食材知財論、参議院農林水産委員会で活発
WIPO事務局長が、植物新品種保護国際同盟の事務局長を兼務
弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT)
今次第165回国会の参議院農林水産委員会は、10月26日から本格審議を開始したが、先ず谷 博之委員の「知財権問題」質疑と、松岡利勝農林水産大臣の答弁を要約する。
1. 質疑応答
1-1 韓国産のイチゴについて:
1-1-1 (質疑)地域の創意工夫で、4ヘクタ―ル超の「認定農業者」、あるいは個々の小農家が集落という形でまとまって営農してゆくという農業経営政策の方向性は理解できるが、ここでは具体的にイチゴの問題を取り上げる。実は栃木はイチゴの産地として福岡その他の優秀なイチゴ産県と競っているが、実は韓国産のイチゴの品種は、その9割が日本のイチゴだといっていることは、周知のこととなっている。
そこで知財権の問題が関わってくるが、実はこの育成者権者に対するロイヤリティが全くない。つまり、日本のイチゴの苗を勝手に持って行って、向こうで安価な労働力を使って栽培し、そして安いイチゴが逆に日本や他国に輸出されるという現象になっている。栃木からも韓国に事実確認のため赴いたが、なかなかこれが、結果的には明確には分からなかったが、こういう現象は依然として続いている。
UPOV条約(SANARI PATENT 注:The International Union for the Protection of New Varieties of Plants:内容は後述)に韓国も加入しているが、イチゴは未だ保護対象になっていない。従って、上述したことが韓国側ではできるわけだが、わが国イチゴ栽培者は大きな不利を受けつつあるので、育成者権保護の充実を一日も早く実現すべきである。
1-1-2 (応答)日本で苦労を重ね、技術・財政投資もして開発した成果を、安易に海外に持ち去られ、栽培されて日本に売られる事態が幾つかあって、国際的にも解決すべき問題であるに拘わらず、WTO交渉の場でも利害関係から順調には進まない。
例えば、WTOのGIという地理的表示の問題にしても、EUは熱心に主張するが米国は反対する。
イチゴのほか、牛肉にしても、例えば上海で和牛といって、または神戸牛といって売られている。種苗法・関税定率法の改正など、対策にしっかり取組む。
1-2 農家の協力創造に対する国レベルの対処について:
1-2-1 (質疑)中小企業庁が特許侵害の現地調査に補助金を出しているが、農林水産省も同様に支援スキ―ムを早急に整備すべきである。栃木の「とちおとめ」というイチゴの、韓国との問題についても、国レベルで対処すべきである。
著作権・特許権に比べて、農業分野の知財保護は、非常に遅れているが、農家の人々の協力に成る創造については、同様以上の保護をすべきである。
1-2-2 (答弁) 経済産業省の中小企業知財対策も大いに参考にする。なお、品種保護について、18年度には、つくばのGメンを4名から10名に増やした。
2. 植物新品種保護国際同盟に関する国際条約(以下「UPOV」)
2-1 同盟の目的:
加盟国60国(2006-4)。1968年に発効した条約により設立。植物新品種の育成者権の保護により、良質(耐病性等)・多様な新品種の育成を振興・普及し、農業の発展に資する。
2-2 活動内容:
2-2-1 品種審査の調和:
植物新品種の審査に関して加盟国内の調和の達成のためのガイドラインを作成し、条約解釈等の法律的問題を検討・勧告する。
2-2-2 審査協力の推進:
行政手続の調和、情報交換など。
2-2-3 活動規模:
2006~07予算は約5億8千万円。スタフ11名のうち日本人1名。
3. SANARI PATENT所見
知財専門家の条約知見を、UPOVに拡大する必要がある。しかし、その加盟国数は、上述したように、国際連合加盟国数192国の3分の1に満たない。かつ、その拘束力が現在は、韓国等のイチゴに及ばず、国産イチゴの国内市場のみならず、海外市場をも侵食されていることも事実であると考える。いわゆるニセモノの品質が「低品質」である場合は表示の不正を直ちに詐欺罪で問責できるが、「高品質」である場合、その抜本的解決は、わが国農村振興の達成を大前提として、国産イチゴが品質だけでなく生産コストにおいても、生産の規模・施設の創意を含めて、「高品質・極力低価格」を期し得る創造を成し遂げることに俣たなければ容易でない。食材知財創造の価値も究極的には、電子製品等と同様に、広く国民・世界市民の生活に極力低価格をもって浸透することによって、評価されるからである(知財権の究極目的論)。


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