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2006年9月13日 (水)

大塚製薬・会社側が勝訴

職務発明対価請求・東京地裁判決9月8日

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        職務発明対価制度の多様性

  わが国特許法の職務発明対価制度は、先般の改正においても同法第35条として残存し、米国特許法が職務発明に関する条文を設けず当事者間契約に委ねているのと、著しい対照を示し続けている。わが国産業界は、おおむね米国型を妥当とし、改正を期待しているとSANARI PATENTは推測しているが、その帰趨は現在なお不透明である。

  中国特許法では職務発明は会社帰属、欧州は多様な定めをしているが、わが国においても、職務著作の著作権は、著作権法上、会社帰属とされ、創作権内部で整合を欠いたままである。

2.        今次・大塚製薬職務発明対価事件

2-1         平成17年(ワ)第14399号・職務発明対価請求事件の東京地裁判決(2006-9-8)は、原告甲(大塚製薬の元従業員・部長級)の大塚製薬に対する職務発明対価請求(1億円+α) を棄却した。

2-2         甲の請求理由:

   大塚製薬が有していた米国特許権「テトラゾリルアルコキシカルボスボスチリル誘導体およびそれを含有する医薬成分」(本件特許権)(SANARI PATENT 注:高血圧症や狭心症の原因の一つとされる血小板凝固の拮抗剤等として用いられる)に係る発明について、甲は、大塚製薬在職中に発明者の一人であったから、その対価を請求する。

2-3         大塚製薬の主張:

2-3-1        外国の特許を受ける権利については、特許法35条3項の適用はない。

2-3-2        甲は本件特許権の共同発明者ではない。

2-3-3        大塚製薬の発明考案取扱規定に該当しない。

3.        東京地裁の判断(要旨)

3-1        争点2-3-1について:

   特許を受ける権利の承継については、「承継の効力発生要件・対抗要件等の法律関係」と「承継合意の成立・効力、対価等の法律関係」とは、法的性質が同一でないから、その準拠法についても、前者は各国特許法、後者は契約の国際規律に準拠すべきである。

   後者については、日本法への準拠について当事者間に異議がないので、前者、すなわち、争点2-3-1について以下に判断する。

   わが国特許法には、外国の特許を受ける権利の承継に基づく対価請求権の規定がないのみならず、外国の特許発明や外国の特許権に関する規定も全くない。また、特許法35条と同様に、33条・34条もわが国の特許を受ける権利のみを対象とする。

   さらに、特許権の属地主義原則から、「特許権に対して無償の法定通常実施権を設定すること」は、わが国の特許権についてのみなし得ることであり、外国の「特許を受ける権利」「特許権」を含まない。

3-2        争点2-3-2について:

   発明者とは、特許請求の範囲に基づいて定められた技術的思想の創作行為に現実に加担した者をいうから、補助・助言・資金提供・命令等の行為をした者を含まない。従って、事実に即し、甲は発明者でないと判断する。

3-3        争点2-3-3については、上記により、判断を要しない。

4.        所見

  知的財産推進計画においては、職務発明については再考が予定されていたと解するので、特許制度の国際調和や、わが国技術者の地位の米国並み接近にもかんがみ、検討の再開を要望する。(内閣知財戦略本部に送信済み)。

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