輸送コストを要するから、産業の国際競争力の観点からは、これらのマイナス要素を補う技術力を要する。国際石油開発帝石ホ―ルディングスを構成する国際石油開発と帝国石油の事業領域には重複がなく、高い相互補完性を有して産産連携し、産産の範囲を拡大し、かつ官機構を入れて、産産官技術連携のシステムを構築下と考える。

2.SEA-LIP(Sea-Earth-Air Logistic Integrator Program)物流グル-プ

2-1 日本郵船㈱の今次中間事業報告書は、次のように述べている。

   「当社は、本年5月にヤマトホ―ルディングスと業務・資本提携し、ICタグを利用した物流管理などの事業を展開しています。グル-プ内では、SEA-LIP(Sea-Earth-Air Logistic Integrator Program)の推進役として、本年4月に総合物流グル-プを設置しました。これは事業部門の枠を超えて、地域別・顧客別管理を一元化し、ニ―ズに迅速・的確に応えるためです」。

2-2 SANARI PATENT所見

  上記記述に続く次の記述にも注目すべきである。

 「Logistic Integratorの一つの核として昨年連結子会社化した日本貨物航空㈱は、中国などアジア域内航路での競争激化と、ジェット燃料価格の高騰により、所期の業績目標を達成できませんでした」。

3.        英国大手ガラスメ―カ―の株式を100%取得

3-1        日本板硝子㈱の今次中間事業報告書は、次のように述べている。

「当社は本年6月、英国の大手ガラスメ―カ―であるピルキントン社の株式を100%取得し、完全子会社にしました。国内および他の東アジア市場に強みを持つ当社と、欧米を中心に広く世界市場で事業展開しているピルキントン社と、経営・事業を統合することは、板ガラス市場における世界戦略の視点で大きな意味があります」。

「この統合で期待されるシナジ―は、

3-1-1      コスト改善シナジ―: 購買費・重複リソ―スの削減、生産分担、ベンチマ―ク共有化による生産コストの効率化

3-1-2      技術シナジ―: 高度な生産技術の共有による生産性の向上、単位原価の低減

3-1-3      売上シナジ―: 優位性を活用したシェア拡大

  の3シナジ―です。

3-2       SANARI PATENT所見

   自動車ガラス分野では、同社が売上高世界第1位となったようである。情報電子分野で、複合機能プリンタ―向け光レンズやディスプレイ関連製品の売上が大きく伸長しているようである。

2006年12月22日 (金)

各社中間事業報告書に現れる現代用語

テロッパ、ミドルウェア、インレット

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  米国の特許審査基準(MPEP)には、「発明者は用語の編著者(語義と新語の創作者)である」という条項があって、従来技術の用語で表現できない着想を表現する用語の意味と新語の創作を、発明者に認めているが、発明者に限らず、事業者も、競争に勝つための新たな発想に新たな用語を用意する。そのうちの幾つかは、後日、知財高裁の判決文に出現したりする。

 そのような予想をしつつ、今次各社中間事業報告書から新用語を例示してみる。

1.        テロッパ

1-1 ㈱コアの中間事業報告書は次のように説明している。

「当期から連結子会社となった㈱ラミダシステムズは、『Inter BEE2006』に、最新の電子テロップ製品の数々を披露しました。テレビ画面等に文字や絵が様々な形で表示されますが、これらを総称して、電子テロップと呼んでいます。現在ではコンピュ-タ-処理によって作製しており、自動生成機能が向上する一方、表現力の向上も進んでいます。テロップを作成するシステム(ハ―ド/ソフト)を『テロッパ』『テロップシステム』と呼んでいます」。

1-2 SANARI PATENT所見:

 電子テロップは、全世界のケ―タイにも溢れることとなろう。知財専門家としては、ケ―タイの画面表示が意匠権の対象となったことから、電子テロップの知財性に関心が持たれる。

2.        T-Engine

2-1  同じく㈱コアの中間事業報告書は次のように説明している。

3.        「当社は、ET2006 T-Engineソリュ―ション、各種組込ソフトウェア開発支援ツ―ルをメインに出品しました」。

「組込ソフトウェア(エンベデッドソフトウェア)用基本ソフトであるi-TRONをベ―スに規格化されたプラットフォ―ム(基盤)をT-Engineと呼びます。規格化されていることから、このプラットフォ―ムを採用することで、開発効率を大幅に向上できるほか、ミドルウェアの流通促進も容易になります。ミドルウェアは、基本ソフトと、ワ―ド・エクセル等のアプリケ―ションソフトの中間に位置します。基本ソフトやハ―ドウェアを意識せずに、プログラムを作成・操作できるようにしたものです」。

2-2 SANARI PATENT所見:

  T-Engineの規格化は、国際標準にまで進むのか、注目される。

3.インレット

3-1 オムロン㈱のの中間事業報告書は次のように説明している。

  「北米では、米国食品薬品局(FDA)が、医薬品へのICタグの有効性を証明し、実装までのガイドラインを出すなど、UHFICタグの活用を国を挙げて検討しています。その中で、薬品ボトルなどの小型商品に貼付するICタグには、低価格でアンテナサイズが小さく、長距離通信ができ、同時に複数枚を高読取率で読取れる性能が求められます」。

  「当社は、このようなニ―ズに応えるために、Gen2 Ninja インレットを開発しました」。

3-2 SANARI PATENT所見

  ICタグの用途別開発が進み、それぞれに「~インレット」等の呼称が付され、普通名詞化してゆくと考える。

2006年12月21日 (木)

原田豊彦NHK理事がYouTube問題から、デジタル放送におけるプロテクションシステムに論及

ヤフ―・グ―グルの対応もすでに機敏:ポ―タルサイトの「対著作権表示」

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        内閣知財戦略本部コンテンツ専門調査会

  この調査会の委員として、NHK原田理事は、次のように述べている(2006-11-27)(要旨)。

1-1  YouTubeは、誰でも自由に映像を投稿デキルサイトだが、放送番組の著作権を侵害した違法な投稿は後を絶たない。こうした状況が続くと、日本のクリエ―タ―、実演家、放送局、映画会社などは、YouTubeに無償でコンテンツを提供し続けることと同じになり、日本のコンテンツ産業にとってのメリットは殆どないと考える。

1-2  YouTubeに投稿されている放送番組は、簡単にコピ―することができ、コピ―を重ねることによって画質が劣化するアナログ映像と思われる。しかし、こうした違法状態をデジタル映像時代にも放置すると、IP伝送技術の発達と相俟って、新らしい形のYouTubeが続出する可能性がある。

1-3  著作権侵害という違法性をアピ―ルして、ユ-ザ-の良心に訴えるだけでは問題は解決しない、ということを、YouTube問題で再認識させられた。その意味から、デジタル放送におけるプロテクションシステムは、漏れがないよう構築しなければならない。

1-4  日本がコンテンツ大国を目指す過程で、コンテンツ業界や実演家が不利なプロテクションシステムにならぬよう、配慮が必要であり、また、プロテクションシステムが破られた場合の法的措置・救済制度など、コンテンツに関わる全ての権利者が安心できる制度設計を望む。

2.        ポ―タルサイトの表示

   一方、ヤフ―・グ―グル等の対応も、すでに機敏である。

2-1        例えば、ヤフ―の動画サイトには、免責事項として次のように示している。

「リンク先サイトのご利用について: Yahoo! JAPANを介したサイトの閲覧・ご利用は、お客様の責任で行っていただきますようお願いいたします。Yahoo検索、Yahooカテゴリ―、新着情報などからリンクされているサイトは、それぞれの運営者の責任によって運営されており、また、Yahoo! JAPANに掲載されている広告からリンクされているサイトは、広告主の責任により運営されています。Yahoo! JAPANはこれらのサイトについて、違法なものでないこと、内容が正確であること、不快な内容を含まないものであること、利用者が意図していない情報を含まないものであることなどを、一切保証いたしません」。

2-2        また例えば、Googleの「gooブロ―ドバンドナビ」に、「動画」のタブがあるが、このナビへのアクセスにはgooIDとパスワ―ドの登録を要し、登録申込に際して、次の利用規約条項(要旨)に同意することをインプットしなければならない。

「第9条(禁止事項)ユ-ザ-は、gooIDサ-ビスの利用に当たって、以下の行為を行ってはならないものとします。(1)他のユ-ザ-、第三者もしくは当社の著作権またはその他の権利を侵害する行為、及び侵害する惧れのある行為」

3.        SANARI PATENT所見

    上記2-2の動画は、ほとんど有料(VISA等支払)で、ケ―タイの着メロが著作権者側との軋轢がなく発達した(通信費から著作権料を支払)のと同様(ファイル交換システムでは対価徴収ができない)、対価の一部を著作権使用料に当てるなどの方法も考慮できるのではないかと考える。

2006年12月20日 (水)

YouYubeに注目:Googleが買収の前後(NHK・民放から、違法回避策要請)

内閣知財戦略本部コンテンツ専門調査会の課題に登場

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        SNSに分類されるYouTube

1-1        現在、YouTubeが急速な発展と変容の過程にあるため、これをSNSの分類に入れることが妥当であるか否かは、直ちに確言できないが、SNSの方が一般に馴染まれた用語になっているから、一応、Social Networking Service の一形態として考察を進める。現在のYouTubeの開放性から見れば、「映像ブログ」として「ブログ」の分類に入れる方が、適切かも知れない。

1-2        一方、SNS等という用語にとらわれずに、YouTubeの周知度は急激に高まっている。例えば、BladeSymphony.com(2006-12-8)は、「Web of the Year 2006は、Web2.0的なサ-ビスが複数受賞した。総合大賞はウィキペディア。話題賞や視聴率デ―タ1位はYouTube」という見出しで、次のように報じた(要旨)。

1-2-1      ソフトバンククリエイティブは、Yahoo Internet GuideによるWeb of the Year 2006を発表した(2006-12-6)。年間総合大賞は、ウィキペディアが受賞した。Web of the Year 2006は、Yahoo Internet Guideが選出したノミネ―トサイトから、一般投票により各賞を決定するが、今年で11回目、投票数47716票。

1-2-2      話題賞は、YouTubeが受賞した。YouTubeは、ネットレイティングス賞のほか、動画部門でも受賞した。YouTubeを代表して表彰を受けたGoogleの徳生裕人ビジネスピロダクトマネ―ジャ―は、「今はYouTubeとしてコメントすることはできないとしながらも、YouTubeへの感謝を述べた。

2.        NHK・民放がYouTubeに要請(要旨)

2-1 YouTubeシステムによる著作権侵害行為の可能性について、BladeSymphony.com(2006-12-8)は、「YouTubeに対しNHK・民放らが著作権侵害行為の事前防止策を要請」との見出しで、次のように報じた。

2-1-1 NHK、日本民間放送連盟ら23の団体・事業者は、動画投稿サイトYouTube対し、著作権侵害行為の事前防止策を要請したことを連名で発表した(2006-12-6)。その内容は、

