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2006年9月30日 (土)

農産品知財で「美しい国日本」を実現

「農産品輸出を1兆円に」「強い農林水産業に構造改革を」

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

安倍新首相の施政演説(2006-9-29)で、「2013年までに、おいしく安全な日本農産品の輸出を1兆円規模にする」と、目標が述べられたが、既に、安倍新内閣の発足に先立つ自民・公明連合合意(2006-9-25)において、「強い農林水産業への構造改革」が謳われている。一方、農水産省知財戦略本部の始動により、新規予算要求中には、「生活習慣病医薬の開発」や「世界食料需給の安定」に向けて、国家的・国際的意義の革新を伴う、農産品知財の起動が見られる。

 現に、サトウキビ等の農林産業にエタノール生産が加わって、エネルギ-需給を変革し、さらに、遺伝子組換やタンパク合成により食料需給が変革するなど、農工の枠を超えるグロ-バルな変革が実現しようとしている。

 すなわち、

1.        農林水産省の平成19年度予算要求(概況はSANARI PATENT9月19日記事)には、上記世界的視点に立った新規または大幅増額の重要事項が見られる。以下、農林水産省文書では、生物名を全てカタカナ表記しているが、本稿では原則として漢字表記とする。

1-1 「不良環境下で安定生産できる遺伝子組換作物の開発」には、3億円を新規要求しているが、これは「アグリ・ゲノム研究の総合的研究のうち、世界の食料需給の安定に向けた研究の推進」として計画され、「わが国が知的財産を所有している乾燥や塩害等に強い遺伝子を、遺伝子組換技術を用いて作物に導入し、劣悪な環境下でも収量が落ちない小麦等を開発する」ことを目的とする。

1-2 「輸出促進・食品産業の海外展開を支える新技術の開発」には、17億8200万円を新規要求しているが、これは「先端技術を活用した農林水産事業のうち、輸出促進・食品産業等、海外展開に関する研究開発」として計画され、「わが国農林水産物・食品の輸出を戦略的に進める上で、産学官連携による競争的研究資金を活用し、30課題を採択する」ことを目的とする。

1-3 「遺伝子組換のカイコや豚を活用した医薬品、疾患モデル家畜等の開発の加速化」には、10億円を新規要求しているが、先ず、カイコと豚が並べられている理由から理解しなければならない。カイコは、孵化してから25日間で体重が1万倍になり、物質を生産する生物工場としての能力が高い。豚は、食欲旺盛で酒も好み、臓器の大きさもヒトに近いので、生活習慣病の研究モデルとして最適である。

1-4 「食品の流動性等向上のための均一ナノ粒子加工技術の開発」には、3億円を要求(本年度予算は1億2900万円)しているが、これは、「食べ易く消化の良い高齢者・介護用食品の新たな市場開拓に向けて食品の粒子サイズをナノレベル(現在の約1/100)に加工する技術を開発する」ことを目的とする。

1-5 「低コスト高効率なバイオエタノ-ル生産技術の開発」には、15億円を新規要求しているが、これは、「国産バイオエタノ-ルの生産コストを10年間で半減する」ことを政策目標とし、「砂糖黍・甜菜等資源作物の超低コスト栽培法や、遺伝子組換技術利用によるエタノール変換量の飛躍的増加」を目的とする」。

1-6 「グロ-バル化に対応した食品産業を支える研究開発として、不耕起直播栽培技術や衛星情報等を用いた生産費半減体系の確立」には、新規に8億円を要求しているが、これは、稲・麦・大豆等を対象とする。

1-7 「ゲノム等の活用により食用大豆国産100%自給を目指し、大豆ゲノム解読による耐湿性やタンパク含量等のDNAマ-カ-を早急に開発するため、新規に7億円を要求している。

   特に「知的財産」を掲げて、

2.「知的財産の創造・保護・活用」項目の農林水産省予算要求:

2-1 農林水産省は、「知的財産対策関係」と項目を掲げて、平成19年度18億円の予算を要求している。平成18年度の同項目予算の9倍の額である。内容を見ると、

2-1-1 知的財産の創造の促進について(要求額2億3千万円。本年度予算3千5百万円):

   農林水畜産業・食品産業分野の発展に資する知的財産創造のための研究開発を産学官連携で推進し、その成果を国内外で権利化するための情報システムを整備する。

2-1-2 知的財産の保護の強化について(和牛精液流通管理体制の構築事業費等7億9800万円の内数):

2-1-2-1 育成者権について審査期間の短縮、品種保護Gメンの増員、家畜資源保護について遺伝子解析の開発、水際取締強化についてDNA品種識別技術の開発等を行う。

2-1-2-2 アジア諸国等に対して、知的財産権保護制度の整備を働きかける。

2-1-3 知的財産の活用の推進について(新規要求12億6千万円+他項目の内数額):

   新食品・新素材・新品種を用いた産地形成と地域ブランドの確立を支援する。さらに、世界中に日本ブランド農林水畜産品の良さを宣伝する。

2-1-4 知的財産の人材育成と意識向上(新規要求1500万円):

   知財専門家・農林水畜産業者を対象とする。

2-2  上記諸政策の目標は、「研究・生産・流通・消費の各現場で知的財産の活用に対する意識を改革すること」および「日本ブランドを世界に発信すること」である。

3.        所見:

農水産省知財戦略本部で諸企業から実情を聴取した結果を踏まえて、上記予算要求がなされている。この聴取状況については、SANARI PATENT8月28日の記事を参照されたい。

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