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2006年9月27日 (水)

産学官連携の現状と課題

大学間の格差・問題の複雑化

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.知財創造における産学官連携について:

  内閣知財戦略本部は、知財推進計画07の策定に向けて、各界の意見を徴するため、知財サイクル専門調査会の「知財創造に関する今後の課題」(2006-9-21)において、課題5項目を掲げたが、その全てが「産学官連携」関係で、創造サイクルにおける「学連携」への依存比重が高過ぎると考える。   逆に言えば、「産」「官」「産産」「産官」の各知的創造に関する今後の課題の提示が、不足していると考えられる。しかし今は、内閣知財戦略本部の提示案に対する意見が求められているので、これに従うこととする。

そこで「学」の現状を見ると、平成18年度学校基本調査(2006-5-1現在)による大学数は744(国立87、公立89、私立568)であるが、知財推進計画06の報告によれば、「大学知的財産本部整備事業」実施機関として知的財産本部が設置された大学数は43(母数の5.8%)、TLO設置大学数は46(6,2%)、「大学教員の発明に対する権利を大学に機関帰属とする原則の採用校数は232(31,2%)に過ぎない。

  また、特許庁の出願等統計2006年版によると、2005年における特許登録件数は、大学数43(5,8%)の特許登録数計301(うち50はTLO利用)で、同年の全国特許登録数計122944の0.24%に過ぎない。

  要するに、産学官連携の一員として、「学」を組み入れる体制が、全国的には未熟である現状と、その原因を究明してから、その余の課題に取組むべきであると考える。

2.大学間の格差:

  2005年における大学の特許登録件数301(上記1)の内訳を見ると、慶大35、名大17、東大16、京大15、東北大12、阪大12、岐阜大10、東海大9、近畿大9、三重大8、広島大8、早大8、東工大7、奈良先端大7、金沢工大7、山口大6、金沢大6、立命館6、日大6、北見工大5、北大5、豊田工大5、神戸大4、岡山大4、東京理科大4、岩手大3、長崎大3、新潟大3、明大3、東京電機大3、神奈川大3、東洋大3、富山大2、鳥取大2、静岡大2、信州大2、佐賀大2、琉球大2、熊本大2、藤田保健大2、関西学院2、久留米大2で、豊橋技術大・徳島大・東京海洋大・島根大・長岡技術大・埼玉大・和歌山大・名古屋工大・東京医科歯科大・筑波大・千葉大・九大・福岡題・日本工大・同志社大・東北工大・東京女子医大・広島工大・大阪産業大・東海女子大・松本歯大・愛知工大・名城大・関西大が、各1件にとどまっている。

 慶大の安西塾長(塾頭)が、内閣知財戦略本部関係委員として、慶大のライセンス料年間収入が2億円というような発言をされるため、他大学も類似と誤認し易いが、慶大のライセンス料収入額は、全国大学計の3分の1を超えると推定され(注:SANARI PATENTで推定)、特異な優秀例と考えざるを得ない。

3.新組織の未熟に伴う教授・大学・企業間の軋轢:

  東工大のA教授が、東工大と連携企業を被告として東京地裁に出訴した特許出願関連事件は、平成18年3月23日の判決により、書面主義の不履行という形式的理由でA教授の敗訴に帰したが、産学連携における共同出願。共同ライセンス、大学内発明関連複数部門の脈略の不備、企業の思惑の変動等が重畳して、学内および産学紛争を惹起したものと考える。教授・企業の直接連携の方が、双方の便益にも、技術開発の促進にも、適するという考え方も猶根強い(SANARI PATENT 注:判決内容はSANARI PATENT4月15日記事ご参照)

4.大企業の立場からの産学連携の問題点:

   問題点の指摘者と指摘事項が多いが、ここにはキャノンの田中知的財産法務部長の発言要旨をCIPOweb-site(2006-7-13)により考察する。

4-1        産学連携を企業が改めて考えるのは、研究・開発におけるパラダイムシフト(時代規範の転換)による。すなわち、自前主義からオ-プンイノベ-ションやオ-プンコラボレ-ションへの転換による。

4-2        従来、研究者は、知的財産権よりも論文発表を重視する傾向があったが、この意識改革が必要である。

4-3        しかし、知的財産権を偏重して、シ-ズ型の基礎研究が希薄になる弊害が発生してはならない。

4-4        大学と企業における権利帰属問題や大学特許の不実施補償問題等で、以前よりも連携しづらくなったという声が産学双方にあると思う。

4-5        連携対象としたい研究や特許権を十分に理解し、応用的なハンドリングをなし得る人材を欠く場合には、軋轢が深刻になることもあり得る。

5.所見:

   前項4の田中氏は、「これらの問題は時間をかければ解決がつく」と述べられた。しかし、その「時間」中に、解決の具体策の考究と実践の集積があることを前提とすることは当然で、表題の「今後の課題」も、このような「考究と実践結果」を内容とすることを要望する。

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