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2006年10月12日 (木)

エ―ザイ対大洋薬品工業:胃潰瘍治療剤のPTP

不正競争行為差止等請求控訴事件:知財高裁判決(9-28)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        経緯

1-1        エ―ザイは、「大洋薬品工業が販売する胃潰瘍治療剤『セルベックスカプセル50mg』(以下「大洋薬品工業胃潰瘍治療剤」)が、エ―ザイの販売する胃潰瘍治療剤と、カプセルおよびPTPシ―トの色彩及びPTPシ―ト(SANARI PATENT 注:PTPは「Press Through Package」:錠剤・カプセル剤包装の主流)の色彩構成が類似し、大洋薬品工業による大洋薬品工業製胃潰瘍治療剤の販売が、不正競争防止法211号の不正競争行為に該当する」として、大洋薬品工業胃潰瘍治療剤の販売等差止・廃棄・損害賠償を請求した。

1-2        原審東京地裁は、エ―ザイの請求を棄却した。

1-3        エ―ザイはこれに対し知財高裁に控訴し、「大洋薬品工業の行為は民法709条の一般不法行為にも該当する」として同一請求を予備的請求として、追加した。

1-4        知財高裁は、平成18年(ネ)第10009号 不正競争行為差止等請求控訴事件判決(2006-9-28)において、エ―ザイの控訴を棄却した。

2.        カプセル及びPTPシ―ト

    エ―ザイが主張する「エ―ザイ胃潰瘍治療剤のカプセル及びPTPシ―トの色彩構成」は、緑・白2色の組合せから成るカプセル及び銀地に青で文字等が書かれたPTPシ―トという色彩構成である(以下「エ―ザイ色彩構成」)。

3.        知財高裁におけるエ―ザイの主張(要旨)

3-1        患者も、不正競争防止法における「需要者」である。

   患者は、医療用医薬品の選択権を有し、処方医薬品が告知なく先発品から後発品に変更されれば、復元を求める場合もある。

3-2        色彩構成も、商品等表示である。

   東京地裁は、色彩や色彩構成は本来的に商品の出所表示目的を有するものではないこと等を理由として、「エ―ザイ色彩構成の商品等表示該当性の判断基準としては、その色彩が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していることを要する」と判断した。

   しかし医療用医薬品の場合、患者は、カプセル及びPTPシ―トの色彩等で識別する。

3-3         エ―ザイ胃潰瘍治療剤色彩構成のエ―ザイ独占は妥当である。

  エ―ザイ胃潰瘍治療剤色彩構成をエ―ザイが独占しても、他事業者の不利益は、カプセル形態の胃潰瘍治療剤に限定される。フリ―ライドされるエ―ザイを保護すべきである。

3-4         顕著性の判断対象範囲は胃潰瘍治療剤中とすべきである。

医療用医薬品の種別ごとに市場が存在するから、顕著性は胃潰瘍治療剤の中において判断すべきである。

3-5        顕著性の判断時期は、商品等表示性の獲得時期とすべきである。

   エ―ザイ胃潰瘍治療剤色彩構成は、昭和59年に発売後、平成9年に後発品出現までエ―ザイが独占したから、遅くとも平成9年には表示性を有し、その後も高いシェア―を持続している。

3-6        大洋薬品工業の模倣の程度は、デッドコピ―であり、患者の誤認を惹起し、患者の自己決定権を侵害している(不法行為)。

4.        知財高裁における大洋薬品工業の主張

4-1        不正競争防止法において、商品等表示性が認められるためには、現実の商取引の現場において、識別機能をもつものでなければならない。

4-2        医療用医薬品については、薬事行政上、PTPサイ―ト等に商品名の和文記載が要求され、色彩構成に識別機能を期待していない。従って、その特別顕著性を論ずる意味がない。

4-3        患者は医療用医薬品の取引に関与しないから、不正競争防止法上の需要者になり得ない。

5.        知財高裁の判断

5-1        色彩または色彩構成が商品と結合して出所表示機能を有し、「商品等表示」に当たるためには、その色彩または色彩構成をその商品に使用することの特異性など、顕著な特徴を有し、かつ、その使用継続性の程度、需要者の着目度合いを考慮して検討しなければならない。

5-2        エ―ザイ胃潰瘍治療剤色彩構成における顕著な特徴の有無は、医療用医薬品全体を同種商品として検討すべきである。

5-3        小野薬品工業、ゼリア新薬工業等の製品と対比し、また、エ―ザイ胃潰瘍治療剤色彩構成の独占が希釈されたことからも、顕著な特徴を有するとは認められない。

5-4        患者が需要者に該当する場合もあり得るが、胃潰瘍患者が、エ―ザイ胃潰瘍治療剤色彩構成によって、他の胃潰瘍治療剤または医療用医薬品一般から、エ―ザイ胃潰瘍治療剤を識別していることを認めるに足りる根拠はない。

5-5        大洋薬品工業の胃潰瘍治療剤販売jは、不正競争防止法の不正競争行為に当たらないから、大洋薬品工業が専らエ―ザイに損害を与えることを目的としてその胃潰瘍治療剤を販売しているなどの特段の事情がない限り、一般不法行為を構成しない。

6.        SANARI PATENT所見

    いわゆる医薬特許権満了の集中時期を迎え、また、薬局等の医薬品販売対象の拡大、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の低廉な供給等が国民の利益に適すると考えられている折柄(公取も、後発医薬品関係の発言を行った(2006-10-11)、エ―ザイの主張を全面的には否定せずに結論を導出した知財高裁の判断を熟読し、エ―ザイ・大洋薬品工業双方の主張を再読すべきである。

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