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2006年9月 1日 (金)

パブリックドメインとパテントの双方保護

米国特許商標庁の役割意識

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.「パブリックドメインの保護」は米国特許商標庁の責務:

1-1 米国特許商標庁(USPTO)新5ケ年計画案(2006-8-24)には、「USPTOは、知的財産権の付与とパブリックドメインの保護を管轄する」(Congress established a system for holding the agency(USPTO) responsible for granting or recognizing intellectual property rights and protecting the public domain)と明示し、両者の境界線を適切に判断してパテントを付与することにより、パブリックドメインの活用を確保することを、その責務の一つとして顕示している。

1-2 わが国内閣知財戦略本部の知財推進計画06は、パブリックドメインを、「知的創作物について一般公衆が自由に使える状態」と解説しているが、「状態」というより、「一般公衆が自由に使える知的創作物」と定義し、「知財権が付与されている知的創作物」と区分することが適切と考える。後者の定義が、上記1-1の米国特許商標庁のパブリックドメインの含意と、整合・調和すると考える(2-1参照)

  

2.通称「パブリックドメイン」の3つの意味:

   パブリックドメインと呼ばれている領域には、次の3つの意味が混在している。明確に使い分けるべきである。

2-1 第一に、知的創作物ではあるが、排他的知財権の付与には値しない、またはその付与による独占が公益に反すると評価して、知財権を付与せず、その結果、一般公衆が自由に使える知的創作物。

2-2 第ニに、知財権が付与されていたが、権利の存続期間が満了した結果、一般公衆が自由に使える知的創造物。

2-3 第三に、現に知財権が付与されているが、知財権者の意思により、一般公衆が自由に使える状態におかれている知的創造物。

3.経済産業省がいうパブリックドメイン:

上記1-2の知財推進計画06は、経済産業省所管の項目として、「2006年度から、既存の知財権制度の利用を前提に、各企業等が保有する知財権についてパブリックドメインを構築し、当該ドメインを活用したイノベ-ションの向上を図るなど、産業界における自主的な対応を促進する」と計画している。具体例や補足説明を欠くので、やや了解しにくいが、上記2-3の類型のみが想定され、そのことが、上記1-2の知財推進計画06の定義に反映していると考える。

 要するに、わが国では従前のプロパテント意識がそのまま強く残存し、パブリックドメインと対峙させる意識が、米国特許商標庁ほど明確化していないように受け取られる。 もっとも、知財推進計画06は、「知財権とそれ以外の価値とのバランスに留意する」という項目を設け、「知財権の強化は、知識社会化とグロ-バリゼ-ションの必然的な流れである反面、公正かつ自由な競争、学問・研究の自由、表現の自由、公共の利益など現代社会が有している基本的価値と抵触する可能性があり、バランスのとれた知財制度を目指す必要がある」と述べているので、パブリックドメインの保護を、その一環として読取ることも可能としているのかも知れない。しかし、知財推進計画0がが、プロパテントをイノベ-ションの中核に位置づけているという印象は否めず、イノベ-ションのために、プロパテントとプロパブリックドメインを均等に対置するに至っていないように、少なくとも外観上は見られる。

4.パブリックドメイン派によるプロパテント派への攻撃:

   米国では、公共パテント財団(Public Patent Foundation)、電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation)、ウェブ国際標準化コンソ-シアム(World  Wide Web Consortium)等のいわゆるパブリックドメイン派が、米国特許商標庁に対する特許再審査請求等の方法で、プロパテント派を攻撃している例が多く見られている。

  米国特許商標庁が再審査請求を承認した最近の例(2006-6-10公表)としては、公共パテント財団がMicrosoft保有の特許権「File Allocation System(SANARI PATENT 注:交換ファイルシステムの一つ)について請求したものがあるが、従来の再審査例では、クレ-ムの縮小ないし無効に至った場合も多い模様である。

  上記のような攻撃への対策としては、積極にライセンス契約を締結する方向への知財戦略転換も見られる。

5.所見:

   パテントとパブリックドメインの境界の画定は、特許要件(特許性)の具体的認定を伴い、著作権については、思想表現の創造性の具体的認定を伴うから、権利の設定段階と訴訟段階で、経済産業政策・文化芸術政策が深く関与すべき課題である。パブリックドメインとパテントとの融和対策としては、ライセンスの積極的供与、自主的パブリックドメインの設定、許諾権の対価請求権化(新たな制度を要する)等が考えられる。知財推進計画07では、このような課題を真正面から取り上げるべきであると考える。米国では現に、わが国企業の特許権についても、米国特許商標庁に対する再審査請求が申立てられる可能性があり、国際標準化との関連を含めて、グロ-バルな視点から注目すべきである。

 

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