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2006年9月 3日 (日)

薄膜トランジスタ特許請求項に記載の有無

特許庁の特許拒絶維持審決を取消:知財高裁判決8-31

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.「薄膜トランジスタ」特許出願:

1-1 原告・半導体エネルギ-研究所は、発明「薄膜トランジスタ」につき特許出願したが、特許庁が拒絶査定(2001-8-23)したので、これを不服として審判請求した。

1-2 その審理係属中、半導体エネルギ-研究所は、請求範囲を補正したが、特許庁はこれを却下し、拒絶理由を通知した(2004-11-11)

1-3 半導体エネルギ-研究所は、さらに2回にわたり補正したが、特許庁はこれらを却下し、「本件審判請求は成立たない」と審決した(2005-9-28)

1-4 半導体エネルギ-研究所は、この審決の取消を知財高裁に求めた。

1-5 知財高裁は「平成17年(行ケ)10767審決取消請求事件」判決(2006-8-31)において半導体エネルギ-研究所の請求を容認し、特許庁の審決を取消した。

   

2.薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)

     薄膜トランジスタは電界効果トランジスタ(MOSFET)の一種で、液晶ディスプレイに広く応用されている。二酸化シリコン絶縁層の上部層(チャネル層)に水素化アモルファスを用いる場合、作動の閾値電圧が経過時間・ゲ-ト電圧・温度により変化し、不安定であること等が問題とされてきた。

3.        半導体エネルギ-研究所の「薄膜トランジスタ」発明の特徴:

  シリコン膜を十分に結晶化させるため、予めニッケルの濃度を所定値よりも高めにして結晶性半導体膜を作製し、作製後に所定値を超えるニッケルを除去して、含有ニッケル濃度を所定範囲内にすることにより、結晶化の低温・短時間化を可能にすると共に、薄膜トランジスタの特性および信頼性の劣化を防止するものである。

4.        本件補正後の請求項(SANARI PATENT要約):

4-1        請求項1.次の特徴を有する薄膜トランジスタ。

4-1-1 基板上に形成されたニッケルを含む結晶性半導体膜と、その上の形成されたゲイト絶縁膜と、その上に形成されたゲイト電極を有する。

4-1-2 結晶性半導体膜に含まれるニッケルの濃度はA下限値~B上限値である。

4-1-3 B上限値は、ニッケルの一部を除去することにより実現される(SANARI PATENT 注:B値を超えるニッケル部分が除去されて、残存ニッケルの濃度はAないしBの範囲にセットされる)

4-2 請求項2.次の特徴を有する薄膜トランジスタ。

4-2-1 4-1-1と同。

4-2-2 4-2-2と同。

4-2-3 結晶は、基板に平行な方向に成長して成る。

5.        特許庁の拒絶審決の理由。

 「本件補正は、当初明細書に記載した事項の範囲外で、新規事項を追加するものである」(SANARI PATENT 注:すなわち、記載事項の範囲・内容の解釈が争点となった)

6.        知財高裁の判断(抜粋):

6-1 「補正後の請求項には、薄膜トランジスタを構成する結晶性半導体膜がニッケルにより結晶化されたものであり、ニッケル濃度はA~Bであること、上限値はニッケル除去工程によりAを超えないことが記載されている。」

6-2 「ニッケル濃度がB未満の場合についてはニッケル除去工程を行うとの記載はなく、ニッケルの濃度範囲が」A~Bであることに照らして、補正後の請求項は、ニッケル除去工程を要しない場合をも含む。」

6-3 「従って、本件補正発明のニッケル濃度下限値がニッケル除去により得られる値である」という特許庁審決の認定は誤りである。」

6-4 「これに対する被告特許庁の、ニッケル除去工程を必須のものと前提しての主張は、採用できない。」

7.        所見;

  米国知財戦略新5ヶ年計画案の「特許付与の欠陥率」の考え方では、「欠陥」に算入されることになる。しかしSANARI PATENTは、このような法的不安定性を、知財制度に内在するリスクとして、リスク評価・リスク対策を行うことが、企業の知財戦略の核心と考える。

 

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