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2006年9月29日 (金)

国際標準化型パテントプールとクロスライセンス型パテントプール

多国籍企業型パテントプールと企業グル-プ型パテントプール

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.国際標準化とパテント

  内閣知財戦略本部が、知財推進計画07の「目玉項目」として「国際標準化戦略」を予定していることから、パテントプールが改めて脚光を浴びている。パテントプールには、国際標準化型パテントプール・包括的クロスライセンス契約型パテントプール・企業グル-プ型パテントプールの3類型が考えられるが、最初に、その相違点を明確にしておくべきである。なお、「標準化活動」の定義的なものとしては、公取は、「複数の事業者が共同して規格を策定し、広く普及を進める運動」と述べている。

  上記パテントプールの3類型は先ず、パテントプール形成の意図が異なる。国際標準化型パテントプールは、大企業、特に多国籍企業が世界市場を制覇して国際標準化を獲得するために大企業グル-プの所有特許権を市場制覇の共通の戦略装備とするために形成するパテントプールである。包括的クロスライセンス契約は、国内外の複数大企業がライセンス料の包括的相殺計算を約定して、包括的に複数特許権のクロスライセンス契約を締結するものである。企業グル-プ型パテントプールは、複数企業が相互に特許権ごとにをライセンスし合うことの不便を除き、参加企業の優位性を築くため、対象特許権を限定約定してパテントプールを形成するものである(ライセンス料の相殺は要素としない)。

  わが国の最近の判例に登場した包括的クロスライセンス契約の例は、日米の電子機器メーカー間で形成されているもので、職務発明の対価を算出するためのライセンス料収入をめぐって争われた。このように、包括的クロスライセンス契約は、実質的にはパテントプールであるが、特にパテントプールと称する必要も実益もないし、別組織を設ける必要もない。また、他の二つのパテントプールが公取規制の対象になるのと異なり、独占法問題にはならない。

企業グル-プ型パテントプールは、パチスロ業界のそれが判例として著名である。これは東京都の公安条例が定める「射幸心の過度刺激抑制値に出玉を制限するプログラム特許等をプールするもので、排他性を伴うことから、公取の規制対象となるが、国際標準化といった目的意識は存在しない。

2・国際標準化型パテントプールと公取

2-1                公取は、「標準化に伴うパテントプールの形成等に関する独禁法上の考え方」(2005-6-29)の冒頭に、次のように述べている(要旨)。

「規格の標準化活動や、規格に係る特許等の一括ライセンスのための、パテントプール形成の取組に伴う事業者等の活動について、独禁法上の考え方の明確化が求められている」。

    「情報通信など技術革新が著しい分野では、新製品の市場を迅速に立上げ、需要の拡大を図るため、標準化活動が行われているが、一方、規格に係る技術については多数の特許が取得され、複雑な権利関係の処理が、新製品の市場の迅速な立上げ、需要の拡大を阻害するおそれがあることから、その解決手段としてパテントプールを形成しライセンスする枠組みが利用されている」。

2-2                公取は、「標準化活動自体が直ちに問題となるものではないが、活動に当たって独禁法上問題になる「制限」を次のように例示している。

2-2-1        規格を採用した製品の販売価格等を共同で取り決めること

2-2-2        競合する規格の開発や採用を禁止すること

2-2-3        標準化のメリットを実現するために必要な範囲を超えて、製品の仕様・性能等を共通化すること

2-2-4        特定の事業者の技術提案の採用を阻止する又は技術改良の成果を踏まえた改訂を阻止すること

2-2-5        活動に参加しなければ製品市場から排除されるおそれがある場合に、特定の事業者の参加を制限すること

2-3   そして上記基準の具体的適用をめぐって、必須特許やRAND条件等の困難な諸問題が派生する(その記述は別途)。

3.知財専門家の立場から見た問題点の例示

3-1 一つの製品について、複数の標準を要し、従って、複数のパテントプールが形成されることとなるが、RAND条件によっても、ライセンス料の積み上げが高額に達しコストを圧迫する。

3-2 「標準の連鎖」に関連して、パテントプールの当初参加者が、パテントプールから離脱した上で、自社特許権に基づく差止請求や損害賠償請求を行った場合に、どのような法的対抗が可能か明確でない。

3-3 「必須特許」には、「技術的必須特許」と「商業的必須特許」が考えられるが、公取が「必須特許と非必須特許の抱き合わせ」を問題とする場合に、「商業的必須特許」はどのように扱われるべきか、明確でない。

3-4 必須特許だけでパテントプールを形成することは実際上、困難であり、また、特に、技術開発によって必須特許が必須特許でなくなった場合の取扱が明確でない。

3-5 必須特許性の個別判断者として、業界や業者との利害関係者を排除することが必要とすれば、これらとの受委託を業務とする知財専門家は不適当であり(非第三者性)、公取または所管官公庁が判断するほかないこととなる。

4.所見

  公取の見解も固定的ではない。固定的でないことが適切な場合があると共に、変動的に過ぎれば、法的安定性と標準化の円滑な遂行を妨げる。

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