2-1-1-1 米国のDMCA(デジタルミレニアム著作権法)による削除手続が、大量の違法アップロ―ドにより、うまく機能していないこと

2-1-1-2 従って、YouTube側の技術的手段によって、著作権侵害行為を排除するシステムを実現するよう要請する。

2-1-2 この要請文では、権利者に無断で動画がアップロ―ドされている事態に対し、「Notice & Takedown」の手続を行ってきたが、この手続は莫大な時間と労力を要し、現実に機能しないから、YouTubeの側には、権利者からの「Notice & Takedown」の手続を待たず、違法なアップロ―ドと配信による著作権侵害行為を予防・回避する責任があるとしている。

2-1-3 またこの要請文では、YouTubeが技術的対策を講じてと共に、適正な権利者からの投稿作品であることを識別・表示できるシステムを実現するよう要請している。

2-2 さらに上記23の団体・事業者は、予防措置が講じられるまでの暫定対策として次のようにYouTubeに要請している。

2-2-1 投稿者が著作権を有せず、権利者の許諾なしに映像作品を投稿またはアップロ―ドすることは違法であり、民事・刑事上の責任を問われる場合があることを、YouTubeのトップペ-ジに掲載すること

2-2-2 今後アップロ―ドするユ-ザ-に対しては、氏名・住所等を登録させること

2-6-3 これら23団体・事業者の求めに応じて、YouTubeが6月以降に削除したユ-ザ-について、以後投稿できないようにその者のアカウントを無効とすること。

3.        SANARI PATENT所見

    上記要請に対するYouTubeの対応は、極めて機敏に、適法に行われていると見受ける。しかし、内閣知財戦略本部コンテンツ専門調査会に問題提起されたので、知財推進計画07における計画を注視したい。

2006年12月19日 (火)

「包括的ライセンス契約による通常実施権の登録制度の創設について」

ライセンスを受けた企業(ライセンスシ―)の保護、営業秘密と登録の両立

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

経済産業省が標記案を公表(2006-11-13)したが、弁理士の実務にも関係する重要事項であるので、SANARI PATENTは、同省経済産業政策局知的財産政策室に、下記意見を送信した。

          記

     平成181218日

経済産業省経済産業政策局知的財産政策室御中

    弁理士 佐成 重範

「包括的ライセンス契約による通常実施権の登録制度の創設について」(2006-12-13 経済産業省)への意見

1.        内閣知財戦略本部知財推進計画06との関係について

 (意見) 内閣知財戦略本部知財推進計画06の、「知的財産権の保護を図る」の項との関係を、お示しください。

 (理由) 知財推進計画06には、ライセンス契約全般について、2006年度も引き続検討し、必要に応じ法改正等、制度を整備すると計画されております。この計画との関係について、次の点を理解したいと存じます。

1-1        ライセンス契約のうち、「包括的ライセンス契約」に限定された理由

1-2        包括的ライセンス契約のうち、「包括的クロスライセンス契約」の特徴に言及されなかった理由

1-3        知財推進計画06は、「ライセンサ―倒産の場合」と、「ライセンスサ―による知的財産権の対第三者譲渡」を計画の必要理由とされておりますが、このたびは、「このようなライセンス契約は大規模なものが多く、わが国の産業にとって無視し得ない経済効果を有している」ことを強調されました。しかし、「中小・ベンチャ-企業関係の小規模ライセンス契約」と、「国際企業を含む多数大企業間の包括的クロスライセンス契約」とは、当事者間の力関係(後者は対等)も非常に異なり、別個の角度から、各ご検討が望まれます(創設される制度は、形式上、同一になる場合もあるかと存じますが)。

2.包括的ライセンス契約の定義について

(意見) 包括的ライセンス契約の定義に、「特許を受ける権利」についてもお示しください。

(理由)  「特許を受ける権利」も、包括的ライセンス契約の重要な対象になっていると考えます。特許法施行規則にも、登録の手続が明示されており、企業としては特許権と同様の戦略価値を有すると存じます。

3.        今次制度案の創設態様について

 (意見) 特許法改正によるのであれば、その旨、施行規則または通達等によるのであれば、その旨をお示しください。

(理由) 今次貴案の要旨は、次のように示されております。

「特許権の通常実施権が、新たな登録ファイルに登録された場合には、特許原簿に通常実施権の登録がなくても、第三者に対抗できるものとする。換言すれば、特許法で定める通常実施権の登録と同一の法的効果が発生する。通常実施権を対抗できた場合には、特許権譲受人は、通常実施権者に権利行使することができない。」

 また、「権利譲渡人による登録内容の開示」にについて、登録制度の内容の選択肢が幾つか考えれる旨を示しておられますが、特許法の改正条文の表現としてはどのような対比になるのか、中小・ベンチャ-企業にも理解し易いよう、お示しください。

2006年12月18日 (月)

有限会社カイカイキキ村上隆代表のコンテンツ戦略(米国弁護士の活躍)(日米比較の実感)

「ア―ティスト」の内閣知財戦略本部コンテンツ専門調査会(11-27)における演述

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  コンテンツ専門調査会牛尾座長は先ず、村上氏を、「アニメなどのサブカルチャ―をベ―スにした作品が高く評価されている有限会社カイカイキキ代表」であると紹介した。

1.        ア―ティストの立場から(村上氏の発言要旨)

1-1        私は、絵や彫刻を作って販売することを生業としているア―ティストという職業をしていますが、現在は、それに加えて、その制作物の著作権を主張し、その著作権の二次利用の費用(SANARI PATENT 注:費用は、「対価」の意味と解する)を、普通のコンテンツビジネスと同様に利用(SANARI PATENT 注:利用は、「収得」の意味と解する)したいということで会社を作り、その活動を継続している。

1-2        私は、ニュ―ヨ―クを中心として日米で活動し、ニュ―ヨ―クに拠点をおいてから7年経つが、米国人になって日本を捨てる方が得だという結論が出ている。その理由は、日本にはコンテンツを後世に残す母体が無い。例えば、税制について、相続税・財団法人等、いずれにもバリアが多すぎて、日本は、ア―ティストにはメリットが全く無い国である。アニメもゲ―ムも、創る能力に富むが、それを守る能力がない。税制の優遇措置も全く何もない。皆平等であるが、才能がある人間に世知辛い国である。眼を転じても、ニュ―ジ―ランドで映画産業が急速に成長したは、思い切った特別税制による。

1-3        私は今、アニメを制作しているが、米国でのキ―パ―ソンは弁護士である。地元の州の要人に対する口きき・顔ききという機能も、弁護士が果たしている場合が多い。契約社会であることが弁護士活動の基盤であるが、日本ではアニメについても契約を求めると先ず嫌われる。しかし、日本のアニメが海外に進出し、適正な対価を得るためには、先ず契約の適切が必要である。

2.        コンテンツ専門調査会員の質問に村上氏が応答

2-1        法律・制度を運用するカルチャ―や人材の問題と解してよいか。

「法務について詳しくないが、現代美術の母体として、現在、日本のカルチャ―では可能性がない」。

2-2        人材育成については、どうか。

  「私の事務所では、今、7人のア―ティストをマネ―ジメントしているが、うち5人は既に海外で収益を挙げ、うち3人は、年間に、映画の大物監督の5倍の年収を得ている。それでは人材育成をどのようにするのが良いかというと、要するにアメとムチで、そのムチの部分が、ここ30年ぐらい、日本の教育の現場で全然なくなってしまったのではないか。

   税制にしても、日本で納税しても何もメリットがないが、米国では顔役になれ、また顔役同士のコンペティションのフェアウェ―が引かれている(SANARI PATENT 注:「敷かれて」と解する)

   私は、東京芸術大学の博士号をいただいているが、日本社会でそのメリットはゼロである。米国では、その博士号が機能し、信用の基礎になっている。

3.        SANARI PATENT所見

3-1  コンテンツ政策について、税制に問題があることは、大方の意見が一致している。

3-2  カルチャ―の相違について、優劣の評価をコンテンツ専門調査会でも深めていただきたい。

3-3  「アメとムチ」という言葉自体を、日本人は好まないと思う。日本人が好む表現で、才能に対するメリットを強調し、付与する社会体制が望ましい。

2006年12月17日 (日)

株式会社オズ・一瀬隆重代表取締役のコンテンツ政策論

内閣知財戦略本部コンテンツ専門調査会参考人として

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        牛尾座長が紹介

コンテンツ専門調査会(2006-11-27)において、先ず牛尾座長が「一瀬氏は、日本映画界を代表するプロデュ―サ―で、ハリウッドでも活躍されている」と紹介した。

2.        一瀬氏の発言(要旨)

2-1  日米映画界の20年前の大懸隔(見出しはSANARI PATENTが付した):

映画のプロデュ―サ―を、1984年から22年勤めているが、私が勤め始めた頃の日本映画界は、東宝・東映・松竹の大手3社が全国配給を独占する閉鎖社会であった。フジテレビの誘いで香港に赴き、日本と異なって香港では映画人が誇りをもって従業していることを知った。更に、ロサンゼルスに赴いた際に、「米国に来て映画製作するのが良い」と教えられ、会社を作るのも簡単で、ビデオバブルに先ず乗り、低予算でアクション・ホラ―映画を作って、世界中に販売できた。米国には、そのようにできる仕組みが既にできていた。

2-2  映画製作システムの日米大相違

米国の映画製作のシステムは、日本と全然違って、色々な組合があり、スタフが皆その組合員なので、労働時間も明定され、超勤手当て、撮影終了後12時間は俳優を休養させる義務とか、子役の就労制限とか、早くから定められていた。

2-3  リメイク権の価格

しかし、米国でもバブルがはじけて、日本に帰国したところ、角川会長の招きで「リンダ」というホラ―映画を製作したが、これが海外でも大当たりし、米国の会社がリメイク権を買って米国映画になった。

2-4  米国では、もっと稼げる

そのリメイク権料は100万ドルで、「リング」の制作費1億5千万円に匹敵したが、相手会社は、その劇場収入のみでも4億ドル稼ぎ、ビデオでも稼いだから、100万ドルでも損したとも思った。

2-5  リメイクに参加

そこで、自分がリメイクに参加することを考えた。利益を歩合で受け取る約定であったが、今度は小会社であったので、それほど稼げなかった。

   しかし、その次のリメイク参加では弁護士を使い、2億ドルの興行収入の利益の3分の1を得た。ハリウッドのダイナミズムを感じた。

2-6  日本には独立プロデュ―サ―が欠如

現在、日本はプロデュ―サ―が少なく、私達の下の世代のプロデュ―サ―が育たないし、特に、インデペンデントでプロデュ―サ―を志す者は殆どなく、会社所属のみを考える。

2-7  従って、私は米国会社との接触で多くのノウハウを得たから、それを伝えたいと思っても、伝えるすべがない。これをジレンマと思っている。

3.        久保利弁護士の質問と一瀬オズ代表取締役の応答(要旨)

