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2006年9月 9日 (土)

住友石炭が勝訴・知財損害賠償判決8-31

特許無効と権利の濫用・特許権不争条項の有無

弁理士 佐成 重範(Web検索SANARI PATENT

1.        親近会社間の知財訴訟の発端:

1-1        平成18年(ワ)第11210号損害賠償請求事件の東京地裁判決(2006-8-31)は、親密な契約関係にある会社間の知財訴訟として、知財法律関係の多様性を示す一例と考える。

1-2        原告イ-・ビ-・ル-ムと被告住友石炭は、かねてより両社間の取引基本契約前文に、「原告被告間における請負又は物品の売買取引に関し、相互の利益を尊重し、かつ信義誠実の原則に従った契約の履行を確保するため、この取引基本契約を締結する」旨を定めている(1994-1-14契約)。

1-3        イ-・ビ-・ル-ムは、後記2-3-1の補正を経て、「放電焼結装置」特許権(特許番号第2640694号・1997-5-2登録)を取得したので、1-2の契約に基づき、住友石炭に対して本件特許権の実施権設定を申し込んだ。

1-4        一方、住友石炭は、本件特許に対し異議申立し(1998-2-13)、特許庁は容易想到性等の理由をもって本件特許の取消を決定し(2001-7-4)、この決定は確定した(2003-10-9)

2.        住友石炭に対し損害金15億円の一部を請求:

2-1        イ-・ビ-・ル-ムの本訴請求は、「本件特許について取消理由がないにも拘わらず、特許異議を申立てた住友石炭の行為は、権利の濫用であり、不法行為が成立する」という理由(2-3)に基づく。

2-2        そしてイ-・ビ-・ル-ムは、「住友石炭が、本件特許権の範囲に含まれる放電プラズマ焼結機の生産販売により少なくとも15億円の利益を挙げることにより、イ-・ビ-・ル-ムに同額の損害を及ぼした」として、その一部等の支払いを求めた。

2-3        上記2-1の、「本件特許について取消理由がない」とするイ-・ビ-・ル-ムの主張の理由は、次の通りである。

2-3-1 「本件取消決定の理由は、1995-3-14付の補正は、明細書または図面の要旨を変更するものであり、本件特許の出願日は1005-3-14とみなされるから、この日前の公知刊行物に記載された発明により想到容易である、というものである」。

2-3-2 「しかし、補正前の明細書に明らかに示唆するものと解することができる記載の補正は、要旨変更に該当しない(1964-6-2東京高裁判決)。 従って、1995-3-14付補正は要旨変更に該当せず、本件特許取消の理由は存在しないから、本件異議申立は、権利の濫用として許されない」。

3.        東京地裁の判断(要旨):

3-1        平成6年改正特許法は、申立期間内であれば、利害関係の有無を問わず、何人であっても特許異議を申立できるとした。かつ、職権で証拠調べできること、特許権者・異議申立人が申立てない理由についても審理できると規定したから、当事者提出の主張・証拠に拘束されず特許庁の判断がなされた。

3-2        住友石炭とイ-・ビ-・ル-ムが1-2の基本契約の条項を定めていても、この契約において、特許権の不争条項を特に設けたといった事情もないから、異議申立権を濫用したとはいえない。

3-3        よって本件異議申立が権利の濫用として、イ-・ビ-・ル-ムに対する不法行為であるとのイ-・ビ-・ル-ムの主張は理由がないから、他の点について判断するまでもなく、その請求を棄却する。

4.        所見:

    わが国特許法における異議申立制度への評価が変遷し、構造的改革を経てきたこと、さらには、米国特許法改正については異議申立制度の新設が立案されるなど国際調和上の制度課題でもあることを考えると、制度変遷の「はざま」に置かれた当事者の立場にも、適切な配慮が望まれるが、心情と法理は混同できないことも、認めなければならない。

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