パラマウントの申立却下東京地裁7-11
一昨日のパラマウント事件東京地裁判決は、文化庁見解を東京地裁が否定したこと、知財権保護と公正な利用のバランスに言及したことなど、注目されます。
記
文化庁見解を否定「ローマの休日」判決(7-11)
パラマウントの申立を東京地裁が却下
弁理士 佐成重範 patent@sanari.name
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1. 平成18年(ヨ)第22044号 著作権仮処分命令申立事件:
1-1 債権者: 米国カルフォルニア州パラマウント ピクチャ-ズ コ-ポ
1-2 債務者: ファ-スト トレ-ディング(保護期間満了映画のDVD製造販売業者)
1-3 事案の概要(判決では年は昭和・平成で表示)
1-3-1 パラマウントは1953年に映画「ロ-マの休日」「第17捕虜収容所」を制作・公表・著作権登録した(米国にて)。
1-3-2 米国は「著作権に関する日米暫定協定」を締結し1952-4-28に発効した。
1-3-3 わが国について万国著作権条約が1956-4-28に発効し、同日、著作権万国特例法が施行された。
1-3-4 本件映画は「独創性ある著作物」として、旧著作権法で公表から38年、その改正著作権法で公表後50年とされ、終期は、公表日が属する年の翌年1954年から起算するとされた。
1-3-5 改正著作権法が2004-1-1に施行され、「映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後70年」とされた。経過措置規定により、
1-3-5-1 施行の際、改正前の著作権が存する映画には70年を適用
1-3-5-2 消滅している映画については不適用
定められた。
1-3-6 ファースト トレーディングは、2005-10ころから、本件映画のDVDを製造販売している(保護期間満了のパブリックドメイン価格)。
1-3-7 パラマウントは、ファースト トレーディングの「1-3-1著作物のDVD製造・頒布」を禁止する仮処分命令を申立て、東京地裁はこれを却下した(2006-7-11)。
2. 争点:
2-1 パラマウントは、1-3-5-1により70年存続、ファースト トレーディングは、1-3-5-2により本件著作権は既消滅と主張した。
2-2 パラマウントの主張(要旨):「改正法付則2条により、本件映画の著作権は、平成15年12月31日午後12時の経過により50年の存続期間が満了すべきところ、改正法の施行は1-3-5により平成16年1月1日午前零時である。
両者は同時点であり、施行時点に規定により、保護期間は70年に延長された(平成35年12月31日まで)」。文化庁の見解(著作権課刊行文献等)も、パラマウントの主張を支持するものである。
2-3 ファースト トレーディングの主張(要旨):
「本件映画の著作権は平成15年12日31日に、50年満了で消滅し、翌日の改正法施行日には消滅している。前日に消滅して翌日に存在することは法律の自然な解釈に反する」。
3. 東京地裁の判断(要旨):
3-1 本件改正法附則2条の適用関係に関するパラマウントの解釈、および、文化庁の見解は、文理解釈上、採用することができない。
3-2 著作権法を所管する文化庁が、パラマウントの解釈と同一の見解を表明してきたこと、および、これに対するパラマウントの期待は十分に理解することができる。著作権法に限らず、あらゆる法分野において、一国の法制度として、事前に権利の範囲や法的に保護される利益が明確であって、これらの侵害に対して確実に事後の救済がされるような法的安定性と具体的妥当性が確保されていることが望ましい。
しかし、文化庁の見解が法的に誤ったものである以上、これを前提とする運用を将来においても維持することが、法的安定性に資することにはならない」。
4. 所見:
東京地裁は上記判示に加えて、次のように述べているが、「権利の保護と公正な利用のバランス」にも意を用いようとする内閣知財戦略本部の意向、および、これを支持するコンテンツユ-ザ-等のパブコメ等にも適合するものと考える。
「パラマウントは、知財保護を重視する時代の要請を指摘する。しかしながら、著作権法は、著作者の権利を定め、その文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作権者の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とした法律である。70年への改正規定の適用の有無は、経済的利害に加えて、侵害差止・損害賠償・刑事罰等の該当性の有無を考えれば、文理上明確でなければならず、利用者にも理解できる立法をすべきであって、著作権者の保護のみを強調することは妥当でない」(要旨)。


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