3-1  質問; 一瀬さんは、著書「ハリウッドで勝て」において、「米国では弁護士出身のプロデュ―サ―が非常に多いが、こらはビジネスオンリ―というところがあるので、いささか問題ではないか」と記述されましたが、どのように理解すべきですか。

3-2  応答: プロデュ―サ―という仕事の価値は、クリエイティブであることで、制作意欲がビジネスの安全指向によって削がれてはならない。良いものをつくる意欲と、利益とのバランスが必要です。弁護士出身のプロデュ―サ―は、企画の選択が安全指向になり勝ちです」。

4.        SANARI PATENT所見

   わが国映画界の構造改革を、さらにどのように進める必要がるか、知財推進計画07において方向性を示されることが望まれる。

2006年12月16日 (土)

「特許権の独占性と国際標準化」の間柄の変遷

内閣知財戦略本部・国際標準総合戦略案の検討

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        国際標準総合戦略案(2006-12-06:内閣知財戦略本部)

1-1 内閣知財戦略本部は、知財推進計画07の策定時期を迎えて、国際標準化におけるわが国の戦略強化を重点事項としているが、その背景について、「国際標準を巡る環境変化」と題し、次の項目を掲げている。

1-1-1        デジタル化・モジュ―ル化・ネットワ-ク化の進展

1-1-2        知的財産を含む標準の増加

1-1-3        WTO/TBT協定の成立

1-1-4        諸外国の戦略的な標準活動

1-1-5        フォ―ラム標準の増加

1-1-6        ISOの活動範囲の広がり

1-2               上記6項目のうち、知財専門家に直結する「知的財産を含む標準の増加について、国際標準総合戦略案は次のように述べている(要旨)。

1-2-1        従来、排他的独占権としての特許権と、技術の普及を目的の一つとする標準化とは、相対立・相矛盾する概念と考えられることも多く、かっては、標準には特許権を含まない、あるいは、特許の無償開放を前提とするのが常識であった(SANARI PATENT 注:国際電気通信標準化機構ITUのパテントポリシ―には「無償またはリ―ズナブルな対価で」と明示されてきた)

1-2-2        しかし、技術進歩が急速化し、先端分野においては、特許技術を排除した標準化は事実上不可能となっている(SANARI PATENT 注:むしろ、特許権の独占力による世界市場制覇力によってデフザクト標準化を勝ち取ることが、多国籍企業の戦略と考える)。大規模な基盤整備が必要とされる情報通信分野だけでなく、例えば、次世代DVDの標準化に見られるように、次世代技術の標準を定めた後に実際の製品開発を行う事前標準の考え方が多くの分野に広がりつつあり、特許権を含む標準が増加する傾向がある(SANARI PATENT 注:内閣知財戦略本部は、その具体例を豊富に示すべきである)

1-2-3        制度面においても、標準に関連するパテントプールに対する独禁法上の考え方の整理や、国際標準化機関におけるパテンポリシ―の統一に向けた議論が進み、国際標準における知的財産権の取扱が明確化されつつある。

1-2-4        国際標準化は強調的な作業であり、特許権の濫用は許されないが(SANARI PATENT 注:許さない方法が問題であるが、この案では言及していない)、今後は、知的財産権の適切な確保と活用を図りつつ、国際標準化活動を行うとの考え方が重要である。

1-2-5        現に、特許権を含む国際標準の増加に伴い、国際標準化における特許等の知的財産権の取扱ル―ルの明確化の要請が高まっている。例えば、ISO、IEC、ITUのトップレベルの協力会議であるWSC(世界標準協力)では、パテントポリシ―のハ―モナイゼ―ションが議論されている。また、RAND (Reasonable and Non-Discriminatory) 条件の「合理性」の判断基準や、必須特許の鑑定、特許権のロイヤリティ配分、第三者問題米国の対応等、様々な問題が指摘されている。

2.        国際標準総合戦略案が示した「具体的取組」

 上記の認識のもとで内閣知財戦略本部が国際標準総合戦略案ににおいて示した「具体的取組」は、次のような記述にとどまっている。 

「国際標準に関連する知的財産の取扱ル―ルの明確化と国際的な調和を推進すると共に、日本企業の取得した知的財産権が海外において適切に保護されるよう、諸外国への働きかけを強化する」。

 

3.        SANARI PATENT所見

3-1  ITUは総務省の専管対象であるから、経済産業省の標準化担当者が直接これに関与することは殆どなかったと推察する。この2省間の関係のみを見ても、標準化の各分野に関する相互の理解は未だ深耕されていない。各分野の国際標準化が実際上、どのように議論され、どのように決着しているのか、官民の知財専門家が先ず十分に、所管外にわたって、現実の認識を深めることが先行課題である。

3-2  国内では、日本製薬工業会が昨年4月に定めたリサ―チツ―ル関係のパテントポリシ―が、既に実施されている。

2006年12月15日 (金)

電力線ネット融合の波及効果

PLC(Power Line Communications)で家電機器のネットワ-ク化進む

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.「通信・放送の融合」から「電力線とネットの融合」へ

   電力線通信(PLC)は、平成1810月4日の総務省令改正ににより、屋内に限定して認められることとなった。電力線を通信回線として利用する技術であるが、受電力用コンセントは、わが国では一世帯当たりコンセント数が世界最多であるとの調査もある程、高度家電機器の多数使用を支える慣熟ポイントである。

   通信回線のADSL化もマンション内の光ファイバ―化も、若干の専門技術操作と手続を要するが、PLCについては、宅内ネットワ-クを構築するためのPLCアダプタの使用により、コンセントがあればどこでも、インタ-ネットの利用が可能となった。

   PLCの利点を強調する発現が多いが、SANARI PATENTとしては、それら利点の享受も、わが国の国際的に優秀な電力供給の安定性(無停電)によることを強調したい(逆に言えば、通信回線との比較を要するということである)。

   またSANARI PATENTとしては、PLCの利点だけではなく、ノイズ漏れにより他の無線通信を妨害する可能性が根絶されていないことも付言する義務がある。

2.PLCの特性

   日立製作所のNAVIPARA.COMは、PCLの特徴を次のように説明している(要旨)。

   「韓国や中国では、PCLが既に実用化されているが、わが国では、このたびの解禁を受けて、松下電器産業が1113日に、家庭向けPLCアダプタの発売を発表した。家庭内でのインタ-ネットの通信方式は、有線LAN(SANARI PATENT 注:通信回線利用)、無線LAN(赤外線・電波),PCLの3種類から選択できることとなる。

   無線LANは、どこでも手軽に利用可能だが、セキュリティ面に留意にする必要がある。PLCは、通信のための新たなインフラが不要で、コンセントとPLCアダプタがあればどこでもインタ-ネットに接続できる。有線接続であるので、無線LANに比べてセキュリティ面も安心で、通信の安定性も期待できる。勿論、一つのコンセントで電力源とPLCの共用も可能である。

   通信速度は、今回松下電器産業が発表したPLCアダプタの通信速度を見ると、最大通信速度は、通信手順にTCP(インタ-ネットの標準的プロトコル)使用の場合55MbpsUDP(ストリ―ミングデ―タ処理等のプロトコル)の場合は80Mbpsで、実用上の問題は全くない」。

3.PLCの内蔵化等による家電機器ネットワ-の急進の可能性

   わが国消費者の多機能・便益性嗜好から、ユビキタスIT推進政策の効果と相俟って、家電機器ネットワ-クの急速な普及も予想される。PLCアダプタの価格が一般家庭向け水準に設定されたことも、適切である。

4.SANARI PATENT所見

   PLC導入を契機として、電力会社と通信会社のサ-ビス競争が予想されるが、電力会社は、同時に光ファイバによる通信業者でもあるから、どのような企業戦略を採るか、検討する所と考える。家電メ―カ―は、無線ノイズの苦情対策を想定した上で、激しい競争を展開し、国民の便益に寄与することが期待される。

2006年12月14日 (木)

ITとICT: 総務省ICT国際競争力懇談会の4つのワ―キンググル-プが進行

次世代ネットワ-クWG、ワイヤレスWG、デジタル放送WG、新ビジネス・基本戦略WG

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        総務省のICT政策展開

1-1  内閣知財戦略本部・内閣IT推進本部とも、ITの語を用いているが、総務省は、もっぱらICTである。ICT,すなわち、Information and Communication Technologyは、ITにCommunicationを加えた用語であるが、双方向性・多角交信性が顕著に表現され、国際的にはICTの方が定着しつつあると見られている。

1-2 総務省の構想としては、「e-Japan戦略」で整備された通信インフラを活用してユビキタスネットワ-クを完成させる「u-Japan戦略」の基盤を情報通信技術(ICT)の開発におくことが至当であり、ICT国際競争力懇談会の第1回会合を平成1810月6日に開催後、次世代ネットワ-クWG、ワイヤレスWG、デジタル放送WG、新ビジネス・基本戦略WGの検討が活発である。

1-2-1 次世代ネットワ-クWG

   次世代のインタ-ネット基盤の整備が進められている状況のもとで、わが国企業の国際展開方策、国際連携、国際協調の在り方を検討する。

1-2-2        ワイヤレスWG

わが国が高度な技術力を有するにもかかわらず、ケ―タイ端末に見られ        

  るように、国際シェア―が十分に確保できていないワイアレス分野において、今後の国際競争力強化を検討する。

1-2-3        デジタル放送WG

デジタル放送ならではの優れた特質を最大限活かしたわが国の放送方式およびコンテンツの国際展開の在り方を検討する。

1-2-4        新ビジネス・基本戦略WG

新ビジネス創出のための環境整備やICT国際競争力の基本戦略の策 定について検討する。

2.        わが国ITC産業の国際競争力について、総務省の基本的認識

2-1        世界経済のトレンドとして、経済のグロ-バル化の進展とBRICs、東アジアの存在感の増大

2-1-1      世銀デ―タベ―スでは、2004年の世界実質GDP総額35.1兆ドル(2000年31.7兆ドル)の構成比は、わが国14.3%(同16.0%)、米国30.8%(同30.8%)、EU23.7%(同24.6%)、BRICs9.7%(8.5%)、ASEAN4国1.7%(同1.4%)、その他地域20.0%(同19.7%)と推移している。

2-1-2      Goldman Sachsの「How Solid are the BRICs ?」によれば、世界の実質GDPは、2050年に約150兆ドルに達するが、BRICsがその半ばを占める(SANARI PATENT 注:構成比が、約10%から%50%になることを意味する)

2-2 世界市場におけるわが国企業のシェア―は、民生機器において高いが、ネットワ-ク機器・端末は低い。すなわち、携帯電話機15.4%、サ―バ―7.8%、デスクトップパソコン7.7%、ル―タ―・スイッチ2.5%である(平成18年版「情報通信白書」)。

