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2006年5月31日 (水)

本田技研・知財高裁判決5-25

特許拒絶査定・審決取消請求事件

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT又は佐成重範

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 1.原告・本田技研(佐藤辰彦弁理士ほか)、被告・特許庁長官の「平成17年(行ケ)10432 審決取消請求事件の知財高裁判決(2006-05-25)が示されましたが、本田技研の、発明の名称を「自動車用多重通信システムの配線構造」とする特許出願に対する拒絶査定(2003-06-09)を不服として本田技研が審判を請求(2003-07^11)、特許庁は「この請求は成り立たない」と審決(2005-03-01)。そこで本田技研が、この審決の取消を請求した事案です。

2.争点は、刊行物記載発明の構成要件に対する本願発明の該当性、すなわち、両発明の相違点の認定の正誤等です。

3.知財高裁の判断の要素(要旨):

3-1 「引用発明が、シ-ルドの電位制御による伝送モ-ド切替制御のため、『シ-ルドの一端においてグラウンドを含む接続先に、選択的に接続するための切替制御手段』を必須の構成として有するということはできない。従って、本田技研が、「これを必須の構成として有する」と認識して行った主張は採用できない。」

3-2 「本田技研は、自動車用多重通信システムの通信用信号として1MHz以下の低周波信号(アナログ信号)と同等視されるデジタル信号、換言すれば通信速度が1Mbps以下のデジタル信号を採用することが、本件出願当時の技術常識であったと主張する。しかしながら、本田技研が示した刊行物等の記載は、経済的理由により、現に商業的に用いられた自動車用多重通信システムにおいて、通信用信号の通信速度が1Mbpsを超える信号が採用されていなかったことを示すに過ぎず、技術的に不可能又は著しく困難であったことを示すものではない。」

3-3 「引用例の、『信号線の遮蔽を有効に行うために、1MHz以上の高周波については、信号線の周囲を覆った遮蔽を両端で接地することが一般的である』との教示に従い、シ-ルド線の端部両方を各コントロ-ルユニットの外部で自動車の車体導体部に直接的に接地することは、当業者想到容易である。」

3-4 「発明の作用効果について本田技研は、『外来ノイズがシ-ルド線に作用しても、コネクタの部分やその近傍でシ-ルド線を介して通信用信号線への混入防止が可能である、という本田技研発明の作用効果は、当業者想到容易ではない』と主張するが、前記各項から、少なくとも1MHz以上の高周波ないしこれと同等視される信号が用いられる範囲については、当業者想到容易である。」

4.所見:

 刊行物・公知公用発明の技術範囲の認識、また、当業者想到容易について「論理づけ」「動機づけ」の有無等の判断が、司法において機能する、現在の在り方を見る一例と考えます。。

 近く開始される日米審査ハイウェイにおいて、わが国の「進歩性」と米国の「有用性」の対比、また米国特許審査基準の「商業的成功等の第2次考慮事項」を強化導入するべきか、などが検討され、特許性判断基準も固定的ではないと考えます。(以上) 

 

2006年5月30日 (火)

オルガノ勝訴の東京地裁判決(5-26)

被告オルガノが原告の特許無効等を主張

当業者想到容易・非数値上限規定・クレ-ム解釈における公知技術除外

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT又は佐成重範

URL:http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/

 5月26日に、平成17年(ワ)2274号 特許権侵害差止請求事件の東京地裁判決が示され、原告オ-テ-ベ-ソシエテアノニムの請求がいずれも棄却されて、被告オルガノの勝訴が示されましたが、オルガノ方のみでも弁護士・弁理士11名(伊藤高英弁理士ほか)が名を連ね、高度な内容が見られます。

1.        事案:

オ-テ-ベ-ソシエテアノニムは、特許2634230号・発明の名称「細砂を用いて沈降により液体を処理するための方法及び装置」(特許登録1997-04-25)の特許権を有し、オルガノに対し、オルガノ装置の製造・販売が上記特許権の接侵害に当たるとして、その差止めを求めたのに対し、オルガノは構成要件の充足等を争い、原告特許権について進歩性欠如等の無効理由を主張して争った。

2.        争点に関する裁判所の判断:

2-1        引用発明1における筒1の上方の領域は、筒1の下方の領域と清澄化室との間に位置し、乱流を生じ、粒状物質を懸濁状態に保っているから、本件発明の「中間コロイド凝集スペ-ス」に該当する。

2-2        引用例2及び弁論の全趣旨によれば、本件特許の優先日当時、沈殿を利用した浄水施設の分野において、沈殿槽に分離板を設けることは、周知の技術であった。

2-3        弁論の全趣旨によれば、引用は1の沈降を行う清澄化室において分離板を設けて、相違点1の構成にすることは、当業者想到容易であった。

2-4        弁論の全趣旨によれば、本件発明1のように粒状物質を乱流が維持される混合スペ-ス内の液中に注入するか、引用発明1のように粒状物質を筒1に入る前の液中に注入するかは、単なる設計事項である。

2-5        本件発明1において乱流速度の上限を特定していない。

2-6        特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるものであり、安易に「技術的範囲外」と主張することは認められない。

2-7        速度勾配の上限数値を規定できない場合にも、「その破壊をもたらさない程度の速度勾配」等の記載で、上限を記載すべきである。

2-8        公知技術の存在を理由として、公知技術を除外するようなクレ-ム解釈が事実上されることがないではない。しかし、そのほとんどは、侵害訴訟において特許無効の判断ができなっかったこと等を理由として、特許権者を敗訴させるためのテクニックに過ぎなかったものである。しかも、特許権者が勝訴する可能性がある事案でクレ-ム解釈の下にそのような限定解釈を行うことは、訂正の時期的制限や内容的制限のために訂正による無効の回避ができず、全体として無効となるべき特許についてまで権利行使を肯定する結果を招くことになる。従って、本件発明1の有効性を維持することは、クレ-ム解釈でなく、訂正手続により実現されるべきである。

2-9        本件発明2の進歩性の欠如(略)

3.        所見:

3-1        上記2-8ほか、今後引用されるべき判示が多いと考えます。

3-2        「差止請求」について、ITと医薬等、業種間影響差の論評が内外で盛んですが、先ずもって無効判断の的確が重要と考えます。(以上)

2006年5月29日 (月)

知財高裁商標判決・小林製薬勝訴

 商標法の「譲渡」と「使用」(内閣知財戦略本部あて別途送信済み)

弁理士 佐成重範 patent@sanari.nameWeb検索SANARI PATENT構造又は佐成重範

URL:http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/

知的財産権法の体系で、「使用」「譲渡」の語は法域により多義ですが、商標法の規定では、標章について、「使用」とは、同法2-3-1~8所定の行為でありますが、同法2-3-2の「使用」の定義における「譲渡」の解釈が、特許庁審決と知財高裁判決と、相違した事件として、知財高裁 判決言渡2006-05-17 「平成17年(行ケ)10817審決取消請求事件」が、先日、示されました。

 産構審知財政策部会商標分科会で検討されました多くの課題が、逐次結論を得ておられますが、「商標の定義規定」を始め、基本的用語についてのご明定を、この機会に改めて要望申しあげます。

1.        経緯:

1-1 小林製薬社が特許庁に対し、マニュファクトリー社の商標「WHITE FLOWER(1994-03-31設定登録)について、「商標の不使用による登録取録」の審判を「薬剤」について請求したが、特許庁は、「小林製薬の請求は成り立たない」と審決した(2005-10-18)

1-2 小林製薬は、知財高裁に対し、上記特許庁審決の取消を請求し、知財高裁は、小林製薬の請求を容認した(2006-05-17)

2・争点:

2-1特許庁審決の理由:

2-1-1 「マニュファクトリーはWHITE FLOWER印の薬用油をアジア・欧米・豪州に輸出し、日本の消費者には、個人輸入経由で一般消費者に販売してきたので、商標法2-3-2「商品に標章を付したものを譲渡」する行為を日本国内で行ってきたものである」など。

2-1-2 薬用油は薬剤に属する。

2-2 小林製薬の主張理由:

 「日本の消費者が日本国外に所在する者から個人輸入することがあっても、商標法2-3-2の『標章を付したものを譲渡する行為』をしたということはできない。従って、審決は商標法の解釈を誤っている」など。

2-3        知財高裁の判断:

2-3-1        商標の不使用による登録取消の審判請求があった場合、被請求人は、日本国内における登録商標の使用を証明しなければならないが、日本国外所在者が日本国外所在商品の譲渡契約を日本国内所在者と締結し、その商品を日本国内に発送しても、それは本国内所在者の「輸入」には該当しても、『日本国外所在者による日本国内における譲渡』には該当しない。

2-3-2        マニュファクトリーは、「小林製薬には、WHITE FLOWERに蓄積された信用をフリ-ライドする意図がある」と主張しているが、この商標が日本国内で使用されていない以上、登録取消を免れない。

2-3-3        マニュファクトリーは、日本ではWHITE FLOWER薬品の本格的販売ができなかった正当な理由として「厚生労働省の許可未済」を挙げているが、米田薬品名の医薬品輸入申請書が提出’(2003-09-29)されているものの、米田薬品とマニュファクトリーとの関係を認めるに足りる証拠はなく、マニュファクトリーは、長期間、上記申請書を提出しなかったことからも、「不使用」の正当な理由にはならない。」(以上)

2006年5月28日 (日)

コンテンツ制度策未定下のアジアコンテンツ主導

コンテンツ政策に超多数のパブコメ

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT又は佐成重範 

URL:http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/

 わが国がアジア14国に呼びかけて、アジアコンテンツ育成の行動計画を閣僚級会合(2006-05-26~27)で採択すると報じられていますが、行動計画の項目のうちには、「知財保護の関連法整備」が掲げられ、先ずわが国コンテンツ法制をめぐる意見の多岐を整理する必要があります。

1.        特にCD再販に賛否パブコメ多数:

  内閣知財戦略本部・コンテンツ専門調査会(2006-05-18)の配布資料「コンテンツ分野意見公募結果」によれば、知財全分野のパブコメ(Public Comment)

1660件のうち、コンテンツ関係が1452件で88%を超え、うちCD等の再販関係が1309件です。知財全体の1660件のうち、個人意見が1603(97%)とのことですから、コンテンツについての一般国民の関心の強さが痛感されます。 以下、パブコメ例(要旨)に、SANARI PATENT所見を併記します。

2.        全般

2-1-1 パブコメ:「2006年度にコンテンツビジネスの基盤整備を完成させ、2007年度からはコンテンツビジネスの飛躍的拡大に向けた攻めの改革に取組むべきである。」

2-1-2 所見: あまりにも粗雑なまとめです。基盤とは何か。著作権処理の法制案の枠組みも未だ決っていません。

2-2-1 パブコメ:「コンテンツ創造サイクルの活性化のためには、コンテンツ保護をただ一方的に強化すればよいということではなく、その活用を図るためのバランスを考えるという、バランス感覚が必要である。」

2-2-2 所見: バランスをサイクルの全局面で、という主張と理解されます。保護は著作権者の保護、活用は著作権ビジネス業者の営業活動、とすると、消費者の利益は、例えば「利用」という言葉で確保しなければならないと考えます。コンテンツの創造者、著作権者、著作権業者、消費者の利益主張が相克している現状を、適正なバランス感覚で調整することが求められています。

3.再販価格維持制度:

3-1-1 パブコメ(現制度に反対の例):「商業CDを再販制度対象としているのは、わが国のみであり、このような過保護下で、わが国発の良いコンテンツを生み出す可能性は低い。再販制度は文化の発展を阻害する。」、「わが国のCD価格は理不尽に高価すぎる。業界のみを保護する再販価格維持制度は、もってのほか。」

3-1-2 パブコメ(現制度に賛成の例):「再販制度が廃止されると、多種多様なCDを提供するレコ-ド専門店は、地域、規模の大小を問わず存立困難となり、消費者は音楽鑑賞の手段を得られなくなる。」、「国民の全てが何処でも同一価格で購入できる制度で、音楽文化の普及に大きな役割を果たしている。」

3-1-3 パブコメ(中立の例):「わが国にはレンタルCDという大変安価な手段での音楽供給形態があるので、再販撤廃ならばレンタルCDも撤廃しなければフェアでない。世界で例を見ないレンタルCD存在の大義名分は、『日本では音楽CDが再販制度で守られているので、消費者に安価での音楽供給が可能でなく、レンタルCDがその代償として機能を果たすということ』であるから。」

3-2 所見:

 音楽のみでなく、文化・教養・娯楽のコンテンツ全般について、創造・保護・活用・利用(消費)の態様が多岐多様になってゆくので、再販やレンタルに視野を限定せず、電子流通を含めた検討が必要と考えます。この意味で、知財推進計画05の次の計画が現段階では適切ですが、{技術開発}を「技術開発および制度改革」に拡充すると共に、「諸官庁を「総務省・経済産業省」に限定したのは不可解ですから、「文化庁・公取委」を加えるべきであると考えます。

知財推進計画05:「家庭等で円滑にコンテンツを利用するための流通の仕組みの構築に向け、コンテンツに係る権利の適切な保護の実現と、家庭やその周辺でのコンテンツ利用における高い自由度・利便性の確保を両立するため、消費者等の視点を重視しつつ、コンテンツ利用技術の開発・実証を2005年度から行う。(総務省・経済産業省)」(以上)

 

2006年5月27日 (土)

永谷園「ササッと」商標・知財高裁判決

商標権の基本問題

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

URL:http://patentsanari.cocolog-nifty.com/blog/

1.〔茶、コ-ヒ-及びココア〕の「ササッと」商標:

