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2006年9月 6日 (水)

長瀬産業等の特許無効審決の取消請求を棄却

「現像原液の希釈装置」知財高裁判決(8-31)

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        特許無効審決の実績

 特許無効審判の請求件数は、2005年に343件、請求成立が211件、請求不成立が114件、取下・放棄が54件であった(時系列を異にし、内数ではない)。

 標記事件は、特許無効審判請求とその請求成立とが、上記2005年の各件数に算入されており、2006年に、知財高裁段階で無効が維持された事案である。

2.        本件の経緯

2-1        原告・長瀬産業等は、「現像原液の希釈装置」特許(2090366)の特許権者である。被告・ケミテックは、本件特許を無効とする審判を請求した(2005-3-31)

2-2        特許庁はケミテックの請求を認容し、従来技術から想到容易として、本件特許を無効とする審決をした(2005-10-31)

2-3        長瀬産業等は、この無効審決の取消を知財高裁に請求し、知財高裁は、平成17(行ケ)10835号・審決取消請求事件判決(2006-8-31)により、長瀬産業等の請求を棄却した。

3.        本件明細書の特許請求範囲(要旨)

3-1        次の特徴等を有する現像原液の希釈装置

3-1-1        ホトレジストを用いて微細加工を行う加工用設備に管路を介して所望濃度の現像液を送給するための現像原液の希釈装置である。

3-1-2        アルカリ系現像原液と純水との混合手段、この混合液の強制攪拌槽、攪拌混合液の導電率の連続的測定手段、測定導電率に温度補償し基準温度における導電率を演算する温度補償手段、温度補償装置手段からの出力信号によるアルカリ現像液・純水流量の制御手段、および、混合液の貯留槽を備える。

3-2               前記3-1の現像原液の希釈装置であって、混合手段がラインミキサである装置。

3-3               前記3-1の現像原液の希釈装置であって、攪拌槽に外筒と内筒を備え、混合液を両筒間に強制循環させることを特徴とする現像原液の希釈装置

3-4               前記3-1の現像原液の希釈装置であって、導電率測定手段に、測定液を定温に保つ温度調節手段の付設を特徴とする現像原液の希釈装置

4.        知財高裁の判断(抜粋)

4-1        長瀬産業等は、「本件発明に用いる現像液は、小数点以下3桁の濃度管理を要求される」と主張するが、明細書等には、精度に関する記載がない。

4-2        また、4-1の長瀬産業等の主張は、根拠の記述に欠けると見られる。

4-3        現像液の溶媒としての水に純水を用いることは、当業者が当然考慮すべき事項である。

4-4        本件出願前、「添加剤の影響により、導電率ではホトレジスト現像液の濃度の精確な測定はできない」と認識されていたことを裏付ける証拠は見出せない。

4-5        長瀬産業等は、「本件発明は、当業者の予想に反する実験結果の確認による」と主張するが、当業者の予測に反する新たな知見ということはできない。

4-6        本件発明による特別の効果は、認められない。

5.        所見

  「当業者」という別人格が実在するのではなく、特許審査の審査官、審決の審判官、裁判の裁判官が、「当業者」としての判断を行う、という構造が特許法の基礎をなしている。「当業者」として判断する実在人は、特許出願が経る課程ごとに異なるから、判断に相違があり得るのは当然で、また、相違があり得ることに制度の意味がある。相違をなくそうとする努力も、当然継続されるべきである。出願書類全体を総合して、長瀬産業等の主張を再読・確認することが、知財専門家にとって有益と考える。

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