3.        SANARI PATENT所見

主要国における政府負担研究費の対GDP比率や、電気通信関係の標準化貢献度(SANARI PATENT 注:電気通信の国際標準化機構におけるContributionの著者数で計測した場合)で見ると、わが国の比率は低いと、総務省ホ-ムペ-ジ資料は「標準化・知財」の項目で表示している。

2006年12月13日 (水)

「国際標準総合戦略案」(内閣知財戦略本部2006-12-06)

互換性・相互接続性の確保、一定の品質・安全の保証、低コスト化・調達の容易化、技術の普及・市場の拡大

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        知財推進計画07の最重点項目:

   標準化は、特許権の独占性と、標準化による公益性との調和が求められる分野であると共に、企業戦略に直結する市場制覇の課題でもある。

   知財推進計画06までの内閣知財戦略本部知財計画と比べて、知財推進計画07における標準化、特に国際標準化に関する戦略は、最重点項目とも称すべき大きな比重を占めるものと予想される。

   以下、国際標準総合戦略案を要約する。

2.        国際標準の意義

2-1  国際標準の意義は、互換性・相互接続性の確保、一定の品質・安全の保証、低コスト化・調達の容易化、技術の普及・市場の拡大である。

2-2  国際通信、電子機器等、グロ-バルに相互接続性や部品等の互換性が必須である分野、多数の特許が関与する先端技術分野、品質・環境のマネジメントシステム分野において、その必要性は特に顕著である。

3.        国際標準総合戦略の必要性

3-1        世界市場の一体化

3-2        国際標準を国内標準の基礎とする義務(WTO協定)

3-3        特許権を含む国際標準の増加(第3世代携帯電話、DVD等)

3-4        対象分野の拡大(品質、環境マネジメント、サ-ビス等)

3-5        諸外国の戦略的な標準化活動(米欧に加え、韓国・中国も取組を強化)

4.        国際標準化の三つの視点

4-1        イノベ-ションの促進

   研究開発の成果を、国際標準により市場と社会に展開することによって、イノベ-ションを実現する。

4-2        国際標準化の強化

わが国の先端技術を国際標準化し、産業競争力を強化すると共に、国際貿易を促進する。    

4-3        世界のル―ル作りへの高見

   国際標準化により、社会に役立つ技術の普及と、環境・安全・福祉の向   上を促す。

5.        国際標準化の五つの戦略

5-1        産業界の意識を改革し、国際標準化への取組を強化する。

5-2        国全体として国際標準化活動を強化する(研究活動と国際標準化活動との一体的推進など)。

5-3        国際標準人材を育成する。

5-4        アジア等の諸外国との連携を強化する(SANARI PATENT 注:アジアでの標準化をリ―ドすることが、アジア標準の世界標準化における力を強めることに着眼していると解する。欧州のESTIが電気通信国際標準化における強い発言力を有することを参考にすべきである)

5-5        国際標準化のための公正なル―ル作りに貢献する。

6.        SANARI PATENT所見

   デジュリ国際標準化と、デファクト国際標準化の戦略的相違に基づく政策の検討が必要と考える。

2006年12月12日 (火)

「知財立国への歩み」内閣知財戦略本部2006-12-06

知財推進計画06実施成果の総括と「サイクル」「コンテンツ」調査会進捗状況

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  内閣知財戦略本部の会議資料を、先ず要約する。

1.        知財基本法第1期から第2期へ:

1-1  第1期(2003~2005)ににおいては、基本的な制度改革と産学官連携体制の整備を行った。

1-2  第2期(2006~2008)には、I知財立国の実効を挙げること、知財を活用して国際競争力を強化すること、新たな課題に対応して制度を整備することに、重点を置く。

2.        知財推進計画06の着実な実施

2-1        知財保護の強化

2-1-1 「特許審査改革加速プラン」とりまとめ(10月)

2-1-2 日米欧が、特許出願様式の統一に合意(11)

2-1-2 「模倣品・海賊版対策アクションプラン2006」を決定(9月)

2-1-3 全国の商工会・商工会議所に知財相談窓口を設置(7月)(SANARI PATENT 注:「知財相談窓口」は、従来。内閣知財戦略本部や経済産業省が「駆け込み寺」と称していたものの改称と解する。「駆け込み寺」は、史実としては「縁切り寺」であるから、中小・ベンチャ-企業の継続を目的とする先の名称としては、ふさわしくない)

2-2 日本のソフトパワ―を高める

2-2-1 「東京発 日本ファッションウィ―ク」開催(9月)

2-2-2 「東京国際映画祭」開催(10)

2-2-3 「地域団体商標の第1弾登録認定(10)

2-2-4 「海外日本食レストラン認証有識者会議」を設置(11月)

3.        内閣知財戦略本部専門調査会における検討

3-1        知的創造サイクル専門調査会は、次の課題を検討する。

3-1-1      知財の創造分野について、大学の知財体制の強化、知財を活用した研究開発の戦略化

3-1-2      知財の保護分野について、特許審査の迅速化・出願構造改革・世界特許の実現・模倣品海賊版拡散防止条約(仮称)の早期実現

3-1-3      活用分野について、中小・ベンチャ-企業支援、地域における知財戦略の推進

3-1-4      人材分野について、知財人材育成総合戦略の推進

3-1-5      国際標準総合戦略

3-2 コンテンツ専門調査会は、次の課題を検討する。

3-2-1      コンテンツの海外展開の拡充など日本の魅力の世界への発信

3-2-2      二次利用を前提とした契約ル―ルづくり

3-2-3      世界をリ―ドするコンテンツ関連技術の開発

3-2-4      国際的に通用するコンテンツ専門人材の育成

4.        SANARI PATENT所見

    コンテンツの流通を、メディアの多様化について即応しつつグロ-バルに推進するためには、著作権との調整に関するル―ルを国際的に合意する必要がある。総務省は、情報通信高度化の観点からこの課題に取組んでいるが、文化審議会の著作権分科会の検討を加速することを要望する。

2006年12月11日 (月)

内閣知財戦略本部「これからの知的財産戦略の展開」(2006-12-6)

イノベ-ションの創造と世界への情報発信

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        知財推進計画07の構想

  内閣知財戦略本部の標記資料は、知財推進計画07の構想を示したものと評価して、知財専門家としての対応を検討すべきである。

  以下、その内容を要約する。

1-1        基本構想

1-1-1      日本社会に新たな活力をもたらすイノベ-ションを創造する。このため、2025年までを視野に入れた長期戦略指針を策定する。

1-1-2      アジアなど海外の成長や活力を日本に取り込む。このため、アニメ、音楽、食文化、伝統文化などを通じて、日本の魅力、強みを高め、日本らしさを世界に発信する。

1-2  上記基本構想の達成における知的財産の役割を果たすよう、知財政策を次のように推進する。

1-2-1      発明・創作

1-2-1-1           特許情報による技術開発の戦略化等、革新的な発明等の創造を促進する。

1-2-1-2           産学連携を加速する。

1-2-1-3           日本をクリエ―ションの拠点とする。

1-2-2      権利としての保護

1-2-2-1           イノベ-ションを支える知財制度としての実を挙げるため、企業の出願構造の改革、特許審査の迅速化、国際的な特許出願の支援を推進する。

1-2-2-2           模倣品・海賊版対策を強化する。

1-2-3      活用・実用化

1-2-3-1           世界特許の実現と国際標準総合戦略の遂行において、世界のル―ルを主導する。

1-2-3-2           コンテンツの流通を促進し、魅力を世界に伝える。

1-3  政策遂行の基盤整備

1-3-1      知的財産人材育成総合戦略を推進する。

1-3-2      企業の総合的な経営戦略として、事業・研究開発・知財・標準化を総合的・戦略的に推進する。

1-3-3      中小・ベンチャ-企業の支援と地域の振興を推進する。

 

2.        SANARI PATENT所見

2-1  約20年間を視野に入れた長期戦略指針を策定するとしていることは、新技術の進歩性を当面の収益向上からのみ評価するのではなくて、世界情勢の20年間にわたる顕著な変動予測(BRICsの比重の著増、エネルギ―・食料需給の変動・環境の著変等)に即応する長期技術進歩の必要性に基づいて評価することに通ずる。

   イノベ-ションのための知財計画が、短期的・中期的効果を追求しがちであることにかんがみ、「20年間長期戦略指針」の策定を、知財推進計画07の総論に掲げられたい。

2-2 「イノベ-ションを支える知財制度」として先ず「企業の出願構造改革」を挙げているが、「制度」をどのように改革することによりこれを実現しようとしているのか、早期に示されたい。

2-3 「世界特許の実現」のため、現実的な第一歩が「日米特許FTAの締結」および「そのわが国先行実施」であると考えられるが、「わが国の先行実施」を明確に知財推進計画07に計画されたい。

2006年12月10日 (日)

知財戦略と収益戦略: 上半期「増収増益」「減収増益」と「増収減益」「増収欠損」との分野間対照

旭化成、日立製作所、日立粉末冶金、NEC、芝浦メカトロニクス、総合メディカル

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  中間決算報告書の受信が相次ぐ時期であるが、構造改革の成果が経済動向マクロに上昇傾向をもたらしつつあるものの、「増収増益」と「増収減益」の対照が著しく、知財戦略の経営効果・収益効果は、知財開発の努力に直結しない印象を深くする。

  例えば、ケ―タイ関連は花形分野であるが、広範な関連分野の企業に、その発展の収益効果がどのように配分されるか、あるいは、増収増益企業の収益が、増収欠損企業への負の配分(結果的)によるのか、同慶と同情が交差する。他の分野でも、おおむね同様である。

  代表的な「同慶」企業として旭化成の今次中間決算報告書を、部門別に先ず考察する。

1.        旭化成のファ―マセグメント

1-1        同社の中間決算報告書の記述

「売上高は511億円で、前中間期比25億円(4.6%)の減少となったものの、営業利益は72億円で、前中間期比16億円(28.7%)の増益となりました。

 医薬事業は、薬価改訂の影響を強く受けたことに加え、医薬中間体の売上が現象したことから減収となったものの、排尿障害治療薬「フリバス」が販売量を伸ばしたことや、ロ―キナ―ゼ阻害剤「塩酸ファスジル」のライセンス収入があったことなどから、増益となりました。

 医療事業は、生産能力を増強したポリスルホン膜人工腎臓「APS」が伸長したと同時に、昨年稼動を開始した生産設備の稼動率が向上しました。また、ウィルス除去フィルタ―「プラノバ」が海外向けの販売量を大幅に増やしたことなどから、増益となりました」。

1-2        対照

   業態は旭化成のファ―マセグメントと全く異なるが、国民全てがその発展を期待する「価値ある薬局」始め、病院設備レンタル等の医療関係総合事業を営む「総合メディカル」の今次中間事業報告書は、率直に、次のように述べている(要旨)。