 知財高裁は、4月26日に、平成17年(行ケ)第10851号審決取消請求事件に対する判決を言渡しましたが、極めて馴染み深い永谷園の商標に関する判決で、商標権の基本的問題を改めて考えさせられます。

2.経緯:

 永谷園は、「ササッと」商標(2003-10-31設定登録)の商標権者ですが、日本製茶は、〔茶、コ-ヒ-及びココア〕について「ササッと」商標登録の無効審判を請求したところ、特許庁は、この審判請求は成立たないと審決しました(2005-11-14).。すなわち、永谷園の「ササッと」商標登録が〔茶、コ-ヒ-及びココア〕について維持されたのですが、日本製茶はこの審決の取消を請求し、知財高裁は、この請求を容認する判決を示しました。

3.争点:

 審決の理由は、「「ササッと」商標の〔茶、コ-ヒ-及びココア〕についての登録は、商標登録の消極要件である「指定商品について、その品質、用途、効能等を普通に用いられる方法で表示した標章のみからなるもの」には該当しない、ということです。審決は、「ササッと」商標を〔茶、コ-ヒ-及びココア」について使用しても、自他商品の識別機能を果たしえないものということはできず、何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標に該当するものとはいえない、と示しています。

 日本製茶は、「ササッと」という言葉は、素早くという観念を有し、このような商標をティ-パックやインスタントコ-ヒ-に使用したときは、これに接した取引者・需要者は、素早く〔茶、コ-ヒ-又はココア〕を入れることができる商品であると理解するものであるから、「ササッと」は、その商品の品質、効能を表示するものであって、自他商品を識別するものであるとは認識することができないから、審決の判断は誤りであるとして、知財高裁に審決取消を請求した次第です。

 知財高裁も、「本件商標『ササッと』につき、需要者が永谷園の業務に係る商品であると認識することができることを認めるに足りる証拠はなく、従って、審決が「本件商標は、商品〔茶、コ-ヒ-及びココア〕について、その品質、用途、効能等を普通に用いられる方法で表示した標章のみからなるものには該当しない、と判断したことは誤りである」と判示しました。

3. 所見:

 商標権の創造・保護・活用は、「難しいもの」という認識が、国民に広く認識されるべきであると考えます。すなわち、

3-1 産構審知財政策部会商標制度小委員会報告書(2006-01-31)の作成経過と成案に見るように、現行商標法は幾つかの基本的問題点を内蔵しています。例えば、「審査事項と手続の在り方について」の項には、「問題の所在」として次のように述べています。

「現行の商標登録出願の審査においては、いわゆる絶対的拒絶理由(公益的拒絶理由)と相対的拒絶理由(私益的拒絶理由)の双方について職権審査を行い、商標が公告・登録された後に何人も異議申立てを行うことが可能な制度となっている。このため、出願商標と他人の登録商標との類似(相対的拒絶理由)についても、一般的・抽象的な混同を生ずるおそれの有無という観点から職権審査が行われている。一方、商標の識別力は登録後の使用の状況により変化し得るものであり、使用されない段階において商標間に存在する出所の混同のおそれの有無を全て判断することは困難である。」

3-2        各企業が、国民に、関係商標権を周知させ、また、他の知財権との総合に

より、商品と一体化させて、識別機能を確立するべきです。

(丁度、KDDIの第22期報告書が届いたところですが、商標について次の

記述があり、KDDIとの密接関係性が明示されています。

3-2-1 「ワンセグ」は社団法人地上デジタル放送推進協議会の商標です。

3-2-2 「FeliCa」はソニ-株式会社が開発した非接触式ICカ-ドの技術方式です。「FeliCa」はソニ-株式会社の登録商標です。

3-2-3 「着うた」「着うたフル」はソニ-・ミュ-ジックエンタテインメントの登録商標です。

3-2-4 「うたとも」はソニ-株式会社の商標です。)(以上)

2006年5月26日 (金)

日米特許審査ハイウェイ

日米共同プレス発表

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

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1・世界知財史上、画期的発表:

 日本国特許庁と米国特許商標庁が、2006-05-22~24開催の会合で、特許審査ハイウェイの試行を今年7月に開始する合意に達したことは、世界特許への第一歩を踏み出すものとして、歴史に特記されるべき画期的事件と考えます。

 内閣知財戦略本部の知財推進計画05(2006-06-10)は、「世界特許システムの構築に向けた取組を強化する」という柱で、先ず「日米欧三極特許庁間で特許の相互承認の実現を図る」とし、その第1ステップとして、「日本の審査が実際上、米欧より遅れており、審査順番待ち期間が年々延びているという深刻な現実にかんがみ、出願人の要請を踏まえ、日本と米・欧共通の特許出願のうち、米・欧特許庁で審査された特許出願について、日本特許庁が審査に際し、サ-チを重複的に行わずに、特許付与の諾否を決めることができるよう、「次世代型ドシェ・アクセス・システム」(SANARI PATENT注:審査書類の包括的共用)を構築し、2005年度から運用を開始する」また、

「これと並行して、日本が技術的に世界をリ-ドする先端技術分野等における日本と米・欧共通の特許出願について、出願人の申立てより、日本特許庁が速やかにサ-チし、その結果を同システムにより米・欧特許庁に提供し審査に活用してもらう」としていました。

2.知財推進計画05の「第2ステップ」の実現:

 上記に続く第2ステップとして、「次に、日米欧特許庁相互に、審査に際しサ-チを重複的に行わずに、第2庁が速やかに特許付与の許諾を決めることができるよう、三極間のサ-チ・審査結果の相互利用を進める『特許審査ハイウェイ制度』を構築する」としていましたが、その実施が緒についたのです。

3.経済産業省・特許庁の解説(2006-05-24)

合意発表の冒頭に、「特許審査ハイウェイは、出願人の海外での早期権利化を容易にすると共に、各国特許庁にとっては、審査の負担を軽減し、質の向上を図ることを目的とすれものです」と述べていますが、今年7月3日から、日米の企業は、特許審査ハイウェイの試行プログラムへの参加を申し出ることができるので、熱意のほどが実証されることになります。

SANARI PATENTとしては、当面、わが国特許庁と米国特許商標庁の審査基準の相違点の検討に注力いたします。(以上)

2006年5月25日 (木)

東芝・西田社長、NAND等ご説明

西田厚聡(あつとし)社長の戦略ご説明

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT又は佐成重範

URL http://sanaripat.cocolog-nifty.com/patent/

東芝・西田社長は社長就任(2005-6-24)後、一年未満ですが、魅力と希望に満ちた、しかも、慎重な配慮をもって、対投資家説明を昨日、初演されました(2006-05-24: 帝国ホテル)。東芝・百数十年の歴史(明治8年創業)と共に同社社長の経歴も変遷し、西田社長はパソコン事業部ご出身とのことです。

事業セグメントも、電子デバイス、デジタルプロダクツ、社会インフラ(原子力・医療等)、家電の4セグメントとなり、事業規模(売上高)2005年度実績6兆4944億円から2008度計画8兆2400億円に拡大する中において、電子デバイスとデジタルプロダクツの計の比重が、60.4%から65.4%に増加しています(数値解析はSANARI PATENT)。

電子デバイスについては、NAND型フラッシュメモリ-(下注)を中心に収益も拡大する計画ですが、東芝は、先行微細化技術・多値技術において圧倒的にリ-ドし、タイムリ-かつ継続的な投資によって生産能力を増強し、かつ、ビジネスリレ-ションシップ(開発と製造における協業とカスタマイズソリュ-ション)を構築・強化し、NAND拡大に向けたインフラを整備する(カ-ド標準化、NANDコントロ-ラICやソフトウェアの拡充)ことを計画しています。

上記「東芝の圧倒的リ-ド」について、特許権・ノウハウ・企業連携・標準化等の総合戦略に関する小生の質問に対しては、若干控えめな応答をされました(市場占有率等について)。(SANARI PATENT注:東芝の知財報告書は、特許番号を列記し詳細。戦略として、電子デバイス事業とデジタルプロダクツ事業を成長事業領域に位置づけ、市場の伸長を上回る成長により、それぞれの製品分野が世界トップ3以内に入ることを目標に掲げています。)

周知のSEDSurface-conduction Electron-emitter Display)については、2008年に姫路工場でパネル本格生産への過程を説明されました。

(SANARI PATENT) NAND(Not AND: 否定論理積 )は、論理回路の基本的演算の一つである。全ての入力がTRUE(1)の場合)にのみFAULSE(0)と出力し、それ以外の場合は、TRUE(1)となる演算。

Flash Memoryは、半導体メモリ-の一種で、writedeleteを自由にでき、電源を断っても内容が消えない。Random Access Memory(揮発性)とRead Only Memory(不揮発性) の要素のうち、Random Accessと不揮発性の要素を兼備したメモリ-である。

SED(Surface-Conduction Electron-Emitter Displayは、 FDEField Emission Display)の一種で、マトリクス状に並べた電子源から放出された電子を加速し、蛍光体に衝突させて発光させる自発光型フラットパネルディスプレイである。電子源を平面構造にすることで、画素ごとに輝度のバラツキを抑えている。電子放出源の方式はキャノンと開発を進めている表面電導型SCEと呼ばれるもの。インクジェット技術を利用して素子膜を形成するなどしており、均一な電子放出源を再現性良く量産できる。

上記のほか東芝は、2006年に入ってから、特許情報等のデ-タベ-スとして早期実現を目指す「ネイティブXLMデ-タベ-ス分散化技術」、薄肉断熱技術による「モバイル燃料電池用小型改質器」、暗号セキュリティ技術の基礎となる高速乱数生成器小型化のための「Siナノ微粒子MOSFETによる高速乱数生成」を発表しています。 (以上)

東芝・西田社長、NAND

2006年5月24日 (水)

片山さつき経済産業政務官の知財政策答弁

片山さつき経済産業大臣政務官の知財答弁についての意見

(内閣知財戦略本部あて別途送信)

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT又は佐成重範

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片山さつき経済産業大臣政務官は、今次164回国会の衆議院経済産業省委員会において、地元浜松地区等が多様性に富む産業地域であることを等を踏まえて、現場の意識・感覚を重視しつつ、知財を含む全国中小企業政策について、諸般の答弁をしておられますので、以下に記録し(要旨)、個人意見を併記申しあげます。

1.        中小企業支援の現場感覚(2006-05-12)

1-1        平委員質問:「中小企業行政の担当者は、中小企業対策にとって最も必要な現場意識、現場への感性に弱いのではないか。」

1-2        片山大臣政務官:「私が大蔵省勤務の立場から見てきたところでは、中小企業庁の要員は、できるだけ現場を把握すべく努力している。他方、私は、個人としては経営者の妻を16年やっているので、行政と現場にギャップがあることも熟知してきた。更に、経営破綻の場合の実態を多く見て、現場感覚の重要性を益々痛感している。」

2.        遠隔市町村所在の中小企業集団間の技術交流(2006-05-10):

知財駆け込み寺の具体的内容(2006-05-10)

2-1 大畠委員質問;「地方には、受注量の減少に困却している中小企業が多い。その中には、良い技術を持っていて、何とかもう一回、日の目が当たるようにできないか、支援に値するものがある。私は、特許というものを活用し、バブル崩壊後の金融中心の経済から、ものづくり中心の経済へ転換すべきであると考える。

   そのためには、地域の中小企業が持つ長年積み上げた技術・技能というものを特許化する。その中核として商工会議所や商工会に知財駆け込み寺を設けることとなっているが、私は、特許庁と中小企業庁が連携して、全国の技術・技能のネットワ-クをつくり、互いにそれぞれの技術・技能を生かし合うことが必要と考える。」

  「

日立市

の中小企業者の集団

が大田区

の技術フェアを訪れ、互いに技術を交流する契機となった。」

「地理の離れた市町村間では、相互に、相手の特許・技術・技能を知らない場合が多い。これを、特許庁と中小企業庁が協力して結びつけるべきではないか。」

2-2        片山大臣政務官答弁:「平成18年度から、、中小企業にとってより身近な窓口である全国の商工会・商工会議所に、知財駆け込み寺を整備すべく、鋭意実行中である。具体的には、知財に関する相談内容を聴いて、責任をもって、適切な公的機関、特許の流通アドバイザ-、弁理士会、発明協会、特許室、知的所有権センタ-に取り次いだり、専門家を紹介したりする体制を整備してゆく。」

「このような仕組みが十分に機能するよう、全国商工会連合会、日本商工会議所、ベンチャ-総合支援センタ-、日本弁理士会などと、地方諸機構との、相互の連携を強化してゆく。」

「このような取組で、総合的に知財の保護・活用の支援を、中小企業に対しても実務的に奏功するよう推進したい。」

3.        所見:

3-1        商工会等の全国組織の、地域間組合せ(collaboration)機能を強調された答弁は新鮮で、知財の遠隔地間中小企業相互ライセンスなども示唆されていると考えます。

3-2        上記委員会では、中小企業協同組合法の改正を審議し、保険業務について員外利用規制の妥当性などが討議されましたが、地域ブランド制度実施に当たっての員外利用規制の運用、また、地域ブランド業務に伴うリスク保険業務利用の妥当性等(品質保証事故による損害賠償被請求事故の保険など)について、別途明らかにされることが必要と考えます。(以上)

2006年5月23日 (火)

特許無効訴訟

知財高裁訴訟代理に関する要望

(内閣知財戦略本部あて別途送信済)

弁理士 佐成重範 patent@sanari.nameWeb検索SANARI PATENT又は佐成重範

 URL http://sanaripat.cocolog-nifty.com/patent/

先日(5月17日)、木下實三弁理士ほか3弁理士を被告訴訟代理人とする知財高裁審決取消請求事件の被告勝訴判決(内容下記)が示されました機会に、知財高裁における弁理士訴訟代理について、下記のように要望申しあげます。

1.        知財高裁5月17日判決:審決取消請求事件(原告・立山アルミ、被告・YKK-AP)の事例:

 特許法平成15年改正によって導入され、平成16年に施行された「新無効審判制度」は、特許権の有効性を争う紛争処理制度としての、付与後異議申立制度と無効審判制度を一本化し、紛争解決の短縮化と当事者負担の軽減に寄与する目的のものと理解しておりますが、先日の標記判決(平成17年(行ケ)第10423号 審決取消請求事件:原告の請求棄却)も、この改正目的に沿ったものと考えます。

 しかしながら、知財高裁における弁理士の訴訟代理については、制度の矛盾があるものとして、先般のパブコメ結果(内閣知財戦略本部2006-04-25 公表)

の団体意見中にも指摘されたところであり、知財推進計画06において、この疑問点の明解を要望申しあげます。

2.弁理士訴訟代理制度の整備:

すなわち、内閣知財戦略本部の公表(2006-04-25)によれば、日本弁理士政治連盟(弁政連)は、内閣知財戦略本部に対し、知財推進計画06への要望の一環として、「制度上の矛盾は早期解決を」と題して、次のように要望しています。

「現行弁理士制度(付記弁理士制度・補佐人制度)には、制度上の矛盾があります。侵害訴訟代理と審決取消訴訟代理(知財高裁)の矛盾です。キルビ-事件最高裁判決以降、無効理由の有無が侵害訴訟の場で争われるようになりました(地裁から高裁まで)。特許等侵害事件では弁理士は補佐人又は付記弁理士として弁護士との共同代理人です。知財高裁での控訴も同様です。一方、特許の対世的無効は、特許庁の審判で争われ、特許庁のした無効事件の審決不服訴訟は、知財高裁が専属管轄を有します。

 無効審決の取消訴訟と無効を争点とする侵害事件の控訴審が、同時に知財高裁に係属することがあります。前者では、弁理士が単独で、一方後者では、補佐人又は共同代理人として、代理を行うことになります。同じ裁判所での同一の争点に係る訴訟において、でのことです。

 これは、明らかに弁理士の付記代理権が不完全ないびつな制度である故に生じた自己矛盾であり、早急に解決されなければなりません。」

3.        標記判決の要旨:

  原告・立山アルミニウム㈱(訴訟代理人・湯田浩一弁理士)が特許権者である「下枠上面がフラットの屋外用サッシ構造」特許の無効審決を、被告・YKK-AP(訴訟代理人・木下實三弁理士のほか2弁理士)が請求し、特許庁が「無効とする」審決をしたため、原告がその取消を求めた事案です。

 無効審決の理由は、本件発明は、公知発明および周知技術に基づき、いずれも当業者が容易に発明できたものであるということです(特許法29条2項違反の特許)。

 知財高裁の判断は、

3-1-1 本件発明1の「排水溝」は、甲1発明の「切り込み溝9」に相当する。

3-1-2 「ふところ」の意味から判断して、甲1発明は本件発明1の「ふところ」構成を備えている。

3-3-3 甲1発明の本件発明の「隙間」は、本件発明1の「所定の隙間」に相当する。

3-2-1 本件発明1と甲1発明とは、「上下枠及び左右の縦枠からなるサッシ」を

有する点で一致する。

3-2-2        また、「シ-ル手段に雨水が溜まることがないように雨水を受け入れるふところとなる集水凹部を備えている点」で一致する。

3-3               甲1発明の「切り込み溝の底部」は、本件発明1の「集水凹部」に相当する。

3-4               本件発明1の「ふところとなる集水凹部」も、引用発明の「切り込み溝の底部」も、雨水を溢れ出させないための手段として共通するから、引用発明1における、一定幅の切り込み溝の底部を、周知の集水凹部に代えることは、当業者ならば容易に想到できる。

3-5               風雨に対する室内漏水の防止効果について、本件発明の作用効果は、甲1発明、甲2記載技術事項、周知例1等を組み合わせた構成自体から得られる自明な作用効果に過ぎない。

3-6  本件発明1が、当業者の予測し難い顕著な作用効果を奏するものでないから、従って、本件発明2の進歩性も否定される。

3-7-1 甲1発明は「上下枠及び左右の縦枠からなるサッシ」を有すると認められるので、これが「開示されていない」という原告の主張には理由がない。

3-7-2 「甲1発明はサッシ構造も排水溝も有していない」という原告の主張には、従って、理由がない。

3-7-3  「本件発明3の作用効果が予測し得ない顕著なものである」という原告の主張は、従って、認められず、その進歩性は否定される。

3-8  本件発明4および5についても、容易想到性、進歩性欠如、設計事項該当から、無効審決の判断に誤りない。  

4.所見:

4-1 時系列で見ると、本件特許出願日 平成13年11月28日、設定登録日 平成15年12月12日、無効審判請求日 平成16年10月20日、無効審決日 平成17年3月8日、口頭弁論終結日 平成18年3月22日、判決 平成18年5月17日という経過で、紛争解決の短縮化が図られていると評価されます。

4-2 「特許付与の的確性と迅速性」、「権利の安定性と紛争処理の迅速性」、ならびに、これらの要件に対する出願人や権利者の利害が必ずしも一律でないこと(特許付与を急がない場合もある等)から、制度の選択肢について、検討が重ねられることは、やむを得ないと考えます(米国特許法改正案の異議申立制度新設案の動向をも踏まえて)。

4-3 しかし、前記2の「弁理士訴訟代理権制度の整備」については、弁政連による指摘事項のほか、司法制度改革の本旨、ユ-ザ-の利便、認定司法書士の単独訴訟代理制度との調和等を総合して、適切な方向性が知財推進計画06に明示されることを、重ねて要望申しあげます。(以上)

2006年5月22日 (月)

麻生福岡県知事のコンテンツ構想

福岡県発「アジアの鼓動」と「福岡コンテンツ」

コンテンツ産業の全国および地域展開計画設定

(内閣知財戦略本部あて別途送信済み) 

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT(または佐成重範)

 内閣知財戦略本部に寄せられた麻生 渡 福岡県知事の「コンテンツ専門調査会委員としての意見」(2006-05-18)を、下記のように理解しましたが、最も重要な問題提起は、「福岡県から東京圏へのコンテンツ人材の流出」であると考えます。米国でもロス州に歴史的映画産業集積に近接して先端的デジタルコンテンツ産業集積が集積され、アナログコンテンツとデジタルコンテンツの双方向変換(わが国アニメのレアル映画化等)が効率化になされているようですが、わが国でも、アニメのコマ制作が都内特定区に全国の過半が集中するなどを含め、アナログコンテンツ・デジタルコンテンツ・ライブコンテンツの総合集積が東京圏で進捗していると考えます。このような集積と、デジタルコンテンツ等の人材の地方から東京圏への流出を、知財推進計画06においてどのように評価し対処されるか(北海道経済産業局でも道内産業として札幌圏デジタルコンテンツ産業の振興を計画されているようですが、南北両極立地の適切性など)、示されることを要望します。

麻生 渡・福岡県知事・全国知事会会長・元特許庁長官・現内閣知財戦略本部コンテンツ専門調査会委員が同本部・コンテンツ専門委員会(2006-05-18)に、提出された意見(以下「麻生委員意見」)は、地方と国際社会、地方と広域、地方と全国という3つの視野からのコンテンツ政策提言として、極めて注目されます。以下、麻生委員意見(要旨)と小生の所見を併記いたします。

1.福岡県がAsia Youth Culture Center を設置:

1-1 麻生委員意見

1-1-1 東アジアでは、音楽・アニメ・ゲ-ム等の分野で国境を越えたスタ-やキャラクタ-が生まれ、若者の間で共通の感性が育ちつつある。これらコンテンツの共用によって若者の共通意識と連帯感を育くむことが、東アジア共同体発展の基礎である。

1-1-2 そこで福岡県では、Asian Youth Culture Centerを設置し、インタ-ネットを通じて若者文化を福岡からアジアに発信する拠点を作ってゆく。 

 その事業は、アジア4国語ホ-ムペ-ジ「アジアの鼓動」や県出身ア-ティスト等の国際交流である。

1-2        所見: 

1-2-1 一国の州や県が、独自の経済的・文化的立場から外国ないしは複数国域を対象として交流活動を展開することは、多くの事例(例えば、スペインの産業有力州)に見られますが、これらは主として貿易振興・企業誘致・投資促進・観光案内を業務とするビジネス的厚みのものです。

 これらに対して、福岡県の例えばhttp://asianbeat.jpは、深い文化的厚みを持ち、早速「お気に入り」に追加して、東アジア文化の情報に(のみならずライブ演奏にも)高い密度(毎週更新)で融和できる動画・シネマ中心の誠に貴重なサイトです(中央省庁のホ-ムペ-ジのうち動画・シネマが最も進んだ官邸ホ-ムペ-ジに勝る)。とにかくコンテンツ関係者すべてが開くべきサイトと考えます。

1-2-2 およそ一国の州や県のうちには、世界諸国のうち一国の経済規模を上回る経済規模を有するものもあり、単独対外活動を動機づけています。

 これらと対比して福岡県の場合は、トヨタ自動車の工場立地に象徴されるように、アジアとの立地近親性に加えて、文化交流の歴史的永年性が、極めて自然な動機づけになっており、恒久性・発展性に富むと考えます。

1.        国内では「コンテンツ人材の県外流出」:

3-1        麻生委員意見

3-1-1 「福岡県では、いち早くコンテンツ産業の将来性に着目し、第1ステ-ジ(1998~2005)として、マルチメディア・アライアンス福岡を設立し、クリエ-ターのレベルアップ、クリエ-タ-とクライアントとの橋渡し、拠点性を高めるための地域プロデュ-スという、福岡・東京・アジアを連結する活動を広げている。」

3-1-2 「しかし、今後福岡県がコンテンツ産業の集積を高めてゆくために解決すべき課題として、『東京市場へのアクセス』と『コンテンツ人材の流出』が重要である。」

3-2 所見:

3-1の2つの課題は相関しています。東京市場へのアクセスの不利が重要課題になるほど、東京圏での集積が立地価値を生む分野であること(自動車製造と異なり)、従って、コンテンツ人材の東京圏流出が加速することです。麻生委員意見を次に記録しておきます。

「これまでの取組も呼び水となり、大学や民間教育機関のコンテンツ教育機能が充実(機関数や講座科目の増加)。特に九州大学(芸術工芸系)はCGやアニメ、ゲ-ムなどの高度な映像コンテンツ制作者を養成する数少ない拠点としての地位を確立した。

しかしながら、ビジネス機会が十分に得られないこと、高い技術レベルを要求される仕事、金額の高い仕事は東京に偏っていることから、優秀な人材は首都圏に流出している。」(以上)

2006年5月21日 (日)

5月の知財高裁判決

5月の知財高裁判決

㈱ダイヘン特許取消決定取消請求事件

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT(または佐成重範)

1.        特許権の法的安定性:

 判決日平成18年5月10日、事件番号・平成17年(行ケ)19538・特許取消決定取消請求事件は、原告・㈱ダイヘン、被告・特許庁長官で、原告の請求が棄却されました。

 この事件は、発明の名称を「薄板状ワ-ク搬送用ハンド」とする特許権者・ダイヘンが、特許庁の本件特許取消決定(特許異議申立による)の取消を求めた事案です。

 異議申立制度は特許付与の的確性を担保することを目的としますが、権利の不安定を結果する制度でもあります。米国の特許法改正案はその採用を指向し(この法案は下院で難航しているようですが)、わが国と逆方向の観があります。

2.        異議申立に対する特許庁決定の要旨:

 請求項数は5つですが、「各項の発明は、いずれも刊行物記載事項と周知事実に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法29条2項の規定に違反し、取り消さるべきものとした。」

3.        「刊行物と周知事実による先行技術」の認定:

 前項の決定によれば、「バンドの厚みと重量を増大させずに曲げ剛性を高めるため、PAN系炭素繊維とエポキシ樹脂(軽量化・比強度で優れる)または超硬合金を材料とし、収納棚ピッチを大きくしない多段状態の基盤カッセットに接近・離間して、大型な半導体ウエハや液晶用ガラス基盤を水平移動で積み降ろしするバンド」は公知技術(刊行物記載+公知発明)である」と認定されました。

 ダイヘンの本件発明は、新規性・進歩性ありとして特許付与されたのですが、特許庁の決定は、公知発明から想到容易としてこれを覆したわけです。     4.ダイヘンの主張に対する知財高裁の判断:

 ダイヘンは、「決定は、バンド先端部の自重による撓み量を小にすることは、当業者が容易に想到し得ることであると判断しているが、これは刊行物に記載も示唆もされていないから、決定の判断は誤りである」等の主張を述べました。

 上記の点について知財高裁は、ダイヘンの上記発明は、刊行物1の内容と刊行物2の内容の「組合せ」により容易に想到できる等と判断しました。

 上記以外の争点も、ほとんど、容易想到性に関するものです。

4.        容易想到性:

 容易であるかないかは、一見、主観的判断であるかのように考えられますが、特許権成立の成否がこの判断に懸かっている場合は非常に多いので、研究・検討が深められるべきであると考えます。現在は、決定・審決・判決の積み重ねによって、ある程度の基準が形成されているに過ぎません。

 例えば、「単なる寄せ集め」は容易想定可能の範囲内(特許性を否定)で、「結びつけに特別の効果があれば容易想定可能性がない(特許性を肯定)と言われますが、特に機械・電気の分野では組合せによる発明も多いので、分野ごとに基準の表現を考えるべきべきであるとも考えられます。

 SANARI PATENTでは、この見地から知財判決を逐次追求してゆきます。(以上)

2006年5月20日 (土)

特許明細書の簡明化

特許権文書簡明化の意義

(内閣知財戦略本部あて送信済)

弁理士 佐成重範 patent@sanari.nameWeb検索SANARI PATENT(または佐成重範)

明細書文学と請求項記述言語

1.明細書文学:

 先日、内閣知財戦略本部・荒井事務局長のご講演(政策研究大学院:2006-03-17)の一節に、広く共感を呼ぶ次の指摘(要旨)がありました。

「わが国の『特許文化』をめぐる問題の一つとして、『明細書文学』があります。一方、知財判決文学もあって、いずれも、一般人にとって容易には読めません。裁判員制度を導入するに当たって、裁判所も、国民に理解し易くする運動をしています。特許明細書も、このままでは、欧米のほかアジア諸国への翻訳が、転訳を経て誤訳を多く含み、使用に耐えなくなる(権利行使に役立たない)という問題を発生します。21世紀は極端に言えば、明細書の機械翻訳ができる、それによって権利行使ができることによって、初めて特許としての意味を、全世界に対して持ち得ます。」

2、            内閣知財戦略本部・知財推進計画05との関連:

 知財推進計画05には、「日本弁理士会に対し協力を要請する」事項として、「明細書等の出願書類を作成するに当たり、技術的に簡単明瞭な文言を用いて、明確簡潔に記載するよう、日本弁理士会に対し協力を要請する」と計画されています。

 何となく、現在の「難解な明細書文学」の成立が、弁理士の所為(せい)にされたような気もする文脈ですが、特許制度の発足以来百余年間、特許出願数の9割以上を弁理士代理によってきたので、特許庁は文学的には、受動的に微補正するに止まってきたのかも知れません。

しかし、現在の明細書文学が、権利の的確な表現を確保する試行錯誤の苦闘を経たものであることも、事実と考えられます。もっと基本的には、語義そのもの、さらには用語そのものが、出願者によって創造され、審査官は、出願者の意図を積極的に理解すべきことが、米国の特許審査基準(MPEP)に、そしてわが国の審査基準にも類似の表現があるという、特異な文学世界であります(構文と用語に分けて見ると、構文ではthe saidの積重ねなど、日米類似しているようにも見えます)。換言すれば、権利の安定性と文学の易読性の調和が、難解性を残しているという側面もあります。

 このような特許明細書文学の特殊文学性を踏まえつつ、世界特許に向かうわが国明細書文学の革新を達成することが必要であり、知的財産推進計画06でも、このことが引続き強調されることを要望申しあげます。

3.        判決文学との対比:

 前記1に引用した内閣知財戦略本部事務局長ご発言中の「判決文学」は、知財判決に関するものと解されます。知財判決は、請求項を裁判官が理解する過程をそのまま記録したような記述も多く、弁理士等の知財判決研究の盛行は、判決文によって明細書文学の理解を深めている観もあります(例:著名な知財高裁判決では、ジャスト社の一太郎事件やキャノンのインクカ-トリッジ事件。本月10日判決の㈱ダイヘン事件では、冒頭に請求項をそのまま引用しているので、この部分は難解です)。率直に申して、明細書文学の方が、難解度が高いと考えます。

4.        学会の動向:

 小生が所属する東京大学・知的財産マネジメント研究会(smips)の、特許戦略工学分科会では、請求項記述言語(PCML:Patent Markup Language)を研究しています。その定義は、「人間にとってもコンピュ-タにとっても明瞭で理解し易い構造を持つように請求項を記述するために用いる言語」ですが、分科会の紹介文となると、「本分科会では、オントロジ-上の請求項クラスとして言語定義することとし、拡張性と汎用性の高い請求項記述言語PCMLの標準を構築しようとしています」という表現で、一般人には難解ですが、それにもかかわらずsmipsは、一般人にも親切です。

5.        特許出願実務の大学課程化:

 知財立国のわが国ですから、少なくとも大学教育課程には特許実務を加え(東工大機械科の例では弁理士が講師)、知財の創造・保護・活用の過程に対応する明細書の作成・理解・応用の実務を可能にする努力(すなわち、明細書能力の涵養)と、明細書文学の改革とが、歩み寄ることが必要と考えます。

[518記事に付記:企業価値・知財価値評価について、弁理士と公認会計士は各立場から強い関心を持っています。公認会計士数はわが国で現在2万人。米国30万人。金融庁は2018年にわが国5万人を計画し、試験科目の選択肢を増やすようです。わが国の弁理士数6695(2006-03-31)は知財人材倍増計画に包含されて、増員が計画されています。なお、企業会計報告と知財報告とは、並列することが妥当であると、SANARI PATENTでは考えております。](以上)

2006年5月19日 (金)

経済産業省の地域活性化戦略

特定地域定住弁理士の住民税減免案

弁理士機能の適正配置(地域特性・融合人材)

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

1.        例示資格者に弁理士明示を要望(内閣知財戦略本部あて別途送信):

このたび経済産業省が公表した「地域活性化戦略」(2006-05-16)には、「専門的リタイアメント層の活用」を具体的施策の一つとして掲げ、次のように述べています(要旨)。

「地方中小都市を中心とする地域においては、医療・福祉・教育等における専門的知識・資格の必要な人材が不足しがちである。このため、専門的知識等を持った60歳代のリタイアメント層の地方における定住又は半定住の推進と地域の公的サ-ビスへの参画を促進する。この際、コンパクトシティ化や都市再生の推進の観点から、中心市街地での定住又は半定住を推奨し、これらの専門的知識を持ったリタイアメント層が地方で定住又は半定住し、地域の医療、福祉、教育等の活動に参画する場合に、住民税等の減免を実施することが考えられる。」

 そこで要望ですが、今次「地域活性化戦略」が、地域産業の振興を基本戦略としていることから考えて、「医療」の前に、「知財開発」を置き、「中心市街地立地」を推奨しつつ、定住・半定住弁理士についての住民税等減免の妥当性」を明示することが適切と考えます。

2.        弁理士の行政書士兼業(融合人材)(業務量との関連):

 行政書士法第2条1項3号により、弁理士は、行政書士となる資格を有しますが、行政書士が、中小企業協同組合等の設立・運営等、地域ブランド母体の形成・維持、ライブエンタメのための道路使用や仮設建物構築、音楽コンテンツの演奏や流通等における著作権処理等、地域ブランド、コンテンツ関連に職域を有することから、前項地域定住弁理士の兼業に適すると考えます。

 内閣知財戦略本部の「知的財産人材育成総合戦略」(2006-01-30)は、融合人材の人材像を次のように述べていますが(要旨)、地域の業務量という見地からも、注目されます。

「知的財産を活用する場面の拡大に対応するため、幅広い領域で活躍できるマルチメジャ-な融合人材を育成する。すなわち、知的財産に関する法律知識だけでなく、科学技術や企業経営、税務・会計などの領域にも通じた人材を多数育成する。また、技術士や中小企業診断士、行政書士などの関連専門職やポストドクタタ-などの技術的素養の高い人材に対して、知的財産の知識の普及を図る。」

3.地域特性と弁理士機能配置:

 今次「戦略」の特徴は、地域特性を定性的・定量的に解析したことと考えます。弁理士機能の立地配分適正化構想の基礎資料の一つとして有用と考えます。すなわち、この「戦略」は次のように述べています(要旨)。

3-1        自動車・電機・電子等の国際競争力ある産業については、京浜葉大都市圏が全国出荷額の23.4%を占める。

3-2        情報通信業の事業所数は、東京都のみで全国の約34%(大企業本社のみでは約76%)の事業所が集積し、関東圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)では約43%(大企業本社のみでは約81%)の事業所が集積している。

3-3        大中小企業を併せて25万社以上の本社が東京都内に存在し(全国の16.5%)、大企業のみでは49%が存在している。

3-4        今次「戦略」で「地方中小都市」とは、原則として、県庁所在地を除く人口30万人未満の都市であるが、地方中小都市を中心とする地域においては、製造業がその域内に存在していても、その集積の厚みが乏しいため主要産業となっておらず、商業、サ-ビス業が主として地域を支える主要産業となっている地域が多い。また、観光業が主要産業の一つになっている地域もある。

 これらの地域特性解析は、弁理士機能の全国配置を構想する上で、貴重な資料であり、政策へ反映が望まれます(例えば、知財の開発・活用は、製品出荷地域ではなく、本社地域で発想される場合が多いのではないか、地方中小企業のそれは、大企業の本社着想に淵源する場合も多いのではないか、などの検討も含めて)。(以上)

2006年5月18日 (木)

株主総会と企業価値

企業価値・知財価値・知的資産価値

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

1.        経済産業省の企業価値報告書06:

6月末の株主総会一斉招集をひかえて、M&Aなど企業戦略が激論される時期に入り、「企業社会における公正なル-ルの定着に向けて」と副題した企業価値報告書2006(日付2006-03-31)の標記報告が注目されます。この報告中にも、「注目すべきは06年の株主総会である」と指摘しています。

2.        企業価値と企業価値基準:

 弁理士としては先ず、企業価値における知財価値の地位がどのように考えられているかが関心の的ですが、この報告は冒頭から、「そもそも企業価値というものは、正確に測定することが困難である。株価が企業価値を正確に表すのは市場が完全な場合のみであり、通常は企業価値を左右するような営業秘密やノウハウなどの情報は市場に流通していないことが多い」と述べ、先ず、知財のうち権利化していないものの評価の困難性を、企業価値評価の困難性の主因に挙げています。しかし「市場が完全な場合」とは如何なる場合で、またその実現する場合というのが考えられるのか、権利化した知財は正確に評価できるのかと反問すれば、否定的な回答しか期待できないと考えます。

 今次報告の第3章に、「経営者と株主・投資家等との情報の非対称性を解消するよう措置を講ずべきこと」とありますが、「非対称」以前に、経営者にも、知財価値評価の情報は欠落していると考えます。

3.        企業価値とは何か:

 少なくとも今次報告文には、企業価値とは何か、すなわち、定性価値、定量価値、価額価値の何れを意味し、どのような記述または単位で表現されるべきか、記述が見当たりません。

4.        価値基準とは何か:

 今次報告によれば、企業価値は価値基準によって評価されるべきものとされていますが、少なくとも今次報告文には価値基準の内容について記述がありません。

5.        内閣知財戦略本部知財推進計画05の知財価値評価:

 知財推進計画04には、「知的財産の価値評価方式を2004年度内に確立する」旨が計画されていましたが、その結果については報告されず、2005年度を経過しました。現在適用されている知的財産の価値評価方式は多様で、それぞれ得失があり、目的に応じて使い分けられていますが、今次企業価値報告には、その選択についての記述もありません。

6.        知的「資産」

 知財推進計画05に登場したのは、知的資産という用語です。「企業は自らの『将来の経済的便益を生み出す競争優位の源泉』を精確に把握し、その競争力の源泉たる人材、技術、組織力、顧客とのネットワ-ク、ブランド等の見えざる私的資産を重視した経営『知的資産経営』に取組むことが重要であると強調しました。そして、「研究開発・特許関連情報の有価証券報告書等における任意記載の方法について、知的財産報告書の活用を含め、2005年度も引き続き検討を行い、必要に応じその明確化を図る」と計画しています。

7.        知財推進計画06への期待:

 上記のように、企業価値の主要部分を占める知的資産・知的財産の価値評価について、知的財産推進計画に基づく検討経緯や成果が未だ一般に示されていないことにかんがみ、知的財産推進計画06における明定が、切に期待されます。{5/20に追記あり}(以上)

2006年5月17日 (水)

ユビキタスネット社会と知財の相関

ユビキタスネット社会と1億総クリエ-タ

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

1.「課題解決と価値創造」のインフラ:

  昨日(2006-05-16)、明治記念館で開催された「ユビキタスネット社会とブロ-ドバンドデジタルコンテンツ流通の展望(副題:21世紀型サ-ビスが飛躍する時代)講演会は、総務省系の「情報通信月間」参加行事ですが、共催団体に、9団体、すなわち、情報通信ネットワ-ク産業協会、電気通信協会、電気通信業務者協会、デジタルコンテンツ協会、マルチメディア振興センタ-、日本映像ソフト協会、日本インタ-ネットプロバイダ-協会、映像産業振興機構、アライアンスフォ-ラム財団が並列し(主催はNTTNPO)、従って、後援省庁も、総務省・経済産業省・文化庁が並列しました。参加企業も、9団体の全てまたは一部に関与・加入し、かつ3省庁の所管下にあるものと考えます。

 従って、竹田・総務省情報通信政策局長や、安田・東大国際産学共同研究センタ-教授の演述も、

1-1 ユビキタスネット社会のブロ-ドバンド・インフラは、課題の解決と価値創造の母体であること

1-2 特にデジタルコンテンツが、1億総クリエ-タ化により創造され、発信されて、ユビキタスに流通し、1億総受信者としてこれを活用し、デジタルコンテンツの拡大スパイラルが形成されてゆくという、知財とネットインフラとの表裏一体が明示される内容となりました。