   「前期に出店した21店舗(SANARI PATENT 注:同社の調剤薬局店舗数は現在、227)が6か月フルに業績に寄与すると共に、処方箋枚数と処方箋単価も増加し、売上高は前中間期比10.1%の増収。しかし、薬価引下げの影響により、営業利益は前中間期比17.4%の減益。対医業のコンサル等の営業利益は、医師の転職支援(前中間期比70.7%増の227件)、医師紹介手数料や開業コンサル等により、前中間期比185.3%と、大幅増」。

2.        旭化成のエレクトロニクスセグメント

2-1        同社の中間決算報告書の記述

「売上高は564億円で、前中間期比76億円(15.7%)の増収となり、営業利益は124億円で、前中間期比40億円(47.9%)の増益となりました。

 電子部品系事業は、旺盛な需要を背景に、携帯電話やパソコンなどのIT機器やデジタル家電用途向けが好調に推移し、LSIや携帯電話向けホ―ルICが販売量を伸ばしたことなどから、増益となりました。

 電子材料系事業は、中国の生産設備の大幅な増強を行った感光性ドライフィルムレジスト「サンフォ―ト」が、国内・海外ともに販売量を伸ばしたことや、プリント配線基板用ガラスクロスの超極薄品の販売が好調に推移したことから、増益となりました」。

2-2        対照

2-2-1 日立製作所の今次中間報告書は、次のように述べている。

「当上半期における日立グル-プの連結売上高は、高機能材料および電子デバイス部門を始めとする全ての部門において増収となり、前年同期を8%上回る4兆7709億円となりました。

 利益面では、高機能材料および電子デバイス部門が伸長したものの、情報通信部門が減益となり、また、電力プラントの補修費用を計上した電力・産業システム部門と、販売投資を積極的に実施したデジタルメディア・民生機器部門が営業損失を計上したことにより、営業利益は、前年同期を74%下回る198億円となりました」。

2-2-2        芝浦メカトロニクスの今次中間報告書は、次のように述べている。

「デジタル家電の価格競争の激化や部材費の値上り等の影響を受け、液晶・半導体装置を中心に価格競争は益々激しくなるものと予想しております。国内外においての設備投資が活発化しつつあり、生産体制の強化と価格引下げへの対応が急務となっております」。

「急激な価格低下にコストダウンが追随できず、損益が悪化し」。

3.        旭化成の場合、ケミカルズ(リチウム電池用微多孔膜等)、建材(高気泡コンクリ―ト、高機能断熱材等)、エンジニアリングの各セグメントが増収増益を示し、ホ―ムズ・ライフ&リビング繊維(再生セルロ―ズ・ベンベルグのエコロジ―適性等)の各セグメントの一部に燃料価格高騰等による減益が見られたものの、全社で7.0%の増収、13.9%の純利益増を示している。

4.        ケ―タイにおけるNEC

    ケ―タイ成長の波紋の拡大については、NEC矢野社長の朝日新聞インタビュ―応答(2006-12-5)が注目される。要約すると、

4-1        3期連続赤字で不振の携帯電話機(以下「ケ―タイ」)事業については、NTTドコモ向け出荷増を優先することで、来年の黒字転換は確実。

4-2        赤字企業の半導体子会社との資本関係も維持する。

4-3        ケ―タイの赤字原因は、海外市場開拓の急進、ドコモ向け急減。

4-4        操作キ―の使い勝手やデザインを改善し、高精細な液晶画面を搭載した人気製品もできてきた。

4-5        他社事業と完全統合するより、いくつかの緩やかなグル-プを形成し、開発コストを低減することが有利である。

5.        SANARI PATENT所見

    知財戦略を尽くしても、収益戦略が及ばない企業や部門も多く見られる。総合戦略の長期的視点も必要である。

    また、各セグメント内の製品別に増収増益、増収減益、減収減益が考察されるが、これらは製品別のコスト・収益計算に俟たなければならない。例えば、日立粉末冶金の今次中間期通信では、化成品関係について前年同期比・連結営業利益13%減(全社では増)としているが、各種プリンタ用カ―トリッジリボンは堅調としており、製品別に状況を異にするものと推察される。

2006年12月 9日 (土)

SANARI PATENTは、内閣知財戦略本部に知財推進計画07について要望

知財戦略長期指針、世界特許、国際標準化、コンテンツの新たな流通態様と著作権の調整

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

 官邸ホ-ムペ-ジに、「これからの知的財産戦略の展開」(2006-12-6)ほか、知財推進計画07の方向性を示す案が公表されたので、SANARI PATENTは、次のように内閣知財戦略本部あて、要望を送信した。

       記

知財推進計画07についての意見および要望    平成1812月8日

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.「2025年までを視野に入れた長期戦略指針の策定」について:

 (意見・要望)

   知的財産基本法に根拠条文をおく「知的財産戦略長期計画」として策定することを、知財推進計画07ににおいて明示されることを要望します。

 (理由)

   内閣知財戦略本部の「これからの知的財産戦略の展開」(2006-12-6)の冒頭に、「日本社会に新たな活力をもたらすイノベ-ションを創造」するため、「2025年までを視野に入れた長期戦略指針の策定」を掲げられたことは、国際諸情勢の長期展望に即応する知的財産戦略を樹立・推進するため、極めて重要と考えます。

   イノベ-ションの強調により、当面の産業振興効果に直結する知的財産創造が重視される傾向が見受けられますが、知的財産の効用の発現時機は、国際社会経済の変動態様いかんによって影響されますから、評価を長期の視野のもとに行うことが、戦略を誤らないため、必須と考えます。

2.「世界特許の実現」について:

 (意見・要望)

   世界特許実現への過程として、先ず「日米特許FTA協定」の締結、および、この締結に先立つ「わが国の先行実施」を、知財推進計画07に明示されることを要望します。

 (理由)

内閣知財戦略本部の「これからの知的財産戦略の展開」(2006-12-6)の「知財政策の推進」中、「活用・実用化」について、「世界特許の実現」を掲げられましたが、内閣知財戦略本部事務局長の「日米特許FTA協定を結ぼう」2006-11 同局website)に示されているように、現実的かつ実際的にわが国産業および企業にとっての便益を早期に収めるためには、米国特許商標庁の審査結果をわが国特許庁が原則的に承認して特許査定を行う「先行実施」を、知財推進計画07に明示し、世界特許への端緒を開くことが得策と考えます。

3.「国際標準総合戦略案」について:

 (意見・要望) 

    内閣知財戦略本部の「これからの知的財産戦略の展開」(2006-12-6)の「知財政策の推進」中、「活用・実用化」について、「国際標準総合戦略」を掲げ、また、内閣知財戦略本部の「国際標準総合戦略案」(2006-12-6)において同案の内容を示されましたが、次の2項目を要望します。

(1)「国際標準総合戦略案」(2006-12-6)12ペ-ジに、具体的取組として、「関係省庁の連携による新たな国際標準対応体制の構築に向け、合同の検討協議会を設置する」と計画されています。その早期設置と、関係省庁の範囲の明示を要望します。

(2)「国際標準総合戦略案」(2006-12-6)の29ペ-ジに、「わが国の国際標準化活動の現状」として、「デジュ―ル標準」および「フォ―ラム標準」について記述されましたが、「デファクト標準」について項目を設けられることを要望します。

 (理由)

(1)国際電気通信連合におけるわが国の国際標準化活動は、歴史も長く、ITU事務局長をわが国人が勤めるなど、他部門より積極的に推進してきたと考えます。従って、総務省・経済産業省のほか、食品・薬品の安全性承認基準の国際標準化について厚生労働省、育成者権の対象である品種同定基準の国際標準化について農林水産省が加わるなど、電気通信部門と同様の積極的国際標準化行政が展開される体制の樹立を、知財推進計画07に明示されることを要望します。なお、わが国製薬工業会で、2006年1月に、同工業会関係の「パテントポリシ―」を公表したことも、配慮する必要がると考えます。

(2)国際標準化機構の現実としては、デファクト標準による世界市場の制覇がデジュ―ル標準を形成してきたと考えます。ESTI(欧州電気通信機構)も、そのための欧州諸国連携と考えます。この観点からの考察を、項目を起こして記述されるよう、要望します。

4.「コンテンツの流通促進」について

  (意見・要望)

      内閣知財戦略本部の「これからの知的財産戦略の展開」(2006-12-6)の「知財政策の推進」中、「活用・実用化」について、「コンテンツの流通を促進し、魅力を世界に伝える」と計画されましたが、コンテンツの流通における著作権処理について、著作権法改正の方向性を知財推進計画07に明示されることを要望します。

  (理由)

   今次コンテンツ関係パブリックコメントの結果が未だ公表されていませんが、コンテンツ流通促進のため、著作権法の改正を要望する意見は、従来に増して切実になっていると考えます。

ここには、総務省の「.通信・放送対策の方向性に関する懇談会報告」(総務省ホ-ムペ-ジ所載)から、次の引用をいたします。

「通信・放送の融合を進めるための環境整備:

放送の法体系上、電気通信役務利用放送は放送の一種であるにもかかわらず、役務利用放送事業者によるIPマルチキャスト放送は、著作権法上、通信と解釈され、著作権処理について不利に扱われている。従って、電気通信役務利用放送全体が著作権法上も放送として扱われるよう、速やかに対応すべきである。

このほか、著作権法には、通信・放送の実態にそぐわない規定が存在するから、無線放送・有線放送の区分を統合し、伝送路の多様化に対応した包括的な規定とするなど、抜本的に改正すべきである。

既にIPネットワ-クを活用した映像配信サ-ビスが登場し、さらに新たなサ-ビスの可能性が高まっているが、これらのサ-ビスは、通信サ-ビスの発展形としての映像配信にとどまらず、放送規律に従う事業者としてプログラム編成された放送番組をIPネットワ-クで配信する融合放送まで、多様な可能性があることから、これらの登場・普及を促す環境整備が必要である」。(以上)

2006年12月 8日 (金)

通信・放送分野の融合・国際標準化等について内閣知財戦略本部と総務省の具体策

伝送路の多様化、IPマルチキャスト放送と著作権法、Web2.0

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  微妙な変化が、経済社会の動きに現われつつある。例えば、消費者の購買動機が、メディアやオピニオンリダ―と並んで、Web2.0によって代表される新たな情報通信システムに影響される比重が高まっている。

  このような消費者の動向を、通信・放送システムの変革が誘起し、また消費者の選択が、通信・放送システムの変革を誘導してゆく。

  なお、後記7-14に、国際標準化の課題が提起されているが、これは、内閣知財戦略本部知財推進計画06が課題として掲げる「国際標準化」の主要な分野を占める。

7(付番は承前).通信・放送対策の方向性(総務省ホ-ムペ-ジ要旨)

7-1        通信・放送の融合を進めるための環境整備

7-1-1      放送の法体系上、電気通信役務利用放送は放送の一種であるにもかかわらず、役務利用放送事業者によるIPマルチキャスト放送は、著作権法上、通信と解釈され、著作権処理について不利に扱われている。従って、電気通信役務利用放送全体が著作権法上も放送として扱われるよう、速やかに対応すべきである。