2.三好内外国特許事務所:

 ユビキタスネット社会の発達に役立つ特許事務所の「総合化・大規模化・国際化の進展」についても、三好内外国特許事務所の内容を示す資料により、参加者の認識が深められたと考えます。同特許事務所は、

2-1 弁理士40余名を中心として、技術職約160名、事務職約80名を擁し、

2-2 大阪・京都・四国(松山市)に事務所を設け、

2-3 「『誠実』をモット-に、『21世紀の顧客ニ-ズに迅速・的確に応える』を基本方針に、弁理士40余名を中心として、電気・電子、半導体、情報、通信、機械、化学、材料、ビジネスモデル、バイオテクノロジ-等、広範なキ-テクノロジ-への対応体制を確立し、創造活動支援、出願、調査、審判、異議事件、訴訟、契約、コンサルティング等のプロフェッショナル・サ-ビスを、知的創造サイクルの全ての領域において、ワンストップでグロ-バルに提供している一方で、世界に通用する人材の育成・確保に努め、ITを駆使しての情報発信機能の充実を図り、知財サ-ビスの創造・質的向上を目指している総合知財事務所です」と自己紹介されています。

4.所見:

4-1 知財とITとの融合:

 内閣の機構でも、知財戦略本部とIT革新本部が並立してきましたが、ITが、ユビキタスネット社会に遍在するインフラとして、知財サイクルと相関しつつコンテンツ(デジタル情報)を「上昇螺旋展開」(スパイラル)させると共に、

メタデ-タの構成と配布、情報検索ツ-ル、コンテンツ合成、個人認証、追跡性確保等における知財の開発・活用が、ユビキタスネットインフラの常時性・迅性・広汎性・正確性・安全性の装備に不可欠であり、情報通信・知財の機能の融合の必須性が確認されたと考えます。

4-2 弁理士集団のサイバ-パワ-:

三好内外国特許事務所が、「ITを駆使して」と叙述されていることも、21世紀のユビキタスネット社会の特徴を示していると考えます。医師と弁理士は、先端分野の分科が革新と共に益々多岐化しますが、医師集団のネット診断体制(NRI映像電送による合同診察等を医師100名の会社で受託等)が構成されつつあると同様に、弁理士集合体による知財業務が、ユビキタスネットインフラを活用して全国ないしグロ-バルに展開され、同時に、知財業務が、ユビキタスネットインフラの技術的・制度的発達を実現してゆくものと考えます。(以上)

2006年5月16日 (火)

電動機制御の特許出願動向

ベクトル制御でわが国優位

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

1.        ベクトル制御技術の発達:

 電動機制御手法としてベクトル制御が主流を占めつつあります。例えば三菱電機は、「汎用磁束ベクトル制御」を次のように解説しています(同社WebSiteによる)(要旨)。

「直交変換装置の出力電流(電動機電流)を、ベクトル演算によって、励磁電流(磁束発生に必要な電流)とトルク電流(負荷トルクに比例する電流)に分割し、負荷に見合った電動機電流を流せるように電圧を補正し、低圧トルクを向上させる方式。6Hz200%の高トルクが得られます。電動機定数が、他社電動機との組合せ等によって多少ばらついても、特別な電動機定数の設定や、整調を行わずに、安定した大きな低速トルクを得られるので、高い汎用性を有します。」

2.        今次特許出願動向調査:

 経済産業省・特許庁報告(2006-05-10公表)は、次のように述べています(要旨)。

2-1        電動機制御技術について、日本勢は、出願件数では、日本で約9割、米国でも3割強を占めるなど、全世界的において優位にある。

2-2        特にベクトル制御技術については、米国出願の61%を占め、また、上位出願人ランキングの11位までを占めている。

2-3        各主要国における出願数は、日本出願は1990~2003年の各年平均、2000件程度で推移し、米欧では2000年以降、「米へ」、「欧へ」とも年平均1000件前後の出願で推移している(SANARI PATENT注:1990~2003計では、年平均、日本26263/13年、米国10048/13年、欧州9202/13)

2-4        中国への出願(SANARI PATENT注:2-3と同期間)では、日本勢が39%

   (日本勢1103/中国出願2728)で他国勢をリ-ド。

2-5 ベクトル制御の用途別出願数は、同期間で、自動車950(52%)、電車223(12%)、工作機械・製造機械・ロボット144((%)が上位にあるが、「各項目に分属せず用途に特徴あるもの」を一括すると180(10%)で、3位である。

3.        電動機の国際市場とベクトル制御:

 今次報告で次のように指摘されています(要旨:一部SANARI PATENT解析)。

3-1        大型電動機(750W以上)の国際市場規模は1兆8千億円(うち日本市場2500億円)を超え、競争が激化している。

3-2        小型電動機(750W未満)の国際市場規模は1兆円(うち日本市場3200億円)程度である。大型・小型とも、永久磁石型同期電動機を含まないが、これも、ベクトル制御の適用対象である。

4.今次報告が示した提言:

4-1 技術開発面では、制御技術の一層の高度化(全運転領域と全運転条件における制御の最適化等)により、わが国の優位を拡大すべきである。

4-2 現在の中心課題である高度省エネルギ-製品の開発に加えて、ベアリングレスモ-タ、超高速モ-タ等の次世代製品を開発すべきである。

4-3 炭化珪素半導体素子等、支持デバイスの開発を活性化すべきである。

5.上位出願人ランキング:

 1990~2003年において、日立製作所、東芝、明電舎、三菱電機,安川電機、日産自動車、東洋電機、富士電機、松下電器、トヨタ、シーメンス、本田、LG電子等と報告されている。

6.所見:

6-1 電動機に関する特許権・特許出願で産業政策上、重要なものは、ベクトル制御技術のほかにも多様・多様です。前項に社名が掲げられた三菱電機の野間口社長(当時)は、内閣知財戦略本部委員として、第12回同本部会議(2005-12-09)

において小泉総理ほか各大臣と学識経験委員6名に、次のように説明されました(要旨)。

「前回の会議では、日本の暗号技術が世界の標準として非常に活躍していると述べたが、今回は、ものづくりの分野で産業競争力に貢献している例を紹介する。三菱電機社内で「ボギボギモ-タ」と名づけているのが業界用語にもなったが、電磁石の内側で、永久磁石を付したロ-タ-が回転する構造において、効率良く導線を巻く技術が国際競争の対象になっている。この技術に関する本件特許(内閣知財戦略本部で図示)を13国に125件出願し、約半分権利化済みである。ここまでレベルが達すると、模倣品は出難い。」

6-2 上記説明で、中国とのコスト競争、消費電力量節減による環境対策等が、多角的に注目されました。

6-3 電動機の汎用性や、電力消費の半ばを占める影響力から、電動機関係技術全般にわたる特許出願動向の報告が望まれます。(以上)

2006年5月15日 (月)

特許FTAから世界特許へ

世界特許の「理念と現実」「経済性と人材関係」

(内閣知財戦略本部への要望)(送信済み)

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

1.内閣知財戦略本部・荒井事務局長講演の高い理念:

政策研究大学院大学における内閣知財戦略本部・荒井寿光事務局長の講演「日本における知的財産政策の将来ビジョン」(2006-03-17) (同氏私見)では、「世界特許」(Global Patent)「圏域特許」(Regional Patent)に関して、次のように演述されました(要約)。

1-1 「知的財産サイクルの「保護」の面について、グロ-バルパテントあるいはリ-ジョナルパテント形成の妥当性が、緊急の課題になっている。特許は本来、国際的なものである。特許は、世界で最初の発明に付与することを本旨とし、科学技術には国境が無いにもかかわらず、国別に特許を認めるという矛盾した妥協がパリ条約(1885年)でなされ、以来120年間、この妥協に依存してきた。「世界で最初」という特許の要件を、なぜ何時までも国ごとに判断してゆくのか、これに伴う諸般のコストを研究者や出願人が負担している。」

1-2 「各国の特許庁や特許の弁護士や弁理士は、それでビジネスが成り立つので、彼らは痛みを感じていない。最近は国別特許についての批判を受けるようになり、クライシスと言われているが、本来、この120年間に解決しなければならない問題を、今日まで持ち越してきたのである。」

1-3 「世界特許は、スポ-ツに例えれば世界記録の測定であるから、測定基準を合意すれば、世界各地の競技会で世界記録を認定できるのと同様、特許の認定基準を合意すれば、世界特許を認定できる筈である。」

1-4 「知的財産の他の分野では、著作権はベルヌ条約の当初から、商標権はマドリッドプロトコルの順次批准によって逐次、世界権化している。」

1-5 「医薬品なども、国別基準で認可しているが、早期治癒の実現こそ優先課題であるとして、国間で基準認証を認め合うことを、わが国とEUの間でも合意した。」

1-7 「これらに遅れている特許権についての取組を促進するため、三極協力に基づく審査の調和を図りつつあるが、時間を要し、ユ-ザ-からは、せめてフォ-マットを一つに、という要請が強い。」

1-8 「現実的な対処として、特許FTA(特許自由貿易協定)を二国間・複数国間・圏域間で締結し、相互に審査結果を受け入れ、補充審査をもって特許付与をする体制が望ましい。」

1-9 「日米両国のPatent Explosionは切迫し、クライシスは明らかに緊迫している。日米とも今やこの課題に取組むべき時である。」

2.所見:

2-1 内閣知財戦略本部およびその傘下専門調査会等においても、「世界特許」「圏域特許」の緊急性と実現性(時期)の認識に、委員間の温度差が認められます。SANARI PATENTとしては、世界特許・圏域特許を、知的財産権の創造・保護コストの合理化により、ユ-ザ-・国民・人類の利益を増進するものとして、早期実現を理念とし、段階的実現計画が実行されることを望みます。

2-2 知財関係者の立場(1-2)については、数年前にも、特技懇誌に、「EU特許が加盟国の特許になるという圏域特許については、各国特許庁要員が職域確保の立場もあって反対し、実現に至らない。EU内の諸特許庁が競争関係に立つことを好まない」と述べていました。しかし、電気通信の国際標準化に対処するため、ESTI(欧州電気通信機構)は、20年前に発足しましたが、ETSIがディファクト国際標準を市場制覇により獲得するため、特許FTAに至ることも、戦略としては考えられます。

2-3 世界特許は、ユ-ザ-から見れば、「ユ-ザ-が各国の特許庁を選択する」体制であり、特許庁間の競争体制とも考えられます。

従って、わが国特許庁の審査が迅速・的確・低コストでユ-ザ-にとって便益性に富む場合には、企業の選択により、わが国知財人材の繁忙と人員の不足が激化します。逆の場合も想定して、知財人材12万人計画と世界特許との長期的関連を想定することも必要と考えます。

2-4 医薬品(1-5)については、医薬品作用機序の種差等から、認可基準統一に課題を残存しつつも、統一に向っていることが評価されます。

2-5 国間「1割の相違」には、日米間については、「進歩性と有用性の相違」、「損保製判断における商業的成功の取扱など、微妙なものもあり、擦り合わせが必要と考えます。

2-6 他方、日経ビジネス等には、米国特許法改正案の難航観測も出始めましたが、先出願主義への移行には、インタ-フェァレンス(抵触審査)係争を職域としてきた特許弁護士の反対も予想されると、予ねて報じられたところです。

2-6 荒井局長の御講演は、知的財産の創造・保護・活用の全域にわたる充実かつ率直な(従って実相を直写的)した貴重な内容で、ここにはその一局面の要約を試みたに過ぎませんが、この局面について、「理念と現実」「経済性と人材関係」の調和が全うされますよう、「私見」に続いて「公見」の御表明を要望申しあげます。(以上)

2006年5月14日 (日)

多機能空調機の特許出願動向

国情を反映:多機能性への出願

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

1.        多機能空調機特許出願に国情反映:

1-1 気象条件や生活様式・所得水準の多様性を反映して、空調機に要求される性能が多様であること、従って、これに対応する特許出願数において日本勢が圧倒的に優勢であることは、容易に想定されますが、経済産業省の「出願技術動向調査」(2006-05-10公表)の結果にも、「2000~2004年の全世界出願・約7030件のうち日本は5787件で、82.3%」という高率が示されています(韓国勢8.6%、米国勢3.0%)。

1-2  前項と同期間の米国出願331件では、日本が86件で26%、米国が125件で37.8%を占めています。同様に、欧韓中でも、それぞれの極の出願人に次いで、日本勢が多くの出願をしていることが示されています。

1-3 全世界出願の技術区分では、快適性制御が33.4%、易操作性が22.9%で、換気機能、空気清浄化機能、除湿機能、加湿機能、蓄熱機能、物質等の付加機能、システム複合化機能が、この順で続いています。

2.ダイキンが出願数トップ:

2-1 オゾン層関連で脱フレオンの多機能空調機界ですが、今次経済産業省報告の全世界上位出願人ランキング(2000~2004対象)では、ダイキン874件、三洋電機578件、松下電器産業538件、富士通ゼネラル483件と続いて、韓国のLG

Electronicsga424件、その次に三菱電機、日立製作所が掲げられています。

2-1        多機能空調機の技術俯瞰図が掲載されましたが、

2-2-1        応用分野は、航空機用、自動車・電車用、家庭用、ビルオフィス用、商用・公共施設用、病院・高齢者施設用に区分。

2-2-2        基本機能は、温度調節、空気浄化、快適性制御、その他機能に区分。

2-2-3        非番技術は、機械、電機、材料、感性に区分。感性の内容は、温冷感覚評価、体感指標、肌水分標準有効温度、ファジ-機能。

2-2-4        関連政策は、地球環境保護、廃棄物・省資源・有害物質、空気清浄化、標準化に区分。

3.        経済産業省・特許庁の「まとめ」(要旨):

3-1 「空調機の市場規模は、中国・韓国・アジア諸国を含むアジアが最大。」

3-2 「気象条件や生活習慣の違いにより、重視される機能が相違するので、要求機能選択の市場調査が重要。」

3-3 「多機能空調機に関し、海外を含む幅広い特許網の強化を行うことで、国際的な事業基盤を強化することが重要。」

3-4 「アジアや欧州を中心とする市場を確保するため、冷媒、特にノンフロンの自然冷媒および代替冷媒(窒素系等)についても積極的に研究開発を進めることが重要。」

4.所見:

4-1 欧州でも暖房単機能機が多い国、地域があり、多機能空調機はわが国で最も発達していると考えられます。

4-2 わが国における多機能性は、多岐かつ高度化し、今次報告の「機能-その他」、「基礎技術-感性」の内容が豊かになると予想されます。例えば、今次報告に登場している日立製作所の家庭用多機能空調機を、日立ホ-ム&ライフソリュ-ション㈱(SANARI PATENT注:社名が象徴的)が営業していますが、その操作解説書には、室温・湿度の組合わせ設定、外気計測、タイマ-、高速除湿、結露防止、ツイン気流運転、高速除湿、冷風・涼感発生、換気、風向・風量設定、微調節、脱臭、イオン発生、フィルタ-自動清掃等々の機能操作が明示されています。芳香発生、外出先操作等を加えた機種もあるようです。

 多機能自動車と同様、国民性も左右しますが、自動車の場合と異なり、機能を付加することが比較的面倒ですから、購入当初からの高度多機能性が、わが国全般やアジア富裕層に需要され続けると考えます。商用・ビル用では、販売商品(ク-ルビズ等)に応ずる建築物内の温湿度を個別に設定する機能等が予想されます。(以上)

2006年5月13日 (土)

特許出願動向・マグネシュウム合金構造材料

技術の権利化とノウハウの温存・対中国

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

1.        マグネシュウム合金構造用材料:

1-1        経済産業省の特許出願動向調査結果報告(2006-05-10公表)では、調査対象13テ-マの一つに「マグネシュウム合金構造用材料の製造技術」が選ばれています。最近のTVでも、世界市場制覇に向かうわが国自動車の構造用材料等としてのマグネシュウム合金について放映され、また、電子機器筐体の薄肉化とも関連して、わが国の金型技術、特に表面研磨に関する中小企業技術のマグネシュウム合金加工への適用現場の映像が見られます。これらは、経済産業省が強調・推進する企業間・業種間の「擦り合わせ」(コラボレ-ション)の一局面でもあります。すなわち、技術の権利化とノウハウの秘匿項目が、共に多い分野と考えます。

1-2        今次出願動向報告では、次の諸点がポイントとされています(要旨)。

1-2-1      マグネシュウム合金構造材料の製造技術に関する特許出願は、1999年頃から急増した。

1-2-2      出願件数で日本勢が優位である。米国での出願でも日本勢が38%を占め、米国製の34%を上回る。欧州・中国・韓国でも日本勢の出願が目立つ。

1-2-3      中国勢による自国への出願が2001年頃から増加し、技術導入と併せて、同国で、マグネシュウム地金生産からの一貫生産体制の樹立を指向していることが注目される。

2.        今次結果報告の提言(要旨):

2-1        マグネシュウム合金製自動車部品が普及するためには、マグネシュウム合金を用いたダイカスト(溶融原料を成型機に供給し金型に高圧力で注入する鋳造技術)により、大型品適性・製品表面の美麗性等の特長を発揮させると共に、溶融マグネシュウム合金の発火防止技術の確立を要する。

2-2        電子機器筐体の薄肉化により顕在化する表面欠陥の発生を防止し、表面研磨・防錆処理等の二次加工費を削減することを要する。

3.        出願動向:

 今次報告には、「マグネシュウム合金構造用材料の製造技術」のうち、鋳造分野について、1990~2003の日米欧への出願件数を示しています。日本への出願件数は、日本製鋼所 98、宇部興産 79、本田技研 40、松下電器産業 35、東芝機械29、マツダ 28、神戸製鋼 26、日精樹脂 26、旭テックと日立金属各25と示されています。米国への出願件数は、日本企業(マツダ8件等)以外ではNORSK HYDRO AS 5GM 3PECHINEY RHENALU SA 3。また欧州への出願も米国と同様傾向で、わが国企業が優勢と見ています。

4.        所見:

4-1        今次報告に、世界のマグネシュウム生産の推移が示され、2004年の全生産量約58万トンの68.4%を中国が占めていることが注目されます。また、「マグネシュウム合金構造用材料の製造技術」の日米欧中韓5極の特許出願件数において、中国勢による出願の増加状況が示されています。今次報告が、「中国は、マグネシュウム地金の世界最大の生産国であり、北欧等の精錬技術導入により、精錬・加工に至る高レベル技術の優位国に変貌する可能性がある」(要旨)と指摘し、「わが国は、権利化すべき技術と温存すべきノウハウとを明確に意識した知財戦略を展開しなければならない」と結んでいることは、特許権・技術秘密の選択肢の一般原則の適用すべき局面として、特に重要な事例を示すものと考えます。

4-2        今次報告は、マグネシュウムの材料用途を、構造用材料と機能用材料に分かち、後者を「アルミニウム合金への添加剤としてのマグネシュウム等、形による性能を有しないもの」と解説していますが、最近の産業ニュ-スは、機体軽量化のためアルミニウム・マグネシュウム構造材料の使用を報じていますので、これらの分野における技術とノウハウについても注目したいと考えます。(以上)

2006年5月12日 (金)

太陽電池特許出願

太陽電池の変身:色素増感型

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

1.        特許出願動向へのYV注目度:

 最近のTVは、色素増感型の太陽電池の開発に大きな期待を寄せ、彩色・形状・弾性の自由度と軽さ、珪素資源からの脱却などを動画像で紹介しています。

 「平成17年度・特許出願技術動向調査結果」(2006-05-10:経済産業省公表)

にも、エネルギ-関連技術4テ-マのトップに「色素増感型太陽電池」が掲げられました。

2.色素増感型太陽電池の特徴と基本構造:

2-1 特許庁は、「色素増感型太陽電池とは」と設問して次のように解説しています(要旨)。

「色素を利用して、光エネルギ-を電気エネルギ-に変換する太陽電池である。

珪素を利用する従来の太陽電池に比べて、低光量における高変換効率性を有し、材料が安価で製造方法も簡便であり、意匠性・操作性(フレキシブル)にも優れていることから、多様な用途が期待されている。」

2-2 基本構造図を見ますと、光線が入力する基盤(プラスティック等)に、導電膜・半導体膜(酸化チタン)・色素・電解質が積層され、対極に至ります。

3.        出願動向:

3-1        会社別の出願動向は、2003年までに、富士写真フィルム 238件、シャ-プ 62件、ソニ- 54件、フジクラ 49件についで、経済産業省傘下の産業技術総研 46件、日本化薬 45件、東芝 43件と続いています。日本の出願人が上位を占め、かつ、幅広い業種の出願が見られます。

3-2        出願の技術区分は、半導体膜 386件、色素 283件、電荷輸送材 269件、電池製造技術 130件が上位を占めています。

4.        所見:

4-1        高光量における変換効率や高純度珪素生産の電力量原単位について、珪素型太陽電池との比較を示されたいと考えます。珪素型については、珪素純度とその生産所要電力量原単位との相関、および、珪素純度と太陽電池の寿命との相関、太陽電池の敷設面積等が課題でしたが、これらの課題解決について、色素増感型との対比を示されることが望まれます。

4-2        特許庁が指摘されている次の諸点(要旨)を踏まえて、わが国の出願数優位の現状を、十分に活かすことが必要と考えます。

4-2-1                現状の光電変換効率においても、適用可能な用途が見出せるので、耐久性・安全性を確保し、早期商品化を図ることが国際競争上、重要である。

4-2-2                意匠性・操作性に優れるので、これら特性を活かした具体的用途と商品の開発を促進すべきである。

4-2-3                商用電源コストに達するための大幅改善を加速すべきである。

4-2-4                要求コストの水準が、電力インフラの要整備地域の立地により異なるので、開発途上国をも含めた適応条件を見据えつつ、開発を展開すべきである。

4-2-5                権利化は、三極のみならず、今後利用が見込まれる地域についても、グロ-バルに積極化すべきである。

4-3 色素増感型太陽電池に関する国際標準化をデファクトに獲得してゆく経済産業省戦略(意匠戦略を含めて)についても、経済産業省から示されることを希望します。(以上)

2006年5月11日 (木)

デジタルコンテンツから総合コンテンツへ

陳腐化急速も可能な「パブコメ結果」

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

1.        パブコメの活況:

 「広く意見を聴く」政治と行政の潮流として、パブコメ(Public Comment)公募を政策立案の過程に組み込むことが盛んです。同一課題に対する多数パブコメ中には、互いに対立したり矛盾したりするものも含まれますから、単一の政策や計画を導出する場合、これらパブコメの要請が全て充足されることは、あり得ません。そこで、内閣知財戦略本部傘下の会議でも、委員から、「パブコメ結果の反映はどのように「尊重・選択・重合等」がなされたのか」という趣旨の質問が発せられています。

 さらに、パブコメの整理と公表が迅速になされても、超高速なビジネスの進展が、パブコメ結果を忽ちにして陳腐化する可能性もあります。

2.「自業自得」パブコメの例:

 「内閣知財戦略本部・知財推進計画06への意見」の結果が2週間前(2006-04-25)に公表され、音楽CDにつては、次のコメントがありました(要旨)。

「コピ-コントロ-ルCDが一因となって、音楽CD市場は落ち込む一方である。もっとも、音楽パッケ-ジ市場を棄てて、音楽配信への移行を早めるという考えであれば、業界の自浄作用の欠落を政府が規制することもなく、このままCD市場(パッケ-ジ市場)の縮小を放置するのも方法の一つではある。レコ-ド(CD)業界の自業自得ゆえ、その弱体化も免れぬところかとは思うが。」

「コピ-コントロ-ルCDなどは、再生保証がされておらず、著作権保護の名のもとにエンドユ-ザ-の財産を侵している。こうした音楽業界の風潮に釘を刺すことも国には求められる。」

2.        音楽CD市場の縮小経過と、最近の変調:

 わが国音楽CD市場の規模が、ここ数年、顕著な縮小傾向を辿ってきたことは、デ-タが示す通りで、その原因を、エンドユ-ザ-は音楽CDの高価格を不当に維持する諸制度やコピ-コントロ-ルCD帰し、著作権者側は、違法なファイル交換による著作権侵害の放置等に帰してきた。客観的には、音楽のネット配信の発達が、音楽CD衰退の主因と見られてこました。

 しかし、音楽コンテンツ業界の行動も、迅速に革新して、上記にょうな「自業自得」パブコメの内容を、陳腐化する可能性もあるようです。

3.        最近の音楽CD戦略の成果:

 最近における音楽CD市場の再拡大がデ-タで示され、今後も拡大傾向が強まるとの予測が、音楽業界の戦略転換によるものであるとして、例えば東京TV(2006-05-09)は次のように報道しています(要旨)。

3-1        音楽CDの拡販を、アニメ主題歌、そのネット配信、CDケ-スデザイン(数個並べればアイドルの全体像を表示できる)、ライブ歌唱での並売などの総合戦略で達成している。

3-2        ネット配信の実績によりCD化対象音楽を選択し、新曲を直接CD化することのリスクを回避している。

3-3        アニメ声優やライブ出演の成績により、CD歌手を選定している。社内企画よりライブや配信へのファンの反応に拠ることが確実であるから(Net Ratingの確実性)。

3-4        店頭販売では客の属性が把握できないが、配信ならできるので、CDに先行させる(Net Ratingの情報性)。

3-5        アニメの主題曲を固定せず、3月ごとに変更して市場調査し、かつ、まとめてCDアルバムとして販売する。

3-6        アニメやライブがCDを助け、CDがアニメやライブを助ける。

3-7        プレステ、オーディオパソコン(Digital Noiseを消去)の販売とCD販売を同時化し、Total Digital化する。

4・所見:

4-1        音楽CDはデジタルコンテンツの一つですが、アニメという強力なデジタルコンテンツ、ネット配信という広汎なアナログ・デジタルメディア、ライブ演奏という熱狂を伴う非デジタルコンテンツ(ライブエンタメコンテンツ)演出での総合販売を創出することによって、音楽CD市場も、その構成要素としてエンドユ-ザ-の支持を再獲得しつつあるように観察されます。

4-2        すなわち、音楽CD価格の孤立的高価格維持が、これまでの衰退の主原因と考えられるので、「デジタル・アナログ」、「デジタル・アナログ」の双方向転換、「ライブ・デジタル」の双方向転換、および、これらの総合戦略により、内閣知財戦略本部のコンテンツ振興計画が、円滑に国民に喜ばれることが期待されます。

4-3        音楽CDソフトのわが国年間生産額が、1998年度の6100億円から、58005200500043004000(各概数)億円と著減傾向を見せ、パブコメの「自業自得」評をも誘引したかと考えますが、2005年度には既に4313億円まで回復したと、音楽業界では算定しているようです。