7-1-2      このほか、著作権法には、通信・放送の実態にそぐわない規定が存在するから、無線放送・有線放送の区分を統合し、伝送路の多様化に対応した包括的な規定とするなど、抜本的に改正すべきである。

7-1-3      既にIPネットワ-クを活用した映像配信サ-ビスが登場し、さらに新たなサ-ビスの可能性が高まっているが、これらのサ-ビスは、通信サ-ビスの発展形としての映像配信にとどまらず、放送規律に従う事業者としてプログラム編成された放送番組をIPネットワ-クで配信する融合放送まで、多様な可能性があることから、これらの登場・普及を促す環境整備が必要である。

7-1-4      わが国発で国際的に通用する技術標準が生まれるよう、標準化の在り方を抜本的に見直すべきである。

7-1-5      通信・放送分野で合計9本もの法律が存在して、市場が細分化されている現行法体系を見直すべきである。すなわち、現行の基幹放送概念を維持しつつ、多様な事業形態を有する事業者が、それぞれ伝送路等の多様化に柔軟に対応し、ユ-ザ-ニ―ズに応ずる多様なサ-ビスを提供できるよう、伝送路、伝送サ-ビス、コンテンツといったレイヤ―区分に対応した法体系が考えられる。

8.通信事業における一層の競争促進

8-1 市場支配力の濫用を防止する観点から、ドミナント規制の適正な運用や接続ル―ルの整備、ユニバ―サルサ-ビス制度の整備等を含めて、事業規制の制度を抜本的見直すべきである。

8-2 伝送路、通信サ-ビスからコンテンツ等に至る各レイヤ―を超えた新しい事業モデルが重要になるが、NTT東西がアクセス網を始めとするボトルネック設備を保有していることは、特に通信インフラの光ファイバ移行に伴い、公正競争の促進、サ-ビスの多様化・低廉化、ブロ―ドバンド市場の競争の阻害となる懸念がある。

    従って、次の課題に対処すべきである。

8-2-1 NTT東西のボトルネック設備について、現行の会計分離の徹底に加え、接続ル―ルの遵守強化の体制整備、ボトルネック設備へのアクセスの真の同等性確保、IPネットワ-クによる映像配信サ-ビスでの公正競争確保等を一体として措置し、一層の機能分離を促進すべきではないか。

8-2-3 NTT東西の業務範囲が県内通信に限定される等の規制により、NTT東西のポテンシャルが大きく損なわれている。NTT東西のアクセス網を始めとするボトルネック設備の機能分離の徹底と同時に、両社に対する業務範囲の地域規制を緩和すべきではないか。

8-2-4 NTT持株会社のもとに四つの通信会社が置かれている現状では、世界最先端のインフラが完成しても、世界最先端のサ-ビスは提供されないという事態になりかねない。持株会社の廃止を含めて、NTT各社の事業展開の自由度を高めるべきではないか・

9.SANARI PATENT所見

   NTT技術研究所の機能(知財戦略を含む)について政策の表明が見られないことは、遺憾である。

2006年12月 7日 (木)

通信・放送新政策の三つの観点:ユ-ザ-視点・国際競争力・ソフトパワ―

社会構造の変化に対応・通信放送の融合・NHKの経営資源

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

4(付番は承前).通信・放送政策の三つの観点(総務省ホ-ムペ-ジ要旨):

4-1        ユ-ザ-の観点:

通信・放送サ-ビスについては、ユ-ザ-の視点から見て、サ-ビスの欠落が目立つ。これは、通信・放送の制度が供給者の観点にのみ立っているためであり、おの結果、事業者がユ-ザ-のニ―ズに応じたサ-ビスを十分に供給できず、デジタル化・IP化等の技術革新のメリットが国内に十分に浸透していないからである。

4-2        「国際市場では競争力強化、国内市場では事業展開多様化」の観点:

欧米と比較すると、わが国の通信・放送事業は、未だ成長の余地が大と考えられるが、市場規模拡大のためには国際競争力の強化が必要である。これまでわが国の通信・放送事業者は、主に国内市場で活動してきたが、グロ-バル化による情報のボ―ダレス(越国境)な流通のもとで、国際競争力の強化は不可欠である。

また国内市場の拡大ついては、わが国の社会構造の変化に対応するビジネスモデルの開発が必要である。

4-3        ソフトパワ―強化の観点:

BRICs経済の高成長継続のもと、わが国が世界におけるプレゼンスを維持すると共に、経済力以外でも国際貢献を充実するには、ソフトパワ―の強化が不可欠である。わが国は、ポップカルチャ―や伝統文化等、ソフトパワ―の源泉を有するが、その顕在化にはコンテンツ制作力の強化と情報発信力の充実が不可欠であるから、通信・放送事業が重要な役割を果たす。

5.通信・放送の現状認識(同上):

5-1 通信と放送の融合・連携の遅れ:

    通信と放送の規制体系が厳然と区別されていたため、技術革新のメリットを発揮する融合的サ-ビスの提供が阻害された。

5-2        通信事業における競争の不十分性:

    アクセス網を中心に、競争的事業展開のボトルネックが存在するのみならず、ブロ―ドバンド市場で新たなドミナンスが発生する可能性がある。

  一方、NTTは、市場の実態にそぐわない規制により、事業展開の自由度がなく、そのポテンシャルを発揮できていない。このような事態に至った原因は、通信の規制体系とNTT再編が、デジタル化やIP化等の急速な技術革新を予期していなかったからである。

5-3        放送事業における競争力と事業展開力の不十分性:

   放送事業についは、半世紀前に制定された放送法に基づき、アナログ時代に確立された規制体系や過度の行政指導により、事業者が自由な事業展開を行いにくい環境となった結果、欧米のメディア・コングリマリットと伍して戦える国際競争力あるメディアが育っていない。

   このように、競争や自由な事業展開が不十分であった結果、事業者のポテンシャルが十分に発揮されてこなかった。現状のままでは、わが国の事業者が、米国のネット企業やハリウッドに代表される「デジタル・IPを活用した映像ビジネスの展開」に対抗することは困難である。

   従って、放送事業者が文化の発掘・創造と情報発進の担い手として存分に活躍できるような環境を整備すると共に、NHKは、IP時代にふさわしい公共放送として、その経営資源を有効に活用しなければならい。

6. SANARI PATENT所見

   例えば、「NHKの経営資源」の指摘において、コンテンツ資源と共に、NHKが有する基本・応用両特許権の活用方策が明確に開示されなけれならない。

2006年12月 6日 (水)

通信・放送分野の革新と知財権: 総務省「2011年の完全デジタル化元年」に即応して

総務省所管の通信放送と、経済産業省所管の情報産業と、文部科学省所管の著作権と

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        情報産業省案の不成立:

中央官庁の再編成論が活発であった頃、IT革新・情報社会化・通信放送融合・デジタルコンテンツ振興のために、通信放送行政、情報産業行政、デジタルコンテンツ行政の所管一元化が唱えられたが、結局、現在の機構が当分は継続する。通信・放送は、まさに融合の時機を迎え、通信機器産業を含む情報産業の中核をなし、デジタルコンテンツが著作権処理を伴ってその文化的内容を形成してゆくので、業界、民間人としては、同一実体を、表・裏・斜めから見る多元行政のもとで国際競争に伍してゆくこととなる。

2.        総務省による通信・放送政策の展開:

通信・放送産業が情報産業そのものであるという現代および将来社会において、知財権がその基盤をなすことは共通の認識であるが、国際電気通信連合(ITU)のパテントポリシ―に見るように、知財権の独占性の発揮は、グロ-バルな相互運用性と互換性を要件とする情報通信ネットワ-ク構築を阻害する側面をもつものと認識される。

一方、通信放送ネットワ-クを流通するデジタルコンテンツは、しばしば知財権の根幹の一つである著作権を軽視するものと認識される。

このような環境のもとで、総務省による通信・放送政策の課題意識は、現在、次のように要約される。

2-1                現段階における通信・放送改革の必要性

   デジタル化・IP化等のIT振興策により、2011年までに二つの大きな政策目標が達成され、2011年が「完全デジタル元年」と位置づけられようとしている。

2-1-1      ブロ―ドバンド・ゼロ地域が2011年度解消され、通信インフラのブロ―ドバンド化が完了する。

2-1-2      地上波放送のデジタル化が2011年に完了する。

グロ-バル化・人口減少・少子高齢化の三試練に直面するわが国の、新たな原動力として、デジタル化やIPが、持続的な経済成長・地域再生・人間力の強化・ソフトパワ―の強化等に貢献する可能性をもつ(SANARI PATENT 注:「IP」は、知財専門家は先ずIntellectual Propertyと解するが、Internet Protocolでもあり、Internet Phoneでもある)

このように現段階でわが国は、通信・放送インフラの面では世界に先んじているにもかかわらず、サ-ビスの面では諸外国に遅れており、現状のままでは2011年の段階で世界最先端の通信・放送サ-ビスの提供は困難である。このような事態に陥った原因としては、制度上の問題、事業者の問題等、種々の問題が存在する。

従って、五年にわたる構造改革を経てわが国経済が復活しつつあり、「完全デジタル元年」まで五年しかない今こそ、通信・放送の在り方を抜本的に再検討することを通じ、ブロ―ドバンド大国・モバイル大国・テレビ大国たるわが国の総合的な強みが、世界最先端のインフラを活用して最大限発揮されるための戦略を確立すべきである。

2-2  総務省の具体的検討の体制:

    本年1127日に「次世代ブロ―ドバンド技術の環境整備に関する研究会」を開催するなど、検討が進んでいる。

3.        SANARI PATENT所見

    「通信・放送」という総務省の表記自体が旧体制であり、「通信放送」という融合表記から、「ネット情報流通」という、有線・無線、通信・放送融合の体系にふさわしい表記が先ず求められる。  

2006年12月 5日 (火)

「感光性導電ペ-スト」特許取消決定の取消判決に見る想到容易性(動機付け)

原告・東レ 被告・特許庁長官。 知財高裁判決は原告の請求を認容

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

 東レの「感光性導電ペ-スト」特許発明が、刊行物発明により想到容易であるとして、特許庁は特許を取消したが、知財高裁は、想到容易とはいえないとして、特許庁の特許取消決定を取消さるべきものと判決した(2006-11-22:)(平成17年(行ケ)10531号 特許取消決定取消請求事件)。

 想到容易性の認否基準の具体例として、知財高裁の判断を考察する。

1.        導電ペ-ストの技術分野における特定物質の周知性について:

1-1  エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系重合体について、東レは、少なくとも導電ペ-ストの技術分野においては周知ではないと主張するのに対し、特許庁は、フォトリソグラフィ―法によりパタ―ン等を形成するために用いられる感光性の樹脂として周知であると主張した。

1-2  この争点について知財高裁は次のように判示した。

1-2-1      引用刊行物には、エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系重合体が記載されており、この重合体は、水性処理が可能な感光性樹脂(光重合性の共重合体)であること、この共重合体を包含する光重合性組成物は、とりわけ単量体化合物からなる感光性組成物の有する、「結合剤及び担体として作用する補助材料を必要とし、酸素に対して鋭敏である」(SANARI PATENT 注:括弧は、読み易いように、SANARI PATENTが判決文に付した)といった欠点を克服し、特別の補助結合剤を必要とせず、酸素に対して感受性が低いという利点を有するものであること、これらの利点により、この光重合性組成物は、印刷回路も含めたフォトリソグラフィ―法によりパタ―ン等を形成する各種の用途に使用可能なものであり、当該組成物のフォトレリ―フは、重クロム酸塩プレ―トより明瞭な像を得られることが認められる。

1-2-2       また、別の引用刊行物にも(SANARI PATENT 注:判決文は「には」) エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系重合体が記載されており、この重合体は、水性処理が可能な感光性樹脂(光重合性の共重合体)であること、この共重合体を包含する光硬化性組成物は、プリント配線板の製造において永久保護皮膜として使用するソルダ―レジスト、特にハンダマスク形成用のソルダ―レジストとして用いるもので、永久保護皮膜として、酸、アルカリ、有機溶剤に耐え、しかも240~320のハンダ浴へ30~10秒(SANARI PATENT 注:10~30の判決文誤記と考える)浸漬しても、ハンダのもぐりやマスクの浮き及びクラックが発生してはならないという厳しい条件に適合する接着性や皮膜強度を有するものであることが認められる。

1-2-3       さらに別の刊行物発明は、高い解像力を有し、かつ、水性処理が可能な感光性導電ペ-ストとすることを目的とするものであること、この刊行物発明の一次バインダ―成分である「酸価164の75%のメチルメタクリレ―トおよび25%のメタクリル酸のコポリマ―」は、この刊行物発明の高い解像力および水性処理可能という効果と関わっていること、sすなわち、これらの効果を付与するために選択された一次バインダ―であることが認められる。

1-2-4       特許庁は、「エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系重合体は、高い解像力を与えること、および、結合性・密着性が高いことも周知である等として想到容易性を主張する。

1-2-5       しかしながら、先ず解像力については、引用刊行物発明であるエチレン性不飽和側鎖含有アクリル系重合体を含む光重合性組成物のフォトレリ―フが、重クロム酸塩プレ―トより明瞭な像を得られることは記載されているが、「酸価164の75%のメチルメタクリレ―トおよび25%のメタクリル酸のコポリマ―」を一次バインダ―成分とした組成物との比較においても、明瞭な像を得られることは記載されていない。

1-2-6       従って、仮に、重クロム酸塩プレ―トより明瞭な像を得られることが周知であったとしても、そのことが、エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系重合体を刊行物発明に使用する動機付けとなると直ちに認めることはできない。

1-2-7       次に結合性・密着性に関しては、特許庁は、「特別の補助結合剤を必要としないということは、結合性が高いと言うことである」旨主張する。

1-2-8       しかしながら、補助結合剤併用の排除のために、樹脂の結合性・密着性が高いことが要件の一つとして存在するとしても、技術常識上、そのことのみによって補助結合剤併用の排除という効果が生ずるとは考えられず、従って、容易想到性を直ちに認めることはできない(エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系重合体を。引用刊行物発明に使用する動機付けとなると認めることはできない)。

1-2-9      また、エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系重合体を含む光硬化性組成物の接着性や皮膜強度は、これらの用途における過酷な使用環境に適合するために要するものであって、本件争点に関する動機付けとなるものとはいえない。

1-2-10  このほか、特許庁が想到容易性を認めた争点事項について、エチレン性不飽和側鎖含有アクリル系重合体を引用刊行物発明に適用することが、当業者において容易になし得たものと直ちに認めることはできず、特許庁の決定における想到容易性の判断は、誤りといわざるを得ない。

2.        SANARI PATENT所見

    特許審査基準の想到容易性判断の一要素である「動機付け」の有無について、認定手法を具体的に示した判例の一つとして、上記要約の「しかしながら」項目を再読すべきであると考える。

2006年12月 4日 (月)

ポ―タルサイトの知財戦略

ニフティの特許公開2006番号4件、ヤフ―の創立10周年創案

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        ポ―タルサイトの機能の多様化

   内閣知財戦略本部の知財推進計画に付されている用語集には、「ポ―タルサイト」が登載され、「インタ-ネット上の総合窓口サイト」と解説されている。ニフティ、ヤフ―、グ―グル等の機能が頗る多様化したが、例えば、ヤフ―の場合、「検索サイトを核として広告とオ―クションが二本柱。日本最大のポ―タル。ソフトバンクの子会社」と紹介(野村證券・東洋経済)されているから、業種名としては「ポ―タルサイト業」ないし「ポ―タル業」と呼ぶことが適切と考える。

2.        ヤフ―は、創立10周年

本年度上半期の営業報告書が各社から発送相次ぐ時期であるが、ヤフ―は、特に、「創立10周年報告」(Yahoo Japan born in 1996and now1006,10th Anniversary)を株主通信として作製した。社名の解説等、興味と期待を新たにする内容である。要約すれば、

2-1        ヤフ―という名称の由来は、三つほど伝えられている。

2-1-1 「Yet Another Hierarchical Officious Oracle」の略称である(もう一つの階層的で非公式な神託)。

2-1-2 創業者(米国スタンフォ―ド大学の学生2人)が、自らを「yahoo」(ならず者)と称した。

2-1-3 Yahooは、ガリバ―旅行記に登場する野蛮人の名である。このYahooは、理性を持った馬に飼われる、人の形をした「野蛮の象徴」である。

 (SANARI PATENT 注:いずれにしても、未開拓の分野を開拓してゆくベンチャ-にふさわしい)

2-2        インタ-ネット広告の世界では、次々と新しいツ―ルや広告手法がうまれている。インタ-ネットならではという広告手法も更に広がる。例えば、行動履歴に基づいて配信する行動分析型広告では、利用者個々の興味・趣向に合わせた広告ができる。居住地域に合わせた地域タ―ゲティング広告も増えている。インタ-ネット広告が全国区情報から地方区情報に多様化して、需要を拡大してゆく。

2-3        オ―クションについては、安全性・信頼性を一層高め、インタ-ネット利用機会が少なかった層の参加を促す。

2-4        ジャパンネット銀行に資本参加したことにより、Yahoo JAPAN IDとジャパネット銀行の口座を連携させ、両方で本人確認を行いつつ、購買と決済の同時履行ができる便益を得た。

2-5        モバイルインタ-ネットのオ―プン化の意義は、わが国のパソコン人口5千万人に対してケイタイは8千万人であり、市場規模拡大の効果は、大である。

3.        ニフティの「特許公開」

ポ―タルサイト事業の柱の一つである「検索」は、業務と生活に不可欠の機能を営むに至り、「検索の検索」機能も整備されつつあるが、ポ―タルサイト事業者の知財戦略の場でもある。

例えば、特許庁の「特許・実用新案検索機構」で「検索 ニフティ」を入力すると、次の公開公報20件が出力される。

3-1  特許公開2006→「贈答品判定装置及び判定プログラム」、「降車警告及び降車警告システム」、「自動広告装置及び自動広告プログラム」、「検索支援プログラム」

3-2  特許公開2005→「コンテンツナビゲ―ションプログラム、コンテンツナビゲ―ション方法及びコンテンツナビゲ―ション装置」、「辞書検索装置」、「蔵書管理装置」、「情報提供装置及び情報提供プログラム」

3-3  特許公開2004→「広告方法及び広告プログラム」、「コンテンツ提供装置、コンテンツ提供方法、コンテンツ提供プログラム」、「乗り物の指定席予約のための情報処理方法、プログラム及び装置」「ホットキ―ワ―ド提示方法及びサイト提示方法」、「求人情報提供方法及び装置」、「ブロ―ドバンド接続サ-ビス検索装置」

3-4  特許公開2003→「ダウンロ―ド方法、ダウンロ―ド方法補助方法及びコンピュ-タ-」

3-5  特許公開2002→「クリッピングサ-ビス提供装置」、「チャットシステム及びサ―バ装置」、「インタ-ネット・サ-ビス・プロバイダの提携による注文処理システム及び方法」

3-6  特許公開2001→「商品受注配送処理システム、注文処理方法及び配送処理方法」、「識別情報管理システム及び識別情報管理方法」

4.        SANARI PATENT所見

グ―グルほか、ポ―タルサイトの知財戦略の詳細は、別途考察したい。なお、SANARI PATENTのブログは、ニフティに依存している。日本弁理士会事務局のサ-ビスプロバイダも、ニフティである。これは、ポ―タルサイトの歴史を反映している。

2006年12月 3日 (日)

発明における動機付けと阻害事項に関する知財高裁の判断

電子デバイス電極材料の安定性と低抵抗値に関する発明について

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  沖電気の知財戦略の一端を見る判決であるが、沖電気は、社名の表記を「沖」から「OKI」に統一し、世界に認知されるグロ-バル企業を目指している(海外売上比率を、現在の35%から、2010年度に50%に)。例えば、低消費電力ながら優れた高周波特性をもつシリコン・オン・サファイア技術に関しては、アライアンスを強化すると共に、この特徴を活かした商品の事業拡大を図る、としている。

3.(承前).本件発明と引用発明の相違点についての知財高裁の判断

3-1 「原告・アドバンスト・マイクロディバイシズは、アスペクト比が0.5程度である刊行物発明1-3については、『ステップカバレッジを良くする』という課題は生じないから、ステップカバレッジを良くすることは、刊行物発明1-3のアルミニウム膜をタングステンに置き換える動機とならず、他に当該置換の動機付けとなるようなものはない、と主張する。

 しかしながら、刊行物発明1-3のアスペクト比が0.5程度であるとする前提自体が誤りであり、また、当業者が、本件特許出願に係る優先権主張日において、周知の技術課題を前提として刊行物1に接すれば、刊行物発明1-3が、ステップカバレッジの悪化という課題を内在するものと認識すること、刊行物3に、アルミニウム系統の電極をCVDタングステンに置き換えた場合に、ステップカバレッジの点において優れたものとなることが示されていることも、記述のとおりである。そうすると、ステップカバレッジを良くすることが、当業者が刊行物1-3のアルミニウム膜をタングステンに置き換えるための、いわゆる動機付けとなることは明らかであるから、この点について審判の判断に誤りはない」。

3-2 「原告は、刊行物1-3のアルミニウム膜をCVDタングステンに置き換える際に、チタン膜や窒化チタン膜を残したまま、アルミニウム膜だけをタングステンに置き換えることについては、動機付けがなく、あるいは阻害事由が存在するから、容易ではないと主張するので、以下、この主張について検討する。