4-4        プレステなど関連機器の発売をNew Yorkから始める業界ですから、日米両市場に好感を持たれつつ、Digital Contents CDとしての孤立から、Total Contentsntsの大市場に包摂された拡販を期待します。

4-5        内閣知財戦略本部においても、専門調査会WGとして「デジタルコンテンツWG」のみが設置されているのを、「Total Contents WG」に改められ、諸形態コンテンツの総合によって、デジタルコンテンツもアナログコンテンツもライブコンテンツも相乗的に発達・拡販できることを、示されたいと考えます。

4-6        なお、音楽著作権権利者の利益とユ-ザ-の便益のバランスについて、音楽を事例とする次の団体意見(日本知財協会)(要旨)が適切と考えますので、ここに引用します。基礎的考え方の革新が、さらに、Total Contentsの在り方を変革させると考えます。

「音楽の配信事業に代表される、「デジタルコンテンツのユ-ザ-にとって安価で便利な利用環境」が整備されると、結果として権利者も、そのコンテンツが普及し、利用対価の回収が可能になるというビジネスモデルを構築できる。放送と通信の融合等、メディアの多様化を踏まえ、複製禁止を原則とする考え方から、利用許諾を前提とした著作権制度の検討を是非お願いしたい。」(以上)

2006年5月10日 (水)

士業の責任

専権業務士業の共通的課題

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

 学生や定年前会社員の資格取得願望もあって、特許庁の「弁理士制度改正への意見公募」には、これら願望者からの送信も多く見られました。(以上は「前書き」です)。

1.        対特許庁パブコメの公表:

 弁理士制度へのパブコメ(Public Comment)結果を、一昨日(2006-05-08)、特許庁が公表しましたが、パブコメを送信した弁理士意見のうちには、次の記述も見られました(要旨)。1-11-2は同趣旨ですが、1-31-4は、意見が対立しています。

1-1 「特許業務法人については、全社員が無限責任を負う現在の制度を見直し、有限責任責任制度(LLP)を有する米国等との調和を図ることを検討されたい。」

1-2 「特許業務法人では、無限責任が行為弁理士一人に止まらず、社員全員にも負わされている。この点、弁護士法人と同様、指定社員のみの責任とされることが望まれる。」

1-3 弁理士業務についても、いわゆる一人法人を認めることによって、事業資産と個人資産の分離を図り、合併等による事業承継を容易にすることができる。これによって、業務の継続性を担保しつつ、事務所経営の安定化を促し、ユ-ザ-のニ-ズへの的確な対応を図ることが可能になると考える。」

1-4 「一人だけの業務法人は、何ら弁理士一人の個人事務所と変わりがなく、かつ、顧客を欺瞞することになりかねないので、認めるべきでない。」

2.LLP(有限責任事業組合)について専権業務士業一律:

 わが国のLLP制度では、専権業務を法定された士業について一律に、各専権業務についてのLLPを認めない、としています。しかし、LLP制度発祥国の英国始め、弁理士を含めて士業におけるLLPを認める欧米諸国が多いようで、法務省も、今後の検討課題としていますから、弁理士等の士業の集団業務形態の選択肢として、検討の促進が望まれています。

2.        所見:

 わが国産業政策の一環として、事業形態の選択肢を豊かにすることが指向され、LLPと同時にLLCも法制化され、また、在来の会社法や中間法人にも様々な選択肢が設けられました。

 しかし、弁理士の業務が、知的財産の創造・保護・活用に直結し、国益・国際協調・文化と福祉の増進の要めをなすと共に、知的財産権関係行政・司法の的確性と効率性を担保するものであることを考えますと、法制上、有限責任・無限責任の適切なバランスに立脚した業務体制選択肢の設定が、先ず検討さるべきであります。

 この検討の前提事項として次の要素があります。

2-1 「特許業務法人の形態として、公益法人・株式会社は適切でない」(特許庁)「弁護士や公認会計士等の弁護士法人・監査法人等と同様、全員無限責任の合名会社型の法人・民法組合・個人事業のいずれかが、弁理士に適する」(経済産業省)

2-2 「特許業務法人の場合、その業務の性格上、法人資産は必ずしも豊かでなく、また、損害賠償責任保険が時点では十分に普及していないので、有限責任制度の採用は適切でない」(特許庁)

2-3 「公認会計士・弁護士・司法書士・土地家屋調査士・行政書士・海事代理士・税理士・社会保険労務士・弁理士の各根拠法の特定業務(専権業務)については、LLPの対象とすることができない」(LLP法施行令)

2-4 「士業全般におけるLLPの活用については、原則として無限責任を求めている基本的考え方をどのように修正することが妥当かを、先ず検討しなければならない」(経済産業省)

2-5 「上記の諸士業におけるLLPの活用については、今後の検討課題としている」(経済産業省)

2-6 「国際的に見れば、上記のような士業においても、LLPなどの有限責任の事業体の活用が進んでいる」(経済産業省)

2-7 「非居住者・外国法人もLLPの組合員になれるが、組合員全員が非居住者・外国法人であることは認められない」(経済産業省)

2-8 「LLP では、労務出資は、債権者保護の観点から認められない。しかし、出資比率に対応しないで、組合員の能力に応じた柔軟な利益配分が可能である」(経済産業省),(以上)

2006年5月 9日 (火)

教育基本法改正推進本部

教育基本法改正推進本部の発足に関する要望 2006-05-09

(内閣知財戦略本部あて送信済)

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

1.        標記推進本部の発足(5月8日)について:

文部科学省内の教育基本法改正推進本部発足が報道されました。実は、同本部が内閣知財戦略本部と並列して内閣に設置され、愛国の表現と共に、知財立国教育の目的が、教育基本法に明定される改正を期待しておりましたところ、「文部科学省内に設置」となり、やや意外に存じました。

2.        新憲法知財条項との整合:

 新憲法案(以下自民党2005-10-28決定案を指す)の前文に、「文化の創造による活力ある社会の発展」が宣言され、「財産権」の条文(第29条)に、知的財産権に関する特別留意条項が新設されることにかんがみ、教育基本法の改正が新憲法案にも整合するよう、措置されることを要望申しあげます。

すなわち、新憲法案第29条の2の、「知的財産権については、知的創造力の向上及び活力ある社会の実現に留意しなければならない」という条文の「知的創造力の向上及び活力ある社会」の語句を現行教育基本法第1条(教育の目的)に採択し、同法前文との重複部分は削除ないし簡明化して、次の条文とすることが適切と存じます。

「第1条 教育は、人格の完成をめざし、知的創造力の向上及び活力ある社会の実現に寄与する国民の育成を期して、行われなければならない。」(注:現行法第1条の「平和」や「個人の価値」の尊重は、全て、現行法の前文と重複していますので、一括して「人格の完成」に含めれば、簡明になります。「期して」は、現行法の語句を踏襲しました)。

3.        知財推進計画06への団体要望:

 来月上旬に決定後予定の知財推進計画06について、かねて諸団体の意見が内閣知財戦略本部に提出され、公表されましたが(2006-04-25)、例えば日本弁理士政治連盟は、次ぎのように述べております(要旨)。

「国民の知的創造能力と知財尊重意識を育む教育を進めるためには、教育基本法レベルの扱いも検討するべきと考えます。現行教育基本法には、社会教育(第7条)、政治教育(第8条)、宗教教育(第9条)の規定がありますが、新憲法案で知財創造立国が国家戦略として宣明され、憲法の主題の一つとなることに即応し、教育基本法改正において私的創造教育の柱を、教育の柱の現行条文に並設されることを至当と考えます。」

4.        学校教育法の改正について:

 教育基本法と異なり学校教育法は、制定後16次にわたる改正を経て現行法(2004-05-21改正法:全面施行本年4月)に至りました。小学校・中学校・高等学校・大学等の各章を通じて、人間関係、国家・郷土・国際関係、生活・産業技能、数量理解、自然現象の観察と処理、心身発達、芸術理解が教育目的として法定され、小学校から順次高度化するものと定められています。しかし、「創造」の語句が見られないのは、大きな欠陥と考えます。例えば「大学」の章の「大学の目的」は、「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」と定められ、「創造」の語がありません。このたびの教育基本法改正と共に、学校教育法の学校種別各章に、「創造」を掲げる改正を要望申しあげます。(以上)

2006年5月 8日 (月)

全国民関心の著作権法改正

著作権問題を国民全部の論議で:

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

1.知財推進計画06の最大の課題:

あと1月後には決定される内閣知財戦略本部の知財推進計画06が、国民全般に広汎かつ重要な影響を及ぼす最大の事項は、特許法ではなくて著作権法であると考えます。特許法の軌道修正は、審査基準改訂・判例の集積・業界要求によりなされ得ますが、著作権法の改正は、急いでも延ばしても、小幅にしても大幅にしても、旧来規定・改正内容に起因する多様な現象が国民生活の全面と関係業界の末端にまで生起するであろうことは必至と考えられます。内閣知財戦略本部へのパブコメを通読して、著作権法改正関係の意見対立の多岐性・深刻性を見られた方は、どなたも同感であろうと考えます。「エンドユ-ザ-を無視する委員構成」、「パブコメを取っただけ」といった批判を未然に防ぐことが必要と考えます。

2.団体意見のうち適切な、経団連の提言:

経団連の知財パブコメ(2006-4-25 内閣知財戦略本部公表)は、「著作権に係る国民的論議の推進」と題して、次の要旨の提言をされました。

「著作権は、権利の保護を図りつつ文化の発展に寄与するだけでなく、適切な利活用を通じてわが国経済の発展に貢献する役割を担っている。また、近年のデジタル化、ネットワ-ク化の進展に伴い、現行の著作権法では想定されていないようなコンテンツの利活用の形態も生まれている。コンテンツ促進法の目的も踏まえ、権利者の保護とユ-ザ-の利便性のバランスに配慮しながら、ユビキタス時代におけるコンテンツビジネスの発展に向けた新たな著作権法体系の構築に向けて国民的議論を推進すべきである。」

3.所見:

著作権法改正について国民的論議を展開する場合、具体的課題として、「著作物利用権の位置づけ」、「私的録音録画補償金制度の存廃」、「法定賠償制度の創設」、「著作権保護期間延長の可否」等、賛否が先鋭に対立しているものが多く挙げられます。

 知財推進計画06がその何れを採択するにしても、また、結論を先送りするにしても、判断の経過と理由の明示は必須と考えます。

2006年5月 7日 (日)

著作権保護期間にパブコメ対立

著作権70年案にパブコメ賛否

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

1.保護期間延長反対パブコメ:

著作権保護期間の延長について内閣知財戦略本部の知財推進計画05は、「2007年度までに結論を得る」としていますが、延長反対の個人パブコメ(2006-04-25 内閣知財戦略本部公表)が非常に多いことが注目されます。要約しますと、

1-1 「コンテンツ産業による文化的所産の寡占化・死蔵を招く著作権保護期間延長に断固反対する。保護期間を満了し、公有となった著作物に誰でもアクセスすることが可能となれば、現代の感性で新しい作品が創造される可能性があるのに、一部の権利者を利するため、その機会を失うことになる。」

1-2 「現行の「死後50年」を延長しても、それによってコンテンツ創作へのインセンティブを生むことは全く期待できず、既得権利者の保護強化になっても知財価値の最大限発揮に資さない。」

1-3 「追加延長保護は、極めて少数の人のそれ程大きくない利益のため、極めて多数の人々に大きな費用を発生させる。少数の僅かな利益のため多数を犠牲にすることは、法の衡平に反する。」

1-4 「50年後の市場で経済価値を維持する作品は、全体の2%程度である。」

1-5 「米国にはフェアユ-スの概念が活きている。期間延長よりも、この概念を導入すべきである。」

1-7 「保護期間延長で利得するのは、ディズニ-などの一部企業だけで、多くの国民は一定期間経過した著作物の自由使用権を剥奪される。」

1-8 「知財推進計画06においては、知財推進計画05の「保護期間延長の検討」を削除するか、少なくとも、「デジタルア-カイブ拡充の重要性にかんがみ、保護期間の延長に慎重であるべき」旨を書き加えることを求める。」

1-9 「最近「星の王子様」の保護期間が満了し、様々な形態で書店に並んでいるが、装丁や文字の選択肢を含めて、歓迎すべき状況であり、これを阻害する保護期間延長は、文化の衰退を招く。」

2.賛成が多い団体パブコメ:

著作権者団体の保護期間延長必要論は、主として「文化論」と「国際調和論」に立脚していますが、例えば、

2-1        ㈳日本音楽著作権協会「保護期間延長の問題を経済面から議論してはならない。保護期間延長反対論は、二次的利用に不都合であるとか、作家の子孫に過剰な利益を与える必要はないとか、身勝手で、地下の恩人に敬意を欠く。」

2-2        ㈳音楽出版社協会「著作者の死後70年はEU・米国を始め多くの国で実現し、主要国で50年に止まっているのは日本だけである。欧米で保護されている著作物が日本では無償という不法行為国となる。わが国のデジタルコンテンツが欧米で保護されない結果も恐れる。」

2-3        その他「著作権の保護期間を欧米並みに死後70年に延長すべきである。相互主義は国際ル-ルの大原則である。著作隣接権の保護期間の延長の検討を開始することも必要である。」

3.所見:

 ソフトウェア特許権やプログラム著作権による経済知財と文化知財の融合に加えて、デジタルコンテンツの急速な発達と経済的・文化的・国際的地位の比重急増が、特許権と著作権の保護期間の差を一層際立たせています。パブコメの主張は真っ向から対立し、知財推進計画06の来月決定を凝視しています。

 賛否双方の議論に欠けているのは、「著作権使用の(強制)許諾制度」と組み合わせて、欧米の保護期間と調和させる案です。

2006年5月 6日 (土)

経団連知財パブコメの疑問

経団連知財パブコメの問題点

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

1.        経団連パブコメの疑問の一つ

経団連知財パブコメ(Public Comment:「知財推進計画06の策定に向けた(対内閣知財戦略本部)意見募集に対し、同本部あて寄せられた意見」(2006-04-25 同本部公表)のうち、経団連が提出した意見書)には、注目すべき多くの点がありますが、今日は先ず、次の箇所を引用します。

「刑事罰の強化:

 知的財産権の侵害に関して抑止的な効果を考える上で、刑事罰の強化は意義があるが、審議会の報告とは違った形での結果になったことについて、審議会の場で十分説明を行う必要がある。なお、知的財産権は無体物であるために、その権利範囲については争いがあるのが常であるから、刑事罰の適用に際しては、慎重な運用を維持すべきと考える。」

2.        形式的疑問点

2-1 経団連知財パブコメには単に、「審議会報告とは違った形」とありますが、「審議会」とは、「産構審知財政策部会」、「知財サイクル専門調査会」、「内閣知財戦略本部会議」の何れかであると考えます。

2-2 経団連知財パブコメに「結果になった」という過去完了形表現の意味は、特許権ほか、ほとんど全ての知的財産権について、侵害に対する懲役刑上限を5年から10年に重くする法改正が、「意匠法等改正法案」により、今次国会参議院先議で、既に4月7日に同院では可決(反対票9)され、衆議院に送付されたことを指すものと解されます。

3.実質的疑問点

 日本弁護士連合会は、上記改正法案についての詳細な反対意見を表明してきました。従って、前項1.の内閣知財戦略本部公表の「主要団体意見」のうちに、日本弁護士連合会のこの意見が掲載されていないことを、奇異に感じます(他にも「主要」に入れられていない団体がありますが)。

4.        本日の結び

 団体意見だけでなく、個人意見にも、今次法定刑改正に対する反対意見が見られます。経団連知財パブコメは、「審議会の場で」の説明を求めていますが、国民・企業経営者・知財担当者への「十分な説明」、特に日本弁護士連合会の指摘事項についての説明が望まれます。

2006年5月 5日 (金)

「コンテンツ」の語義

語義設定に起因する問題点

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name Web検索SANARI PATENT

1.        問題点

知財の世界は改革が急速で、在来語の語義の変更や、新語の創作も頻繁であり、このことは必要不可欠ながら、難点を生む場合があります。

例えば、コンテンツ振興法の「コンテンツ」は、頻繁に用いられる日常語で、従来「内容」と和訳されていますが、同法で次のように定義を定めたことによる不具合を、諸団体のパブコメ(内閣知財戦略本部2006-04-25公表)の一つ(日本パ-ソナルコンピュ-タ-ソフトウェア協会)は、次のように指摘しています。

「コンテンツ促進法において定められたコンテンツは、「映画、音楽、演劇、文芸、写真、漫画、アニメ-ション、コンピュ-タゲ-ムその他の文字、図形、色彩、音声、動作若しくは映像若しくはこれらを組み合わせたもの又はこれらに係る情報を電子計算機を介して提供するためのプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わせたものをいう。)であって、人間の創造的活動により生みだされるもののうち、教養又は娯楽の範囲に属するもの」に限定されており(同法2条1項)、例えばビジネスに使用されるソフトウェアについては適用されないと解釈されていることも問題です。」

2.        所見

このパブコメは、「知財推進計画06の策定に当たっては、コンテンツ振興法の適用範囲を見直すと共に、政府が国費で発注するソフトウェア創作の受託者に、原則として知的財産権が帰属することを法律上明記し、政府が譲りうける場合を例外とすべきと考えます。」と主張しています。

コンテンツ振興法は議員立法であり、閣法と異なる改正の段取りが必要かと考えますが、先ず、定義が常識的に分かり易いものであることを望みます。

 なお、コンテンツについて、現在はデジタルコンテンツが政策の主対象である観がありますが、最近は、アナログコンテンツという用語が用いられ、その振興対策が強調され始めました。これにはライブコンテンツを含み得ますが、非デジタルコンテンツと称するよりはスマ-トながら、語義不明確でもあります。

 しかし、これらの語義論までは、知財推進計画06では踏み込む余裕がないであろうと考えられます。

2006年5月 4日 (木)

大企業の知財戦略と中小企業

K.H.東北大教授:「大企業の圧力排除:国費よりも介入」

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name PC検索SANARI PATENT

「ものづくり中小企業基盤技術高度化新法案」審議のため参議院経済産業委員会は、中小企業者等の参考人意見を聴取しましたが(2006-04-13)、東北大学大学院工学研究科・堀切川一男教授は、北川イッセイ議員の質疑「産学官連携での苦労は何か」に、次のように答えられました。

「苦労話で、実は産学官連携の官の支援で、一番うれしかったのはお金ではなかったんです。実は、公的補助金の金額は安くても、国の、この開発はやりなさいというゴ-サインが出たこと自体が中小企業にとっては非常に重要なお墨付きになります。それで、実は、中小企業と私と一緒に開発したものを特許出願し公開されて製品化するとき、実は大企業から様々な圧力(いわば「嫌がらせ」)がかかりました。そのとき、「実は国の支援のお金をいただいて、国の外郭団体が共同出願人に入っていますよ」と説明しますと、大企業は、「失礼しました。何とか友好的に連携しましょう」という態度に変わるんです」。

 産学官連携の実態と問題点は多様で、上記はその一つが立法府で披露されたものですが、大企業の知財戦略の重要性と中小企業の知財保護の双方を考える立場に、弁理士は立脚しています。

2006年5月 3日 (水)

内閣知財戦略本部へのパブコメ

パブコメ上の弁理士業務関連論について

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name PC検索SANARI PATENT

4月25日に内閣知財戦略本部は、「知的財産推進計画2006の策定に向けた意見募集の結果について」(2006-04-05)を公表しました。知財立国について弁理士が益々寄与するため、その内容(対立意見も多数あるので、その対比を含めて)を熟読する必要がありますが、取敢えず、弁理士の職域に直結する応募パブコメ事項(一部)を概観します。

1.        応募パブコメ(Public Comment)

1-1        全ての特許出願を迅速に審査する必要はない。早期審査請求の場合、待ち期間は半分以下になる。重複研究の排除は、出願公開により達成できる。権利の不安定は、審査の他人請求により救済できる。審査の迅速化は権利の不安定化をもたらす恐れがあり、3年への短縮は致命的な審査滞貨をも発生させた(佐成注:多くの反論が見られます)。

1-2        民間企業に審査業務を委託する制度を提案する(有力な反対論があります)。

1-3        弁理士過疎地域を無くすため(単なる都道府県レベルでなく、誰でも移動時間1時間程度以内で弁理士にアクセスできるような環境の提供)、弁護士会に倣って弁理士過疎地域に公設の特許事務所設立を推進する(日本弁理士会のシステムで足りるという反論も示されています)。

1-4        創設予定の「知財人材育成推進協議会」を、「知財人材育成活用協議会」に拡充する(佐成提出案です。各種知財専門家の総合的活用の協議会でもあるべきであるという意見です)。

1-5        弁理士単独の訴訟代理権の検討は、知財推進計画06でも維持されるべきである。

1-6        知的財産専門人材に、弁護士と弁理士の他、行政書士を加えるべきである。

2.        所見

2-1        内閣知財戦略本部は、先に、「知的財産基本法の施行状況に対する意見募集の結果について」(2006-2-24)を公表していますが、応募パブコメ事項として、次の記載があります。

2-1-1        付記弁理士に対する単独代理権の付与は、必要性が認められない。

2-1-2        弁理士について、試験を簡単にして数を増やしているだけであり、有用な人材が増えていない。

2-1-3        弁理士法の一部を改正し、実用新案権・商標権・意匠権についての申請代理人を行政書士が行えるよう拡大すべきである(著作権分野は既に行政書士が行っている)。

2-1-4        知的財産制度の各分野の専門家を誕生させることも検討すべきである

2-2-1上記2-1-1については、「必要性」はユ-ザ-である原告・被告の利便から判断されるべきで、小生は「必要性がある」と考えます。

2-2-2 上記2-1-2については、弁理士法第3条「弁理士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない」という「弁理士の職責」規定が、遵守されつつあります。

2-2-3 上記2-1-3については、内閣知財戦略本部と所管庁の明確な判断が示される筈です。

2-2-4 上記2-1-4については、このパブコメ提出者の、もっと詳細な「専門家分野案」が示されることを希望します。(以上)

2006年5月 2日 (火)

LLP法令改正と弁理士

LLP法令改正の施行(2006-05-01)と弁理士業務

1.有限責任事業組合制度(LLP)関係の法令改正が昨日施行されましたので、経済産業省経済産業政策局産業組織課は、「LLPの創設について」と題する解説を発表しました(2006-05-01)

弁理士の立場から見ますと、この制度の骨格に変更はありませんが(弁理士専権業務への適用拡大については先送り)、次の諸LLPは弁理士の業務対象となることから、今次法令改正の内容を承知してユ-ザ-からのご相談等に応対する必要があります。

1-1        産学の連携。大学発ベンチャ-など

1-2        企業家が集まり、共同して行う事業

1-3        ベンチャ-企業や中小・中堅企業と大企業の連携

1-4        異業種の企業間の共同事業

1-5        大企業間・中小企業間で連携して行う共同開発など

1-6        専門人材が行う経営コンサルティングなど

2.LLPと士業

 「LLPは資格が必要な士業において活用できるのか」について、経済産業省の見解は、今次改正法においても不変です。すなわち、次のように示されています。

2-1        弁護士・公認会計士・税理士・行政書士・弁理士などは、その根拠法に基づき、全員無限責任の合名会社型の法人か、民法組合、若しくは個人事業主として事業を営むこととされている。

2-2        国際的に見れば、これら士業においても、LLPなどの有限責任の事業体の活用が進んでいるので、無限責任原則をどのように修正することが妥当か、今後検討する必要がある。

3.        従って、弁理士としては充分検討の上、所要の行動を起こすべきであると考えます。

2006年5月 1日 (月)

中小企業技術新法

中小企業技術高度化新法(参議院可決済法案)における知財戦略

弁理士 佐成重範 patent@sanari.name PC検索SANARI PATENT

今次第164国会に参議院先議で提案された「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律案」(以下「中小企業生産技術高度化新法案」)は、4月18日に参議院経済産業委員会、翌19日に同本会議で可決され、衆議院に送付されましたが、質疑応答中、知財関係では次の発言が注目されました。

1.        中小企業庁長官答弁

1-1 ものづくり中小企業にとって、みずからの知的財産を戦略的に保護し活用できる仕組みを整備することが重要かつ困難な課題である。すなわち、中小企業の戦略として、権利を取ることがベストの戦略なのか、あるいはノウハウとして自分の手元に隠しておくことが良い戦略なのかを含めて、支援の制度を整備しつつある。

1-2 この法案においては、ものづくり中小企業の研究開発成果について、審査請求料を半額、特許料を最初の6年間は半額とする。

1-3 別途昨年から、中小企業が外国で権利化を行う場合の弁理士費用・翻訳費用の補助、外国でのコピ-商品被害の調査費用補助を行っている。

1-4 本年度から、弁理士数の不足に対処し、全国の商工会・商工会議所に「駆込み寺」を、従来の相談制度に加えて、開始した。

2.林 芳正議員再質疑・中小企業庁長官再答弁

2-1 質疑:出願公開を避けること、避けないこと、この選択肢についての相談も、駆け込み寺で受けるのか。

2-2 答弁:権利化すると公開され、模倣される可能性が発生し、また侵害を訴える費用・労力が大企業に比べて遥かに深刻であるから、ノウハウで隠せる限界まで隠す戦略もしばしば採られる。そのような相談も受ける、少なくとも、相談相手まで導くル-トをつけたい。

3.大企業による奪取

3-1 質疑・林 芳正 議員:かって手塚プロが「ジャングル大帝」を「ライオン・キング」にディズニ-に焼き直しされたが、中小企業が知財を奪われることの対策はあるか。

答弁・中小企業庁長官・経済産業省大臣:新法による研究開発で予算配分においては、中小企業が成果の配分で不利にならないよう監視する。また、大企業が対価の支払いなく中小企業のノウハウ・アイディアの提供を要請する例があり、下請代金法の「不当な経済上の利益の提供の要請」該当として措置したいところである。しかし、中小企業が訴えることはほとんど不可能で、適用の実績がない。モラル振興と共に、行政もいっそう努力する。

4.示されたデ-タ

4-1 平成18年度政府予算・ものづくり基盤技術研究開発支援費は64億円。

4-2 新法による信用保険限度額は、通常の2億円に加え、普通保険で2億円、無担保保険で8千万円、特別小口保険で1250万円、それぞれ別枠設定する。また、新事業開拓保険というカタゴリ-があるが、それにつても限度額の2億円を3億円に引上げるという限度額の特例を受け得る(中小企業庁長官答弁)。

5.佐成所感:上記の信用保険新制度を見ても、弁理士が中小企業に知財戦略をアドバイスするための所要知識は広範である。

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