3-2-1 原告は、刊行物1-3において、窒化チタン膜は、アルミニウムとシリコンとの境界面の相互拡散を防ぐバリヤ層として形成されているところ、タングステンとシリコンとの間に拡散の防止という課題は生じないから、アルミニウム膜をCVDタングステンに置き換えた場合に、窒化チタン膜をバリヤ層として形成することは、当該問題解決のためには必要がなく、また、刊行物1-3のチタン膜や窒化チタン膜は、アルミニウム膜と同様に電流を通す配電材料であり、かつ、ステップカバレッジを良好化しないスッパタリングによって形成されているものであるから、ステップカバレッジを良くするために、アルミニウム膜だけをCVDタングステンに置換し、チタン膜や窒化チタン膜を残す動機付けはない、と主張する。

3-2-2 しかしながら、刊行物1-3は、シリコン基板表面上に、チタン膜、窒化チタン膜、アルミニウム膜をこの順に形成するものであることは、当業者間に争いのない審決認定の通りである。

3-2-3 また、原告は、本件特許に係る優先権主張日当時、窒化チタン膜上にCVDによってタングステンを析出することはできないとする知見が技術常識として存在したと主張するが、かかる技術常識の存在を認めるに足りる証拠はない」。

4.中間まとめ

   今次知財高裁の「判断」の、「相違点か一致点か」という争点、および、「相違点に係る容易想到性と発明効果の予測可能性(非顕著性)」に関する争点に係る部分は、別途緻密に考察する必要があり、ここでは、知財高裁が結論として、「原告の主張はすべて理由がなく、原告の請求は棄却されるべきである」としたことを記録するにとどめる。

  なお、主張が認められた沖電気は、IP電話の技術力に定評があり、ATM 等の金融端末や独自開発LSIにも強みを有する(野村・東洋経済)。

2006年12月 2日 (土)

知財高裁の判断「安定・低抵抗等の事項の、発明特定機能の評価」など

原告アドバンスト・マイクロディバイシズ、被告・沖電気;「原告の請求を棄却」弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

 SANARI PATENT2月1日の記事に続けて、「安定な低抵抗コンタクト」特許権取消に関する知財高裁の下記判断を考察する。

1-4(付番は承前: 争点のうち、本件特許発明と刊行物発明の「一致点」の判断の適否について)

.「原告は、『刊行物発明1-3の、アルミニウム電極と一体となったコンタクトが低抵抗であってかつ、信頼性の高いものであっても、このアルミニウム電極をCVD反応によってブランケット析出させたタングステンに置き換えた後において、なお、コンタクトが、当然に低抵抗であってかつ、信頼性の高いという性質を維持するとは、理論上いえないから、刊行物発明1-3の低抵抗であってかつ、信頼性の高いオ―ミックコンタクトが、本件発明1の安定な低抵抗コンタクトに相当するとした認定は誤りである』と主張する」。

1-5 「しかるところ、本件特許発明1の要旨は、これら安定および低抵抗の程度ないし内容について、具体的に特定するものではなく、また、本件明細書にも、安定および低抵抗を、例えば抵抗値等を用いて定義した記載はない。そうすると、本件発明における安定および低抵抗は、具体的に安定性および抵抗値が特定されるようなものではなく、コンタクトとして十分実用に供することができるという程度の、単なるコンタクトの特性を表したものと理解せざるを得ない」。

1-6 「ところで、原告の主張は、これを一般論に敷衍すれば、このような物の特性を表す発明特定事項について、目的とする発明と引用発明とが一致した場合においても、相違点とされた他の発明特定事項に係る置換により、引用発明の当該特性が変動する可能性があるので、一致点として認定すべきではないというものである」。

1-7 「しかしながら、目的とする発明の個々の発明特定事項について引用発明との構成上の一致点および相違点を認定し、当該相違点について他の公知技術・周知技術に係る構成によって置換・付加することの容易性を判断することは、発明の容易想到性判断の手法として確立されたものであり、その際、物の特性に係るものであっても、発明特定事項とされている限り、一致点・相違点の認定対象とすることも、実務上、通常の手法である。もっとも、物の特性等、とりわけ、上記のとおり、定量的に特定されるようなものではない、本件特許発明の、安定・低抵抗というような事項は、発明を特定する機能に乏しく、また、対比の対象としても極めて漠然としたものであるから、一致点および相違点の認定対象外とすることも考えられないではないところ、それに較べれば(SANARI PATENT 注:判決は、「比べる」ではなくて「較べる」としているが、「較」に「質的考量」の意味を託したと考える)、物の特性等を含めて、一致点および相違点の認定対象とする現行の実務は、より慎重な判断を行っているものということができ、これが不合理であるということはできない。

   そして、刊行物1によれば、刊行物発明1-3は、低抵抗であってかつ、信頼性の高いオ―ミックコンタクトを形成するものであるから、刊行物発明1-3によって形成されたコンタクトも、十分に実用に供することができる程度の安定性および抵抗値を有するものと認められる」。

1-8  「従って、審決が、刊行物発明1-3の『低抵抗であってかつ、信頼性の高いオ―ミックコンタクト』が、本件特許発明1の安定な低抵抗コンタクトに相当するとした認定に誤りはない」。

2.SANARI PATENT所見

   上記1各号が、「一致点」に関する知財高裁の判断であり、「相違点」に関する判断については、SANARI PATENT2月3日記事に継続する。

2006年12月 1日 (金)

「安定な低抵抗コンタクト」特許無効審決取消請求を棄却

知財高裁判決(11-22): 原告 アドバンスト・マイクロディバイシズ、被告 沖電気: 知財高裁説示「願書添付図面と設計図の相違」ほか

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

  従来技術・刊行物との一致や容易想到性の的確な判断の存否は、特許性認否の適否に直結し、特許制度の根幹に係る問題点である。従って、わが国の進歩性審査基準、米国MPEPの「Novelty」審査基準ともに、極力詳述しているが、これらにより、特許査定、異議申立、審決請求、審決取消請求、各審級判決の諸段階において、法的安定性と法的的確性とが正当に達成されることが必要である。

特許審査ハイウェイや日米特許FTAの締結、さらには、そのわが国先行実施が提案されている現在、判断基準の国際的整合も、益々緊要化すると考えられる。

 

 平成17年(行ケ)10777号 審決取消請求事件に対する知財高裁判決(2006-11-22)は、「安定な低抵抗コンタクト」特許権者である原告・アドバンスト・マイクロディバイシズ(訴訟代理人・岡田春夫弁護士ほか)が、被告・沖電気(訴訟代理人・伊藤高英弁理士ほか)の無効審判請求を受けた特許庁により、本件特許を無効とする旨の審決がなされたため、この審決の取消を求めた事案である。

 

知財高裁は、下記判断により、原告・アドバンスト・マイクロディバイシズの請求を棄却した。 

なお、電子デバイスにおいて、半導体に高効率で電力を供給するため、コンタクト(電極)の安定性・低低効率は、重要な特性である。

争点の第1である「本件発明と刊行物発明の一致点」についての知財高裁の判断から考察を始める。

1.「一致点の認定」に関する知財高裁の判断(要旨)

1-1 原告は、「本件特許発明1は、従前のアルミニウム配線技術で前提となっていた薄膜形成技術において、アスペクト比(コンタクト深さ/コンタクト径)が1を超えるような微細化の段階となって初めて顕在化する、ステップカバレッジが極端に悪化するという課題に対し、まずコンタクトホ―ルを充填することを第一義としたコンタクトプラグ技術に関する発明であるのに対し、刊行物発明1-3は、アスペクト比が0.5程度である微細化の段階における配線技術に関する発明であり、ステップカバレッジの悪化という技術課題に対応したコンタクトプラグ技術に関する発明ではないと主張する。

   しかるところ、本件明細書には、「この発明は、・・・コンタクトホ―ルにプラグを形成することによって、配線金属のステップカバレッジを増すことに関するものである」との記載があり、また、コンタクト抵抗の値と関連して、コンタクトの直径が1.0μm、1.2μm、1.4μmであることが記載されているが、アスペクト比を特定するような記載、またはコンタクト深さ等、これを推知する手掛りとなるような記載は見当たらない」。

1-2 「本件特許出願に係る願書に添付された各図面には、コンタクトプラグ

の断面図が示されているが、そもそも願書に添付される図面は、明細書を補完し、特許を受けようとする発明係る技術内容を当業者に理解させるための説明図にとどまるものであって、設計図と異なり、当該図面に表示された寸法や角度は、必ずしも正確でなくても足り、もとより、当該部分の寸法や角度がこれによって特定されるものではない上、本件明細書に、『この説明において参照される図面は、特に注目される場合を除いて一定の縮尺で描かれはいないと理解すべきである』との記載があるから、上記図面に基づいて、本件特許発明1のアスペクト比を特定することもできない」。

1-3 「しかしながら、刊行物3には、『ブランケットタングステンは、スッパッタされたアルミニウムおよびアルミニウム合金に代わる適切なるVLSI配線である。・・・CVDタングステンは、コンフォ―マルなステップカバレッジ(均一な段差被覆性)という利点を有しており、その結果、1μのタングステン膜を用いて異方姓エッチングで形成された1μ*1μのコンタクトを完全に充填する。サンプル・シミュレ―ションによれば、これらのコンタクト形状においては、スパッタされたAlSiのステップカバレッジが非常に劣っており、一方、CDVタングステンの場合はコンタクトの完全な平坦性が達成されている』との記載があって、アルミニウム系統の金属材料による電極において、径1μm、アスペクト比1のコンタクトカバレッジが非常に劣っていること、これに対し、アルミニウム電極をCVDタングステンに置き換えた場合には、ステップカバレッジの点において優れたものとなることが示されており、また、刊行物4には、『信頼性ある0.25ミクロンサイズのVLSIと三次元のLSIを実現するためには、層間絶縁体の平坦化および高アスペクト比ホ―ルの金属重点は不可欠である。・・・しかし、アスペクト比が1以上1-のホ―ルをボイドなしに完全に充填する方法は報告されていない。この報告では、アスペクト比約3のホ―ルを充填する新規に開発したプロセスを提案する』との記載があって、金属材料の記載はないものの、径0.25μm、アスペクト比が1以上のコンタクトに係るステップカバレッジが問題であることが示されている。そして、これらの記載によれば、本件特許出願に係る優先権主張灯当時、アルミニウム系統の電極の配線技術において、コンタクトの径が1μm以下、アスペクト比が1以上の場合にステップカバレッジが悪化することは、周知の技術課題であったと認めることができる」。

(SANARI PATENT より:長文になるので、1-4以降をSANARI PATENT11月2日の記事に掲載する。

なお、知財高裁判決にもミスプリントがあって、判決の35ペ-ジに、「この点についての審決の認定に原告の主張は誤りはない」とあるが、「原告が主張する誤りはない」が正しい)

« 2006年11月 | トップページ | 2007年1月 »